「メイヤーの隠し事」あの日はいつもと同じ様な快晴で、見晴らしが良い日だった。
俺は船体の自動操縦の設定を終えて、棒人間と昼ご飯を決めあぐねていた。
そんな時だ。
ビーーーーーッ!!
けたたましいブザーが船内に響き渡る。
緊急招集だ。
棒人間を頭に乗せ、ミーティングルームへ急ぐ。
着いた頃にはザワつくクルーが数人集まっている。
どうやら死体が見つかった様だ。
船員達が揃い、議論が始まった。
手始めに誰が何処に居たかを聞くと、各々証言や言い訳を話す。
そんな中でどこかおどおどしている船員が俺の目にとまった。
「皆、■■■を見たか?」
船員達は俺と■■■を見て首を振ったり傾げたりした。
そんな状態でもその船員は何も話さないし、きっと誰もこの船員を見ていない。
(きっとこの船員だ。)
俺はそう思い込んでしまった。
そのクルーを疑った視線で見つめ、立ち上がる。
「なぁ、■■■が殺ったんじゃないか?」
この言葉に同調する様に、俺の言葉に流された船員が数人頷く。
だけど、棒人間だけは
首を横に振っていたんだ。
いつも「ああしろこうしろ」と喋れないくせにうるさい奴。
今回ばかりは 絶対に 俺が正しいはずだ。
俺は棒人間の身振り手振りを見ないようにして、俺の意見に賛同するクルーを増やす。
今考えるとちょっとした反抗期の様な感情だった。
意地を張るのを、やめればよかった。
やがて、投票時間になり俺は■■■に
棒人間は別の奴に票を入れた。
棒人間は投票直前まで何かを訴えていたが、馬鹿な俺の目には映らなかった。
俺の言葉のせいで
■■■に票が集まる。
「■■■が追放された」
きっと悪気は無かった
それが正しいと、自分が正義だと思っていた。
俺のふざけた思い込みと
どうしようもないちっぽけな意地が。
1人のクルーを殺したんだ。
後で■■■がクルーだと分かった。
だが、誰一人俺を咎めなかった。
殆どが「自分じゃなくてよかった」なんて、思ってそうな顔をしていた。
腕を組んで机に立つレストだけが、俺には見えない睨みを効かせていた。
「馬鹿なお前のせいだ。いつも通り俺の言う事を聞けば良かったのに。」
俺には、そう言おうとしている様に見えた。