未定(夢メモ)「はぁああ?もう1週間も部屋に篭ってるだか??」
「そうなんですよ〜。なんかもうすぐ論文の締切らしくて」
笑いながらお茶を出した私にチチさんは、はあぁ、と深いため息をつく。
チチさんが持ってきて下さるお菓子はいつ食べても絶品で、私は頂きますと手を合わせて頬張った。
甘い味が口いっぱいに広がって、ん〜〜っと感嘆の声を上げる私にチチさんは、困ったような笑みを浮かべてから眉を釣り上げる。
「あの子はもぉ、こればっかりはいくつになってもダメだなぁ。好きな事に熱中したら周りなんかなんっも目に入らなくなるだ」
よし!と立ち上がったチチさんはずんずんと悟飯君の部屋に向かって行った。
「お、お義母さん?何を…」
「久々にオラが言って聞かせてやる!ビーデルさんはこんなに尽くしてくれてるのに、こんなんじゃダメだ」
ふん!とドアを開くと真っ暗な書斎にリビングの光が入り込む。
あぁ、これは悟飯君寝てるなぁ、と思いながら部屋に入ると私の預かり知らない客人がソファでパソコンを触っていた。
「あ、一号さん、来てたんですね」
「あぁ、ご挨拶もなくすみません。論文が佳境だということで少し手伝いに…」
「悟飯ちゃん!!起きるだ!!お客様を放って何してるだか!!」
一号さんが話す言葉を、チチさんの怒号が劈く。
目の前の一号さんはきゅうって瞳孔が小さくなって、驚いたようにチチさんの方を振り返る。
私もそちらに目を向けると仮眠用のベッドでぐでんぐでんの悟飯君を引っ張り上げるチチさんがいた。
「あれ…おかあさん?なんで…?」
「なんで、じゃないだ!こんなところで寝て……。寝るなら寝るでちゃんと寝室で寝るだ!」
ぐいーと引き上げられた悟飯君はされるがまま伸びてなんだか猫みたい。
応えてなさそうにへらへらする悟飯君とお説教モードのチチさんに仲良しだなぁ、と笑う。
一号さんは一向に止める様子のない私にも驚いたようで、と、止めなくても?とやり場のない手を彷徨わせてる。
「大丈夫、大丈夫。あ、一号さんもお茶します?悟飯君、まだ暫くかかると思うし」
「え、あ、はい。じゃあ…」
気がかるように書斎を伺う一号さんをリビングに連れて、席につかせるとお茶を入れた。
慣れない様子でお茶やお茶菓子を口に運ぶ一号さんもなんだか借りてきた猫みたいに大人しくて、思わず笑みが溢れた。
「一号さんは好きなものとかあります?」
「いや…私は、食事をする必要はないので…」
「あら、そうなの。ピッコロさんと同じね」
次々と質問を投げる私に律儀に応えていた一号さんも、最後の方は積極的に話をしてくれて、2人がリビングに戻ってくる頃にはすっかり仲良くなっていた。
「あれ、一号も来てくれてたんだ…」
「…寝る前に声を掛けたぞ…」
「悟飯君がほったらかしだから私が一号さんと仲良くなっちゃった!」
「えー、いいなぁ。なんの話してたの」
秘密よ、ね?と振り返った私に一号さんもあぁ、と言って微笑む。
本当に仲良くなってる、と悔しそうな悟飯君に、これは悟飯ちゃんが悪いだな、とチチさんもちょっと意地悪そうに笑った。