大事な決めごと「私はフォッサみたいに気持ちを見る能力がないから、ちゃんと言ってくれないとわからないよ」
「俺だって雰囲気ぐらいしか読めないし、細かく心の中まではわかるわけじゃないぞ」
「私が…気持ちを言葉にするのが…その、苦手だから…こっちがちゃんと言えないかもだけど……」
「兄さんは自分の感情を言語化してない感じがする」
「だって、誰かに言葉にして伝える必要なんてなかったから…」
城で人に囲まれて暮らしていたフォッサに比べて、旅をしながらたったひとりで生きてきたレプティスはどうしてもコミュニケーション能力が低いところがある。
「俺が最後まで聞くから、うまく言えなくても話しかけてくれていいから」
「いやじゃない? いやじゃないって言っても、フォッサはうそつくから信じられないな」
「ごめんって……じゃあ、こうしよう」
フォッサが自分より少し細い兄の手を取った。両手を軽く握って顔を覗き込む。逸らされる視線を追って首を傾けた。
「……なに?」
「こっち見て、兄さん」
レプティスが意図を理解しないまま弟を見つめ返して瞬きをし、こてんと首をかしげる。あざとい仕草だが天然でやってるのだからおそろしい(かわいい)
「こうやって両方の手を繋いだら、ちゃんと話を聞いて欲しい時ってことにしよう」
その時は何を置いても必ず話を聞くから、とフォッサは続けた。
「それと、こうしてる時は絶対うそつかないから」
「本当?」「うん」
「うそじゃない?」「うそじゃないよ」
フォッサがまっすぐに見つめ返してくる様子を見て、レプティスが安心したようにほほえんだ。
Raishi 20240309,