鋳型の夢「サニー、」
僕の方など見ずに、お父さんはそう言った。僕の隣に座っているマリがスイッチが切れたみたいに静かになって、僕は床に散らばった茶色い箸を見つめることしかできなかった。
「もうすぐ7つだろう。どうして箸一つまともに持てないんだ」
僕は固まったままその言葉を聞く。マリとお母さんの食器がカチャカチャと音を立てて、お父さんの箸がカタンと机に並んだ。
「マリはお前の歳には箸は勿論、ナイフとフォークも正しく使えたんだぞ。……いつまでもそうやって『出来ない』ことを免罪符に諦めるのか?」
さすがマリだ。僕とは違う。
「……ごめんなさい」
お父さんは溜息をついて立ち上がり、僕の腕を掴んで廊下まで引っ張っていく。ご飯を食べ切るまでは座っていなきゃいけないけれど、お父さんがこうして引っ張った時は別だ。
2336