終、太陽と炎が合わさる所例え、愛した人が亡くなったとしても時は止まらない。
変わらず太陽が昇り、朝を告げる。
ぽかりと心に開いた穴の部分を、陽の光で埋めてくれるのだ。
「母さん俺、遊びに行ってくる」
「その前に食べた物を片付けなさい」
「もうやった」
息子は帰ってきた。
今も我々はあの長屋で暮らしている。
ただ、少し変わった。
息子は勉学に励むようになった。
変わらず喧嘩や山や川で遊んでいるが、その中に学びの時間が出来たのだ。
どうも、千寿郎様の所で教えてもらったのが殊の外楽しかったらしい。
それと、週に2、3回は煉獄家に遊びに行くようになった。
時々、泊まりにまで行っている。
「爺さんがさ、厳しいんだよ。普通、孫には優しくしない」
ぶつくさと文句を言いながらも行くのだから、別に嫌では無いのだろう。
お義父様も、素直では無いから仕方がない。不器用ながらに可愛がってくれているんだと思う。
仕事は変わらず重労働だが、やり甲斐がある。
長屋の人達も、変わらず親切で優しく気持ちの良い人ばかりだ。
時々、杏寿郎様の事を思い出す。
思い出しては、イライラしたり悲しくなったりと、今でも私の心を搔き乱す、ずるい人だ。
もう、あんな男はごりごりだ。
もう二度と会いたくない。
でも、息子が更に杏寿郎様に似てきたので、どうしてもあの漆黒の中に赤が交じる瞳を見ると杏寿郎様を思い出してしまうのだった。
息子は今日も煉獄家に遊びに出かけた。
もう日が暮れる。そろそろお腹を空かせて帰ってくるだろう。
「か、母さん母さん母さん母さん!!」
「そんなに外から叫ぶのやめなさい近所迷惑でしょう」
走って帰ってきた息子が、私の名を叫びながら帰ってきた。
その手には、刀があった。
「あ、貴方こんな物を持ち歩いて危ないでしょう」
「母さん出来た出来たんだ」
息子に手を引かれ、外に出る。
外は暗くなり始めた。
もうほとんどの人が長屋に入ってしまっている。
「離れて見てて」
息子の言われた通りに、少し離れた場所で待つ。
刀を手にした息子。
あの構えは、よく見てきた。
杏寿郎様の刀の構えだ。
息子が刀を下げ、下から大きく円を書くように刀を振り上げた。
刀に炎が纏い、刀にそって炎の円が出来る。
昇り炎天
小さな炎の円が、美しく揺らめいた。
「見た凄いだろ昇り炎天って言うんだってまるで炎のお天道様だろ」
へにゃりと笑う、その姿は、まさに父親に瓜二つ。
「爺さんもさ、この歳で出来るのは凄いってさ俺、父さん似なんだな」
「俺、出来たよ。きちんと父さんの意志を継げた…と思う俺なりに父さんの意志を継いだつもり」
「本当は、父さんにも見せたかったんだけど…
届いたかな」
「父さんも喜んでいますよ。絶対に…届いています。貴方の太陽が見えた事でしょう。」
私の言葉に、息子は嬉しそうに笑った。
私の可愛い太陽が、私の心を照らしてくれた。