Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    azusa_n

    @azusa_n

    ☆quiet follow Yell with Emoji ❤ 💜 💛 💙
    POIPOI 69

    azusa_n

    ☆quiet follow

    モクルク。うだうだ考えモ+なんやかんや腹決まってルの朝食パンケーキと食後のコーヒー。

    診断メーカー。
    「知らない方が幸せなことだってある」で始まり、「覚めない夢はない」で終わる物語。840字以上

    知らない方が幸せなことだってある。
    例えば、さっき使ったこの手拭いは全然洗ってないとか。
    お前さんが見逃した占いでは今日の運勢は最悪だったとか。
    ……どれだけ俺がどす黒い願いを抱いているのかだとか。
    お前さんはいつだって真っ直ぐで眩しいから、こんな汚い所は見せたくない。陰に飲まれて輝かなくなってしまうのは嫌だ。だからこうして距離を取る。
    無邪気に知りたいなんて、頼むから言わないでくれ。
    格好付けた先輩でいさせてくれれば、それが一番適切な位置だろうから。


    ダイニングに戻ってきたルークのシャツが変わっている。
    シャツに盛大にチョコレートソースをかけて洗面所へ駆け込んで行ったが、応急処置じゃどうにもならなかったらしい。
    占い通りのアンラッキーな一日の始まりと言ったところか。

    コーヒーを2杯分淹れてダイニングに戻る。
    冷めたホットケーキを再び頬張るルークに声をかけた。
    「ルークはさ、舞台裏とか興味ある?」
    「ニンジャジャンのショーの、ですか?」
    「そうそう。 役者連中だってステージ以外じゃ印象違うし、夢壊しちゃうかもしんないけど」

    ニンジャジャンのロゴ入りマグカップとシュガーポットをルークの傍に置く。感謝の言葉が返ってきた。
    「うーん、役者と役は違うものですから違うのは当然なんじゃないですかね」
    「結構いるじゃない。私生活と役を同じって考える人」
    自分用のコーヒーにミルクを注ぐ。茶色がかった黒色の澄んだ水色に途端に濁った茶色の渦を描いた。
    一度混ざったらもう戻らない濁り。知ったらもう戻れない。
    「ああ、いますね。アイドルが結婚してショックを受けるとかそういう話ですよね。 僕は一応、分けているつもりなんですが」

    目の前ではどんどん白い砂糖が茶色に染まっていく。だが、どれだけ入れても水色は変わらない。きっとルークは俺と違って裏も表もなく、澄んだままかもしれない。
    随分と中身の減ったシュガーポットの蓋を閉めたところでルークが顔を上げた。

    「むしろ、舞台上では本心と違うのを感じさせもせずに夢を見せてくれてるんだなぁって思ったら、知らないときより好きになっちゃうかもしれないですよ」
    「そういうもんかね」
    混ぜてもいない斑模様のコーヒーを一口。随分と苦味の強い豆だった。
    ルークはカップに入れたスプーンをひたすら回している。……溶けきるのかは謎だ。

    「役と同じところを見つけて嬉しくなることもありますけどね。同じところも、違うところも。どっちも見れたらお得ですよね」
    「なるほどね」
    ギャップの程度によるだろうけど。

    砂糖を溶かしきったのか、それとも諦めたのか、ルークが手を止めて輝く瞳をこっちに向けた。
    「それでモクマさん、こんな話をしたと言うことは、もしかして!」
    「そ。控え室にだれか連れてきていいって言うからさ。明日なんだけど、見たい?」
    「はい、是非とも!」
    ルークのカップの中身より甘そうな、澄んだ笑み。
    これは俺みたいに変わって欲しくないな。

    「あ、モクマさん、ミルクとってもらっていいですか?」
    「ほい、どーぞ」

    俺の心の内なんて知らない本人はミルクにチョコレートソースまで加えて激甘カフェモカ作ってるけど。
    「僕は役も役者も大好きなので、ギャップも共通点も、ついでに悩み事の内容も。なんでも知れたら嬉しいですよ、モクマさん」
    そんなことを顔を赤らめて言うものだから、思わず飲んでたコーヒーを吹き出した。

    「え、ちょっ」
    当然、真正面のルークは直撃を食らう訳で。
    コーヒーまみれのルークは白かったシャツを見た。
    「また着替え……、いいや。もう食べ終わってからにします」
    「ごめんね」
    「いえ、大丈夫ですよ」
    二人でテーブルの上を拭く。ふとさっきのテレビを思い出した。
    「あー、そういやルーク、さっき占いで運勢最悪だった」
    「なるほど、それで…。先聞いとけば良かったですね」
    同じ事象が起きてもせめて着替えの回数は減らせたかもしれない。
    「聞いてから判断するってのも、アリなのかね」
    「そりゃもう。 だって聞かなきゃ選択できませんから」
    「悪いことでも?」
    「悪いことなら尚更だと思いますけど」
    当然のことだと言いたげな顔で。


    とりあえず大雑把な掃除を終えてもう一度席について。
    「あ、ほんのりコーヒーの味がする」
    冷めて、アクシデントもあった最悪のはずのパンケーキを食べても心底楽しそうに笑い出したルーク。
    頼れる先輩の夢から起こしても、まだルークなら隣で笑ってくれるかもしれない。起こす勇気はまだないけれど。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖🙏💞💞☕💘💘💘☕☕☕☕😋😋💖☕💖💖💖💗💗💗☺☺💞
    Let's send reactions!
    Replies from the creator