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    mmikumo

    @mmikumo 文を書きます。ツシマの石竜、刺客と牢人好きです。渋くてカッコ良い壮年以上のおじさまたちをだいたい書きます。

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    mmikumo

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    🍞🚅の🌸🌳親子とたそがれ○兵衛のヨゴさん、たそがれ先生の秋の芋煮会です

    芋煮会10月の終わり。里芋がたくさんとれたから、芋煮会をしないかとたそがれ先生からお誘いがあった。
     山形県の庄内地方が出身の先生は、秋になると郷土料理が恋しくなるという。父と俺と息子は、喜んでお土産持参で馳せ参じる。
    「うちの故郷では、豚肉に味噌味が定番での。他にもしょうゆと鶏とか、牛肉を使うとか色々ある」
     先生の家の庭でキャンプのコンロに火を起こし、鍋をかける。バーベキューと一緒にやることもあるそうだが、そこまでの大人数でもないし、酒もないので今日はなしだ。
     青く澄んだ秋の空。紅葉した葉が時折はらはらと風に舞う。すこし肌寒いが、秋らしい涼しさが心地よい。庭先に思い思いに座っての野遊びは、何だか楽しいものだ。
     ワタルは先生と一緒に、鍋をかき回したりしている。この頃料理に興味を持っていて、芋煮の作り方を教えてもらうと朝から張りきっていたのだ。
    「芋っこ、柔らかくなったかの?」
     おたまにすくった芋に竹串を刺してみて、ワタルが頷く。
    「柔らかくなったよ。ふわふわしてる」
    「ふわふわか。それはうまそうだ」
     にこにこと顔を見合わせて笑う二人は、とても楽しそうだ。まるで実の親子のように懐いているし、受け入れてくれている。
     それを嬉しいと思いながらも、ちょっと、胸がチクリとする。自分は実の父だというのに、父親らしくふるまえるようになるのにだいぶかかってしまった。
     自分のことで手一杯で、幼いワタルにさえ迷惑をかけてきた。そして今でも自分のことに手を焼いている。
    「おい、シゲル。おとーさんがしょげてるぞ」
     いきなり声をかけられて、そちらを向く。烏龍茶片手にヨゴさんがにやにやと笑っていた。
     かつて父と同じ組織にいて、兄貴分であった人。父と同じくホワイトデスに復讐を誓った協力者で、フィクサーとして世話になっている。そしてたそがれ先生のパートナーだ。
     飄々としたその人が鍋の横で勝手に焼いているソーセージをかじっている。この人は見ていないようで、その実、何でもお見通しで少しこわい。
    「しょげてなんて、ないです……」
     そう言い返すとそばにいた父が苦笑して、ヨゴさんをそっと嗜めた。
    「ゆっくり歩む子です、あんまりいじめないでください」
     父がこちらを見て、微笑む。
    「先生は、男一人で娘さんを二人も育てた大ベテランだ。同じにはすぐにはなれんさ」
     同じく男手一つで俺を育てた父が言う。そして、ああ見えてヨゴさんも娘がいて子育ての経験もあるらしい。
     父親ばかりが集まっている中で、自分が一番若造だ。
    「すまんな、ユウイチくん。ワタルくんを見てると娘のちっちゃい頃を思い出して、懐かしくなってしもうた」
     先生がワタルを見て、目尻を下げる。
    「ワタルくんはユウイチくんに似て良い子だな」
     先生がワタルに向けたのと同じ、優しい眼差しでこちらを見つめる。
     その視線に照れ臭いのと同じくらいうれしいと思ってしまい、思わず顔を覆った。
    「いいのかあれ。先生のうちの子になりたそうな顔してるぞ」
     ヨゴさんが今度は父をからかう。父が眉根をちょっと下げて、こちらを見た。
     そして何かを言おうとして…俺は思わず遮っていた。
    「俺は親父のうちの子で良かったと思ってます。今までも…これからも」
    「!」
     親父が一瞬かたまり…そして、満面の笑顔を浮かべる。
    「ユウイチ……」
     先生が父と俺を交互に見て、微笑んだ。
    「ユウイチくん。君がそう思うように、ワタルくんだって同じだと思うっす」
     先生がワタルの頭を撫でて笑った。
    「ぼく、おとうさんもおじいちゃんといっしょがすきだよ!」 
    「だよなぁ。な、ワタルくん、たけぇたけぇしよか」
    「うん!」
     先生がワタルを軽々と持ち上げる。きゃっきゃとうれしそうにはしゃぐワタル。すっぽりと先生の腕に抱っこされて、下ろされる。
     そして降りてきたワタルはこちらに走ってきて、俺にぎゅっと抱きついた。
    「おとーさん!」
    「ワタル…」
     柔らかい、温かい、こどものぬくもり。ぎゅっと抱き返すと抱き返してくれる。それにまた、嬉しいのとごめんな、という気持ちで胸がきゅっとする。
    「さすが人望が溢れ返ってるな」
     ヨゴさんが先生の肩に手を回して笑う。先生がヨゴさんを見上げて言う。
    「良かったなぁ。ヨゴさんも寂しかったら抱っこでも、たけぇたけぇでもしてやっからな」
    「ほんとにやれっからな、先生は」
     ヨゴさんが苦笑して、肩をすくめる。先生がお椀を手に取り、鍋を見て言った。
    「さぁ、食べよ。今年の芋煮も美味すそうだよ」
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