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    めざしねこ

    @yakisoba13pan

    十三機兵にハマって、比治沖に転がりました。

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    めざしねこ

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    七夕の次の日に書き始めて、書けねぇ……書けねぇよぅ……ってなりながら七月が終わりそうになったので、こちらに供養します。
    あんまりまとまってなくて恐縮です……

    #比治沖
    beechcraft

    たなばたの話 沖野の部屋の前まで来ると呼び鈴を鳴らして反応を待つ。すぐにロックが解除された音がして、ドアが開いた。部屋の奥まで進むと、沖野は真剣な顔でモニターを見ていた。
    「呼び出してすまなかったね」
     こちらが見ているのに気付いたのか気付いていないのか……その口からは謝罪の言葉が出るものの、こちらを見ずに画面から目を逸らさない。謝罪の態度ではないが比治山は気にならない。
    「構わん、どうせ時間はある」
     そのまま比治山は部屋においてあるソファに座る。作業部屋にソファを置いたのはこうして比治山が作業中の沖野を待つことが多いからだった。今日もいつも通り作業をこなす沖野を後ろから眺める。左のモニターの数値を見ながら、右のモニターへ入力を行っているが、それが一体何なのか比治山は知らない。一度説明してもらったこともあったが、その頃とは違う作業を行っているだろうし、何よりその時も言葉が理解できなかった。適材適所、という言葉を心に刻んだのも良く覚えている。
    「呼び出しておいて申し訳ないけど、もう少し待っていてもらえるかい」
    「あまり根を詰めすぎるなよ」
    「大丈夫さ、折角君が来てくれているんだ、そうは時間もかからないさ」
     元気そうな声で返事をする沖野に安心する。この調子なら確かに長い時間は掛からなさそうだ。
     訪ねても沖野の作業はきっと終わらずにこうなるだろうと予測をしていたので、本を持って来てはいた。元来読書は苦手な性質だと思っていたが、沖野に勧められるまま読んでみると思っていたよりすらすらと読むことが出来た。そして苦手だと思っていた読書も自分が興味あるジャンルについては面白いと思えるようになった。今日持って来た本は読み始めたばかりの本なので、沖野のキリがつくまではもってくれるだろう。

     ふと本の内容が終盤に差し迫っていることに気づいて顔を上げる。そこでやっとモニターの前で座っていた沖野が静かにこちらを見ていたことに気づいた。
    「作業はどうした?」
     尋ねながら本に栞を挟んで近くのテーブルの上に置く。ちょうどキリのいいところだったから続きが気になるということはない。
    「終わったよ」
    「それなら声を掛けてくれ……」
     こちらは沖野を待って本を読んでいたというのに……しれと言う沖野に呆れたような声を出してしまう。
    「いや、誰にも邪魔されずに君の真面目な顔を見る機会ってあんまりないなって思ったら眺めてたよ」
    「な、何を!」
     慌て驚く姿に笑いながら沖野は椅子から降りるとそのまま比治山の正面に立ち、その頬を両手で挟む。薄茶色の瞳に比治山の顔が目一杯映る。
    「案外、君の顔って整っているよね」
    「お、お、沖野!!」
     近い距離と思わぬ言葉に翻弄されっぱなしだ。以前よりはからかわれることも少なくなったが、こうした突拍子もない行動を取られると比治山の脳はまだまだ処理しきれない。その様子を見て、沖野は嬉しそうに笑う。
    「もう付き合いはじめてから随分経つのにまだ慣れないのかい?」
    「不意打ちはだめだ、不意打ちは!」
     頬を挟む両手を退けると、「座れ」とソファを詰めて隣を空けた。
    「膝の上でもいいけど?」
    「いいから!!」
     こんな風に慌てる比治山は久々で、もう少しこの様子を楽しみたい気持ちにもなったが、まだ慌てている比治山をこれ以上刺激しないよう、静かに横に座る。
    「待たせて悪かったね、比治山くん」
    「そう思うなら声を掛けろ」
    「いや、君の真面目な顔が」
    「その話はいい!」
     顔に熱が集まっていることは十分わかっているのに、まだこれ以上するつもりかと同じ話が繰り返されそうになったところで、無理矢理止める。沖野は楽しそうに笑いながら「ごめんよ」と言って話を続けた。
    「先日の調査報告について少し詳しく聞きたくて。この部分……」
    「あぁ、その話か」
     よくあんなやりとりのあとに真面目な話が出来るな、と比治山は少しだけ驚いた。
     それは比治山が緒方らと共に行った新天地の実地調査報告書に関する内容だった。報告書以上のことは本人に直接聞いた方が良いと比治山を呼び出したのだろう。沖野の疑問に、自分が調査の際に見たものを回答していく。
    「…………うん、ありがとう。随分理解が出来たよ」
    「貴様の役に立てたならよかった」
     満足そうな表情を浮かべる沖野を見ると、比治山もなんとなく満たされる。互いに得意な方向性が違うが、役に立てていることは素直に嬉しくなる。とりあえず話が一段落したようなので、「そういえば」と比治山は話を始めた。
    「ここへ来る途中、共有スペースを女性陣が飾り付けしていたぞ」
    「飾り付け?」
     はて? と心当たりのない沖野が首を傾げる。
    「もうすぐ七夕だろう」
    「あぁ、なるほど」
     そんなイベントもあったねと言わんばかりの声だ。
    「貴様の時代は七夕はどうすごしていた?」
    「どう、か……。そうだね、天の川を確認しながらベガとアルタイルの観測は行ったよ」
    「べが、あるた……?」
    「織姫星と彦星の観測さ」
     文脈から想像はついたが、知らない単語と知っている単語が結び付いて、話が明確になる。なるほど、後世には星の名前が変わるのか……と比治山は一人納得し、そこで疑問がよぎった。
    「しかし1985年の空は随分明るく、星など見えなかったが、貴様の時代は見えるようになったのか?」
    「あぁ違うよ。本物の星じゃないんだ。VR……仮想現実での天体観測さ。夏の大三角は天体の基本だろ? 都市では星が見えないあの時代はVRを使って天体観測を行ったんだ」
     沖野の時代にはとっくに天体観測など出来なくなっていた。しかし、進んだ文明がそれを補う技術を開発するのは皮肉なことだと思う。
    「よくわからんが、偽物の空で天体観測をしていたということか?」
    「そんなところだね。比治山くんはどうだったんだい?」
    「俺たちは近所から立派な竹を貰ってきて、庭に置かせてもらってな、慶太郎と玉緒さんと一緒に飾り付けをしたものだ」
    「あぁ、願い事を書いたりするやつだ」
     データベースで目にした、と言わんばかりの返事が気になって比治山は尋ねる。
    「貴様の時代にはそういう風習は一切なかったか?」
    「いや、残ってるよ。でもそれは企業や地域活性化のためのイベントの一つとして残るくらいかな。僕らの学校や地域では何かするということはなかったし、時折伝統の七夕まつりのニュースを聞くくらいだったな。十郎や森村さんがどうだったかはわからないけど」
     沖野の性格もあるのだろうが、160年の時の流れは伝統を簡素化するのには申し分ない。微かに残っているだけでも良い方なのかもしれない。
    「随分と変わってしまうのだな」
    「時代と共に変容していくのはイベントだけじゃないさ。それでも残っているというのはそれは人々に愛されたものの一つということだよ」
     沖野のフォローに納得がいかず、「そういうものか」と少し寂しそうに呟く比治山をフォローするつもりではなかったが、また沖野は続ける。
    「元来イベントは宗教的な意味合いが強かったものが多い。それが時代の流れと共に人と人が絆を結ぶものへと変容していったんだ。残っているイベントは人から愛されているものさ」
    「確かに人の願い事というのはわかりやすく盛り上がるからな」
     なるほどなと納得したようで沖野は少しほっとする。160年の時代の流れは文化の溝を生んでいることは二人で会話する度認識する。古い時代であるセクター5出身の比治山は特にそう感じることが多いようで、他の人と話しているときにも文化のギャップに戸惑うことがあるようだ。
    「比治山くんは何を書くんだい?」
    「俺か?」
     そんな質問が飛んでくると思わなかった比治山は一瞬驚き、すぐにいや当然かと納得する。少し考えたあと、「知りたいか?」と笑った。さっきまでのお返しと言わんばかりの表情だ。その不敵な笑いに少しムッとして、
    「知りたいから尋ねているのに、その返答は随分と卑怯じゃないかい?」
     急に比治山のペースに持ち込まれたようで調子が狂う。
    「知りたいならば行くぞ」
    「え、どこへ?」
     立ち上がり部屋を出ようとする比治山の背に問いかける。
    「言っただろう。共同スペースで七夕の飾りつけをしていると。折角だ、文化を楽しめ」
     これは比治山なりの文化交流ということか。いや、そんなことをこの男は考えていないだろう。
    「なるほどね。それじゃぁ伝統文化を楽しみに行こうか」
     きっと自分と一緒に過ごしたいと思ってくれているのだ。今ならそれがちゃんとわかる。伝わる。そしてそれは自分も同じだと思いながら彼の隣に向かう。いつまでも横にはお互いがいてほしいという願い事は共通だろうなと思いながら。
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    Replies from the creator

    めざしねこ

    DOODLEハロウィンの時期のグロジェレ。
    グロスタが自分のことを好きだと知っているけど、自分はつれない態度をするし、気持ちを告げられたとしてものらりくらり交わし続ける。
    年上に言葉巧みに振り回される攻めと、振り回してるけど最終的には押し負ける受けが好きですね。
    2024.11.4
    お菓子を配ったそのあとで「戻っていたんですか?」
     自分が一番に天幕に戻って来たと思っていたのに、中に入るとこちらに背を向けてベッドで寝転ぶジェレミーの姿があった。
    「ん? あぁお疲れさん」
     こちらを見ずにひらひらと手を振りながら背中で話す様子は随分とリラックスしており、ついさっき戻って来たと言うわけではなさそうだ。
    「ちゃんとお菓子配ったんですか?」
    「いや~誰も俺様のところには来なかったから、さっさと帰ってきちまったってわけ」
     うぅーとベッドの上で身体を伸ばす様子にちゃんとこちらの話を聞いているのか不安になる。確かにベッド横のテーブルにはお菓子が入ったままのカゴが放置されていた。
     誰が提案者かは知らないが、今日はハロウィンだからと駐留しているこの街の子供達に解放軍みんなでお菓子を配ろうという話になったのだ。お菓子はクロエが監修したというから、味は心配ない。
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