Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    mmikumo

    @mmikumo 文を書きます。ツシマの石竜、刺客と牢人好きです。渋くてカッコ良い壮年以上のおじさまたちをだいたい書きます。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 32

    mmikumo

    ☆quiet follow

    現代【石竜、テンゾ&仁、牢人と刺客】が酒飲んでるだけの話です

    酒飲み「先生、笑って~」
     大層機嫌良く、行儀悪く酔っぱらった竜三は、何が楽しいのかへべれけの顔をスマホで撮影している。
     酒臭いゴリラに肩を組まれ、強引に小さい画面に収まるように撮られて思わず無の顔になった。
    「お前、それをどうする気だ」
    「仁に見せるー」
    「バカ、止せ」
     へへへ、と笑いながらしでかした。絶対に、ろくでもないことになる。
     複雑な顔をする仁、そしてそれを見る志村、その怒りの矛先の向かう先は…地獄のドミノ倒しの幕開けだ。
    「お前、ほんっとにやらかしてくれたな」
    「何でぇ?」
     戦犯はふにゃふにゃと横になり、すやすやと眠り始める。
    「なるようにしか、ならんか」
     気付けのように飲んだ酒は、苦かった。

     カランカランと、ベルが大きく鳴る。最後の客を送り出した後に入ってきたのは、仁であった。カウンターの中で片付けを始めるか、と袖を捲っていたテンゾーは驚いた顔で仁を見た。
    「どうした。今日はシフト休みだろ」
    「客として来た。飲ませてくれ」
     もうすぐ、日付が変わる。そんな時間に過保護な保護者は何も知らんのか。
     どのように行動すれば保護者を怒らせないかと頭を過ったが、テンゾーは仁の顔を見て、その考えを消し去った。
     いつもだいたい穏やかな好青年が、見るからに荒れて落ち込んでいる。
     テンゾーはその非常事態に、グラスを2つ取りだし、残った惣菜を見繕って温めた。
    「悪いな、残り物しかないが食うか?」
    「食う」
     仁がぐっ、とグラスを傾けチキンにかぶりつく。夜中のやけ食いやけ酒とは、今日は随分悪い子だ。
    「竜三が、先生と飲んでる写真を寄越したのだ…」
    「うん」
    「それを見たとき…何かモヤモヤした気持ちになった。友達なら、楽しそうだな、とか俺も呼べとかそんな風に思うだけだろうが…何か、頭が熱くなって…」
    「…うん……」
     テンゾーはパエリアの残りを食べながら頷いた。その感じは自分にも覚えがある。
     嫉妬とか、寂しいとか。自分では何ともできない、たちの悪いやつだ。
    「…今までずっと、竜三の隣には俺がいたのに」
    「んー……」
     グラスを空けて、今度はしょんぼりとしたので、テンゾーはもう一杯注いだ。
    「寂しいな…俺も若い頃はそういう思いをしたこともあったよ」
     テンゾーが手を伸ばし、仁の頭をぽんぽん、と撫でる。仁がよしよしを享受してから、顔をあげた。
    「テンゾーさんは優しいな。先生よりずっと性格も良い」
    「御大と比べられてもな。まあさ、今日は飲め。気がすむまで付き合うぞ」
    「テンゾーさん…」
     はや、少し頬を赤くした仁が感激した顔で言う。
     弱った奴はどうにも見過ごせない。テンゾーは温めたミネストローネを差し出しながら、本腰をいれて向かい合った。

    「おかしら!飲んでる」
     突然の通知音、スマホを弄っていた白と青が色めき立つ。今日は良い魚を手に入れたから鍋で飲む、と4人で集まった。犬とねこと遊ぶ白と青をよそに、いつまでも飲んでいた医者の伊吹と、元傭兵の十郎は顔を見合わせた。
    「ラインか」
     それぞれのスマホにも通知が来ている。何やらかわいい系のポーズをとる竜三と抱き寄せられた石川御大。家飲みらしい。竜三の、ちょっとよれたTシャツからのぞく胸は今日もすごいでかい。谷間がある。谷間には毛が生えているが思わず見てしまう。
    「立派な大胸筋だな」
    「なんかつい目が行くよな」
     わざわざ拡大してそこを眺めていると、しばらくしてテンゾーと仁の写真が現れた。
     夜のテンゾーの店、仁とたぶんテンゾーの見切れた映像。初めての自撮りのように傾いた画面。こっちも楽しくやってる、と添えられた仁のメッセージの日付はとおに変わっている。
     ムードのある店内でぴったりと身を寄せあってるテンゾーと仁。心持ち逃げの体制のテンゾーの腕をぎゅっと抱きよせる仁のほんのりとろけた顔はレアだ。 
     伊吹と十郎は再び顔を見合わせた。
    「匂わせみたいな画像だな。張り合ってんのコレ?」
    「ぶれてるし、酔ってるしただ撮影下手なんだろ」
     伊吹が怪訝そうな顔で顎髭を撫でる。
    「にしてもこりゃあ…あの過保護殿が見たらよ」
    「…気にするな、百鬼帯の話だ。黄金で右往左往してる俺らにゃ、雲の上で嵐が起こるだけだから関係ない」
    「うん…それもそうだな…そうあってくれ」
     そう言って二人、遠い目で白と青を見る。
     ラインには酒に反応した行善がオススメのつまみレシピを乗せ、白青がおれに作れ!と伯父御が仁に迎えに行くから返事をしなさい!と呼び掛けて無視されている。
    「オンライン飲み会するか!」
    「お前までやらかすのはよさんか」
     混沌にきゃっきゃする白を伊吹が嗜める。
    「今日も平和だな」
     牢人ふたりは通知を切って、再び酒を飲み始めた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🍻🍻🍻💖💖💘💘
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    いしえ

    PASTしぶから再掲。登場当初のロペスは作中で無欲と扱われていたけれど、実のところ彼にとってみれば、王に仕えたいというその願いが持つ意味がすご~~~~~~~く重かったんだよねぇ!!!!!というのと、それをだれもしらないんだよね!!!っていうのが最高で…無欲そうに見えるロペスが大願を成就させているところ本当に好き…という気持ちを、ロペス一人称文で少しアウトプットしたもの。巨大感情隠した従者のイデアで理想です
    ここに、在るは幸運がため/マルティン・ロペス(アルカサル) 「なんとまあ、欲の無い男だ」。諸侯らが口々に、私を謙虚と褒めそやす。厳しい審判の眼を持つ王さえ、私をそう、賛美なさる。誰もが、ご存じないのだ。その実私が、生涯をおいてもあるいは遠く及び得なかったかもしれぬ大願を、既にこの双肩に得たのだと。十六の少年が、不意の家督において心のささえにしたカスティリア国王、十五で即位したかつての少年ドン・ペドロ王そのひとのお側近く仕えるその至上を、その幸運を! それこそが、私の何よりの強い願望で、悲願で、意欲で、目標だったことを。誰もが、ご存じないのだ。
    「恐れながら――」
     王の取り計らい、即ちサバ読みに応じたのも、お側仕えの夢を快く受け入れてくださった主君への、王のご厚意への、誠意だと思ったからにほかならない。たとえば神がこの方便をとがめたとても、私はそれを、恐るるまい。ドン・ペドロ王そのひとに、そのお心に適うのなら、私は地獄も恐れはしない。
    2121