花嫁 土曜の昼下がり、珍しく伊月兄妹はお互いに予定もなく、自宅でのんびりと暇を持て余していた。
ピンポーン、インターホンの音が鳴り響く。のんびりとソファに座ったままテレビを見ていた二人は、お互いに顔を見合わせる。のんびりし過ぎて、お互いに立ち上がりたくないのだ。向かい合ったまま、片手を突き出した。
「「じゃんけん!!」
ポン
「はい、どちら様でしょうか?」
見事に一本勝負に負けた暁人は、溜息を吐きながら、玄関へと向かう。鍵を外し、扉を開ける。目の前に整った顔立ちの男性が居た。つり目が印象的な男性は質の良いスーツを身にまとい、含みのある笑みを浮かべている。
「こちら、伊月暁人様のご自宅でしょうか?」
「は、はい」
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