Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    eikokurobin

    @eikokurobin

    レニ/右爆/轟爆
    眠れぬ夜の小さな図書館

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 40

    eikokurobin

    ☆quiet follow

    轟爆/雄英1年生

    #轟爆
    bombardment

    わがままきいて 2月に入ってからたまに見かけるそれは岩手県は花巻の名物、ニュースで流れてくるそれらの映像を見て一度チャレンジしてみてえなんて轟は言うけれどここ雄英高校のある場所から東北は遥かに遠いし、インターン三昧の日々の中、休みを利用して現地に赴くような暇もない。

     わんこそばっつったって、そもそも轟は、図体の分だけ俺より沢山食べるが、さりとて大食漢というほどでもない。“蕎麦”という言葉に惹かれているだけであろうこの男にそれでも少々サービスしてやってもいいかといい感じの蕎麦粉を入手して打ち始めたはいいけれど、

    『爆豪何作ってんの?』

     見りゃ解るだろ蕎麦だわ、

    『何もしかして轟のため?にしちゃ量多くね?』

     わんこそばだわと言ったらあっという間に広まり、轟を誘うより前にクラス全体でわんこそば大会をすることになった。流石にクラス全員の分を打つには骨が折れる、そうなれば作る人員も増えて、砂藤と俺の監修の元蕎麦を打ったり茹でたり盛り付けたりと、ちょっとしたお祭り騒ぎになってしまった。俺は煩いのは嫌いだから調理が終わると同時に部屋に戻ってはみたものの、

    (せっかく作ったのに、轟の反応見れなかったな)

     そもそも俺が作り出したこともアイツは知らねェか、まぁいっかアイツの願いが叶えばそれで。別にお礼が欲しくて作り始めたワケじゃねぇ、ただ好きな奴の喜ぶ顔が見てみたかった、好きな食いもんを食って満足したならそれは巡り巡って俺にとっての幸いにもなりうるだろう。

    (…風呂入ってくっか)

     そうして軽く走って風呂に入って汗を流して布団に入り早めの就寝につこうと思ったのに、部屋に戻ると何故かドアの前に轟がいた。

    『わんこそば、お前は食べてねぇだろ?スゲェ美味いから一緒に食おう』

     そりゃ俺が作ったから上手いに決まっとる、いや、違うか。途中からクラスの奴の手も入ってるから厳密には俺が打ったとは言えねェ、

    『別に腹減ってねェからいーわ、もう寝るし。良かったな、念願のモンが食えて』

     じゃあなと部屋に入ろうとすると、何故か轟も一緒に入ってきて俺の顎を固定して顔を思い切り覗き込んできた。何すんだと睨み付けるとますます覗き込んでくるから後はもう目を逸らすか閉じるか頭突きして逃れるしかねェ、ンでその用件はというと、

    『爆豪と食べたい』

    …しつけェ!何でそんなに俺と食いたがるんだ、クラスの奴らと楽しくやってろ、

    『楽しいことは爆豪としてえ』

     あーもう末っ子発動しやがってクソウゼェ、俺がオネダリに甘いの解っててやってるな、こうなったらユーカリの木にしがみ付くコアラみたいに轟はひっついて離れない。仕方ない、キッチンの片付けを放り出してきたことも気になっていたし、それにやり残したこともあったわ。

    +++

     美味いわんこそばをクラスの奴らと一緒に食べられるなんて思ってもみなくて凄く嬉しかったのに、気が付いたら爆豪の姿がなかった、

     それだけで心が冷えた。

     ずっと厨房で忙しくしていたから後で一緒に食べようと誘うつもりだったのに、いつ食べていたんだろうと厨房組に訊いてみても、誰も爆豪が食べている所を見ていないという。

    『ああでも試作段階で何度も味見してたから腹一杯だったのかも、何せ蕎麦のレシピ作ったの爆豪だから』

     ああそうか、どうりでタイムリーなハズだ。俺が食ってみてえと言った時は遠すぎるから無理だと言ったけれど、その無理を壊して実現してくれたんだ。なのにその場に肝心の爆豪が居ないなんて、それはねえだろう?

     そうして無理やり部屋に押し掛けて、強引に爆豪を連れて一階に降りるとパーティはすっかりお開きでキッチンも綺麗に片付いている、俺は頼んでおいた爆豪の分と幾らか残しておいた自分の分をトレーに載せてリビングへと促すが、

    『ちょっと待ってろ』

     そう言ってエプロンを片手に再び爆豪は再び厨房に立った。一体何を作るんだろうと眺めていると、

    『テメェ腹具合は?』

     爆豪と一緒に食べられるよう半分空けてある、

    『じゃあもう一枚くらい食えるな?』

     一枚、という数え方に思わず胸が躍った。

    『わんこそばは冷たくねェし、大勢で食ったら腹一杯食えねェ。最後の〆に暖かくねェ蕎麦食わせたる、その為に麺を取っておいた』

     そう言って蕎麦を茹で、冷水でしめて俺の前に差し出し、わんこそばは俺が食うと言って食べ出した爆豪と向かい合って美味い蕎麦を食いながら、

    『皆んなで食うのも美味いけれど、やっぱり好きな奴と一緒に食うのが一番美味いな』

     と言うと、そーかよと静かな反応が返ってくる、何だよそれは。なぁ、いい加減気が付いてくれねぇかな、こんなにハッキリと好きだって言っているのに何でそんなに平然としてるんだ?それにこんな風に俺の好きな物を作ってくれたりしたら浮かれて勘違いしちまうのに、

     いや、もう勘違いしちまってる。嫌だ、勘違いになんてしたくねえ、キチンと確かめねえと、

    『なぁ爆豪、お前は誰にでも、例えば切島や上鳴にもこんな風にご馳走作ってやるのか?』

     気が向いたらそーかもな、

    『じゃあこれから気が向くのは俺だけにしてくれ』

     ンだそれは、ワガママかよ、

    『ああワガママだ、だって好きな奴は独り占めしたいだろう?なぁ爆豪、俺はお前が好きだ、だから爆豪も俺のことを、俺だけを好きになってくれ』

     そう言った途端にどうしてか、爆豪の綺麗な紅い瞳からポロポロと大粒の涙が溢れだして驚いたけれど、しょーがねぇから我儘きいたるわって返ってきたからそれ以上は聞かず、代わりに背中に手を回して抱き締めた途端、沢山の好きが流れ込んできて俺は俺自身に驚いてしまう、

    (どうしよう、めちゃくちゃ爆豪のこと好きだ)

     何だコレ胸が苦しい、なぁ爆豪、今スゲェ俺も泣きたくなったんだけど、もしかしてそのお前の涙はー
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works