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    mituguu

    @mitu_25pupu

    20↑|🔞腐向け小説を書く文字書き|アクナイ銀博♂︎中心|完成版は支部にて↓
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    mituguu

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    【銀博♂】銀灰が好きすぎて病んでしまい自暴自棄になり声が出なくなった博の話|自分のいのちを軽んじるようなタイプの話です|暗くてごめんなさいm(._.)m

    #アークナイツ
    arkKnights
    #銀博♂
    #腐向け
    Rot

    人は簡単に死なないらしい。自分に失望するのは常なのだが、またもやドクターは己にがっかりしていた。
    体力がないと言われ続けている癖に、そう簡単に死ななかったからだ。
    自ら命を断とうとした訳ではない。ただ敵対勢力の奇襲を受けて、作戦中に配置変更を行ったときに気がついてしまった。
    敵の狙いは本拠地である、自分のいる場所だ…と。
    分かっていたのに、守るオペレーターをあえて配置しなかったのは死を受け入れていると、指摘されても仕方はない。
    そして当然のように敵部隊がドクターを襲い、出会い頭に喉元を切り裂かれた。痛みや恐怖よりも、先に来たのは『死ぬかな』という期待だった。
    応援に来たオペレーター達の声が、口々に喉から血が大量に出ていると叫んでいる。とうとう怯えたようなアーミヤが自分を呼ぶ声に、これが末期(まつご)なのかと納得してしまった。
    どうにか生きたいと足掻くこともなく、ドクターは安堵の心を抱きしめる。
    (…もうシルバーアッシュに好かれるために…なんて考えなくて良いんだ)
    寝不足の身には永久の眠りは贅沢のような気さえして、胸を揺するアーミヤの手のひらを感じつつ意識を手放した。
    それなのに目を覚ましたら天国でも地獄でもなく、ロドスの医療室じゃないか。
    普段と変わりない冷めた様子のケルシーに此方を覗き込まれ、アーミヤに泣きつかれてドクターは残念だと思ってしまった。
    「咽頭の裂傷が酷かったが、どうにか持ったようだ」
    ケルシーの説明を聞くに、結構惜しかったらしい。やはり期待通りには、なかなか行かないものだ。
    あっさりと死ねたら、今後シルバーアッシュという存在に悩む必要なかったというのに。



    死を得ずがっかりしたけど、良いことがあった。激しく咽頭を切られていたので、ドクターは声が出なくなった。
    即ち話す事が出来ず、会話でのコミュニケーションを放棄するしかない。それは非常に嬉しい出来事だった。
    シルバーアッシュに抱かれたときの汚い喘ぎ声も、余計な話をしたなと後悔しながらひとり泣く嗚咽も出ない。
    それに話をしない相手なんて、色々とコミュニケーションを取るのが面倒で疎遠になる可能性がありそうだ。
    このまま体よく関係が破綻すれば、もう「シルバーアッシュの特別になりたい」なんて馬鹿を言わずに済む。
    夢は寝てみろ、なんて言うけども夢どころか、期待もしてはいけない関係性だったのだ。
    最初から分かっていれば良いものを、ついついシルバーアッシュによりよく見られたいなんて格好つけたのが悪い。自分が馬鹿で、立場を弁えていなかった。
    自分の声と言葉を呪う時間が無くなるのは、いま流行のタイムパフォーマンスに優れていると感じる。
    なにより夜も熟睡できているし。夜中にシルバーアッシュから明日来ると連絡があって、どう話せば良いかなと悩む時間がないのは、タイパ価値が高いに決まっている。
    他人に言えば激怒されるだろうが、その話す声を手放しているのだから、どう思うと勝手だろう。
    オペレーター達は口々に「気の毒だ」「痛々しい」と心配してくれる。けれどもドクターは気楽だった。
    作戦指示はタブレット端末で事前に通知しているし、有事の際は代わりにアーミヤがいるので簡単なコミュニケーションはとれる。
    困ることは早々少ない。ドクターにとってはメリットだらけなので、ケルシーが処方してくれた薬は飲まずにこっそり捨てていた。声を出す訓練も当然やっていない。
    このままで困るなと感じないのだから、当たり前だ。
    病室から自室へ戻ると、あまり会いたくはなかったシルバーアッシュがお見舞いに来た。
    喉を切り裂かれたと聞き、酷く慌てたこと…手術を終えた青白い顔を眺めていたときは、落ち着いていられなかったこと。
    良く通る声が色々と言葉を並べてゆく。まるで詩人にでもなったのかと、笑いたくなる長い台詞をドクターは黙って聞いていた。
    (…こういう時、声が出ないって便利だな)
    シルバーアッシュの話は長い。他者と会話をしているのを見かけたら、数回で会話が終了して驚いたことがある。
    自分にはよく話してくれるので、ついつい勘違いが加速していた。
    「お前ほどの者が、何故配置転換をしなかった。自分の身の回りに、もう少し気を配れ」
    普段よくしている、こちらを試すような口調はなりを潜め、心配しているんだとは分かる。
    けれどもドクターには、もうシルバーアッシュに向かって歩みを進める気力はなかった。
    近づいたら、その分だけ期待し上手くいかずに落ち込む自分を、いつでも呪っていたから。
    シルバーアッシュの一番になりたかった。
    一番大切で好きだから、きっとシルバーアッシュもそう思ってくれる。少しずつで良いから好かれる努力をしてゆけば、一番になれるんじゃないかと期待をしたのが不味かった。
    「盟友、もう少し自分を大切にした方が良い。私で良ければ力になりたい。ロドスで治療するのが立場上困るのであれば、いつでも―」
    形の良い唇が甘い言葉を吐く。勘違いしそうになり、ドクターは緩やかに首を振った。
    「何故だ―」と言いながら、シルバーアッシュに手を取られる。握り返しながら、もう一度首を振った。
    もし話せたらシルバーアッシュを責めていたかもしれない。
    『恋人じゃなくても良い。でも一番優先される関係を、私が望んだのはそっちのせいだ』と絶叫して泣いたのかもしれない。
    話をしない、じゃなく出来ないというのは楽だ。
    無駄口をきかない。自分を呪い続けずに済む。シルバーアッシュに好かれたいのに、責めて詰(なじ)る事もしない。
    大きな体躯と同じ手を、両手で包みドクターは精一杯の笑顔を向ける。
    普段とは違い、シルバーアッシュは怪訝な顔をしていた。


    続くのかしら?
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