ベッドメイクの練習のお礼を兼ねて、チェズレイの泊まる客室のベッドメイクを行った。
我ながら完璧な仕上がりだと思う。
整えた部屋でチェズレイが採点している。
「そうですね。ベッドメイク自体は及第点は差し上げられるかと」
「良かった。君の及第点なら潜入の準備はばっちりだな」
「……ですが、これは?」
チェズレイが指差した先はベッドの枕元。
バスケットボールくらいの大きさの黄色い三角ボディーが何ともかわいらしいACEくんぬいぐるみが一足早くベッドで横になっている。
「ACEくん」
「それは存じておりますが、なぜ私のベッドに?」
「可愛いだろ」
「ボスがそう思うのは自由ですが」
「ぬいぐるみを部屋に置いておいたらこうやってセットするサービスがあるって聞いてさ」
「私が部屋に置いたぬいぐるみではありませんがねェ」
たしかにチェズレイにはぬいぐるみを愛でるイメージはないけれど。
「少し疲れてるみたいだからさ。抱き枕って癒やしの効果があるって言うからどうかなー…って思って」
少し表情が和らいだが、ACEくんは起こされて僕の手に移動させられてしまった。
「配慮はありがたいですが、どうぞこちらはボスがお使いください」
「もしかして、ビーストくんの方が良かった?」
「遠慮しておきますね」
「他のでも、好きなのがあるならなんでも貸すよ。
ピーチクやパーチクもあるし、深紅の鷹のマスコットの……」
「……なんでも…………ですか」
家にあるぬいぐるみを片っ端から言う途中、そう声量が大きい訳でもないチェズレイの呟きが強く耳に残った。
「うん」
「では、お言葉に甘えて」
腰を捕まれたと思ったら、整えたばかりのベッドに寝かされていた。
チェズレイに後ろから抱きしめられている状態だ。
「えっと、チェズレイ?」
「好きなものをお貸しいただけるとのことですので」
「言ったけどさぁ……」
「では、構わないでしょう?」
チェズレイが喋ると後頭部に吐息を感じてくすぐったい。
腰から腹へと撫でる手や、絡められた足からチェズレイの体温を感じる。
「あのさ?僕の家、そこまで部屋の防音効いてる訳じゃなくて」
「おや、抱き枕は寝姿勢を安定させるものでしょう。
何か問題がありましたか?」
「……ぜったい分かって言ってるだろ」
「さて、ボスはどう答えて欲しいですか?」