パティシエのタルタリヤと大学の先生な鍾離先生話③ぴぴぴ、とオーブンから響いたタイマー音に、あぁちょっとまって、と独り言を呟いて、右手の絞り袋に力を込める。左手を添えた回転台をゆっくりと回し、白いキャンバスに描くのは、薔薇の蕾だ。ぷっくりと丸く、大きさの整った蕾をいくつも縁に並べ、何も無かった世界をクリームの花で彩っていく。一瞬でも呼吸が乱れれば、全てが台無しになる、作業。手の震えなんて以ての外、息を止め、全神経を集中させるその作業は、緊張感と共に完成時の高揚感も味わえる、お気に入りの作業であった。
一周をローズバッドで囲み、真ん中には苺を甘く煮た物をならべて。仕上げに上から砕いたピスタチオを散らせば、最近人気のピスタチオと苺のケーキの完成だ。スポンジの合間には鮮やかな緑色のピスタチオクリームと苺ジャムを挟み、交互に緑と赤とが並ぶ断面も美しい。甘すぎないそれは、女性だけでなく男性にも人気があり、オレ自身もお気に入りのものだった。
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