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    azusa_n

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    azusa_n

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    「涙」「共同生活」「ごちそうさま」
    +最後だけモさん
    #チェズルク版ワンドロワンライ

    アロは出掛けてるタイミング。

    帰ったら仲間がいる。そう思うだけでスキップしたくなるような気持ちで帰路についた。

    「たっだいまー!」
    「お帰りなさい、ボス」

    わざわざ顔を出してくれたチェズレイを見て、家の鍵を落とした。
    今日も笑顔で楽しい時間を過ごせるはずだと思っていたのにチェズレイの目が赤い。そう思ったら彼の頬を伝って一滴の雫が落ちた。浮かれていたのが恥ずかしくなるような光景だった。

    「……チェズレイ、どうしたんだ?」
    「っ……、…見苦しいものを失礼しましたね。どうぞお気になさらず」

    僕に背を向けたチェズレイの肩に手を置く。
    「いや、気にするに決まってるだろ! なにがあった?」
    「ボスに伝えるようなことではありません」
    「……僕には、話せないこと……?」
    「ボスには関係のないことですから」
    「君が目を真っ赤にしてるのに、僕は関係ない?」

    それまで振り返らなかったチェズレイは、こっちを向いてもろくに視線も合わせてくれなかった。

    「……お疲れでしょう? まずはお風呂に入ってきては。その頃には夕飯も出来ますから」
    「……うん。」

    会話も打ち切られてしまって、チェズレイはリビングに立ち去ってしまった。今追いかけてもなにも応えてはくれないだろう。

    ひとまず、風呂に入ろう。



    湯船に浸かって思案に耽る。
    「チェズレイ、なにがあったのかな」
    「……僕にもっと頼りがいがあれば話してくれたのかな」
    涙を流すところが目に焼き付いて離れなくて落ち着かないまま、いつもより早く風呂を出た。


    「お風呂、上がったよ」
    「ええ、食事にしましょうか」
    チェズレイはさっきのことがなにもなかったかのように澄ました顔をしている。目の赤さも見あたらない。
    じっと見つめていると柔らかい微笑みが返ってきた。
    「本当に、今日の事はなんでもありませんよ。ただ、こんなにもスイートな所を見られるのであれば料理した甲斐があると言うものですね」
    ダイニングのテーブルには湯気の立つ料理が並ぶ。

    オニオングラタンスープと、シャリピアンソースのステーキが目に付いた。

    みじん切りの玉ねぎが大量だ。

    「……もしかして、玉ねぎのみじん切りが原因?」
    「…本当にお恥ずかしいことで」
    また視線を逸らされた。今回は本気で照れている気がする。

    「……あのさ、チェズレイ。もし悩み事があるなら聞くから、ひとりで抱え込まないでくれよ」
    「……」
    「僕じゃ頼りないかもしれないけど、力になるから!」
    チェズレイの表情が固まったような気がして言葉を重ねる。
    やっぱり僕の言葉は困るだろうかと思ったら、力強くハグされた。前にハグくらいいつでも断らなくていいと言ってから、結構スキンシップをしてくれるようになった。
    「……あァ……。ボスはスイートですねェ」
    「結局それなんなの?」

    時折チェズレイの言う言葉に困惑していると、先に食卓についていたモクマさんから声がかかった。


    「うんうん。ごちそうさま」
    「え、モクマさん、まだ夕飯食べてませんよね?」
    「おじさん、胸焼けしちゃうお年頃なの」
    モクマさんは昨日も天ぷらを平気でたくさん食べてた気がする。
    「モクマさんはともかく、私達も食べましょうか」

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    emotokei

    DONE #チェズルク版ワンドロワンライ
    第8回お題「海」お借りしました。
     ――潮騒の音が聴こえる。

     ミカグラは島だから、四方を海に囲まれている。
     それはもちろん知っていたのだけれど、夏場と違って肌寒さを感じる時期しか知らなかったから、あまり実感はないままでいた。DISCARD事件の捜査の合間、海へ足を向ける事はついぞなかったし、労いにとナデシコさんが用意してくれた保養地は温泉で、長い時間を過ごしたマイカの里は山あいだ。
     海沿いの街をそぞろ歩くことはあっても、潮の香りが届く場所には縁がないままこの土地を離れた。
     だからこうやって、潮騒が耳に届く庭先でぼんやりと涼む時間を過ごすことは初めてだ。僕はと言えば、休暇中の穏やかな時間を存分に楽しんでいた。
     久しぶりに訪れたミカグラは、ますますマイカの影響を受けているように見える。朱塗りの電柱にはびっくりした。小さな島で異彩を放つ高層建築が立ち並ぶ中、平屋や二階建ての慎ましやかな家が新たにいくつも軒を連ねていた。事件の直後には、ほとんど木造の家なんてなかったけれど、マイカの里のひとたちが少しでも穏やかな気持ちで暮らせるようにと、ブロッサムの人たちが心を砕いた結果なのだと、コズエさんが嬉しそうに話していたことを思い出す。
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    emotokei

    PROGRESS第9回お題「野菜」お借りしました。
    #チェズルク版ワンドロワンライ
     分厚い紙の束を取り出すと、つやつやとした様々な色合いが目に飛び込んでくる。
     グリーン、ホワイト、パープル、レッド、イエロー……派手な色が多い割に、目に優しいと思えるのは、きっとそれらが自然と調和していた色だから、なんだろうな。
     大ぶりの葉野菜に手をのばして、またよくわからない植物が入っているな、と首を傾げる。
     世界中をひっちゃかめっちゃかにかき回し続けている「ピアノの先生」から送られてくる荷物は、半分が彼の綴るうつくしい筆致の手紙で、もう半分は野菜で埋め尽くされていることがほとんどだ。時折、隙間には僕の仕事に役立ちそうなので、等と書いたメモや資料が入っていることもある。惜しげもなく呈されたそれらに目を通すと、何故か自分が追っている真っ最中、外部に漏らしているはずのない隠匿された事件にかかわりのある証拠や証言が記載されていたりする。助かる……と手放しで喜べるような状況じゃないよな、と思いながらも、見なかったフリをするには整いすぎたそれらの内容を無視するわけにもいかず、結局善意の第三者からの情報提供として処理をすることにしている。とてもありがたい反面、ちょっと困るんだよなあ。
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