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    maeda1322saki

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    maeda1322saki

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    マフィアになるぞ小説を新しく書いたので載せます。途中までですが…。
    クラッド出てくるやつです。

    ##マフィアになるぞ

    マフィア小説1
     最初に目にしたのは綺麗な白い天井だった。

    「ここは何処だ…?」

     そう周りを見渡せば、そこは手術室のような部屋だった。沢山の機械と装置、色とりどりの薬剤。足の先にあるのは大きなディスプレイ。ディスプレイと機械がコードでつながって、また、機械からベッドへとコードが伸びていた。

     何故こんなところに居るのかと記憶を巡らせようにも、まるで雲がかかったかのように何も思い出せない。ここは何処だろうか、何故ここに居るのだろうか。

     体を動かそうとした時、喉に引っかかるような違和感を覚えて嘔吐いた。
     指で触ってみれば、鼻からチューブが通されていた。そのチューブを辿るように指を動かせば、喉の奥まで通っているのが分かる。喉奥まであるそれは、胃の方まで通っているのだろうか。
     身体に繋がれている幾つものチューブの一本を手に取り、「なんだ、これは…?」と困惑で無意識に舌足らずな言葉が溢れた。


     その時、ふわりと、アーモンドの甘い香りが漂い顔を上げた。


    「おや、お目覚めですね」

     突然すぐ目の前に現れた顔に驚愕の声をあげる。
     ターコイズの瞳をもった、笑みを浮かべる髪の長い男に驚き慌てて後退った。

     途端にチューブが喉を圧迫し苦しく、身体に刺されていた点滴針が引っ張られて痛みが襲う。苦しみにもがけば手がベッドからズレ落ちる。ぷちぷちと針が引っ張られ肉を傷つける感覚に血の気が引いていく。痛みと共に恐怖が身体を襲った。

     落ちる!と思ったとき後ろの誰かに体を支えられ、落下を防いだようだった。

     激しい咳を繰り返す俺に、目の前の男は笑みを崩さぬままため息を溢した。

    「危ないですねぇ、気をつけてくださいよ。"ボス"」

     長い前髪を垂らし、先程見えた目元はすっぽりと隠れている。
     彼に"ボス"と言われて、何故だかそれが自分のことだとすぐに理解した。自分の名前も思い出せないというのに。

    「…ボス…」

     そう呟けば、男はきょとんと此方を見る。

    「ええ、"ボス"は貴方ですよ。どうされたのですか?」

     いや…と首を小さく横に振れば、男は悲しそうに笑みを浮かべ「まだ混乱しているみたいですね。可哀想に」と、俺の髪を撫でた。

     男は俺に近づくと「話す前に、まずはこの邪魔な物をとってしまいましょう」と鼻のチューブを指先で優しく触れてから、慎重に引き抜いた。
     その苦しさにえずき咳き込む俺を一瞥し、男は点滴なども慣れた手付きで淡々とはずしていく。

     全て外し終わると男は腕を組んで俺を舐めるように見つめた後、背中を摩りながら「どこか苦しい所はありますか?"ボス"」と問う。
     俺は首を横に振って答え、「ここは、何処だ?」と問い返した。その問いに、男は「記憶がないんですか?」とまた驚き、俺はそれに頷いた。

    「ここはファミリーの地下処置室です。私の作業場でもありますね」

    「ファミリー…?」

     知っているはずの単語なのに、それが何かを思い出せずに首を傾げる。

    「マフィアですよ。反社会勢力、犯罪組織、そういった裏社会に生きる者達の集まりです。覚えてませんか?ベンガンサファミリーという名を」

     記憶を巡らせるがやはり何も出てこない。
     首を横に振れば、クラッドは「ふむ…何も覚えていないか……それはそれで残念ですね」と呟いた。

    「残念って、…なんだ?」

    「そりゃあそうですよ、焦がれる我らが愛しの"ボス"に忘れられたんです。当然じゃないですか」

     男は口角を上げてそう返した。

     微笑を崩すことなくベッドに腰掛けると「ゆっくり思い出していきましょうね」と、俺の髪を撫でるように耳にかける。

    「きっと、襲撃により頭を強く打ったせいですね」

     恐らく、俺よりも年下であろう男に、まるで子供をあやすかのように撫でられている。
     心のどこかで、不愉快だと、思った。

    「大丈夫、目覚めた貴方を導く準備は、皆、出来ていますから」

     至近距離から見えた彼の目は、やはりターコイズの色をしていた。冷気を含むようなその青緑の色は、真っ直ぐと俺に向けられていた。


    ――


     男は自己紹介をして、自身をクラッドと名乗り、俺を支える後ろの男をアラクネと紹介した。

     背も図体の大きいアラクネという男は、筋肉量の割には低体温だなと思った。
     彼は表情一つ動かさないためにクールな印象を最初は持っていたが、目が合うなり眉を下げて苦笑するところからしてアラクネは人見知りとみえる。

     何も覚えていない、何も知らない俺に、クラッドは一つずつ教えてくれた。

     まずはこの世界のことだ。
     世界中で戦争が勃発し、世界は荒れ果てた。長年に渡る無法地帯と化したこの世界の大陸で、人々は指導者を求めた。
     それにより起きたのがマフィアという組織であった。
     統治力を持つリーダー的存在が、同志を募り、力を合わせて迷う人々を救い出したのだ。

     イタリアから発祥した、マフィアファミリーの噂は世界中に広がり、皆がマフィアを目指し戦後の人々を導いてきた。

     チャイナマフィア、ジャパニーズマフィア、沢山のマフィアが各国で生まれ、この小国…イスラ王国に存在するベンガンサファミリーもかつてはその一つであったという。

     しかし、秩序とは腐敗するもの。
     数十年前に希望として見られたマフィアファミリーは、勢力を拡大するにつれてやがて犯罪組織と呼ばれ、恐怖の対象へと変わっていった。

     今ではマフィアの出生など関係なく、皆が富と権力を求めてマフィアとなっているという。
     マフィア同士による抗争も少なくなく、他国では戦争規模にまで膨れ上がっているものもあるという。

     そして次に、このベンガンサファミリーについてだ。

     構成員は三十人弱という心許ない人数である。が、ベンガンサファミリーの立地は市街地の中心部にある。
     レストラン、花屋、公園、住宅等が周りに存在する此処は周りに溶け込み、敵から見つかりにくい場所にあり、領民の監視網を潜り抜けて基地に到達するのは難しくもある。領民もベンガンサファミリーの一員のような扱いだ。その理由は、ベンガンサファミリーの構成員は市街地の領民と協力して暮らしているからだという。
     仕事も育児もどんな事でも領民の為に手伝うのが、ベンガンサファミリーだという。
     そのため、市街地の住民はベンガンサファミリーに協力的であり、守り守られの仕組みになっているそうだ。

     その上、この施設の建物はマフィアの建物と呼ぶには些か古臭い見た目をしているようで、「近所の子供達にはお化け屋敷と呼ばれたりしているんですよ」とクラッドは笑って言っていた。
     お化け屋敷、その呼び名の由来が建物だけではないのではないか。と彼を見て思ったが、言葉を飲み込み、その先を催促した。

     このイスラ王国は王宮国家で、その皇族が住まうのは国の北西の山上に位置する。
     数十年前に起きた戦争での王は独裁政権を強いて、国民の自由を無くし完璧な統治をしていたと歴史にあるようだが、今では見る影もなく、王の統治は疎かである。国民は自由を手に入れたが、代わりに国内は無法地帯となっている所が多数ある。国の兵、警察などはその殆どが王宮を守る為にしか使われておらず、犯罪件数や死亡者数などは後を絶えることがない。

     では、国民を守るのは誰なのか?という疑問が浮かぶが、この国ではその役目を担うのがマフィアである。
     ここは、昔の成り立ちに沿っているのだなと感心した。

    「国民を守るのはベンガンサファミリーだけか?この少人数でか?」

     そう問えば、クラッドは「いいえ」と首を横に振る。

    「先程説明しましたがマフィアというものは、ここ最近では多く存在します。それはこの国でも例外ではなく、小さいながらもマフィアを名乗る者達がいるんですよ」

    「なら、みんなで国を守っていると…?」

    「大雑把に言えばそうですね。ですが、協力関係であるわけではありません。皆、それぞれの縄張りがあるので。ベンガンサファミリーでいえば、この南西部の港付近…とかね?」

    「なんで争う必要がある?」

    「先程説明したように、マフィアになる者というものは富と権力を求めてなるのです。国民を守るマフィアは、国から援助を受けます。時には、汚い仕事を任せられることもあり、国に贔屓にしてもらえれば仕事をした分、報酬が支払われる。ならば、別のマフィアを潰し殺してしまえば、その報酬は全て自分の懐に入る……でしょ?」

    「国民を守るマフィアは皆敵同士というわけか」

    「ええ。縄張りを広げる抗争も最近は多いですよ。幸い、私達は少し大きな組織なので狙われる事は少ないですが」

    苦笑するクラッドに、他のマフィアは?と聞けば、クラッドは眉を少し顰めてその名を口にする。

    「ドローガファミリー。この国で一番大きなマフィア組織です」

    「この国で一番?それはすごいな…」

    「…ええ、ほんとに。この国だけならず他の国にも手を伸ばし、莫大な富を得ています。この国に大きな病院等をつくり貢献したことにより、王様や権力者達からも一目置かれているようです」

     足の上で手を組んだクラッドは、少し首を傾げ「ドローガファミリーの記憶はありますか?」と俺に問いかける。
     もちろん、俺は首を横に振った。

    「何も覚えていないんだよ、悪いな」

    「いいえ。ただ、"ボス"が記憶を無くされたのはドローガファミリーの襲撃によるものでしたから」

     この国で一番大きなマフィアはそのファミリーだと言っていた。
     次に大きいのがここベンガンサファミリー。
     だとすれば、この両ファミリーが抗争をしていてもおかしくはない話だ。
     そして、ボスの俺がやられたところをみれば、その抗争はベンガンサファミリーの敗北に終わったのだろう。

    「…俺たちは負けたんだな?」

     そう聞けば、クラッドは静かに頷いた。

     いったい何があったんだ?と聞けば、マフィア同士の抗争で俺は重傷を負ったという。爆発による熱傷を負い、吹き飛んだ拍子に頭に強い衝撃が加わった為に記憶障害が起きているという。
     どおりで、頭がこんがらがっているはずだ。と一人で納得した。

     土地は守り切ることが出来たが、ベンガンサファミリーの構成員は死傷者も多く、また、幹部数名、構成員数名が敵のファミリーに攫われたという。

    「攫ってどうするんだ?」

    「ドローガファミリーは領地民にも悪事を働かせ使い捨ての駒にしているという噂ですので、恐らく私達のメンバーもそうさせられているんだと思います」

    「救出の目処は?」

     クラッドは微笑し頷き「ええ、勿論」と返す。

    「"ボス"が眠っている間、ウィッチ達諜報員に調べさせました。ドローガは世界屈指の麻薬カルテルです。この国のドローガ領地にも麻薬製造場が存在していて、捕まった仲間達はそこに居ると判明しました」

    「当分は、製造場の破壊と仲間の奪還が仕事になるってことだな」

    「ええ。麻薬を使用した強制労働を強いられているという情報も入ってきてますが…、"ボス"が共に助けに行ってくだされば恐らく仲間も正気を戻し、鼓舞されるでしょう。此方に帰って来れるよう立ち上がるはずです。解毒薬の注射は必要になるでしょうがね。まぁ……ですが、無理をしないでくださいね…?」

     クラッドはそう言うと、顔を少し上げ俺の後ろを一度見て「アラクネも心配しますから」と苦笑する。

    「アラクネ…?」

     そっと後ろをみれば、アラクネと目が合う。

     何故、アラクネだけ名指しした?俺とアラクネの間に何かあったのか?
     アラクネは、俺と同じ茶髪に褐色肌の二十代の青年だ。どことなく雰囲気が似ているが、この事と関係しているのだろうか。

     そう疑問に思い考えていれば、「その子のことも覚えていないんですか?」と聞くので、頷き返す。

    「その子はアラクネ。貴方の顔に似ているでしょう?だから、影武者役です。でも、今回はその子を使う前に貴方が傷を負ってしまったのですが…」

     クラッドは、はぁ…と額に手をやり、態とらしくため息をついた。後ろの男、アラクネは「ごめんなさい…」と舌足らずな声で謝る。

     初めて声を聴いたが、子供のような喋り方に眉を顰める。舌が短いのか、それとも他の理由か。
    マフィアの構成員ならば、舌を切られている者も負傷してる者も少なくないだろう。

     「いや、大丈夫だ」と返せば、嬉しそうに微笑んだ。やめてくれ、そんな体格でそんな顔をするんじゃない。

     俺は視線を前に戻すと、クラッドから聞いた話を頭の中で考える。
     記憶を失い、いろいろな事を知った。
     だが、まだ少ない。まだボスとして活動できるだけの知識も経験もない。

    「まだ、情報が少ないな」

     無意識に俺の口から呟きが溢れる。
     俺はクラッドの名を呼んだ。

    「はい?」

    「俺にはまだ情報が足りない。協力してくれるな?」

     いつまでも寝てはいられない。

     俺はボスなのだから。

    「ええ、勿論。"ボス"の記憶が戻るまで、幾らでも」

    ――――

    2
     ボスとして復帰してから、毎日目まぐるしい日々が続いていた。
     クラッド、アラクネ、ウィッチ等のベンガンサファミリーの部下達の協力もあって、やっとボスとしての活動を本格的に開始しはじめたのが夏になり始めた頃。
     記憶はまだ戻らないが、それでも俺の後ろを行くと覚悟を見せてくれた仲間達には感謝をしている。
     おかえりパーティーを開こうと提案した仲間もいて、クラッドも悪ノリし、領民を含めた盛大なパーティーが開かれたりもした。

     とても心強い仲間だ。そう思うと同時に、この仲間、このファミリーの心地良さも感じる。
     次こそは、このファミリーを守り抜き、因縁の敵のファミリーに勝つのだ。俺はそう強く決心した。

     ふと窓際をみれば、ボールを持ったやんちゃ坊主が二人、窓から此方を見ていた。兄弟だろうか、似た顔をしている。笑みを浮かべて手を振れば、やんちゃ坊主は顔を見合わせて何かを話した後、笑顔で此方に手を振って走り去った。
     開けられた窓から、先程の男の子達の笑い声と、ボールの蹴る音が入ってくる。

     市街地の中心部にあるベンガンサファミリーの基地周辺はいつも賑やかだ。商売の声、子供の声、沢山の声が基地に入る。
     領地住民の様子を見に初めて外に出た時は、皆が俺をボスと慕い驚いた。が、とても誇らしくもあった。

     無意識に口元が緩み、口角が上がる。
     目の前の書類へと再度意識を集中させる。

     ここ最近は執務に追われる日々だ。


     その時、ノック音がして「大変そうですね」とクラッドが顔を出した。

     「手伝いますよ」と、書類を確認してから部屋の椅子に腰掛ける。

     このクラッドという男は、俺が目覚めた時から常に側に控え、何かと良くしてくれている。
     今までの記憶があまりないので、正直、かなり助けられているのだ。誰に対しても少し距離感が近いこともが難点だが、良い奴だと思う。

    「仕事は大丈夫なのか?」と聞けば、「ええ、勿論」と笑顔で返された。

    「開発成果は上乗ですよ。麻薬も新しい種類を作りましたし、きっと売り上げも伸びていくでしょう」

    「思ったんだが、新種の麻薬を開発して……誰がその効果を試すんだ?」

    「このご時世、何を犠牲にしてでも麻薬が欲しいという人間は腐るほどいますからね。ですが、まぁ……よく協力してくれるのは仲の良いマフィアの方々ですね」

    俺はその言葉に驚いた。

    「ベンガンサと仲が良いマフィアがいるのか?」

     クラッドはきょとんと目を丸くさせた後「おや、言ってませんでしたか?」と首を傾げる。
     すみませんと苦笑をすると、そのマフィアを説明し始める。

    「ソーニャファミリー。彼らは主に、この国内で麻薬売買を行なっているマフィアです。ファミリーの構成員の殆どが麻薬常習者で頭はあまり良くないですが、麻薬の性能等を詳しくデータにして渡してくれるので助かってはいますね」

    「麻薬売買なら、敵のファミリーとも繋がってるんじゃないのか?」

    「ええ、そうでしょうね」

     俺は首を傾げる。

    「ええって……、裏切られる可能性はないのか?敵と繋がってるんだぞ」

    「私は、問題ないと思ってます。彼らはとても小さな田舎のファミリーです。ドローガのように人を人とも思わないマフィアに着こうとは思わないでしょう。死ぬまで中立、もしくは、どちらかを選べと言うならベンガンサではないですかね」

    「そいつらは……そんなに酷いファミリーなのか?」

     クラッドの髪の隙間から彼のターコイズの目が見える。静かに俺の目を見つめるその目は、ゆっくりと細められた。とても冷たい目をしていた。

    「……ええ」

     何故だか、俺は苛立ちを感じた。頭がモヤモヤとしてしまう。
     考えを振り払い、再度、作業へと集中する。


     二人とも作業に集中し、無言の時間が流れた。
     作業を始めてから四時間は経っただろうか。

     ふと、俺はある質問をクラッドにだした。

    「アラクネは、時々お前の事をパパと呼ぶな?親子なのか?」

     アラクネはクラッドをパパと呼ぶ。彼の舌足らずな言葉遣いも相まって不自然さが目を引くだろう。パパと呼ばれるクラッドも、彼を愛おしそうに見つめる事がある。
     側から見れば気味が悪いと思うかもしれないが、街の人々が気にしている様子はない。仲間達も当たり前の景色だと気にしていないのだ。
     そして、俺も何故だかそれを当たり前のように見ていた。
     だが、ふと思ったのだ。
     何故、それを当たり前のように見ていたのかと。
     一つ疑問に思えば、次から次へと疑問が湧いて出る。故に、俺は彼に問いかけた。

     俺のその問いにクラッドは苦笑し「まさか」と答える。「違いますよ」と首を振るクラッドに「そうか」と短く返す。

     まぁ、そりゃそうか…。このクラッドとあのアラクネという男は歳が同じぐらいにみえる。普通に考えて、子供なわけがない。
     何を馬鹿な事を考えていたんだ、と頭を振る。

     クラッドは長い前髪を髪にかける。少し彼の隠れていた瞳がはっきりと見えた。

    「本当に覚えていないんですね。親は貴方ですよ、ボス」

     突然の事実に、は…?と困惑の声を出すと「"ボス"の子ですよ」と真っ直ぐ見つめられそう言われた。

     たしかに、俺の年齢ならばアラクネが子でも違和感がないだろう。
     だが…。

    「わからんな…なぜだ?なぜ、お前を…その、パパと呼ぶ?」

    「ボスがそう命令したからです。私達はみんなボスの命令には忠実なんです」

    「俺が?…記憶にないな…記憶障害で失われたのか…?」

     クラッドは目を伏せ「そのようですね」と呟いた。その目は憂を含んでいたように思えた。
     彼はそれから何も語ることなく、書類へと視線をに戻した。

    ――


    3
     人の燃える焦げくさい臭いに、顔を顰める。
     目の前で焼かれていく敵ファミリーの兵士達を見つめていた。重ねられ、一気に燃やされた兵士達はまるでゴミのようだと、少しばかりの憐れみを覚えた。

     丸焦げになった死体の一つが山から崩れ落ち、足元へと転がり落ちる。
     辛うじて残る青緑の瞳が此方を向き、俺を見つめているようで、そっと目を逸らした。
     どこか既視感のあるこの光景だと思えた。マフィアとして活動していれば、焼死体の一つや二つは見ているはずだ。だが、何故だか気になって仕方がない。誰か大事な人を亡くしたかのような、忘れたくない記憶の一部のように頭が思い出せと言っているようだ。俺はそれを振り払うようにして、その場を後にした。

     此処は、元は敵ファミリーの麻薬アジトの一つだった。だが、今は俺達ベンガンサファミリーのアジトになっている。
     理由は一つ。数時間前、俺達ベンガンサがアジトを襲撃し、占拠したからだ。
     先程見た死体の山は、此処で死んでいった敵ファミリーの兵士たちである。


     少し歩けば、敵ファミリーの幹部が麻薬製造所にしていた工場へと辿り着く。
     そこの入り口で、ウィッチは仲間に指示を出していた。麻薬の回収、死体の焼却、民間人の解放など、手際よく行なっている。

    「ウィッチ、よくやってくれた。敵の幹部を一人倒すことが出来たな」

     名前を呼ばれたウィッチは、俺に気がつくと頭を下げた。

    「いえ、これも"ボス"の帰還により士気が上がった為です。全ては貴方の成果です」

     何を言うんだと笑って返せば、ウィッチはその朱色の瞳でじっと此方を見つめる。顔色一つ変える事もなく平然としているので居た堪れずため息を吐いた。

     ウィッチはポーカーフェイスだ。神経質で冗談もあまり通じない、クラッドとは真反対な取っ付きにくい相手である。
     しかも、普段男のなりをしているが実際には女であり、心は男のジェンダーレスだという。二人きりになった時、何を話したら良いのか、何が触れてはいけない話題なのかを考えるととても息苦しさを感じてしまう相手である。

    「部下への指示は完了したようだな。で、お前はこれから何をするんだ?」

    「俺はこれから本業に戻るつもりです」

    「あぁ、情報を集めるのか」

     ウィッチは頷いて、はい。と短く返した。

     ウィッチの本業は情報仕入れ係だ。諜報員として敵マフィアに潜入することもあれば、こういったアジト占拠後に情報を持ち帰る仕事もする。

     工場内へと視線をやれば、部下達が麻薬を鞄に詰め込んでいるのが見える。その近くの机には複数枚の紙が散らばっている。はっきりとは見えないが調合や他の幹部の名前が微かに見えた。恐らく、あれを今からかき集めるのだろう。

     ふと、部下一人の足元に死体が転がっているのが目に入る。

    「あの死体は?」

    「あれはドローガファミリーの幹部、ナハト・ブミハエルです。あそこの山が焼け終わったら見せしめとして首を切り落とし、山上に飾るんです。そうすれば、民間人達にもよく分かるでしょうから。下半身は粉砕機に入れたのち、次の標的に送り付けます」

     思わず、随分と悪趣味だな…と呟けば、ウィッチは「これはボスの」と言いかけたのでその言葉を遮った。

    「分かってる、記憶を無くす前の俺の指示だって言うんだろ。分かってるさ」

     記憶がない分、些か残虐的な行動に心が痛むことがある。可哀想とは思わないが、惨たらしい事には目を背けてしまいそうになる。

    「部下からの報告では降伏した兵士がいると聞いたが、彼らはどこへ行った?」

    「降伏した兵士達は、車両に乗せてベンガンサのアジトへ送りました。そこで拘束し、監視していくつもりです。彼らが此方側へつく気持ちがあるようでしたら、ベンガンサファミリーへと迎え入れようと思うのですが…」

     如何致しますか?と聞かれ、俺は首を捻る。

    「裏切る可能性も出てくるだろう?」

    「ええ、ですから監視はするつもりです。ベンガンサファミリーは人員が少ない事が気がかりであると"ボス"は仰いましたよね?ですから、これならば人員の確保にもなるかと」

     ううん……と唸り、顎を摩り考える。
     確かに、三十人弱というのは少なすぎる。敵ファミリーは世界に手を広げる大組織だ。イスラ王国内にも大勢の構成員がいることだろう。
     今度、敵ファミリーと抗争をしていくのならばもっと人員は集めておきたいところではある。

     俺は一度頷いて「そうだな……」と呟いた。

    「寝返る奴は仲間に引き入れよう。だが、きつく監視し、少しでも怪しい真似をした者には尋問を」

    「はい」

    「手荒でも構わない。腕の一本や二本無くなったところで口がきけるならゲロも出せるだろう。その後は、仲間と連絡取れないようきっちり処分しろ。バラして海にでも捨てればいい」

     ウィッチは「はい」と顔色ひとつ変えることなく返事をした。
     自分でも残酷なことを言っていると自覚はあるが、こういう事をすらすらと口に出せるのなら……先程の指示も本当に俺が出したものなのだろろうなと一人納得した。

    「寝返らなかった者達は如何致しましょうか?」

    「そうだな……、クラッドは何か言っていたか?」

     そう聞けばウィッチは、決められた答えかのように「クラッドさんはお金に変換すれば良いと」と答えた。

    「金に?」

    「はい。ベンガンサファミリーは、ドローガファミリーほどではありませんが麻薬の密輸も行っています。密輸場所は戦争地区ですから麻薬も高値で買い取られるでしょうし、生き残りは庸平として使ってもらえば良いと」

    「生き残りというと……?戦争地区ならば傭兵の受け入れの為にゲートは解放しているはずだろう?そんなにリスクがかかるものなのか?」

    「はい。傭兵の受け入れは行っていますが、指揮を下げかねない麻薬の勝手な密輸は国により禁止されています。国が買収し配布した分しか接種出来ないようになっているんです」

    「なら、誰が買い取るんだ?」

    「現地の麻薬カルテルです。戦争というものは正気ではやっていけません。他国から来た傭兵もそれは同じで、幾ら高値であろうと傭兵達はそれを買い求めるでしょう。だから、人間の腹に麻薬を仕込み、麻薬カルテルに引き渡すんです。そうすれば、彼らは麻薬を手に入れ、人員を国に出す奉仕もできる。彼らにとっては特の方が多いですね」

    「随分と惨たらしい作戦を思い付くものだな」

     ウィッチは少し首を傾げるが、すぐに佇まいを整えた。

    「これはあの方が昔から行っているやり方です。よく見る光景でしたので、"ボス"に言われるまで、その感覚を忘れていました」

    「昔から?」

    「はい。あの方は、人間の腹に物を隠すのが上手いんですよ」

    そう言われ、確かにそうだった気がする。と思えた。なぜか、どこかで聞いたことのある話だと思ったのだ。

    「そうか……。だが、あいつの手は空いているのか?」

    「ええ、作業をするだけの時間はあると仰ってました。それか……、もう少し簡単に金にするなら、臓器売買として他国に流す方法もあります。私はどちらの方法でも良いかと思いますが……どうされますか?」

    「なら、最初の案でいこう。そっちの方が入る金は多少なりとも大きいだろう」

    「わかりました。クラッドさんに伝えておきます」

     ウィッチは「おい」と、忙しく動く構成員の一人を呼び止めて、先ほど話した内容を伝える。
     「クラッドさんに、寝返らなかった者達を……」と説明するのを聞き流し、俺はやたらと目に留まるナハト・ブミハエルの死体に近づき、覗き込んだ。
     何処かで見たことのある顔だと、ふと思った。
     誰かに空似だろうか。記憶を無くした俺には、それが誰だったかも分からないが……。

     部下に呼ばれ、振り向いた。焦げ茶色の髪をしたスネークが立っていた。
     襲撃作戦のおりに、ウィッチ達先陣部隊が取り残した残党を一人で殲滅したこの男は、まだ新人でファミリーに入って数年しか経っていないというのだから驚きだ。クラッドが手塩にかけて育てたと言っていただけのこともあり、どこかクラッドに似た雰囲気もあるが、正直なところクラッドよりも好青年である。
     スネークは投げナイフを使った戦闘を得意とする。彼の使うナイフには毒が仕込まれている。その毒はクラッドが調合したもので、即効性の効力の強いものだ。
     先の戦闘でも、彼は敵の急所である大動脈を確実に狙い、素早く確実に倒していった。それを二十前半という若さで、最も簡単に行っているのだから本当に新人なのかと疑いたくもなる。
     以前、それを褒めれば嬉しそうに頬を染めて感謝を述べていた事を思い出した。

     俺が微笑を浮かべると、ウリエルは不思議そうに首を傾げて「"ボス"?」と、問いかけた。俺はそれに首を横に振って、なんでもないと答えた。

    「そうですか。もしも、何か思い出した事がありましたら仰ってくださいね」

     微笑む彼に、あぁ。と返事を返して、彼の誘導により車に乗り込む。これからベンガンサファミリーの本拠地に帰還することになる。

    「出してくれ」

     運転席に座るスネークにそう伝える。頷いた彼は前方を向き、車は動きだした。

     今、俺達がいるのは北部のヤーバルハの山上。ここは敵ファミリーの領内だ。南西部の港付近にあるベンガンサファミリーの本拠地からは車で七時間程かかる場所にある。
     俺たちは、兼ねてから計画されていた仲間を救助する作戦を決行している。
     北部にあるヤーバルハ山はその全てがドローガの領地であり、そこは麻薬製造場所として使われている。戦前は工業地帯として栄え、未だにそこに住む人も多く、彼らは当時から残るその建物等をそのまま使い、領地に住む人々を幹部数名、構成員数名で監視、暴行を駆使して無理矢理働かせて麻薬を製造している。

     車内の窓に映る景色は殆どが木であるが、その中に幾つか畑がみえる。鬱蒼と緑を生い茂らせる其処が大麻草だ。
     その近くには民家もあり、彼らはその葉に水を与え、剪定している。子供達はその近くで追いかけっこをしていた。彼らの見た目は、俺達の領民よりも貧相だ。

     とても貧相な見た目だ。と思ったことをそのまま口に出せば、同意の声をスネークが発した。

    「ドローガファミリーの本拠地がある北東の貧民街に比べれば、此処では狩りが出来るので食糧に困ることがない分まだまだ健康的な方だといえます。ですが、それでも僕達の領とは天と地の差があるように見えますね」

    「あぁ。俺たちの領がどれだけ豊かが分かるな」

     俺がそう言うとスネークはううん……と声を漏らす。

    「それは少し違いますよ、"ボス"。僕達の領は決して豊かではありません。あそこで生まれ育った僕が言うんです間違いありませんよ。港付近に領がある事が幸いして食べ物には困りませんが、それでも領民も僕達も今生きていくのに精一杯な現状です」

     スネークは「ただ、」と続ける。

    「初代ボスが掲げた絶対的な規約が存在し、それは僕達下の者だけではなくボスにも適用されていて…」

    「絶対的な規約?」

    「はい。ベンガンサファミリーのボスには、"領民を含めたファミリーを愛さなければならない"。という規約があります。ドローガファミリーは全ての富を国王、権力者、そして己自身にしか配当せず、その為に貧民街の領民達は飢え苦しんでいるのが現状です。ですが、僕達は初代が作った絶対的な規約……そのおかげで、幹部、構成員はボスに愛され、領民は厳しいながらも真っ当な生活を送る事が出来ているんです」

     そこまで言うと、ふふ。と声を漏らし「でも、今の"ボス"はご存知なかったかもしれないですね」と冗談めかしく笑った。
     その通りだ。俺は何も覚えていない。覚えていないが為に、ファミリーに申し訳なさが募っていく。
     「そうだな……すまない……」と謝罪をすれば、彼は「あ!そんな……!謝らないでください!」と慌て出す。

    「"ボス"が謝る必要はありませんよ。クラッドさんが言う通り、ちゃんと思い出して頂けたら僕達はそれで満足なんですから。僕の方こそ、調子に乗ってしまい……申し訳ありませんでした……」

    「……いや、気にしなくていい。記憶がない分、教えてもらえるのは有難いことだ。ただ、な……」

    「ただ?」

    「時々思うんだ。俺が全てを思い出した時……果たして前のようにお前達を導くことが出来るのか、とな。前の俺は……自惚に聞こえるかもしれないが、本当に優秀な奴だったと思う。今の俺では真似出来ないような残酷な事も全て計算されたもので、マフィアのボスとして相応しい対応だろう。だが、果たして俺にそれが出来るのか……?」

     黙って俺の言葉に耳を傾けていたスネークに、お前はどう思うかと聞けば、彼は言葉を詰まらせた。

    「僕にはまだよく分かりません。マフィアに足を踏み入れて、まだ日が浅いですから……。ただ、そんな僕が言える事があるとすれば、"ボス"は貴方らしく居て頂ければ良いということです。別の誰になるのではなく、貴方は貴方らしく」

    「貴方が他の誰かに成り代わる事など不可能なのですから」と微笑するスネークに、そうか……と返す。
     俺は俺らしく。その言葉に、思い悩んでいた重荷が少し軽くなったような気がした。自然と口角があるのが自分でも分かり、「そうだな」と椅子に背を預けて窓の外を見た。


     窓の外の景色は段々と下界に近づいており、先程までは遠くまで見渡せた景色も今はでは近くまでしか見えなくなっている。
     幹部を倒すまでに潰していった簡易基地の数カ所が視界に入り、景色と共に流れていった。
     簡易基地の殆どは、敵ファミリーの構成員……つまり下っ端達の拠点だった。トタン作りの物や、物置小屋のような小さな木造のものなどがあり、それらの殆どは麻薬の袋詰め作業を行う場所だった。
     先程の工場内で横たわっていたナハト・ブミハエルは敵ファミリーの幹部であり、此処ら一体の責任者であった。

     ウィッチ達諜報員が尽力のもと、構成員と幹部が拠点とする場所を突き止めた。それがこのヤーバルハであり、俺たちが後倒すべき幹部は約七名。麻薬製造所数は二十三箇所あり、民間人を使った麻薬栽培所は八箇所存在する。そのどれにも幹部、構成員は存在するため、俺達が向かう場所はあと三十一箇所となる。

     長い道のりだ。だが、仲間を救う為、人として民間人をこのまま放っておくことも出来ない。
     なにより、麻薬製造所を潰してしまえば敵ファミリーに大きな打撃を与える事が出来るだろう。なんせ、このイスラ王国は他国よりも法が緩く、麻薬製造及び密輸、売買に関しては無法である。そのために、イスラ王国から出される麻薬はとても安価で高品質である為に、此処を拠点とし輸出することの方が多いのだ。それを断ち切れば、国内の敵ファミリーは勿論の事、同時に他国で動いている敵ファミリーも勢いを落とし、資源、資産共に衰退した彼等はこの弱肉強食の世界では格好の餌食となるだろう。
     イスラ王国では俺達に、他国の残党は現地のファミリーに潰されるのだ。
     
     明日もまた今日と同じ七時間程かけてこの場所に来ることになるだろう。気が遠くなるような、考えるだけで疲れが湧くような事ではあるが、やらなければならない事だ。俺は"ボス"なのだから。

    ――――


     昨日と同じ時間をかけて、俺達はまたヤーバルハ山に来た。だが、昨日と違うところは降り立ったのは麓ではなく、その一段上に位置する占拠した拠点だ。スネークの運転する車は、麓を抜けて、昨日占拠した拠点へと車を置いた。

     この場で一夜を過ごせば良いのではないか?と俺自身も思ったが、それはウィッチに却下された。
     此処は敵の領地であり、いつ敵が攻め入って来られてもおかしくない拠点。そんな場所に"ボス"である俺が居ては危険過ぎる。俺を護りきるだけの人員はベンガンサには居ないのだ。
     そのため、此処に残ったのは構成員である下っ端とそれを率いるウィッチ。そして、敵領の民間人を装う為に連れてこられたベンガンサ領の市街地の人間が数名だ。
     敵の亡骸から剥がした衣服を見に纏ったウィッチ達と、敵領の民間人を装った人達のおかげで敵ファミリーは占拠された事には未だ気がついていないようである。

     連れてきた市街地の人間は、女と子供が三人ずつだ。彼らはここの領民の服を見に纏い、掃除に洗濯に、大麻草に水をやっている。不気味なほど自然に溶け込んでいた。
     それを椅子に座って眺めていれば、ウィッチに声をかけられ顔を上げた。

    「"ボス"、此処はドローガの兵士しかいないところでしたが、次は俺達の仲間が囚われている所へと向かいます。そこは、"ボス"とアラクネが来てくだされば今回のような戦闘は避けられるかもしれません。もしもなったとしても、仲間の彼らが協力をしてくれる筈です」

    「ベンガンサの仲間がいるとしても、敵の幹部や構成員も少なからずいる筈だ。そいつらとは戦闘になるだろう?」

     ウィッチは頷き「はい」と答えた。

    「ですが、此処のように人数は多くはないはずです。D.C.Dで洗脳されてる彼等は従順な僕でしょうから、必要最低限の見張りしか置いて居ないとみています」

     「見張りの排除には幹部数名とスネークが向かうため、彼等に偵察も任せてあります。なので、もう暫く――」と続けるウィッチの言葉を遮り、俺は「D.C.D……?」と眉を顰めた。
     それにウィッチは目を見開いて「……"ボス"?」と問いかける。

    「D.C.Dとは、……なんだ?」

     そう問いかけるとウィッチは、ぁ…っ、と声をこぼしたのち、勢いよく頭を下げた。

    「申し訳ございません!説明を忘れていました……!」

    「いや、謝罪はいい。それで、D.C.Dとはなんだ?」

    「D.C.Dというのは――」

     ウィッチがいうには、D.C.Dは麻薬の一種で、この国でのみ採れる葉から作られ、敵ファミリーが製造したブランドドラッグだ。これのおかげで敵ファミリーは世界に手を伸ばす事が出来たのだという。
     D.C.Dは高次脳機能を著しく下げる効果があり、一時的な記憶喪失を引き起こす。その空いた隙間に命令を組み込むことで、接種した者を洗脳状態にするのだという。

    「ですので、囚われている彼等はD.C.Dの洗脳により働かされているはずです。接種を重ねるたびに記憶の喪失も大きくなって行く為、彼らの中にはそれに気付いてない者もいる可能性がありますが……」

    「なら、どうする?俺達を仲間だと忘れている者もいるかもしれないんじゃないのか?」

    はい。と頷いたウィッチは、懐から薬瓶を取り出した。

    「ですので、この解毒薬を投与します。これはD.C.Dを中和し洗脳を解除する効果がありますので」

    えーーん、ここまで〜
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