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    yosuga_04_05

    @yosuga_04_05

    書いたものをまとめる用です。
    https://twitter.com/i/events/1540359488255201280
    にもありますのでお好きな方で。
    年齢制限のあるお話の閲覧は18歳以上の方のみでお願いします。

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    yosuga_04_05

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    ――僕に触っていいのはきみだけなんだって、言ってるみたい。

    お付き合いしている💛💜
    とある悩みを抱える👟くんと、独占欲強めの🦁くん。
    ngo配信のバイブのくだりを引きずってる話です。

    #lucashu
    #CASHU_LS

    【💛💜】You have me. はじめて肌を重ねた夜。
     ルカは、シュウをとびきり大切にしてくれた。



     自分以外の誰かに触れること。
     明確な熱を持って、触れてみたくて、触れられたくて。そんな風に誰かと熱を交わらせるのは、お互いに初めてだった。
     もちろん知識はあったけれど、知識だけがあったってなにもわからなくて。だから、たくさん確認し合った。拙くても丁寧に、丁寧に。息を上げながら、身体を震わせながら、触れあって求め合って、暑くて、熱くて、苦しくて、切なくて。ひとつになれて、夢みたいに幸せだった。
     あれから何度か、肌を重ねた。
     今夜だって、そう。
    「…………」
     シュウが眠るまで起きてるよ、と口にしたルカは、つい数分前に夢の世界へ旅立った。
     すうすうと穏やかに眠るルカの寝顔を眺めながら、シュウはひとり静かに笑った。
     今日は朝早くから忙しそうだったから、疲れていただろう。それでもシュウとの時間を作ろうとして、たくさん愛してくれた。
     脱いだ衣服もそのまま、二人で裸のままブランケットにくるまって、他愛ない話をする内、ルカはとても眠そうだった。シュウの髪を撫ぜる手がどんどん鈍くなっていくのも、寝物語に今日の出来事を語る口調が睡魔でふやけていくのも、ぜんぶかわいかった。かわいくていとしい僕の恋人。きっとかわいいなんて言ったら機嫌を損ねてしまうから、言わなかったけれど。
     いま目の前の寝顔だってかわいい。シュウはすこしだけ身体を起こすと、髪を耳にかけながら、ルカの頬にキスを落とした。
     そうして自分も眠ろうとベッドに沈みなおしたシュウは、ひっそりとため息をついた。
    「――きっと、」
     きみは、まるで気にしないんだろうけど。
     静かにこぼしたシュウは、ひそかな悩みを振り払うように目を閉じた。



       ***



    「それならいい方法があるぞ」
     自分で開発してみろよ。

     昼下がりのカフェ。そう愉しそうに目を細めたヴォックスに、シュウの隣にいたアイクが盛大なため息をついた。シュウはと言えば、なにひとつうまい返しが浮かばない。
    「シュウがそれできたら苦労しないって」
     と、ヴォックスの隣でクリームソーダを混ぜていたミスタが零す。
    「そう難しいことじゃないだろう。自分でうまくできないなら、玩具を使えばいい。今時ネットでも簡単に頼めるぞ」
    「シュウがもし乗り気なら、おすすめのアダルトサイト教えてやろうか?」
    「NO どうしてそう君たちは短絡的なのさ!」
     ヴォックスとミスタの発言に我慢できなかったらしいアイクが声を荒げる。
    「あー、いいよ、アイク。僕なら大丈夫」
    「シュウが大丈夫でも僕が大丈夫じゃない!」
    「んはは、ありがとう」
     アイクをなだめるようにシュウは彼の背中を軽くたたく。納得はしていないらしいアイクは、けれど姿勢を正すとコーラに口をつける。
     本当は、ルカもいるはずだったはずのランチタイム。
     急に入った仕事のスケジュールをうまく調整できず、結局ルカは今日来られなくなってしまった。「帰ってきたら話を聞かせて」「もちろん」そんなやりとりをしたのが今朝だった。
     そんなルカ抜きの食事のさなか、ミスタが問うてきたのだ。
    「で? シュウは最近どうなの? ルカとさ」
    「うまくいってる? 何か悩みがあるなら聞くよ」
     ミスタの言葉を受けて、アイクもにこにこと問うてくる。
     そもそも、ルカとシュウは恋人になるまでに長い時間を要した。ルカはあんな感じで鈍感だし、シュウはそもそも気持ちを伝える気がなかったから。そんなシュウとルカを、ミスタもヴォックスもアイクも歯がゆく見守っていたようで、晴れてルカと恋人同士になったときにはお祝いをしてくれたほどだ。
     だからこそ、今日もこうして気にかけてくれる。
    「うん、うまくいってるよ」
     そう返しながら、最近のシュウはひとつ、重大な悩みを抱えていた。
     かと言ってミスタたちに打ち明けるには躊躇われる内容の悩みだった。シュウは自然にうまくいっていると返したはずだった。
    「それなら、夜の方も問題ないわけだ」
     けれど、ヴォックスがそんな言葉をにやにやと零したのだ。
     アイクがたしなめるように「ヴォックス!」と呼んだが、ヴォックスはまるで意に介さない。
    「別に何もおかしな話はしていないだろう。恋人同士なら大切なコミュニケーションのひとつじゃないか。シュウもルカもそう経験がなかったはずだし、気にもなるさ」
    「そう言われれば気になるけどさ。どうなの? シュウ」
     ヴォックスに乗った様子のミスタがからかい半分で尋ねてくる。
     ――この場合の適切な返しはなんだったろう。
     笑い飛ばすにしても、余裕たっぷりに問題ないと返すにしても、シュウはこういうシチュエーションに対する免疫がなかった。おまけに、図星だったのだ。
     まさにいま抱える悩みの種を話題にされて、シュウはうっかり言葉に詰まってしまった。
    「……あー、その、大丈夫、だと思う」
    「これは問題があるやつだな」
     シュウの精一杯の回答に、ヴォックスが楽しそうに笑みを深める。
     ああ、返しを間違った、と気づいたときにはもう遅い。
    「まじ? というかもうシてたわけ?! 一年ぐらいかかると思ってたのに!」
    「ルカとシュウだって大人の男なんだからヤり方くらいわかるさ。方法を知っていればあとはなるようになるだろう」
    「シュウ、無理に話さなくていいんだからね?」
     とても昼間のカフェとは思えない話を繰り広げるヴォックスとミスタをよそに、隣でアイクがそう諭してくれる。
     けれどこうなってくると逆に、もはや言ってしまった方が楽なのではと思えてくる。妙な覚悟が決まってしまったのは自分でもわかったが、どうせ自分ひとりで持て余したって仕方のない悩みだ。シュウは打ち明けてしまうことにした。
     ここ最近の、ささやかで、けれど深刻な悩み。

    「――――ルカが、優しすぎ、て」

     贅沢な悩みなのだ、たぶん。
     口にしてみれば、三人は驚いたように目を見開いた。
     初めて肌を合わせてから、何度かセックスをしたけれど、シュウの身体は未だ慣れないままだ。本来なにかを受け入れる場所ではない場所に熱を受け入れるのだから、そりゃあ負担はあるだろうけれど。シュウはいつも気持ちよくなれるまでに時間がかかってしまう。
     毎回ルカは丁寧に丁寧にシュウを愛して、身体をほぐしてくれようとする。大切にしてくれる。それはとてもとても幸せなことなのに、同時に彼の負担になっていないかと思ってしまうのだ。
     もっとルカのしたいように、すきに愛してくれていい。抱いてくれていい。多少苦しくたって痛くたって、それがシュウを求めてのことなら構わないのに。
     もしかしたら自分に合わせて、思いやって、なにか我慢をさせているのではないか。
     それがシュウの悩みだった。
     きっとひとりで悶々と悩むより、ルカに伝えた方がいい。だって二人ですることだから。
     わかっている。わかってはいるのだ。けれど、でも。いざ口に出そうとすると、どう伝えていいかわからなくなってしまう。
     昨夜だってチャレンジしようとしたけれど、結局言えないまま、ルカの優しさに甘えてしまった。
     そうシュウが吐露した結果、ヴォックスが提案したのが自分で開発をしてみればいい、というものだった。
     確かに一人でいろいろと調べていた時も、そんな記事は読んだけれど。
     けれど自分でうまくできる気がまるでしなかった。
    「一人で使う使わないは別にしても、備えあれば憂いなしと言うだろう。玩具を調べてみたらどうだ?」
    「一応URL送っといたから」
     ミスタが言ったのと同時、スマートフォンが震える。
    「……、僕は、ルカに素直に話すのがいいと思うよ。もちろん、シュウが言えそうならね」
     アイクがそう口にした。真剣なトーンで、案じてくれているのがわかった。彼はいつも優しい。もちろんヴォックスとミスタだってそうだ。
    「うん、ありがとう、アイク。ヴォックスとミスタも」
     一人で抱えているよりは随分楽になった。とはいえ、やはり解決するのは自分だから、どうにかしなければいけない。
     今夜うまくルカに話せるだろうか。
     そんなことを考えながら、ランチタイムの時間は過ぎていった。



        ***



    「ただいま~! シュウ!」
    「おかえり、ルカ」
     二十時を回った頃。
     仕事を終えたルカが帰ってきた。
     ソファでくつろぎながらスマートフォンを見ていたシュウは、スマートフォンをテーブルに置いて立ち上がる。
    「思ったより遅かったね?」
    「そうなんだよ、おかげでめちゃくちゃ疲れた」
     そう零したルカが、「充電」とシュウを抱きしめてくれる。ぎゅっと腕に力を込めたルカが、甘えるみたいにシュウの肩口に頭を押し付ける。体温が高い。大きな子供。やっぱりかわいい。
    「んはは、お疲れさま」
    「ん、シュウ」
     労わるように背中をとんとんと叩くと、ルカが顔を上げる。そうしてシュウの顔を覗き込んでくる。薄紫の双眸がすこしだけ熱っぽくて、あ、と思う。と同時に顎を掬い上げられてキスが降ってくる。
    「ん……、ルカ、」
    「もうちょっとだけ」
     一瞬離れたくちびる。ルカがささやくようにねだったのに、シュウは目を閉じる。自分より体温の高いルカのくちびるは、いつだって熱くて、胸がぎゅっとなる。キスをしているんだ、と明確に思い知らされるような心地になるから。
     しばらくそのまま口づけあって、満足したらしいルカが機嫌よさそうに笑う。
    「……充電、できた?」
     そっとシュウが尋ねたのに、ルカが一瞬目を丸くして、けれど悪戯っぽく目を細める。
    「もちろん! でもさ、俺まだ充電できるよ」
    「えー、なにそれ」
     シュウが笑えば、ルカがシュウの手を取って、手のひらに吸い付くようにキスをくれる。
     シュウを窺うように、モルガナイトの瞳が揺れる。
    「俺はいくらだってシュウに触りたい」
    「き、昨日もシたじゃん……」
     ルカの纏う空気に充てられて、ぶわ、と身体に熱がともる。だってもうシュウの身体はルカの熱を知っている。知っているから。連想させるような言動をとられれば、簡単に思いだしてしまう。
    「うん、だから今夜はシないけどさ」
    「…………」
    「お腹空いた! シュウはもう夕飯食べた?」
    「……まだ」
     シュウがそう返せば、ルカは「何かすぐに食べられる物あったっけ?」とキッチンへ向かう。
     今夜はシないと言われたときわずかに苦しくなった胸は、きっと悩みから起因している。
     ルカは純粋にシュウの身体を思いやって、今夜はやめておこうと言ってくれている。それはとても優しいけれど、僕がもっと行為に慣れていたら、時間がかからない身体なら、彼は今夜我慢せずに済むのではないかと思えてしまった。ルカにそんな意図は微塵もないはずなのに。
     シュウはルカを追いかけてキッチンへ向かおうとして、テーブルに置いたスマートフォンが震えたのに気づく。
     手にしてディスプレイを見れば、ミスタからメッセージがいくつか来ているようだった。
     急用だったら困るとすぐにロックを解いて、メッセージを開く。と同時に、シュウは思いきり紫色の目を見開くはめになった。
    「……ッ!!」
     うっかりスマートフォンを落っことすところだった。
     メッセージを開いた途端に視界に飛び込んできたのは、所謂アダルトグッズの画像付きのURLたち。
     昼間に送られたサイトのURLはそういえば開いていなかったけれど、『他にも調べてみたからさ』とメッセージが添えられている。からかい半分なのか好意なのかわからない。たぶん両方だろうけれど。
     こんなの、本当に中に挿入るの?
     思わずもたげた疑問に、一体なにを考えているのかとシュウが盛大なため息をつくと、背後から声がかかる。
    「シュウ?」
    「うわ?!」
     完全に油断していたせいで、思った以上に驚いてしまった。
     心臓がばくばくと大きく跳ねる。
     振り返れば、スナック菓子を見つけたらしいルカが傍らに立っていた。
    「ごめん、そんなに驚くと思ってなくて……!」
    「いや、僕もごめんね」
    「一体なに見て――……」
     言いかけたルカの視線がシュウの手元のスマートフォンに注がれる。隠す間もない。終わった、と思ううちにルカの瞳が思いきり見開かれる。スナック菓子の袋が床に落っこちた。信じられないものを目にした顔で、ルカがスマートフォンを携えるシュウの手首を掴む。
    「What」
    「ち、違、! これはその、!」
     狼狽えながらも食い入るようにスマートフォンの画面を見つめるルカに、シュウは羞恥と動揺でなにもうまい言葉が出てこない。頭が真っ白になる。
     そんなシュウの両肩を、ルカががっしりと掴む。
     正面からまっすぐに射すくめられて、シュウは逃げ場がない。
    「……なんで、こんなの見てたの……?」
    「ルカ、あの、……」
     違うんだよ。違わないんだけど、でも違うんだよ。僕だって見たくて見たわけじゃなくて。すごくタイミングが悪い出来事だったんだ。ミスタが勝手に送ってきただけだよ。
     頭の中をぐるぐるといくつもの言葉が巡っていくけれど、なにひとつ言葉にならない。形にならない。
     シュウが何も言えずにいると、ルカが口を開いた。
    「――俺がいるじゃん!」
    「え?」
    「そんなの買わなくたって、シュウには俺がいるのに」
     なんで。
     すこし拗ねたように告げられて、シュウは呆気にとられる。肩口を掴む指に力が込められて、彼のこころが一層伝わってくる。
     驚いた。
     すごく驚いた。
     それに、それに。そんな言い方は、まるで。
    「……」

     ――僕に触っていいのはきみだけなんだって、言ってるみたい。

     都合のいい解釈なのかも知れない。けれどシュウにはそう聞こえた。不謹慎にも、こころの一等やわいところが悲鳴をあげる。きゅう、と苦しくって、嬉しい。
     玩具ですら、許してくれないんだ。
     恋人の意外な独占欲に、シュウは胸がいっぱいになる。
    「シュウ?」
    「ルカ、ごめんね」
    「え?」
    「僕さ、ずっと悩んでたことがあって」
     そう告げると、ルカが眉を下げる。違うよ。きみが杞憂しているようなことじゃないよ。
     シュウはそう伝えたくて、自分からルカにキスを贈った。
     触れるだけのキス。自分より熱いくちびる。ルカがすこしだけ驚いた顔をするのがいとしい。
     肩に置かれたルカの手が緩む。
    「ルカはさ、いつも僕をすごく大切にしてくれるよね」
    「そんなの、当たり前だよ。俺はシュウがすごく大好きで大切だから」
    「うん、ありがとう。僕もルカが大好きで大切だよ」
     そう返して、シュウは笑った。
     ここ最近、ずっと悩んできたこと。自分でも思っていたし、アイクにも言われたけれど、ルカに伝えるのがいちばんいい。
    「けどね、その、ルカに我慢させてないかなって、ずっと悩んでたんだ」
    「我慢?」
    「うん。僕はなんていうか、……まだ身体がそういう行為に慣れてないから。ルカはいつもたくさん時間をかけて、僕に負担がかからないようにしてくれるじゃん。僕がもっと感じやすい身体だったら、ルカの負担も減るのかな、とか、もっとしたいようにしてくれるのかな、とか」
    「……」
    「二人ですることだから。きみが負担に感じてたり、何か我慢をさせてたら嫌だなって」
     シュウはルカを好きで、幸運なことにルカもシュウを好きでいてくれる。
     僕達は恋人で、いとしいひとには触れたいし、触れてほしい。きっとお互いにそうだ。だからハグだってキスだって、セックスだってするけれど。
     だからこそ、ルカがいつだって優しくて大切にしてくれるのが嬉しくて、同時に歯がゆかった。
     伝えられなかったこころ。言葉にしてみれば、すこし胸が軽くなった気がした。
    「……ルカ?」
     シュウの言葉を受けて、ルカはがっくりと項垂れてしまった。金色の髪が重力に従ってさらさらと零れる。
     シュウは空いた手でルカの頬に触れる。そうすれば「シュウ」とルカが顔を上げた。
    「それで、玩具買おうとしてたの?」
    「いや、買おうとまでは思ってなかったんだけど」
     本当に、これに関してはミスタのせいだ。おかげで悩んでいたことをルカに言えたから、責められないけれど。
     シュウが返せば、ルカはいくらか思案して、シュウの腕を引いた。ソファに座ったルカの膝の上に、向かい合う形で乗り上げてしまう。
     ルカの腕がシュウの腰を抱いた。
    「シュウがそんな風に悩んでたなんて俺、知らなかった」
    「それはそうだよ。僕も言ってなかったし」
    「ううん、一人で悩ませてごめん」
     そう告げたルカが、シュウの身体をぎゅっと抱きしめる。どこまでも優しい恋人。いとしさが募って、シュウはルカの額にキスを贈る。
    「僕も言わなくてごめんね」
     伝えれば、ルカは首を横に振る。そうして真剣な様子で口を開いた。
    「……さっき、シュウは二人ですることだから、って言ったけどさ」
     そこまで言ったルカが、シュウの手を取る。ルカの手は熱くて大きくて優しい。いつだってたくさんの愛をくれる手だった。
    「なにか俺のことで悩むことがあったら、ちゃんと俺に教えて。俺はシュウの恋人だし、シュウも俺の恋人なんだから。何かあったときは、二人で一緒に考えよう」
    「ルカ」
    「嬉しいことも楽しいこともしんどいこともさ、半分こしたいんだ。半分にできないこともあるかもしれないけど、分け合いたいよ。もちろん、言いたくないことまで無理して言わなくていいけど、でも、できれば俺に教えて。俺も言うようにするから」
    「うん、ありがとう」
     優しい優しい、大好きな恋人。
     ルカを好きになってよかったと、いままで何度思っただろう。
     シュウがひっそりと噛み締めていると、ルカがシュウの手を持ち上げる。そうして指先にちゅ、とキスをくれた。指先からじわ、と愛が流れ込んでくるような錯覚に胸が切なく締め上げられる。
    「シュウの悩みはさ、もう気にしなくていいよ」
    「……本当に? ルカ、なにも我慢してない?」
    「我慢、は正直、することもあるけど。抱き潰さないようにしなきゃ、って思うから。俺の体力に合わせたら、きっとシュウすごく大変でしょ」
    「そういうの、もっと我慢しないでよ、ルカ」
    「シュウ」
    「きみがしたいように、愛したいように、好きにしてくれていいんだよ。僕を求めてしてくれることなら、すこし乱暴でも、苦しくても痛くても、ぜんぶ嬉しいんだから」
    「――――」
     伝えれば、ルカが瞠目した。
     本心だった。ルカが僕を思って大切に大切に触れてくれるのを知っている。それだって愛しいけれど、ルカがもっとしたいようにしてくれていい。愛したいように愛してほしい。
    「……なんで、そんなこと言うの」
    「え、……ッ、ん、う、」
     いくらか怒ったような、焦燥の混じる声で零したルカに、あっという間にくちびるを奪われる。吐息が熱くて、くちびるが熱くて、身体の奥からぶわ、と熱がともっていく。ちゅ、ちゅ、と何度も吸い付かれて、そのうち
    「口、開けて」
     とねだられる。
     その声があまりに熱に濡れていて、シュウは心臓をぎゅっと掴まれた心地になる。いつもより低く掠れていて、色っぽくて、ずるい。いつもかわいいのに、こういうときは肉食獣で、いけない。
     シュウが口を開けると、舌がねじ込まれる。熱い、あつい。沸騰、しちゃいそう。
     口内を舌で舐められて、舌を吸われて、濡れた音が響く。気持ちがよくって、背筋がぞくぞくとする。息が苦しいのに、ずっとこのままがいい。呼吸よりもキスがいい。ずっとルカとくちびるを合わせていたかった。
     すき、すき、すき。
     熱で思考なんてぼやけてしまっている。
     やがてくちびるをやわく食まれて、舐められて、キスが止む。
    「あ……、」
     名残惜しくて、思わず声が漏れた。
     ルカはと言えば、何とも言えない顔でシュウを見上げている。
    「……あんまりさ、俺を喜ばせること、言わないで」
    「え?」
    「そんな風に言われたら、シュウのこと大事にしたいのに、同じくらい、」
     ひどいこと、したくなる
    「!」
     ルカの言葉に、胸がきゅうと甘く締め付けられる。カッと顔が熱くなる。とんでもない、とんでもない。どうしていいかわからないくらい胸が高鳴る。
    「シュウはさ、俺に我慢させてないかとか、負担になってないかって心配してくれるけど、そんなの俺だって同じだよ」
    「え……」
     ルカの言葉にシュウは目を見開く。はしはしと瞬きをする。
    「俺ばっかり気持ちよくなってないかな、シュウに無理させてないかなって、いつも気にしてる」
    「ルカ」
    「たくさん時間をかけるの、俺なにも負担じゃないよ。すきでやってるんだ。シュウに触るのがすきだから」
     そう告げたルカが、愛しさを孕んだ目で笑った。
    「俺が触って、シュウの身体が熱くなって、跳ねたり、ぐずぐずになっていくの、すきだよ。感じてくれてるんだなってわかるから。知らないかも知れないけど、俺にとってはシュウに触るのだって、シュウの中に入るのと同じくらい気持ちいいことなんだよ」
    「~~~~っ」
     あんまりストレートで、それでいて愛に満ちた言葉だった。ずっと顔が熱い。きっと赤くなってしまっている。
    「だから、なにも不安に思わないで」
     そう伝えてくれたルカが、くちびるをそっと合わせてくれる。触れるだけの、とびきりやさしいキス。たちまちいままでの悩みが溶けていくのがわかって、シュウは息がしやすくなる。
     くちびるを離して、けれどそのまま額をひっつけあった。吐息のかかる距離。ルカの手がやさしくシュウの頭を撫ぜてくれる。
    「ありがとう、ルカ」
    「……正直ちょっと、不安になったよ。俺シュウを満足させられてなかったのかも、って」
    「いつも充分すぎるくらいだよ」
     そう返すのはすこし、恥ずかしかったけれど。
     だけど、きっとルカは真摯に愛を向けてくれたから。シュウだってきちんと返したかった。
     そうすればルカは嬉しそうに笑ってくれる。ああ言ってよかった。シュウも「んへへ」、とつられて笑みをこぼした。
    「安心したらお腹空いた」
    「そういえばごはんまだだったもんね。もうピザでも頼む?」
     いまから何かを作るにも面倒だ。空腹を嘆くルカにそう提案すれば、「チキンもつけたい!」とすぐに乗ってくれた。
     ルカが頷いたのに、シュウはデリバリーを頼もうとスマートフォンを操作する。
    「あのさ、シュウ」
    「うん?」
     やけに神妙な声で呼ばれる。
    「さっきは、今夜はシないって言ったけど」
     やっぱりさ、だめ?
     ねだるその口調がすこし恥ずかしそうで、シュウは思わず噴き出した。だって、かわいい。かわいくて優しくて、大好きな恋人。
    「シュウ」
     笑ってしまったせいで、ルカがすこし拗ねた表情になる。そんなところも子供っぽくていとしい。
    「ごめん、ごめん」
    「さっきは余裕あるみたいに今夜はシないよって言ったけど、我慢してたんだよ」
     だから、伝えてみたんだ。
     そう言うルカに、シュウは頷く。
    「うん、ありがとう。僕も我慢させたんじゃないかって、寂しかったから」
     いいよ。
     そう伝えれば、「シュウ~!」と感激したようにぎゅう、と思いきり抱き締められた。
     あんまり幸せで、やっぱり笑ってしまった。



    2022.07.04
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