月が綺麗ですね、なんて陳腐な言葉よりもずっと その日、休みの曦臣は今朝は折角の休日を一緒に過ごせない事に拗ねていた。
外では明るく朗らかな彼も江澄の前では子どもの様に我儘を言うし時には泣き言も零す。随分と甘えられたものだ。
愛しい人の誘惑を振り切り、平日よりも人の少ないオフィスで仕事に勤しんだ。
昼休み、拗ねた曦臣が泣きじゃくる白兎のスタンプを5つも送ってきた。時間を少し空けて、黒猫がチラチラとこちらを伺うスタンプも送ってきている。正直、ちょっとキモい。しかしこういう所も可愛くて仕方ない。
早く会いたい、そうメッセージアプリの中では素直になれる。我ながら自身の天邪鬼にはほとほと呆れる。給湯室で隠れて失笑してしまった。
「ははっ! 仕事、早めに……終わりそうだ、と」
2068