Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    hikagenko

    @hikagenko

    HN:
    ひかげ

    サークル名:
    Hello,world!

    ジャンル:
    ド!、ズモなど

    イベント参加予定:
    24/06/01~02 景丹webオンリー
    24/07/28 5次ドリ10
    25/01/12 超5次ドリ2025冬

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🚢 🐺 👍
    POIPOI 33

    hikagenko

    ☆quiet follow

    ・ド!
    ・36ページ(表紙込み)/A5コピー本/200円
    ・ドリフェスシステムを開発することになったエンジニア(オリキャラ)の捏造話
    ・未完
    ・公開中の「システムと 天宮奏と ビブスたち。」(https://poipiku.com/5557249/7618363.html)含む

    #ド!
    do!
    #サンプル
    sample

    【サンプル】It's for you【ざっくりしたあらすじ】
    ドリフェスシステムを開発することになったエンジニア(オリキャラ)の捏造話。ショウ社長やデビュー前の三貴子と関わりながら、エンジニアは「アイドルとは何か」を考える。しかし自分なりの答えが一向に見つからず…。

    ※以下本文サンプル

    「営業の先輩が骨折したんだよね。電車に駆け込もうとして、階段踏み外したらしくてさ。やっぱ電車に駆け込まないって、大事なことだよね」
    …確かに、俺も鈴木もこの電車に乗る際に駆け込んではいないが、その前に散々走っただろうが!
    鈴木が全く息を切らしていないが、俺の息はまだ上がったままだ。平日昼間の車内は乗客がまばら。当たり前のように静かで、大きく息を吸うのが躊躇われる。
    シャツのボタンを一つ外し、死なない程度の呼吸を続けて目だけで鈴木に先を促す。あぁくそ、なんでこんな日に限ってニット着てんだ俺。脱げねぇ。暑い。
    特に汗をかいた様子も見せない鈴木は、「で」と続けた。
    「救急車で運ばれて、そのまま入院だって。けど命に別状はないって。よかったよな~」
    その先輩が誰かも分からず、自分がなんでこんなに走らされたかも分からないのに、頷けるか!
    ようやくちょっと申し訳なさそうな顔をした鈴木は、「客先に行く予定だったんだよ、先輩」と言い、携帯に何かを入力し画面を見せてきた。
    DFプロダクション
    見慣れた会社名だ。隣の課のお客さんで、何のシステムを入れているかは知らないがとりあえず付き合いが長く、特に面倒なことが起こったことのないいいお客さんだった気がする。
    だいぶ息が落ち着いてきた。空いている席に座った鈴木が、「ジロー」と隣の席を叩く。呼ばれんでも座るわ。流れる汗をハンカチで抑えつける。
    「で、打ち合わせの内容は? 改修依頼?」
    「いや、違うらしい」
    「は? らしい?」
    途端に鈴木は気まずそうに目をそらした。
    「新しい案件らしいんだけどさ、先輩がいきなり入院して引き継ぎなんて出来なかったわけで」
    自分が面倒な話に巻き込まれていることを理解して、思わず強い語調になる。
    「おい。なんで今日打ち合わせ入ってるか知らねぇのか?」
    「いや、そりゃ、今入ってるシステムのお伺いはあるんだけどさ、先輩のメモには『新規案件依頼?』しか書いてなくて! あ、先方にはちゃんと伝えてるから! 代理が行くって!」
    「それはどーでもいいんだよ!」
    向かいの席のご婦人がこちらを見ているのに気付く。小声のつもりだったが目立っていたらしい。鈴木はご婦人に向かって申し訳なさそうな顔で小さく頭を下げている。鈴木への舌打ちは心の中だけにとどめる。
    「なんでリスケしなかったんだよ。何も知らないテメェが行って役に立つのかよ新人営業がよぉ」
    「いや、一回先輩と挨拶は行ったことあるからさ。年度の初めに。名刺交換の練習~くらいの勢いの頃。で、面識あるなら行ってこいって、部長が」
    あぁ、あの部長ならまぁそう言うだろうな。容易に想像できて鼻で笑ってしまう。
    さて、営業の先輩がいきなり骨折して鈴木が駆り出された理由は分かった。それはまぁ、仕方がないんじゃなかろうか。俺の知ったこっちゃないが。

    (中略)

    「実はねぇ、エールを可視化してほしいんですよ」
    想定外の話が聞こえてきて、思わずキーボードを叩く手が止まった。
    …あぁ、どうやら俺は思った以上にヤバイ話に同席してしまったらしい。鈴木は「な、るほどですね…」と呟いている。それからちょっと間をおいて「えー…詳しくお伺いしても?」ととぼけたことを宣った。何もナルホドじゃねーじゃねぇか!
    目の前に座るショウ社長は、穏やかに笑って説明を続けてくれた。語られる理由を聞きながら、鈴木は適度に相槌を打っている。俺はせっせとキーボードを叩きながら要点を脳内でまとめる。
    ・ライブで使用するシステムをド新規で作りたい
    ・ファンのエールとやらを可視化することで、ライブを盛り上げたい
    出だしは恐ろしく突飛だったが、まあ、つまりこういうことだろう。たぶん。恐らく。
    「あの、つまり目的は顧客満足度の向上、ということでしょうか?」
    ショウ社長の話が落ち着いたところで口を挟む。ショウ社長はうんうんと頷いた。
    「そうだね、それはとても大事だ」
    それが全てではない、ということか。どうやら俺はまだこの話が理解できていないらしい。認識の齟齬がある。くそ、最初からこの手のシステムだと分かっていれば調べてきたのに! いや何を調べるんだこれ!? 類似システムか? あんのか、そんなもん?!
    諸悪の根源を睨みたくなったが、拳を握るだけに留める。
    「今の質問、システムを作る目的が知りたいって意図かな?」
    「はい、恐縮です…」
    「僕はね、アイドルはファンがいるから輝けると思っているんですよ」
    おっと、抽象的な話か?
    軽く身構えるが、ショウ社長はフフッと笑った。
    「作ったシステムは、使われなければ意味がない。そういうことですよ」
    「あぁ、なるほど。それはよく分かります」
    思わず苦笑いを浮かべてしまう。
    いくら俺達がせっせとシステムを作っても、使われなければ意味がない。売りに行く営業が良さを知らなきゃ客に見向きもされない。それは入社して三年程度の俺でも体験したことがあるくらい、よくあることだ。勿論、営業には営業の言い分があるんだろうが。
    システムはアイドル、使う客はファンと言い換えられる。うん、なるほど。…アイドルは、ファンのために存在する? それは、なんか…意外だ。アイドルって、別に詳しくないがキラキラしていて、なんか、存在すれば愛される人達、みたいなイメージがあるな。
    「ファンがいなければアイドルは存在できない…ということですか?」
    「簡単に言ってしまえば、そうですね」
    私にとってはね、と続いた一連の言葉はとてもドライだ。へえ、アイドルって簡単な世界じゃないんだ。
    「『ファン』とは…アイドルを応援する人達のこと、ですか?」
    「『エール』とは、ファンからアイドルへの声援…ですか?」
    質問を繰り返すと、ショウ社長は噛み砕いて説明してくれた。多分俺達が何も把握せずに打ち合わせに来てること、バレてるよなこれ。申し訳ないやら営業連中に腹が立つやらだ。
    「あとは、『アイドル』とは何か、かな?」
    ショウ社長がまたフフッと笑う。嫌味ではなく、孫を可愛がる祖父のように。
    正直、聞くのを躊躇っていた質問だ。だって、あまりにも『そのもの』すぎるだろう。でも、認識がずれたままじゃろくなことにならない。それも分かっている。
    「ご教示いただけますか」
    「僕には明確な答えがあるけどね。他の言葉もそう。人の数だけ答えがあっていいんですよ」
     ずっと目を細めていたショウ社長の目が開いた。
    「万人共通の答えあったとして、それだけが正だというなら、そんなのつまらないじゃない」
    「そう…ですね」
    『大多数の答えが正』というのは、つまらない。それは分かる気もするし、少数派の屁理屈にも思える。まあ、その話はどちらでもいい。今はこの案件が取れるか取れないか…取った方がいいのかを見極める材料が欲しい。
    「僕にとってのアイドルはね、」
    話を聞き、キーボードを叩き、俺はずっと思っていた。
    アイドルってなんだろう。
    自分の言葉でソレを語れなければ、理解できていないのと同じだと思う。ショウ社長の説明のおかげで、おおむね関連する言葉は自分の言葉で語れるようになっただろう。でも、それでも、どうしても考えてしまった。
    アイドルってなんだろう。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works