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    らいし

    一次創作のみならず、色々なジャンルでかいています!
    らくがきなどは新しいページを作らずに編集で追加していっています!
    いちページにたくさん載せているのでよかったら見ていってね!!

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    らいし

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    一次創作の人外種たちの事件簿です
    とりあえず、おはなしの導入までかけたので仮においておきます
    続きは漫画や挿絵も含まれるのでどういうふうに載せるか考え中...

    #オリジナル
    original

    ご祝儀泥棒を捕まえろ!「どうやら犯人は認識阻害の魔導具を持っているらしくてな」
    小麦色の肌と柳葉色の髪をしたユーリン睦月は何よりも立ち姿が凛々しい。そんな彼女の発言に黒髪の少年が愚痴る。
    「擬態できない人外種には必須アイテムなのに、悪用されるなんて肩身が狭くなってしょうがねぇ」
    「あれ?萩原さん、魔導具使えたです?」
    久しぶりにBarモンスターズの地下に呼び出された双子の兄弟、その兄の方であるレプティスの問いかけに、萩原はムスっと口を尖らせた。
    「……俺のスキルが邪魔して使えない」
    ぶーたれる萩原も、擬態ができない人外種のひとりである。フラウロス萩原……黒豹の耳と尾、それに加えて鷲の翼をもつ魔族である。ベースは人間に近い姿なので、魔導具がなくとも帽子やリュックで隠せば出歩くことができるが苦労も多い。
    他にもこの人間の街、鏡夜市には人と違う姿を持ちながら暮らす人ではない種族が大勢いる。この街の特殊性もあるが、そんなことが可能なのは人間の認識を狂わせ、違和感を感じなくさせるアイテムがあるからだ。
    それを悪用され、魔導具の使用を禁止されてしまうと困る人外種が大勢いる。だからこそ、やっていることがみみっちくても早急に捕まえてしまわなければならないのだ。
    「それはともかく、なんでご祝儀泥棒なんて小物相手に俺が呼び出されるんだ?」
    不服そうな双子の弟、フォッサを宥めるように店の支配人、奈良と名乗る白髪の老人がおだやかに声を掛けた。
    「役不足と言いたいのは分かります、がどうしても人手が必要でして」
    基本的に双子が呼び出されるのは戦闘能力が必要な派手な仕事ばかりだった。人外種と人間とのもめ事を解決するこの店の裏の仕事は、普段からこういった雑用のようものも多いのだろう。人間の高校生としての生活がある双子を慮って、どうしても他の人員では補えない、高い戦闘能力が要求される仕事だけを振ってくれていたのだ。
    高位の吸血鬼である双子は、今この街にいる人外種の中でも飛びぬけて強い。プライドが高いと思われているフォッサには不服としか言いようのない仕事だろう。詳細を聞く前から断りかねないと考えられていた。
    そこで声を掛けたのはどこか含みのある笑みを浮かべたユーリンである。健康的な小麦色の肌をしたクールな美人である。
    「フォッサ、お前を呼んだんじゃなくて用があるのはレプティスの方でな」
    「私ですか?」
    時々何を考えているか分からないが、弟に比べればおっとりとした穏やかな様子の兄ならこういった用も引き受けてくれるだろうと、ユーリンはアタリを付けていた。
    「そう、適任が他にいないんだ。花嫁をやってくれ」
    「は?!」先に声を上げたのはフォッサの方だった。
    「私ですか?!」
    一拍遅れて目を丸くしたレプティスが首を傾げた。

    「……つまり、犯人が犯行に及ぶのは必ず新郎新婦の顔を見てからだと」
    今回捕まえる犯人のいつもの行動と自分に求められている役割を聞いて、レプティスは困った様子で眉を下げっぱなしにしている。
    どういう基準かは分からないが、犯人がご祝儀を盗む額を新郎新婦の様子を見て決めている節があるのだそうだ。
    「そう、だから現行犯で捕まえるにはどうしても花嫁と花婿がセットで必要でな」
    「私、男なんですが?」
    「大丈夫、割に顔も幼い方だから性別ぐらいごまかせる」
    かつ、花嫁になれる年齢にも偽装できる程度の見た目年齢が丁度良かったのだとユーリンは言う。
    「そもそもユーリンさんもフェンリラさんもいるのになぜ私が?」
    「フェンリラはブライダルホールの人間と話ができないだろう?今回は休みだ。 あたしは今回は実働の方。人手が足りなくてな」
    この場に姿を現していないフェンリラはプラチナブロンドの美しい髪と、狼耳と尾をしている美女である。狼女なのだが、満月の夜以外は気が狂っていてまるで話が通じない。破壊に関しては絶大な力を発揮する人員なのだが……今回は人間の結婚式場を借りて捕物をする以上、いつ人間のスタッフと話をする機会が来てしまうか分からないため作戦から外すしかなかったのだ。
    「あの…私が花嫁さんなのは1000歩ぐらい譲ってもいいですが……花婿はどうなるのです?」
    「ああ、それならワタクシが」
    奈良翁がひょいっと片手を挙げて名乗り出た。
    「奈良さん?!」
    「じーちゃんは止めとけって、オレは言ったぜ?」
    「う~ん…あたしもどうかと思ったんだが、他にやれる人がいなくてな?」
    萩原とユーリンが苦笑しつつも口々にそんなことを言う。
    もちろんレプティスは人間としての年齢を成人と偽ることになるだろうが、外見70歳の老人と幼な妻が新郎新婦では犯罪臭が漂い過ぎである。
    かつ、凛々しいとはいえ女性のユーリン睦月と、人間の年齢で中学生ほどにしか見えないフラウロス萩原では新郎を務めるにはどう考えても無理がある。
    「フォッサはこんな雑用はしたくないと…言いそうだし……な?」
    再びユーリンが含みのある笑みを口元に浮かべて、ちらりとフォッサを見る。
    「あ~!分かった!!それはもう、俺にやれって言ってるんだろ!?」

    「やる!花婿役! ただの役目だろ??だったら、やる」

    ユーリンと奈良翁がにんまりと目くばせを交わすのを、苦々しい気持ちでフォッサは見やった。
    「最初っからそのつもりで俺も呼び出したんだろうが?」
    「まあな」
    前は兄弟仲が良くなさそうだからそのまま頼んでも拒否されるかと思ってな、とユーリンが言う。
    「しかし、実際に揃って来てもらったら……今はそんなに仲が悪そうには見えなくてどうするかとは思ったんだが、当初の予定通りの茶番を組ませてもらったわけだ」
    「う~ん……最近は兄貴の方からは嫌われていないみたいだから、まあ…俺もそれなりに対応しているけど…」
    「そうか?どっちかっていうと、フォッサがレプティスを嫌いなんだと思っていたんだが」
    「噓は言ってない」
    人付き合いの苦手なレプティスにとっては、どうやら『積極的に話しかける』のが嫌がらせのつもりだったようで。それが周りから見れば「弟を構いに行く兄と、それを嫌がる弟」にしか見えなかっただけなのだ。細かい心情までは無理だが人の気持ちの読める能力を持っているフォッサにとってはその、話しかけてくる時の兄の敵意がたまらなく嫌で反抗していたに過ぎない。
    ただ困ったことに、兄が嫌がらせをやめたということは『なかなか話しかけてこない』ことになってしまっている。
    逆に「私と話してもつまらないだろう?」だとか「フォッサは友達と楽しく過ごして」とか言われてしまうのが、仲良くしたい弟としては切ない。心底好意から言っているのが分かるから、言葉で頭から否定しても信じてもらえるかが読めない。
    結果、前とは逆にフォッサの方からレプティスの傍に居座ることが多くなったため、周りからは「何があった?」と思われているようだ。
    「さて、役割分担を確認しますよ」
    ぽんと奈良翁が手を打った。
    「先に会場に罠を設置するのはワタクシ。実働は萩原くんがメインでユーリンさんとワタクシも補佐」
    萩原くんは実際に走り回りますから、都合のいい罠の配置図をこれから作成してください、と翁は続けた。
    「新郎新婦役はマグナ家の双子さんにお願いします」
    翁はさらに、犯人が疑わないよう賑やかし程度の参列客の手配をすると言う。タダ飯で釣られてくれる力は無いが気の良い連中がすぐに集まるだろう。
    「というわけで、あたしの今からの仕事はお前たちの衣装選びの手伝いだ」
    しっかりとした厚みのあるウェディングドレスのカタログを手に、ユーリンが兄弟に向かって楽しそうにニヤリと笑った。

    20240117,
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