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    IZUMI

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    #M右ワンドロワンライ に遅刻参加。
    お題ガチャ『受けをお世話するかもしれない攻めガチャ』からシチュエーションをいただきました。
    が、できあがってみたら『攻めをお世話する受け』でした。
    2023/11/23 FLY BY SP2023発行の『アソートセット』に収録しました。

    #M右ワンドロワンライ
    mRightWandolowanRai
    #アイマヴェ
    imavais

    アイマヴェ/お題:快晴 トム・カザンスキーと言えば、トップガンの首席卒業者、常に冷静沈着で正しい判断を行う者、出世頭等々彼を飾り立てる言葉は枚挙を厭わない。むしろバースデーケーキにろうそくを立てる場所を探す苦労に似ている。え? もう上に立てる場所がない? なら側面に刺そうぜ、の勢いである。
     だがそれも外から見える一面である。
     トップガンで苦楽を共にした同期は知っている。任務についていない時のアイスマンは意外とダメ人間である、と。
     官舎という自分だけの城に帰れば、アナポリスで骨の髄まで叩き込まれたはずの整理整頓術は聞いたこともない単語として辞書から削除され、食生活はルーチン以下と化す。冷蔵庫はビール専用で、基地の食堂で食事を取っていなければ栄養失調で倒れていることだろう。小柄なマーヴェリックからは「なに食ってそんなに身長伸ばしたんだ、このク○野郎」と実にお上品な賛辞を貰った。戦闘機乗りとしては小柄な方が有利で長身にはそれなりの苦労もあるのだが、それを口にする愚は犯さない。結果は火を見るよりも明らかで、正論は常に人を救ったりしないのだ。
     トップガンで過酷な訓練を共にした者たちは例年それなりに仲が良いものだが、アイスマンの同期はそれが顕著だ。配属先が離れても連絡を取り合い、気軽に互いの官舎を行き来するくらいだ。そしてなぜかアイスマンの官舎がメイン会場に選ばれる率が高い。彼曰く、
    「文句ばっかり言うくせになんでお前らは俺の家に来るんだ」
     しかしRIOであるスライダーを筆頭に同期たちにも言い分はある。
    「こうでもしてお前の部屋に来ないと、ゴミ置き場と見分けがつかなくなるからだ。お前の文化的な生活は俺たちが守ってるんだぞ」
     酒と食料持参でやってきて会場(アイスマン宅)を片付け打ち上げをする、までが一連の流れだ。打ち合わせをしたわけでも明文化されているわけでもないが各々がそれを行っている。
    「空母内ではそうでもないのにな」「でもトップガンでのロッカーもたいがいだったろ」「お前はまず捨てることから始めろ。億劫がるな」「ゴミ箱まで1フィートもないだろ、もうちょっと頑張れ」「これでモテるんだから顔はイイにこしたことない」
     気安い仲ゆえに遠慮なくこき下ろされるも、アイスマンには響かないのでこうして定期的に宅飲みの前哨戦としての片付け会が開催されるのだ。



     そして昨日はスライダーとマーヴェリックがやってきていた。
     スライダーはデートという名の外せない用事があるとかで朝、慌ただしく帰った。その時一度叩き起こされたような気がしたが二度寝の誘惑に抗えずに毛布の中に潜り込んだ。雑魚寝をしていたはずのマーヴェリックの姿はなかった──筋肉量のせいか(小柄な)見かけによらず重量があるのでマットレスの傾き方でわかる──ので元気にロードワークにでも行っているのだろう。これまた(派手な)見かけによらず戦闘機に乗ることに関してはストイックなので。
     そうして毛布との蜜月を過ごしていると、「アイス! 起きたか⁉ いい天気だから毛布洗うぞ!」と威勢のいい声が近づいてくる。心地の良い温もりを奪われてたまるかと、夢うつつながら毛布の端を体の下に引き込んでいるとどうやら僚機はそのまま寝室に突撃してくるのではなさそうだった。バスルームを経由するようで、かすかにシャワーの音が聞こえてきた。このチャンスを逃す訳にはいかない。



     昨夜のアルコールを汗とともにシャワーで流し終えたマーヴェリックは、髪の水気をわしゃわしゃとタオルに吸わせながら寝室のドアを開けた。
    「おいアイス! いつまで寝てん、だ……?」
     ベッドの上はもぬけの殻だった。正確に言えば枕しかなかった。本体と毛布がない。シーツも洗うつもりだったからと剥がしたが当然シーツの下にアイスマンが居るはずもなく。ピローケースも引き抜いたマーヴェリックは首を傾げた。
     シャワーを浴びてここへ来るまでの間、洗濯機が回っている音は聞こえて来なかった。第一、マットレスにはまだ温もりが残っていたことからアイスマンが直前まで惰眠を貪っていただろうことは明らかである。そして狭くないが広くもないこの家で、彼とすれ違わなかった。部屋から出ていないなら、アイスマンの嵩張る(悪意込み)身体を隠せる場所は限られる。すなわち、ベッドの下かクローゼットの中だ。
     ひょいとベッドの下を覗き込んだが家主の姿はなかった。まぁそりゃそうだよな。寝苦しそうだし。と呟いたマーヴェリックはクローゼットの扉を勢いよく開いて、そして爆笑した。
    「アイスお前!」
     同期以外の人間からは近寄りがたいと評されることも多いアイスマンは、毛布を抱きまくらよろしく抱え込みながら、クローゼットの中でなおも睡眠を続行させていたのだ。こんな姿、同期だって見たことないに違いない。カメラがあれば撮っておいてからかってやるのに。グースの愛機であったポラロイドが今、欲しかった。
     どこでも寝られるのは軍人として重要な資質かもしれないがしかし。
    「アイス! 寝汚いにもほどがあるぞ!」
     マーヴェリックは容赦なくアイスマンを引きずり出し、その腕の中から毛布を奪ったのだった。
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    2023/11/23 FLY BY SP2023発行の『アソートセット』に収録しました。
    アイマヴェ/お題:快晴 トム・カザンスキーと言えば、トップガンの首席卒業者、常に冷静沈着で正しい判断を行う者、出世頭等々彼を飾り立てる言葉は枚挙を厭わない。むしろバースデーケーキにろうそくを立てる場所を探す苦労に似ている。え? もう上に立てる場所がない? なら側面に刺そうぜ、の勢いである。
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     だがそれも外から見える一面である。
     トップガンで苦楽を共にした同期は知っている。任務についていない時のアイスマンは意外とダメ人間である、と。
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