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    俳優現パロオキラス話(捏造しかない)

    #オキラス
    O''Keeffe/Rusty

    素晴らしき日々 “V.Ⅳラスティ”に同調してバカになったように流れる涙のまま、隣に座るオキーフを恨めしげに睨む。私好みの堀の深い顔が悪戯の成功を喜ぶこともなく、凪いだ色のままスクリーンに向けられている。己の燃えゆく様を真っ直ぐ見つめる彼に、それでもラスティの肩に回された優しい腕が慰めるように愛撫を繰り返す。だから、私は彼の顔を無理に引いて泣き濡れた瞳を晒してこう告げたー



     モデル兼俳優として鳴かず飛ばずの活動を続けていたラスティがここまで大きな箱で開催される試写会に参加するには訳がある。理由は簡潔、鳴かず飛ばずの活動はもはや過去のもので、『アーマードコア』のキャストに抜擢されて以来ラスティは超売れっ子だ。
     顔が良いだけで学もツテもない子供が手っ取り早く稼ぐ方法、それが芸能界だった。ラスティは生まれた時から顔立ちは良かった,母との二人暮らしの中、育児放棄され薄汚い姿であっても霞むことのない程度には。運よくスカウトに拾われてから要領の良さも功を奏して雑誌のモデルだの、子役だのとそれなりに稼いできた。
     自身の稼ぎのうちほとんどは母に奪われ手元に残るのはわずかだったが、事務所に寝泊まりが許されたことで母が男を連れ込むたびに公園で過ごす必要が無くなっただけでも随分と幸せを感じたものだ。成人して稼ぎを自身で管理できるようになった時には散々ラスティの稼ぎで豪遊した母と一悶着あったがここは割愛する。
     ただ、子役として少し飛び抜けていただけの男では徐々に仕事は減っていく。自己プロデュースをいくらすれど、さらに優れた事務所やコネの力に叶うわけもなく。とにかく売れない俳優・モデルなんてそれは悲惨だ。安いアパートに移り住んで、夜は馴染みのバーでバイトをしたり。とにかくがむしゃらに働いた。その努力と反比例するように俳優として、モデルとして人前に立つ事も少なくなった。
     その時点ですっぱり諦めて足を洗えばよかったものを、幼心に植え付けられた「ここでないと生きていけない」と言う強迫観念がラスティの足を絡め取った。そうして事務所の言うままに移籍させられた先で回される、金額に見合わない仕事を何件もこなし続けた。時にスタントも求められ、全身傷だらけにしながら完璧な姿を演じた。どうしてそこまで出来たのか今思うと分からない。ただ、いつか自分も空の下で胸を張って生きるのだと言う未来だけを今も昔も夢見ていた。 
     安い金でコキ使えるとあって、事務所の要求は回を増すごとに過激になった。疲れ果てた頭でポルノ男優の契約書にサインする直前に、そこから手を引いて連れ出してくれたのが同じ芸能事務所に所属していたオキーフだ。
     主に雑誌のモデルとして可もなく不可もなくといった頻度で活動していた年上の男は、物静かに紫煙をを燻らせる姿に父性でも感じたのか顔を合わせて数度で異様に懐いたラスティを邪険にはしなかった。金欠だと愚痴を零せば飯だと食堂に連れ立ち奢ってくれたし、スタントの仕事で負った怪我を放置された際、病院に担ぎ込み治療費を出してくれたのも彼だった。
     そうこうして気がつけば独立したオキーフの事務所に在籍していた。どうやって移籍したのかとか、そもそもどうしてこんなにも気にかけてくれるのかとグチャグチャの頭のままで詰め寄ったが彼は何も言わなかった。何も言わないのを良いことにラスティはオキーフの好意に縋った。その時には身も心も,既に彼に惹かれた後だったから。紆余曲折、ここも割愛するがアピールにアピールを重ね今やラスティはオキーフの唇を唯一勝ち取った男になったと言うわけだ。
     オキーフを慕って共に移籍したスタッフ達と細々とだが真っ当な仕事をして暮らしが安定した頃、とある現場でレイヴンと名乗る新進気鋭のアクション俳優に出会ってからラスティの環境は一変した。己の身ひとつで繰り出されるド派手なアクションもさることながら、彼はどんな人間でも演じてみせた。からりと笑う上背のある好青年から,影を纏った裏通りの金貸しまで,彼に演じられないものはなかった。あまりにも眩く生き生きと演じるレイヴンにラスティは圧倒された。その日以来ラスティは端的に言うとレイヴンのファン、図々しく願うのなら、ライバルになった。
     余りの入れ上げように世話を焼いてくれるマネージャー達からは「ほどほどにしないとオキーフさんから愛想つかされますよ」なんて忠言をもらう始末だが、新たな目標に出会ってしまったラスティには一ミリたりとも響かない。まさしく運命の出会いだとはしゃいでいた。
     そんな風に日々を過ごしいくつも季節が巡った後,一通り仕事が片付いてそろそろオフシーズンかなとオキーフと二人で旅行の算段を立てていた時、なんとあのレイヴンから映画出演の打診があった。なんでも彼の所属事務所の社長(彼は親しみを込めてウォルターと呼び捨てにしていた)がレイヴンの映画業界への売り出しを考えていて、その第一歩として彼を主演として一本撮ると言うのだ。オフシーズンを活用しての撮影になるらしく3部作を何期かに分けてと言うことらしい。そして、ラスティに振り当てられたのはレイヴンの戦友である二枚目なキャラクターだった。
     それを聞いたラスティは一も二もなく返事をした。喜びのあまりうっかりオキーフに相談する事も忘れていたが、彼はいつもと同じようにうんざりしたため息を零しつつもウォルターとアポイントを取りスケジュールを調節していった。この頃には確か、なし崩しでオキーフとの同棲に成功していた。彼が無言でベッドをクイーンサイズに買い替えた時には思わず両拳を天に突き上げた。セミダブルのベッドでギチギチに詰まりながら寝た日々が報われたのだから感動もひとしおだ。
     
     それから時は流れて封切られた『アーマードコア/レイヴンの火』は全く前評判がなかったにも関わらず、その人気はタイトルの通り瞬く間に燃え広がった。ハードな世界観にも拘らず特に女性のリピーターが多く、下火だった映画業界を押し上げる勢いの『レイヴンの火』の上映期間は何度も延長された。本名がそのまま役名となっている本作はウォルターの思惑通りレイヴンの名を方々に知らしめ、自ずとラスティの知名度もみるみる上がっていった。
     二作目の『アーマードコア/ルビコンの解放者』が放映されるとラスティの人気は飛ぶ鳥を落とす勢いで駆け上がった。元々ラスティは類稀なる顔のいい男だ、それに役に嵌まり込むタイプの性格もあったから戦場を駆けるセクシーな役どころはまさにハマり役で一度勢いがついたのならメディアに取り上げられる機会が爆増するのも仕方のない事だ。
     お嬢さん方にも人気らしく、最近では映画とは別口でレイヴンと二人での仕事依頼も増えた。ゆったりとした空気の流れていた事務所には新しく雇い入れた人が増え、オキーフも経営者として忙しい日々を送るようになりすれ違いの生活が続いた。寂しくなかったといえば嘘になるが、漠然とこの案件を乗り越えた先にオキーフの隣で、かつて夢見た通り胸を張って空の下を歩く自分が居ると思った。隈を濃くして眠るオキーフの目元に擦り寄りながら、ラスティはこれ以上ないほどの決意を胸に目まぐるしく過ぎ去る日々を懸命に生きた。
     『レイヴンの火』『ルビコンの解放者』の大ヒットを受けて三作目であり完結編の『アーマードコア/賽は投げられた』はかなり大きな箱で試写会を行うと聞いて、事務所に詰めていたスタッフ全員で歓声をあげた。その会場で舞台挨拶ができることは映画俳優の憧れであり、作品にとっても非常に名誉なことだった。
    「貴方も来てくれるだろう?いい席を用意してもらうから」
    「悪いなラスティ、その日は別件がある」
     喜びに抱きついたままの姿勢でオキーフを伺うも、訳あり顔をして背中をトントンと叩かれた。誰よりも貴方に来て欲しいのだ、と喉まで出かかった声を飲み込む。顔に出さずとも、ラスティの成功を誰よりも喜んでいたのはオキーフだ。何か事情があるんだろうとなんとか心を押さえつける。何か察したように、謝罪と共に額に落とされるオキーフの唇が虚しかった。
     ラスティはオキーフを心の底から愛していたし,同時にその人となりを信用していた。よもや心が離れるなんて事はないと思うが,自分の晴れ舞台に彼の姿がないと言うのは我慢したとて気落ちするには十分な出来事だった。

     試写会当日、それぞれ役の衣装を身につけた俳優陣が壇上に上がると野太い歓声と黄色い歓声が場内を埋め尽くした。ラスティは『V.Ⅳラスティ』に入り込んだまま慣れた手つきで客席に手を振る。司会の進行に合わせてタイトルが表示され、出演者が順々にコメントを述べていく。三作目は前二作品と演出,ストーリーが大きく変わるらしく新たな登場人物や,ストーリーなどは出演者には全て知らされずに制作された。
     新キャストのお披露目のコールがなされ,会場の照明が緩く落とされる。撮影場所も時期も別々なので一体誰が現れるのだと面白そうに目を瞬かせるラスティたちをよそに,訳知り顔のレイヴンはニヤリと笑ってラスティを煽った。

     スポットライトに照らされて壇上に現れたのは、胸にAMのロゴ入りスーツを着た若手舞台女優と,ヴェスパーの制服に身を包み、徒花のエンブレムを胸に冠したオキーフその人だった。
    「聞いてない!!!!!」
    「言ってないからな」
     脳幹を揺らす衝撃に、ここが壇上なのも忘れて絶叫するラスティを見て「これが見たかったんだ最高」とレイヴンは大口を開けて笑った。二人の来歴が簡単に説明される間もラスティはオキーフの隣を陣取って物言いたげに睨め付ける。落ち込んだ時間を返せだの、人が悪いだのぶつぶつと文句をつけるラスティをいなしながら、オキーフは上映準備の為に最前列の座席に腰をつけた。そしてわざと離れて座ろうとする、ラスティの手を引いた。

    ーーー

    「先に行くぞ…ラスティ…」

     バカみたいに泣いた。目の前でオキーフが残した今際の際、最後の呟きを叩きつけられて。声を上げることだけは我慢して、肩をびくびくと振るわせながらラスティは泣き続けた。“V.Ⅳラスティ”と“V.Ⅳオキーフ”がどんな関係だったのか、演じたラスティですら詳しくは知らない。引き裂かれた彼らの日々が自然と自分達に重なった。役に同調して流れる涙のまま、隣に座るオキーフをもう一度恨めしげに睨む。私好みの堀の深い顔が悪戯の成功を喜ぶこともなく、凪いだ色のままスクリーンに向けられている。己の燃えゆく様を真っ直ぐ見つめる彼に、それでもラスティの肩に回された優しい腕が慰めるように愛撫を繰り返す。だから、私は彼の顔を無理に引いて泣き濡れた瞳を晒してこう告げた。
    「死んだ後も一緒に居てくれるのか」
    オキーフ、と掠れた声が出る。
    「…見た通りだ、ラスティ」
     肝心なことはいつだって口にしない人からの最大級のプロポーズに、言葉にすべきことは何もなかった。ラスティは着飾ったせいか、いつもより少しだけ潤った唇に噛み付くようにキスをした。隣でレイヴンが口笛を吹く音が聞こえたが構うものかと、角度を変えて何度か唇を啄み、そうして離した視線の先にやりきったのだと満足そうに眦を緩めるオキーフがいて。「オキーフ、貴方もしかして人並みに嫉妬していたのか?」レイヴンと私の仲に。と悔し紛れに毒づいた。

    ーーー

     大成功を収めた試写会の最中に行われた俳優同士の熱すぎるスキンシップが話題にならないわけもなく、SNSは燃え上がり掲示板では議論が紛糾し、日夜ワイドショーを騒がせ映画本編と同程度の盛り上がりをみせたが、映画公開からしばらく後にパパラッチされた二人が仲睦まじく自宅に帰宅する記事を持って概ね好意的に受け入れられた。それは冬が明け、陽気が暖かくなる頃の話だった。

     
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