とある民俗学者の研究資料【切っ掛け:元同級生の話】
えっ? 故郷の話? いや、まあ、あるにはあるんだけど……じゃあ、酒もいい感じに入ってるし、聞いてくれよ。
俺の地元は割と辺鄙なところというか、ぶっちゃけちゃうと田舎の方なんだ。列車の駅なんてなくて、役場の前に停まるバスが唯一の公共交通機関。といっても、隣町まで行けば電車には乗れるし、みんな車や自転車を持ってたから、そこに住んでる分にはそんなに不便じゃなかった。こっちに出てきてびっくりしたけどな。電車が十分に一本って、よく運営できるよな。
そんな俺の地元では、どこの家の子どもも絶対に聞く話がある。ほら、口笛を吹くと蛇が寄ってくるとか、夜に新品の靴を下ろす時は裏を汚せとか、なんかそういうやつ。雰囲気はそんな感じなんだけど、中身は昔話みたいなやつで、それっぽい言い方をすれば所謂民間伝承ってやつだ。
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