それはいつか笑い話になる似た者同士のお話。「おい、準備はできたか?」
KKに呼ばれて振り返る。すっかり仕事着と化したタクティカルジャケット上下にボディバッグ。それから改造弓。
頷いた暁人の頭を掻き回すように撫で、肩を叩く。
「今日は割とデカめの案件だからな、頼りにしてるぞ」
「任せて」
今時頭を撫でたり肩に触れるのはセクハラなんだよ、などとは言わない。一匹狼気質の、本当は寂しがり屋の彼が暁人を頼ってパーソナルスペースに入れて見守ってくれているのだ。これ以上の幸せはない。
だからこそ、これ以上を望んではいけない。
伊月暁人は己を律するのが得意だった。兄として、渋谷のヒーローとして。
今のKKにとって自分は何なのだろう。
彼は暁人のことを相棒とよく呼ぶ。相棒というのは元々駕籠を担ぐ棒を持つ二人のことで、息が合わないと遅いし揺れる。
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