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    meepoJlo

    @meepoJlo

    呪術の狗🍙棘 夢小説をこそこそ書いています。

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    5️⃣

    貴方の瞳に映った月を「お嬢さん、僕とデートしない?」

    聞き慣れた声に誘われて振り向けば、いつもの目隠しをした彼が居た。

    「悟さん…?」

    人差し指で黒の目隠しを持ち上げれば、綺麗なアクアブルーの瞳が唯を見る。

    「…今日は任務のはずじゃ…?」
    「え?うん。唯に会いたくて、秒で終わらせてきたよ」

    口の端を持ち上げて笑う彼の笑顔は、嘘か本当かわからない飄々としたものだったけれど。
    不意に伸ばされた彼の手は、有無を言わさず唯の手をそっと取り持ち上げる。
    そうだなぁ、と考える風に呟いた。

    「海の見える所に行こう」

    そう告げて、静かに笑った。



    月が輝く夜だった。満天の星空が、唯には“東京”と言う名のこの場所には似つかわしくないようにも思える。
    そよぐ夜風が気持ち良く頬を撫でて行った。誰も居ない浜辺には唯と悟の影がふたつあるだけで。
    何度か2人で訪れたこの場所は、今日もただ波の音だけが静かに響いていた。

    砂地に足を取られるが、握られた悟の手が唯を支えた。もうずっと握られたままのその手は、いつも温かくて大きい。唯の手をぎゅっと包み込む。

    「ねぇ、唯…」

    歩みを止めずに悟は夜空を見上げた。
    呼び掛けられた唯は、手を引かれるまま背の高い彼を見る。

    「月が綺麗ですね」

    悟は夜空を見上げたまま、ぽつりと呟く。
    月明かりに照らされたその綺麗な顔は、隠された瞳の奥でどこか遠くを見ているようだった。

    「…………?」

    唯は悟を見てその瞳を瞬く。珍しく丁寧な物言いに、僅かな違和感を感じた気がした。

    「…そうですね」

    呟いて、小さく頷いく。ちぐはぐな違和感を抱えながら、唯もその月を眺めるように夜空を見上げた。

    満天の星空に一際大きく輝く綺麗な月。
    その月は本当に、美しく綺麗で。

    ーー月が、綺麗。


    唯はその目を大きく見開く。
    あ、と小さく口の中で呟いた。


    ーー月が綺麗ですね。


    頭上でクスッと、笑う気配があった。長身の男性を見上げれば、彼は唯を見て優しく微笑む。

    「気付いた?」

    目隠しを片手で解けば、悟の白銀の髪が静かに落ちていった。アクアマリンの宝石のような瞳が、静かに唯を捉える。

    「覚えてる?僕たちが初めて会った日の事」

    悟は向き直り、吸い込まれそうなくらいに深い色の瞳は真っ直ぐに唯を見た。

    「ひとりぼっちで寂しがり屋な癖に、いつも頑張っちゃってさ」

    大きな手が、唯の頬を撫でて行く。

    「そんな唯を、守ってあげたくなっちゃった」

    悟は悪戯っぽく笑う。
    その存在を確かめるようにゆっくりと、温かな掌が唯の輪郭をなぞっていった。

    「好きですって最初に告白してくれたのは、唯の方だったね?」

    ただ唯だけを映す透明なその瞳から、目を逸らす事が出来ない。
    胸が大きく鳴った。

    「あの日もこんな風に月の綺麗な夜だった」

    温かな手が名残惜しそうに唯の頬を離れていく。僅かな寂しさに、唯は無意識に自分の頬に手を添えた。抑えた頬が熱を帯びる。

    「…唯。僕はこれからも、唯のことを愛し続けたい。唯だけを、ずっと愛してる」

    片膝を浜辺の砂地に付いて、ポケットから小さな箱を取り出した。

    「今度は僕から言うよ」

    微かに目を細めて箱を開けば、シンプルだけど、白の宝石が上品に散りばめられた指輪。


    「僕と、結婚して下さい」


    唯は目を見開く。

    「……悟さん…」

    彼の名前を小さく呟くと、目の前の大好きなその人の顔は次第に涙で歪んでいった。いつの間にか堰を切ったように溢れる涙を、自分でも止める事が出来なくて。

    「でも……」

    言って唯は俯く。

    「私…、わたし、は……っ」


    ーー私は、悟さんに相応しくないかもしれない。


    そんな一抹の不安が頭を過る。

    元々身分違いの恋だった。実る保証は何処にもなくて。互いを想う気持ちに、嘘はない。疑った事もないけれど。

    結婚なんて夢見ても、叶うものじゃないと理解していた。
    それでも一緒にいられれば、ただそれだけで良かった。

    「…私……は、」

    俯いたまま、こぼれ落ちる涙。
    そこで言葉に詰まる唯に、悟はフッと笑った。

    「言ったでしょ?唯だけを、愛してるって」

    唯を覗き込むように悟は顔を上げた。伸ばした手を頬に添えて、親指の腹でそっと唯の涙を掬う。

    「僕が君を守るよ。それだけじゃダメ?」

    真っ直ぐに見つめる彼に、唯は首を横に振った。
    それに満足そうに頷いて、悟は唯の左手を取る。ゆっくりと薬指にはめられて小さな手を飾る指輪。その指輪が綺麗に唯の指に収まると、悟はそこに唇を落とす。

    「君が頷くまで、何度でも言うよ」

    微かに微笑む悟はたぶん、もう次に告げる唯の答えを知っている。

    「僕と、結婚して下さい」

    また、涙が溢れて唯の頬を伝う。
    唯は笑顔で頷いた。

    「よろしく、お願いします」


    涙が止まらなくて。
    唯は指輪をはめた左手を持ち上げて両手で握りしめるように胸に抱いた。
    それを見て悟は立ち上がる。唯の肩に触れ、小さな身体を抱き寄せた。包み込まれるように抱き締められ、ふわりと香る大好きなその香りに、唯はその胸に頭を預ける。

    「悟さん…」
    「…ん?」

    広い背中に手を回して、彼の腕の中で唯は顔を上げた。アクアマリンの透き通るような瞳が、反射した唯を映している。

    ただひとり、唯だけを。


    「私はあなたの瞳に映った月を見ています」


    唯の言葉に、僅かに目を見開く悟。
    その口元が弧を描く。悟の手が唯の髪を、撫でるように梳いていった。
    腰を折り、唯の身長に合わせて目線を下ろす。近付く悟の顔に、唯の胸は早鐘を打った。唯の耳元で彼は小さく呟く。

    「いいよ。見せてあげる」

    低く響く声に、吐息が触れる耳が熱い。耳元から唇が離れれば、悟と視線が交わる。
    その瞳から、目を逸らす事はもう出来なくて。

    悟はそっと、唯の唇を塞いだ。








    End***











    「あなたの瞳に映った月を見ています」


      “ あなたと人生を共にしたい ”
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    _aonof

    PROGRESS猿と見下した相手に恋という意味で心をおられる夏の話。完成。
    「価値があるから殺さないだけ」
    「あのこ、呪われてるんです」
    「呪われてる?」
    新しい相談者の言葉に、真摯に耳を傾けるふりをする。他の信者の伝手を辿りやってきたこの相談者には、金銭と言う意味で価値が見えた。
    新たな利用価値の高い信者を増やすために、面倒でもリアクションは重要だ。相手にとって気持ちいい反応をしてやれば、話はトントンと進む。猿の話はどれもこれも誰かのためと知って結局自分の本心や見栄や保身のためであり、正直反吐が出るが、糧になる相手なら差し引き少しマイナス程度。それくらいの労力は、いずれの呪術師の世界のためなら割いても苦じゃない。
    今回相談に来た白瀬一族は日本でも有数の富豪の一族であり、上手くいけばそれなりの資金を引き出せるだろう。会社経営すら娯楽といっても構わないほどの富を築き、その才能ゆえに富を増やすことこそあれ、衰える気配は今のところ見えない。
    「嘘をつくんです。ありもしないことを、本当のように滔々と」
    相談にやってきたのは、他の信者の紹介を受けた白瀬当主の夫人だ。一人娘が居るとは聞いていた。写真を見せられたが、表情のない写り具合は人形のようだ。何を言い出すか怖くて表に出せないという夫人が言う。ありも 8333

    nnmnchudock

    MAIKING記憶喪失になった七と、じゃあ(傷つきたくないし)にげちゃおーした恋人の話 前半
    (後半は七視点で夢主を追い詰める話)
    #じゅじゅプラス
    「私からはなんと申し上げて良いか……」

    申し訳なさそうに背を丸める伊地知潔高の肩をぽんと叩いて笑みを作った。わらえ、わらえ。そう強く自分に言い聞かせれば、意外と表情筋はきちんと仕事をしてくれた。
    「何も言う必要は無いよ。きれいさっぱり忘れたんなら、そのままで。その方が建人のためでしょ」

    ✕月✕日 東京都内✕✕学校内に発生した一級相当の呪霊祓除時発生した事故により、東京校所属七海建人一級呪術師の記憶障害が起きたと見られる。

    呪霊の術式効果により✕月✕日から一年前までの記憶の喪失が確認され、現在──




    恋人の記憶が無くなった。そう知らせを受けあわてて自分の家に帰り、七海建人の私物をかき集めた。キャリーケースに詰め込んで、手伝いを申し出てくれた伊地知潔高の運転で恋人のマンションへと向かった。

    「いいのですか、きちんと七海さんに話せば分かってくださると思うのですが」
    「やー伊地知さんは分かってないよ。一年前って建人が高専に戻ってきたあたりでしょ。
    もーモテにモテまくって凄かったの忘れた?」

    一年前と言えばまだ普通の同僚だった時だ。
    跡継ぎの男子に恵まれなかった家からぜひ婿に、 1602