Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    Σフレーム

    ちまちま

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 61

    Σフレーム

    ☆quiet follow

    生還アーサー×拗らせ耕平くん

    ※ガッツリモブ先輩が喋る

    ア耕小話アーサーが帰還した。
    その一報は地下施設で日夜研究に明け暮れる耕平の元に矢のごとく届いた。情報漏洩を防止するため電波の入らない特殊な構造。一見して周りをコンクリート壁が見渡す限り続くその部屋に息を切らしながら他の研究員が慌ただしく入って来た時は再びの襲来かと身構えたがどうにも違ったようで。
    「生死不明だったミクロマンが生還し、今コチラに向かっている」
    と、興奮気味に語る自分よりも年嵩らしい彼は歓喜に震えていた。早く上に上がって来いとそれだけ告げて走り去っていく後ろ姿を見送りながら耕平は静かに傍にあったイスに腰を下ろした。
    「……なんだ、」
    凪いだ水面のように耕平は穏やかだ。先程の発言からして巨石を投げ入れられて通常なら波風なんてレベルでは無い程に荒波が己の心を支配していたはず。それどころか初めから水なんて無かったかのように耕平の内側は空に近かった。
    「……あーぁ」
    ギシッと音を立てながら背もたれに寄り掛かり虚空を見つめる。全身から力が抜けたかのようにだらんとだらしなく手足を投げる。どうせ所内は件の話で持ち切りだし上は今頃大騒ぎだろう。別の施設や訓練所にいる裕太や麻美にも話はいっているに違いない。だというのに自分の明日は既にやる気を失っている。
    心は虚に包まれてそれ以上もそれ以外も無かった。

    ~数ヶ月後

    最近代わる代わるやって来る人物が多い。研究に関わる職員は当たり前だが、基本ここは耕平の私的な研究室であり立ち入る人物なんて指折り数える程度で済んでいた。それがあの一件を気に増加したのだ。理由は言わずもがな帰還したミクロマン……アーサーの話を聞きたくて、だ。彼に関すること、いうかミクロマンについての詳細なデータは開示されていない。勿論存在こそは肯定されているが公的には国家機密であるし彼らが地球の危機を救ってからそれなりの時間を経ている。その間新しい人材も入れ代わり立ち代わり来ているので実際に親交のあった耕平は格好の情報源だ。
    とはいえ……

    彼の好きな物はなにか?
    どんな異性がタイプか?
    胸と尻どっち派か?

    などなどおよそ彼自身についての質問に耕平は辟易しとうとう分厚い開閉扉に
    “当研究に関係のない人物の入室を禁ず”
    張り紙をする羽目に。

    「はァー」
    「おいおい世界を救った立役者がこれしきでため息なんて着くなよ」
    「誰のせいだと思ってんすか先輩」
    「まぁ俺か?」
    「半分当たってますね……」
    「うわ、割と責任重かったな」

    無駄話に花を咲かせることも無く先輩は上での話を事細かに教えてくれた。悪気は無かったにせよ責任は感じているのだろう。度々の来訪者に耕平とミクロマンの関係をペラってしまったのは他でもない先輩なのだから。

    「─── ってかミクロマンって美形しか居ないのかよ。ありゃ女が群がる訳だ」
    「……」
    「いやモテなさそうなのもいたな、3枚目のやつとか」
    「先輩3番のモニターエラー吐いてます」
    「おっと、」

    すまんすまんと手馴れた手つきでエラー箇所を修正していく。先輩の話にずっと聞き手に徹していた耕平だったが不意に投げ掛けられた言葉にカチカチとマウスを動かしていた手が止まる。

    「で、お前はいつ会いに行ってやるんだ?」
    「はぁ……」
    「はぁじゃないだろう、はぁじゃ。主任に聞いたぞ仲良かったって」
    「……」
    「主任だってなんで上に上がって来ないのか不思議がってたぞ」
    「今ちょっと目が離せないんで」
    「だったら俺に任して行けばいいだろ」
    「先輩」

    ざあざあと砂嵐のテレビの音を聞かされているみたいで落ち着かない。テレビなら電源を引っこ抜けばいいが先輩はそうもいかないのでこれは妥協案。

    「ちょっとトイレ行ってきます」



    「(今更どの面下げて会えって言うんだよ)」

    君が犠牲になってくれて地球は助かりました、ありがとうってか?
    とうの昔に昇華しきったと思っていたドロドロとした感情は実の所飲み下せておらず未だ喉の辺りでつかえていたらしい。じわじわ這い上がってくるような感触に反吐が出る。どんなに強がっても過去は耕平を捉えて離さない。誰が悪いといえばアクロイヤーには違いないのだがそんな事実ですら一般人には預かり知らぬこと。自分達以外に誰にも顧みられること無くただ地球を愛しく思ってくれた遠い星の小さな青年の犠牲により今日の平和を得たのだ。それを尊い犠牲などと片付ける気は毛頭なくのうのうと生きている己を憎んだ程彼に対して合わせる顔が無かった。
    勢いに任せて壁を殴る。有事を想定して作られている為か人の力如きでどうなる訳でもない。ドッと鈍く短い音が僅かに鳴っただけで耕平の人差し指の第2関節からは鮮血が溢れ出す。少々勢いが余って皮が裂けたらしい。どくどくと心音に合わせて流れていく赤いそれを見つめながら当然の報いだと自分を罰っした。

    「耕平?」

    誰もいない筈の通路からありえない声で呼ばれた。正確には有り得るが今ここに来ることは困難な人物。先輩の話では相手方もしきりに会いたがっているそうだが上で大概誰かしらに絡まれている様子で耕平のいる場所に行きたくても生来の真面目さが仇になって相手を無下にできないのだとかなんとか。あれは真面目すぎると先輩にすら苦笑されていた彼。なら今ここに居るのは何故なのだ。

    「……」
    「待ってくれ怪我してるじゃないか!」
    「……」
    「耕平……?」

    相手もどうしたものかと狼狽えているのが振り返らずとも空気で分かった。
    頭がぼぅっとする。当たり前だが出血量が多くてでは無い。確かに床に血痕ができてはいたがどう見ても致死量には見えず単に強い怒りの後の急な感情乱高下。それにより一時的に思考回路がおバグり召されてる。なら振り向けないのは当然の仕様だと胸を張りたい。
    張りたいのに、

    「ッ!」
    「話は後にしよう先ずは君の手当が先だ」

    なんの言葉も発さない耕平に焦れたのか怪我をしていない手を引きズカズカと来たであろう道を往くアーサー。力強く握られた手は毛頭離す気は無いのだと暗に語られているようで半ば引きづられる耕平に振りほどく気力さえ無かった。

    戻ってきたかと振り向いた先輩の顔はそれは滑稽ではあったが状況を把握すると救急キットはデスクの引き出しにあると告げると早々に何処かへ行ってしまった。正直2人きりになるのを避けたくて恨みがましく彼を睨んだが何処吹く風とばかり彼は行ったのだ。そうして実に15年振りの再会と相成ったのだが2人の空気は何処と無く重くて居心地が悪い。
    初めこそ大したことは無い自分でやると手当を拒否したがアーサーの有無を言わさない雰囲気に気圧され結局されるがままになっている。

    「……」
    「……」

    手当に集中するアーサーとそれをただ教授するだけの自分。まるでプアワーカーとそれを使役する雇い主との関係のようだと内心毒づく。見返りなんて何も無い、それなのに彼はこの星が好きだと言った。

    「よっし。終わったよ」
    「ありがと」
    「どういたしまして」

    にっこりと昔と変わらずに微笑むアーサーに虚をつかれた気持ちだ。無愛想に礼をしたがその時になって漸く自分の手を暖かく包み込む彼の手に違和感を覚えばっと彼の全身を見た。

    「?!」
    「あぁこの姿かい?事前に用意して貰ったんだ。流石に小さいままは色々と不便だからね」
    「な、に」

    サラリとなんでもないように語る彼に疑問は湧く一方だ。そうしてアーサーは更なる爆弾を投下してきた。

    「本日付で君の研究室配属になったんだ。ご指導ご鞭撻宜しくお願い致します久慈博士」
    「……俺博士号取ってないんだけど」

    早すぎる展開に頭は置いてきぼりを食らっている。そんな状況下でもうっすら乾いた笑いを浮かべられた自分を誰か褒めてくれ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💞💖💖💖👏❤👏👏💯
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    inuki111

    MEMOぽいぴく開設したので、試しに以前メモした🐈‍⬛の恩返しパロ(kis→isg♀→na)を置きます
    ボツにしたネタの供養ができるのでありがたい…センシティブもここに置く予定

    🐈‍⬛の恩返しパロ絶対かわいい
    na様がisg♀ちゃんをお姫様抱っこして塔の階段を駆け上がるシーンが見たい…isg♀ちゃんがna様の顔をじっと見てから照れちゃうやつ…
    こういうふんわりした雰囲気のおとぎ話みたいなストーリー大
    🐈‍⬛の恩返しパロisg♀→女子サッカー部エース。お人好しで行動力のある女子高生。ある日の下校中、工事現場の前を通りかかると、猫が積荷の下敷きになりそうになっていたので、サッカーボールを蹴って落ちてきた積荷の進路をズラすという神技を披露。猫のもとに駆け寄って怪我がないか撫で回していると、その高貴な感じの猫は後ろ足2本でisgの前に立ち、何とぷにぷにの肉球で顎クイをしてきた。「気に入った、お前を猫の国の王妃に…この俺、ミヒャエル・カイザー様の妃にしてやろうじゃないか」といきなり流暢な人間の言葉(しかも助けられた癖に上から目線)で喋りだし、isgはトンチキな状況に目をぱちくりする。終いには「今晩、必ず迎えに行く」と言って優雅な足取りで去っていった。その晩、猫の使者たちがisgの家を訪れて猫の王国に連れて行こうとするも、「猫のお嫁さんにはなれない」とisgは断固拒否。すると翌日、猫耳の生えた美麗な外国人が玄関先に現れて…?
    1228