演劇少女審神者の本丸に顕現した篭手切くんの話① 思えば、私が顕現したその場所、その瞬間こそが正にすていじだったのだろう。
私という存在があり、そして私を舞台に立つ者として見ていてくれるひとがいたのだから。
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「私は篭手切江、郷義弘の打った脇差です。これからよろしくお願いします」
数多の星のきらめきの如く、うすくれないの花弁が散り、地に落ちる前に消えていく。審神者の霊力の表れであるそれは、新たな刀剣男士の誕生を知らせる徴。そして、私の顕現を言祝ぐおくりものでもある。私はそれを、生来に植え付けられた知識として知っていた。
ひととしての姿を得て、地にその足を付ける。急激にあらわれてきた体性感覚に戸惑いながらも、それを気取らせまいと私は笑う。他ならぬ、私の主に向けて。
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