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    krbslv_kan

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    いろいろ間違ってたので上げ直し

    矢辺琉気と藤波司 後編矢辺は手続きを終え再び施設へ住居を移し二人は平穏な日常を送っていたかに思えた。
    二年に上がり矢辺はこんな事を言い出した。

    「俺も藤波みたいに頭良くなりたい。」

    そして、同じ高校に行ってこれからも一緒にいたいと。

    その言葉に応えようと藤波は矢辺に勉強を教え始めた。中々簡単な道のりではなくテスト問題の漢字すら読めない矢辺に勉強を教える、ということは至難の業であり藤波や藤波の友達にも協力してもらいまずは普通に勉強できるところから、と半年ほど時間を費やした。

    その間、藤波と矢辺が下校する際不良に何回か絡まれることがあった。
    藤波と矢辺が潰した不良の噂が噂を呼び、拳銃を所持していて族を壊滅し回っているなどと言う誇張された噂によるものだった。
    次第に、藤波は喧嘩を買う様になり藤波が嫌っていた所謂不良という存在になりつつあった。

    学校に親が呼び出され、それをきっかけに両親と話し合いをすることになったが今でも成績は十分志望校圏内だったこと、学校の出席率も良かった為高校になって環境が変わったらこういうことは無くなる、無くすと話して今はこのままと結論が出た。

    この時は藤波自身も気づいていなかった。藤波は喧嘩を好む、矢辺を救った時の非日常感を自分が楽しんでいる事を。


    時が流れるのも早く藤波と矢辺は受験を控えていた。藤波は部活も引退し受験勉強も既に終えていた。
    後は矢辺だけだと必死に寝る間も惜しんで勉強を教えた。

    そして、受験の結果発表の日。
    藤波は合格した、が矢辺は補欠合格だった。
    このことに矢辺は落胆していたが漢字も書けなかった矢辺がここまで出来たことに藤波は柄にもなく泣いてしまった。
    数人は合格辞退者が出る。
    矢辺の元に合格通達が届いた時には二人で抱き合って喜んだ。


    そして始まる高校生活。
    二人は別々のクラスになったがそれまでと同じくらい仲が良かった。
    と、言うより矢辺があまりクラスに馴染めておらず藤波のクラスとよく行き来をしていた。
    そしてどこからともなくこんな噂が流れ始める。
    矢辺琉気と藤波司は不良だった。
    二人とも違和感を感じていた。
    今までいた中学はその地域の人間で、頭の良い悪いはさて置き気の合う人間が多かった。喧嘩をしている事を知ってもそれまでの信頼があり何の偏見もなく付き合ってくれていた。
    が、周りの人間は頭が良く大人しい人間が多く藤波は心を許せる人間がいないことに違和感を感じていた。

    次第に他の高校の不良達と連むことも多くなり夜中遊び歩くことなどが増え、喧嘩に明け暮れる毎日だった。藤波と矢辺は出席率が余りにも低かった。
    このことが原因で高校でも両親が呼び出されたが藤波は段々と家に帰らず矢辺の自宅に泊まった。その日をきっかけに藤波は家に帰ることが億劫となり矢辺の部屋に入り浸っていた。

    そして、二人は一人の少女に出会う。

    名前は大原稚優里。

    その少女は二人と同い年で不良達の間で話題になっていた存在。
    女だが男と喧嘩をしても強い、とまことしやかな噂が流れていた。

    矢辺は、生まれて初めて恋を知った。
    一目惚れだった。


    藤波と矢辺がよく連んでいたチームとその少女は共に行動をする様になり時には暴走族相手に喧嘩を売ったり仲間のOBからバイクを買い海に出かけたりと自由気ままに過ごしていた。

    藤波と矢辺がいたチームはとある伝で暴走族に入る事を勧められた。
    このまま放浪してもどこかで潰されるだけだと思い自然とリーダーとなった藤波がそれを受け入れる。



    そして、学年は二年に上がる。
    居心地が多少悪くともそれなりに出席していた二人は無事に進級し、またしても新たな出会いがあった。

    放課後二人で仲間の元へ向かっていると不良に絡まれている中学生を見つける。

    「助けてくれて…ありがとうございます。」

    「すっげー!めっちゃかっけー!本当に中坊?俺より背高えじゃん!」

    「矢辺、困ってんだろ。名前は?」

    「村雨幸です。」

    「気をつけろよ。意外とこの辺突っ張ってるヤンキー多いから。」

    「貴方達は、舘川高校の人ですよね。」

    「そだよー。俺ね俺ねめっちゃ頭悪かったんだけどさぁ、藤波に死ぬ気で勉強教えてもらってこの学校入れてんだー。」

    「藤波…?」

    「あ、そーそーこっちの高身長イケメンヤンキーが藤波。俺が矢辺琉気!よろしく!」

    「自己紹介すんな、どうせこれから関わるこたねえんだから。」

    「えー、でも寂しいじゃんいきなり出会ってすぐお別れなんて。」

    「何で舘川高校の人が不良なんか…?」

    「んー…俺は元々不良とか嫌いだったんだけどね。」

    「よく言うなー。藤波今じゃ俺達ん中でも一番タイマン好きだろ。オマケに超強い。」

    「うるせえ。ま、なんかこいつと中学の時出会って腐れ縁みたいな感じかな。」

    「俺一生藤波の脛齧り続けるって決めてるから。」

    「…良いですね。」

    「何で?」

    「俺、今学校がなんか楽しくなくて、親からも良い学校行けって塾とか通わされてて、自慢じゃないんですけど、この顔だから誰も本当の俺がどうなのかなんて興味がない…って思って信頼できる人なんて一人もいなくて。」

    「自慢やん。」

    「黙れ。」

    「二人、本当に仲良さそうですよね。少し、憧れます。」

    「…。」

    「…単車乗る?」

    「はい?」

    「ありあり!単車超楽しいぜ!マジで悩みなんか一瞬だから!」

    「………乗りたいです。」

    「よし。」


    三人はバイクを置いているところまで歩きながら色々な話をしていた。
    藤波は、少しこの村雨幸と言う少年が自分と似ていると感じた。親の教育、周りの目。

    その後二時間ほど藤波が村雨を後ろに乗せ三人はツーリングを楽しんだ。

    「そこのバイク、止まりなさい!」

    「藤波〜!まっぽり〜来ちゃった〜!」

    「飛ばすぞ!!しっかり捕まってろよ幸!!」

    「………はい!」





    「どうだった?」

    「楽しかったです。ヒヤヒヤしました…。」

    「ハハ、だよなー。次は矢辺の後ろ乗るか。こいつ単車の扱いだけは俺より上手いから。」

    「俺の運転は闘牛だぜ。覚悟しろよ?」

    「はは、楽しみにしてます。」



    村雨を送った藤波と矢辺は携帯のとある通知に気がつく。

    「稚優里がやばい。」

    それは藤波と矢辺が元々連んで一緒に暴走族に入った最初の仲間だった。




    血相を変え二人は指定された場所に向かう。
    仲間から話を聞けば大原稚優里が突然車から出てきた男二人に連れ去られ見失ったと。辺りを探し回ってもどこにも居ないと。

    「俺らじゃなくて総長に報告しろ!」

    「でも…。」

    「何だよ?」

    「…。」


    口をつぐんだ仲間に痺れを切らし、二人は所属する暴走族の総長の元へ向かった。

    「総長、ご無沙汰してます。早速で申し訳ないんですが稚優里が…。」

    「来たか、司。」

    「総長!稚優里どこにいるか知らねえか!?」

    「お前は黙ってろ琉気。」

    「!?」

    「…どう言うことですか?既に知っておられると?」

    「…まあな。稚優里の携帯から俺に電話があったんだよ。」

    「何と?」

    「"藤波司を今から指定する場所に一人で向かわせろ"ってな。」

    「…!」

    「藤波だけ…?何で?」

    「勿論お前一人だけ行かせるわけにはいかねえ。今メンバーを招集してる最中だ。」

    「一人で行きます。」

    「藤波!」

    「お前…どれだけ危険なことか分かってんのか?」

    「今このチームを危険に晒すわけにはいかない。今その要求を無視すればヘイトは俺だけじゃなくチーム全体に向く。」

    「…。」

    「貴方が怪我をしている今、チームへのダメージは致命的なものになる。抗争になるのは、貴方が完全に復活してからが良い。」

    「藤波!俺も行くぞ、俺だって稚優里を助けたい。」

    「……そうだな、お前は俺が行く場所の近くで待機してろ。」

    「…待機?」

    「あくまで向こうの要求を飲む。俺に何かあった時必ずお前の元に稚優里だけは届ける。稚優里を連れて帰れ。」

    「…わかった!」

    「そういうことで、総長、行ってきます。」

    「……司ァ!」

    「…はい。」

    「俺は、お前のことは特別に目ぇかけてる。俺になんかあった時はお前に俺の地位を譲りたいと思ってる。」

    「え…。」

    「帰ってこねえのは死んでも許さねえからな。」

    「………はい。」



    二人はバイクで指定された場所へ向かう。その周辺で藤波は矢辺に待機命令をし、何かがあったら電話で伝えると言葉を残しその場所を後にした。


    「やっと来たか………。」

    「…あんたは!」

    やっと来たかと藤波を見て喋った男は以前、矢辺と不良集団の関わりを失くす為に潰した集団のリーダーだった。

    「忘れたとは言わせねえぞ藤波司ァ。街でテメェを見かけた時は気が狂いそうになったよ。俺の足を拳銃で撃ち抜いた男がのうのうと生きてやがるとな。」

    「稚優里はどこだ?」

    「あ?口の聞き方がなってねぇなぁ。」

    「……稚優里は何処ですか。」

    「おら、出してやれ。」

    「ンーーーっ!!ンーーーっ!!」

    「…こいつを攫うのぁ手間取ったぜ…。どれだけ虐めても、暴れてた。」

    「稚優里…稚優里、本当にごめん…。」

    「ヒャハハハ!何もできねえだろ。だが俺は更に素晴らしい事を閃いた。お前の目の前で遊んでやればいいとな!」

    「ンーーーっ!!」

    「…やめろ!!」

    「おっと、動くな!」

    「!」

    男が取り出したのは、拳銃だった。
    藤波は反射的に手を上げその場で硬直した。

    「ヒヒ…動けねえだろうなぁ…なんせ本物の拳銃、だからな…。」

    「ンー!!」

    「うるせえなあ、おい、ガムテープ外せ。これからヤるんだ声が聴こえる方がいい。」

    「藤波!!私のことはいいから逃げて!!こいつら本当に強い!危ない!!」

    「余計なこと言うんじゃねぇ………っよ!!!」

    「うぁっ!!」

    「稚優里!」

    「あぁ…これからヤる女が傷だらけはいけねぇ。このくらいにしとかねえとなぁ…。」

    「…女に手を上げるなんてお前正気か?」

    「うるせえ、お前は見てるだけでいい。この女が壊される様をな。」

    「藤波…っ。」

    「稚優里、もう少しだけ我慢してくれ。」

    「えっ…。」

    「ふ、はははははは!!コイツ!!!最低だ!!女売りやがった!!誰が女に手を上げるなんて正気か?だ!!!」

    男は腹を抑え拳銃を下に向けた。
    瞬間、藤波は背中に隠していた火炎瓶に火を付けて男のいる方へ放った。

    「!?うああぁぁ!!熱いいいぃぃぃ!!」

    「稚優里!走るぞ!!」

    「…藤波っ…!」


    二人は藤波がバイクを停めているところまで走った。

    「稚優里、乗れ!!」

    「ああ!!」



    「追ってきてるか!?」

    「…きてる、恐らく仲間だ!!」

    「…。」


    二人は矢辺が待つコンビニまで向かった。


    「矢辺!!」

    「藤波!!稚優里は!?」

    「無事よ!」

    「稚優里いいぃぃ!!よかったああぁ!!」

    「感動の再会は後だ、矢辺稚優里を連れてアジトまでいけ!!」

    「!?藤波は!?」

    「アイツらの狙いは俺だ。方をつけてくる。」

    「でも…!」

    「追っ手が来ている、矢辺、稚優里を頼んだぞ!」

    「…………わかった!!稚優里早く!!」

    「………死なないでよ!」

    「ああ。」














    「火ぃ消えたか。」

    「はぁ…はぁ…藤波司テメェ…よくもやってくれたな。」

    「お前間抜け過ぎんだろ。銃口を向ける時は片時も狙いを定めておけ、脅しの意味がない。おまけに、消化の時銃の中の火薬が湿気ったみてえだな。」

    「うるせえうるせえうるせえ!!!!黙れ!!」

    「…これは全て俺達だけの問題だ。タイマンでケリつけようぜ、なぁ。豚小屋の飼育係さんよ。」

    「………!!!!上等だよコラ!!!!お前らは手ぇ出すなよ!!コイツは俺がブッ殺す!!!!」



    一方で、アジトに着いた矢辺と大原は無事を報告し二人でしゃがみ込んでいた。

    「稚優里、話って何…?」

    「うん、あのね…。」

    大原から話がある、とアジトから少し離れた場所に連れられた矢辺は淡い期待をしていた。

    「あたし、藤波のこと好きかもしんない。」

    「え」











    「はぁ………何とか、勝てたか…。」

    「………。」

    「おい、お前らコイツとタイマンでケリは着いた。…二度と稚優里に手ぇ出すんじゃねえぞ。」


    その場にいた誰もが圧倒される様な戦いが繰り広げられた後、藤波はアジトへ戻ろうとしたが帰る道中、視界が歪み事故を起こした。三日間昏睡状態になり全治二ヶ月と判断された。


    「…?」

    「司!目が覚めたのね!」

    「母さん…?」


    久しぶりの母は涙を流していた。それもそのはずだ、ここ半年殆ど家に帰ってない状態が続き顔を合わせなかった挙句、久々の連絡は息子が病院に運ばれた報告だったのだから。
    母親から泣きながら説教をされてる間、藤波は黙って話を聞いて居た。
    何故、自分は家に帰らなかったのだろう、今まで何をしていたのだろうと。

    入院から数日、藤波の元には目を覚ましたと聞き付けた総長が現れた。

    「司、本当にすまない。全て俺の責任だ…。」

    「貴方が謝ることは何もありません、俺が起こした問題だ。」

    「そうじゃない、そうじゃないんだ…。」

    「…?」

    「………矢辺は俺達のチームから脱退させた。」

    「は…?」


    突然の総長からの言葉に固まる。
    遡ること二日前、大原稚優里と矢辺が無事戻って来たと報告を受けた総長は藤波の帰りを待って居た。
    が、突然仲間に今すぐ来てくれと連絡がありアジトへ向かった。そこには縛られた矢辺と傷だらけで震えている大原稚優里の姿があった。

    「矢辺が、稚優里を襲って無理矢理ヤったらしい。」

    「なんで…そんなこと…。」

    「しかも暴力も振るってやがった。」

    「…?何故、矢辺は何故そんな事をしたんですか!?アイツは人一倍稚優里を助けたくて…!稚優里のことが好きだった筈だ!」

    「だからこそ、だろうな。」

    「は…?」

    「アイツが言ってたのは"汚れた女""クソビッチ""ずっと好きだったのに"それをずっと繰り返してた。」

    「…訳がわからない、稚優里が捕まったのは俺のせいで稚優里は何も悪くないのに。」

    「俺だってそう言ったさ。そうしたら泣きながら"藤波が好きなんておかしい"っつーのを言い出して暴れて たから一発沈めて施設に返した。」

    「………………。」

    「稚優里はチームを辞めるらしい。」

    「…。」

    「お前はどうする?」

    「俺は…」



    入院期間を経て藤波は通常通り学校に通い出した。

    そこには矢辺の姿があった。

    矢辺は藤波の姿を見ると嬉しそうに駆け寄って来て待ってたんだぞ、と軽快に言ってのけた。
    その態度に藤波は不信感を抱きあの時の話を聞いた。

    「俺が悪い訳ねえじゃん!全部あのクソ女のせいだよ。」

    「…。矢辺、自分のしたこと分かってないのか?」

    「だから俺が悪いって、何が?」

    その言葉に藤波は全ての感情を失った。
    今までの人生の疲労感が全て今この瞬間一気に押し寄せてきた様な気分だった。

    目の前の矢辺琉気という人間は自分の母親に危害を加えようとしたあの時から何も変わって居ないのだと。

    いや、変えられると思っていた自分が馬鹿だったのだと。
    結局、藤波も矢辺を変えると言いながら環境に流され自分が最も嫌っていた不良という道に進んでいたこと。
    全てが馬鹿に思えた。

    絶句したまま何も言えなくなった藤波を見てもそのまま矢辺は話を続けた。

    「見舞い行かなかったの怒ってんのかー?悪かったって、俺新しいチームにはいることになってめちゃくちゃコキ使われててさー。」

    藤波が、全てを諦めた瞬間だった。


    その後抜け殻の様に藤波は暴力に身を任せた。
    何も考えられない、ただただ相手を蹂躙するだけ。
    時には矢辺から連絡があるがそれも全て無視した。
    総長に、身を心配されながらそれでもやめなかった。
    あの時探した何かを求めて。

    そして矢辺は留年となり藤波は入院の件もあり学校側からの温情を受けて辛うじて進級した。


    そして、新入生として入学した彼に再会した。
    ちょうど一年前に助けた村雨だった。二人はあっという間に意気投合しその他の暴走族を蹂躙して回った。
    彼が、二人目の相棒だった。





    そして、矢辺が村雨を呼び出す。

    藤波は矢辺とのことについて矢辺が留年したこと以外何も話していなかった。

    何の不信感もなく村雨は矢辺について行った。


    「矢辺さん…?藤波さんと久しぶりにツーリングなんじゃ…。」

    「あぁ…ひひ、それ、嘘だよぉ…。」

    「矢辺さん…?」

    矢辺の背後には大人数の男。村雨は何かを悟りその場を離れようとするが、捕まり、意識を失った。

    そして、藤波の携帯に着信が来た。

    「幸?どうした?」

    「なんで…俺はずっと苗字だったのに村雨は名前なの?やっぱり俺のことなんてもう嫌いになったの?お前が悪いのに、全部お前が悪いのに。」

    「……矢辺か。何で幸の携帯からかけてる。」

    「あはぁ……やっと電話にでてくれたねぇ藤波…。兄貴がねぇ…?藤波と村雨が最近調子乗ってるからお前が連れて来いって言っててねぇ…。」

    「…何処だ。」

    「それでねぇ…兄貴優しいんだよ?誰かさんみたいに俺の連絡無視したりしないし、俺から女取らないし、寧ろ女の子紹介してくれたんだぁ…。あの子超ヨかったなァ…。」

    「何処だっつってんだろ。耳まで稚優里ん中に出したかクソ猿。」

    「黙れ黙れ黙れ黙れ!!!全部お前のせいだろ!!!そんなことを言って許されるって思ってんのか!?」

    「誰がお前に許せっつったよ。良いから幸に変われ。」

    「うぅっ…うっっ…うっ……酷いよぉ藤波ぃ…。俺にはお前しか居ないのにさぁ…何で俺のこと嫌いになっちゃったの?お見舞い行かなかったくらいでそんな怒らなくてもいいじゃんかぁ……。」

    「_____さん!俺は○○公園近くの倉庫です!」

    「っ!幸!」

    「黙れよ、お前。」


    その言葉を皮切りに電話が切れた。
    明らかに矢辺の様子がおかし過ぎる。
    元々情緒が安定している方では無いが行き過ぎている。その時藤波は思い出した、矢辺がクスリに手を出したという噂を。矢辺が新しく入ったチームの噂はいろいろ聞いて居た。クスリは勿論のこと、人を殺しているという噂もある。

    まさかな、と思いつつ村雨が叫んでいた場所へ向かう。
    バイクを走らせ例の建物が見えた。
    外からわかるほど人の声が聞こえ、何かを痛ぶっている音だった。
    その音に気がついた頃には藤波はその建物のドアからバイクで突っ込んだ。
    そして、村雨を取り囲む様に位置取っていた人間をバイクで振り払い村雨を乗せ矢辺の首根っこを掴みその場から離れた。


    そして、村雨を病院まで送り、矢辺を捕らえながら医者を待った。

    村雨は別室に運ばれ矢辺が暴れるのを抑えながら医者に聞いた。

    「コイツはクスリをやっているか?」

    金ならある、と手持ちの金を全て差し出し診察を依頼した。

    検査の結果矢辺の尿から薬物の成分が検出され、依存症だと診断された。ここから立ち直るのは難しく厳しく徹底しないと更生は不可能の段階だった。


    二人は、病院を立ち去った。











    「矢辺。」

    「藤波〜っ!久しぶりだよな〜っ!俺ずっと怒ってたって思ってのに二人でツーリングなんてさ〜!超楽しいんだけど!」

    「矢辺、俺たちが出会ったのは中学だったな。」

    「ひひ、それでさ今から何処行く?海かな?やっぱ稚優里とか誘っていきたいな〜!」

    「あの時、お前は何も知らない状態で、俺が色々教えてやってた。」

    「んぁー…なんか、藤波楽しくなさそう。何で?俺のこと好きなんだろ?」

    「あの時は、好きだったよ。でももう今はどうかわからない。」

    「んんー…。難しい話ー…。」

    「これで幸が目を覚めなかったりしたら俺は一生後悔する。」

    「へぇー…。」

    「俺、さっき気づいたんだ。俺が間違ってた。」

    「はぁ?」

    「俺がお前を変えれるなんて思ったから、俺は間違いに気づかず可笑しくなっていったんだ。」

    「藤波ぃー…、何言ってんのぉ…?難しい話わかんないんだって…。」

    「矢辺、俺とお前は、出会うべきじゃなかったんだよ。」

    「……………。」

    「全部、全部俺が間違ってた、だから、俺が今からすることも俺が間違った選択をした、唯それだけだ。」

    「藤波…?刃物…危ないよ…?しまって…?」

    「なあ、そうだろ、お前は、何も悪く無い。」

    「藤波、怖いよ、藤波。」

    「…じゃあな。」

    「ふじな」















    「…人はいるか。」

    「あんだい、坊主。……………おい、お前…。」

    「こいつの処理を頼みたいんだ。金ならある。相場はいくらくらいだ?払えなかったら後から振り込むから。」

    「おい、お前、どうやってここが分かった。」

    「どうやってって…こいつの族の頭がそういうのに詳しいかと思ってな。家に入って住所調べただけだ。ダチのフリして家に入れてもらうのは得意なんだよ。」

    「……………クスリやってんのか?」

    「やってない。こいつはやってたけどな。」

    「…………。」

    「そんなに疑わしいならここでしょんべんしてやろうか?医者はそれで見極めてた。」

    「……………まあ良い、先に金を寄越せ。」

    「助かるよ。」










    「お前、何でこいつをやったんだ。」

    「気づいたんだ、俺が悪い方向に行ってしまったのはこいつと出会った時からだった。」

    「それだけで?」

    「それだけじゃない。このまま生かしておいても更生の余地がない。誰も面倒を見る人がいない。」

    「…。」

    「母親への暴行未遂、知り合いの女への暴行と性的暴行、後輩への暴行、薬物使用及び所持。恐らくだが他の知らない女もこいつの被害に遭ってる。」

    「そりゃお前、こいつのチームの全員だろ。何故全員やらなかった。」

    「全て俺が決めたことから始まった間違いだ。俺とこいつ以外は関係ねえ。」

    「お前、やけにペラペラ喋るな。」

    「なん…だろうな。これでも驚いてるんだ、本当に自分がやったのかって。でも俺の手で殺したのにどうにも現実と思えないくらい何も感情が湧かない。寧ろ解放されてスッキリしてる。」

    「俺がサツに突き出したらどうする?」

    「しないな。今処理している時点で死体遺棄で同罪だ。あんたがムショ入りしたいなら俺に打つ手はないけど俺は普通に生きたいからここで殺し合いをするしか無い。」

    「…。」

    「その時はあんたを処理するしか無いな。俺に上手くできるかはまだわからないが。」

    「…。」

    「怒らないでほしい。正直俺はあんたに勝てる気がしない。」

    「怒ってねえが…お前程の男は久々に見たな。」

    「…?」

    「初めてなんだろう。どんなヤクザもんでも初めての時は血相変えて死体を見たら吐き出したりするもんだ。自分でやったってて言うのによ。それがお前、もしかしたら普段よりも饒舌なんじゃねえか?」

    「…。」

    「お前、そっちの筋のもんに向いてるよ。俺の揺さぶりにも全く動じず…お前右手の袖にナイフ仕掛けてあんだろ。」

    「…!」

    「勝てる気はしない、と言って油断させていざと言う時には…っつー魂胆か。恐ろしいなぁ。」

    「見抜かれてしまったならもう無駄だ。」

    「おぉい何してんだおめー遂に女だけじゃなく男もイケる様になったのか?」

    「…?」

    「おい、あんたは出てくんな。」

    「んだよ、俺が金出してやってるんだから少しくらい匿ってくれたって良いだろう。」

    「話がややこしくなる。」

    「あの人は?」

    「○○組の組長だ。」

    「…!それは…済まない、俺は貴方に謝らなければいけないことがある。」

    「………あぁ?」

    「五年程前、組員の誰かが拳銃をモデルガンにすり替えられてなかったか?」

    「五年……?あぁタツがそんなことを言ってた様な…。誰がやったって揉めたなァ。あの時は冷や汗かいたぜ。何でそんなこと知ってんだい。」

    「宮本達弘…だろう。」

    「…おいおいまさか。」

    「あの時俺はどうしても場を制圧できる武器が必要で、貴方の組員の家から拝借したんだ。」

    「っはははは!本当かいそりゃあ!?」

    「あのタツか?」

    「そうだそうだ、タツの奴がチャカが撃てねえっつって騒ぎ出してな。よく見りゃモデルガンだったんだよ。」

    「あの時は申し訳なかった。」

    「良いってことよ!たまげたなぁ、まさかそんな事だったとはねぇ。で、その拳銃盗んだ坊主がここに何の用だってんだい。」

    「おやっさん、あんたそれでいいのか?」

    「タツのチャカはすぐに元に戻ってた。ありゃ五年も前の話だ。ってこたぁ別にタツので殺した訳じゃぁねえんだろ?それだったらうちは関係ねえ。大方、ガキの戦争か。」

    「まあ、そんなところです。」

    「世界は狭いねぇ。どうだい、うちの組に入らねぇか。今側近のやつが負傷しててねぇ。お前さん程の頭が回って度胸がある奴を丁度探してたんだ。」

    「遠慮します。」

    「カカカッそんなに勢いよく断れるか。大したもんだ。」

    「俺には向いてないので。」

    「謙虚だねぇ。」

    「割るぞ、金の話だが…。」

    「オイオイ金は要らねぇだろう。どうせ俺の客と一緒に処理してんだろう?」

    「まぁそうだが…。」

    「既においちゃんが金は払ってる。お前さんこの金は持って帰りな。」

    「そんな、できません。」

    「こんなでけぇ金が動きゃ親御さんも怪しむだろう。バレねぇうちに懐にしまっきんさい。面白い話が聞けた歓談料だ。」

    「…お気遣い感謝します。だがそれは断らせてもらう。」


    「あ?」

    「…おいおい。度胸じゃねえ無謀だろうそりゃ。」

    「感謝しているのは本当だ。だがこれはこいつと一緒に働いていたバイト先で得た分の残り全額で、今回の事全てにケジメを付けるつもりで持って来た。俺が今まで悪さした分も含めて。」

    「…。」

    「おやっさん。」

    「第一、貴方にこの金を俺が払うかどうか決める権利はないはずだ。俺もこれからの人生真っ新で生きたい。これは出させてくれないか。」

    「坊主、人一人処理するってこたぁそんな簡単なことじゃねえ。たかが高校生のガキンチョが一生懸命働いた貯金じゃあ到底足りねえさ。」

    「…。」

    「その度胸を買ってその差額分は俺が埋めてやる。」

    「…ありがとう、だが、どうしてそこまでしてくれるんですか。」

    「…。」

    「俺は道を踏み外して間違いを起こしただけだ。俺は恩を受けるには到底値しない。」

    「坊主。名前は。」

    「藤波司。」

    「司君焼肉が好きか?寿司が好きか?」

    「?焼肉…ですかね。」

    「まあ奢ったりしねえけどな。」

    「!?」

    「カカカッおやっさん、そりゃあねぇや。」

    「仕返しだ、馬鹿野郎。今後は俺らみたいなのに名前を教えるんじゃねえぞ。本当の意味で足を洗いたいならな。」

    「…恩に着ます。」




    「珍しいな、おやっさんがあっさり生意気な奴を見逃すなんて。」

    「これ、見てみろ。」

    「…弾丸?一発だけ…?」

    「…!」

    「俺がお前に紹介されてる時コレを封筒に詰めてやがった。」

    「…。」

    「恐らくタツの銃で撃った分をどっかしらで入手して、俺がいなかったらタツの家にでも置いて帰るつもりだったんだろうなぁ。」

    「全てにケジメを…か。」

    「あそこまでの読経がある天才は稀有だ。俺たちみてぇなはみ出しモンよりもっと、社会に貢献ができるさ。あの男なら。」

    「そう…みたいだな。」














    一連の事件の後、藤波は通常通り家に戻った。

    それまでの藤波司とは打って変わって学校にはまじめに通う様になった。
    だが、それでも母親が望んだ大学へは今までの不良だった歴史が邪魔をして入れなかった。
    その際、両親が大学へ向かい多額の支援金を払い、学力も申し分ない為、その大学に入学することが叶った。

    大原稚優里には一度しか会っていない。
    村雨幸には退院したと同時にそれ以来一度も会っていない。





    そんな男が、夜の街を歩いている時ホストにならないか、と声をかけられるのはそう遠く無い話。
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