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    dondadondadon

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    dondadondadon

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    マウエス

    彼の鈴マウシくんは私には無いものばかりを持った青年だった。頑強で、繰り出される拳は速く、どこまでも屈強な脚で遠く遠くを駆けていく。人懐こく笑い、大きな口を開けて私の料理を嬉しそうに頬張る君は、卑屈の欠片も感じられない。危険があれば非力な私の名を呼んで、力強く抱き寄せる、そんな愛しい青年だった。親子ほど離れた年の差は、彼の前ではまるで意味などないとばかりに消え去って、一挙一動に胸がときめいてばかりいる。隠されない好意は言葉となってひたすらに降り注ぎ、初恋に揺れる心を包み込んだ。
    若い衝動を抑え込み、触れそうになる手を引っ込めるのは、1歩踏み出すには歳をとりすぎた、私の心の準備が整う時を待っているからだと知っている。
    2人肩を寄せ合い座る、何時もの逢瀬の岩の上で、握られた手は燃え上がりそうなほどに熱かった。だから、覚悟を決めた。
    少しだけ高い位置にある彼の角と、私の角をころりと擦り合わせる。
    驚いた顔をして私を見つめる彼に構うことなく、もう一度、もう一度と己の角を鋭くとがった彼の角へと擦り付ける。頭の中をこだまする愛しい彼の音は、いつか冒険者が持ってきた美しい鈴の音によく似ていた。彼の角にも、この振動が心地よく響けばいいと、私は心から思った。
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