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    azusa_n

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    azusa_n

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    モクルク。うだうだ考えモ+なんやかんや腹決まってルの朝食パンケーキと食後のコーヒー。

    診断メーカー。
    「知らない方が幸せなことだってある」で始まり、「覚めない夢はない」で終わる物語。840字以上

    知らない方が幸せなことだってある。
    例えば、さっき使ったこの手拭いは全然洗ってないとか。
    お前さんが見逃した占いでは今日の運勢は最悪だったとか。
    ……どれだけ俺がどす黒い願いを抱いているのかだとか。
    お前さんはいつだって真っ直ぐで眩しいから、こんな汚い所は見せたくない。陰に飲まれて輝かなくなってしまうのは嫌だ。だからこうして距離を取る。
    無邪気に知りたいなんて、頼むから言わないでくれ。
    格好付けた先輩でいさせてくれれば、それが一番適切な位置だろうから。


    ダイニングに戻ってきたルークのシャツが変わっている。
    シャツに盛大にチョコレートソースをかけて洗面所へ駆け込んで行ったが、応急処置じゃどうにもならなかったらしい。
    占い通りのアンラッキーな一日の始まりと言ったところか。

    コーヒーを2杯分淹れてダイニングに戻る。
    冷めたホットケーキを再び頬張るルークに声をかけた。
    「ルークはさ、舞台裏とか興味ある?」
    「ニンジャジャンのショーの、ですか?」
    「そうそう。 役者連中だってステージ以外じゃ印象違うし、夢壊しちゃうかもしんないけど」

    ニンジャジャンのロゴ入りマグカップとシュガーポットをルークの傍に置く。感謝の言葉が返ってきた。
    「うーん、役者と役は違うものですから違うのは当然なんじゃないですかね」
    「結構いるじゃない。私生活と役を同じって考える人」
    自分用のコーヒーにミルクを注ぐ。茶色がかった黒色の澄んだ水色に途端に濁った茶色の渦を描いた。
    一度混ざったらもう戻らない濁り。知ったらもう戻れない。
    「ああ、いますね。アイドルが結婚してショックを受けるとかそういう話ですよね。 僕は一応、分けているつもりなんですが」

    目の前ではどんどん白い砂糖が茶色に染まっていく。だが、どれだけ入れても水色は変わらない。きっとルークは俺と違って裏も表もなく、澄んだままかもしれない。
    随分と中身の減ったシュガーポットの蓋を閉めたところでルークが顔を上げた。

    「むしろ、舞台上では本心と違うのを感じさせもせずに夢を見せてくれてるんだなぁって思ったら、知らないときより好きになっちゃうかもしれないですよ」
    「そういうもんかね」
    混ぜてもいない斑模様のコーヒーを一口。随分と苦味の強い豆だった。
    ルークはカップに入れたスプーンをひたすら回している。……溶けきるのかは謎だ。

    「役と同じところを見つけて嬉しくなることもありますけどね。同じところも、違うところも。どっちも見れたらお得ですよね」
    「なるほどね」
    ギャップの程度によるだろうけど。

    砂糖を溶かしきったのか、それとも諦めたのか、ルークが手を止めて輝く瞳をこっちに向けた。
    「それでモクマさん、こんな話をしたと言うことは、もしかして!」
    「そ。控え室にだれか連れてきていいって言うからさ。明日なんだけど、見たい?」
    「はい、是非とも!」
    ルークのカップの中身より甘そうな、澄んだ笑み。
    これは俺みたいに変わって欲しくないな。

    「あ、モクマさん、ミルクとってもらっていいですか?」
    「ほい、どーぞ」

    俺の心の内なんて知らない本人はミルクにチョコレートソースまで加えて激甘カフェモカ作ってるけど。
    「僕は役も役者も大好きなので、ギャップも共通点も、ついでに悩み事の内容も。なんでも知れたら嬉しいですよ、モクマさん」
    そんなことを顔を赤らめて言うものだから、思わず飲んでたコーヒーを吹き出した。

    「え、ちょっ」
    当然、真正面のルークは直撃を食らう訳で。
    コーヒーまみれのルークは白かったシャツを見た。
    「また着替え……、いいや。もう食べ終わってからにします」
    「ごめんね」
    「いえ、大丈夫ですよ」
    二人でテーブルの上を拭く。ふとさっきのテレビを思い出した。
    「あー、そういやルーク、さっき占いで運勢最悪だった」
    「なるほど、それで…。先聞いとけば良かったですね」
    同じ事象が起きてもせめて着替えの回数は減らせたかもしれない。
    「聞いてから判断するってのも、アリなのかね」
    「そりゃもう。 だって聞かなきゃ選択できませんから」
    「悪いことでも?」
    「悪いことなら尚更だと思いますけど」
    当然のことだと言いたげな顔で。


    とりあえず大雑把な掃除を終えてもう一度席について。
    「あ、ほんのりコーヒーの味がする」
    冷めて、アクシデントもあった最悪のはずのパンケーキを食べても心底楽しそうに笑い出したルーク。
    頼れる先輩の夢から起こしても、まだルークなら隣で笑ってくれるかもしれない。起こす勇気はまだないけれど。

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    emotokei

    DONE #チェズルク版ワンドロワンライ
    第8回お題「海」お借りしました。
     ――潮騒の音が聴こえる。

     ミカグラは島だから、四方を海に囲まれている。
     それはもちろん知っていたのだけれど、夏場と違って肌寒さを感じる時期しか知らなかったから、あまり実感はないままでいた。DISCARD事件の捜査の合間、海へ足を向ける事はついぞなかったし、労いにとナデシコさんが用意してくれた保養地は温泉で、長い時間を過ごしたマイカの里は山あいだ。
     海沿いの街をそぞろ歩くことはあっても、潮の香りが届く場所には縁がないままこの土地を離れた。
     だからこうやって、潮騒が耳に届く庭先でぼんやりと涼む時間を過ごすことは初めてだ。僕はと言えば、休暇中の穏やかな時間を存分に楽しんでいた。
     久しぶりに訪れたミカグラは、ますますマイカの影響を受けているように見える。朱塗りの電柱にはびっくりした。小さな島で異彩を放つ高層建築が立ち並ぶ中、平屋や二階建ての慎ましやかな家が新たにいくつも軒を連ねていた。事件の直後には、ほとんど木造の家なんてなかったけれど、マイカの里のひとたちが少しでも穏やかな気持ちで暮らせるようにと、ブロッサムの人たちが心を砕いた結果なのだと、コズエさんが嬉しそうに話していたことを思い出す。
    3227

    emotokei

    PROGRESS第9回お題「野菜」お借りしました。
    #チェズルク版ワンドロワンライ
     分厚い紙の束を取り出すと、つやつやとした様々な色合いが目に飛び込んでくる。
     グリーン、ホワイト、パープル、レッド、イエロー……派手な色が多い割に、目に優しいと思えるのは、きっとそれらが自然と調和していた色だから、なんだろうな。
     大ぶりの葉野菜に手をのばして、またよくわからない植物が入っているな、と首を傾げる。
     世界中をひっちゃかめっちゃかにかき回し続けている「ピアノの先生」から送られてくる荷物は、半分が彼の綴るうつくしい筆致の手紙で、もう半分は野菜で埋め尽くされていることがほとんどだ。時折、隙間には僕の仕事に役立ちそうなので、等と書いたメモや資料が入っていることもある。惜しげもなく呈されたそれらに目を通すと、何故か自分が追っている真っ最中、外部に漏らしているはずのない隠匿された事件にかかわりのある証拠や証言が記載されていたりする。助かる……と手放しで喜べるような状況じゃないよな、と思いながらも、見なかったフリをするには整いすぎたそれらの内容を無視するわけにもいかず、結局善意の第三者からの情報提供として処理をすることにしている。とてもありがたい反面、ちょっと困るんだよなあ。
    2091

    azusa_n

    CAN’T MAKE足ツボマッサージするだけの健全なモクルク…と言い張りたかったけど下ネタな話。この話の範囲は全年齢だよ。足しか触ってないよ。
    喋らないけど濃い目のモブいるので注意。

    surfaceのヌイテル?をイメソンに。もうちょい曲にある要素足したいのに思いつかないので投げちゃいました。思いついたら加筆してpixivにも持って行くかなぁ…。
    「もー、ルークったら、昨日もここで寝てたでしょ」
    ダイニングの机に突っ伏して寝ているルークを見つけた。もう深夜と言って差し支えのない時間だ。

    開かれたまま置かれた業務報告書には八割方埋まっている。今日の調査内容がびっしりと。空振りであった旨を伝える文字がしょんぼりしているようだ。
    蓋の上にフォークを置いたまま冷めたカップめんとが見える。完成を待つ間に寝落ちしたのか、完成に気付かず作業していたのか。

    時折聞こえる寝言から見るとあまり良い夢は見てないようだ。悪夢から起きて食べるのが伸びて冷たいカップめんじゃ忍びない。せめて温かいものを食わしてやりたいもんだ。

    テイクアウトの焼き鳥をレンジにつっこむ。
    冷蔵庫に残ってた冷や飯と卵、カップめんを深めのフライパンにぶち込んで、ヘラで麺を切りつつ炒めて塩胡椒を投入。
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