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    azusa_n

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    チェズルクの告白のおはなし。

    その日はオフィスにチェズレイと二人きりだった。
    事件も解決して暫くしてようやく落ち着いた所で、リビングでコーヒーを飲むところだった。

    僕がカップにスプーンで砂糖を溶かし終えた時、チェズレイが言う。
    「愛しています、ボス。恋人になって頂けませんか」
    「いきなり何言って!?」
    世間話のようにさらりと言うものだから一瞬何を言ったのか分からなかったが、音が意味を成した時にはスプーンがソーサーの上に転がった。ヒビが入ったかもしれないが、チェズレイの顔から視線を動かせない。
    あまり表情が動いたようにも見えない。からかわれたのだろうかと思えばチェズレイが口角をあげた。
    「嘘でも冗談でもありませんよ。……ボス、あなたのお返事は?」
    優しい笑顔にはたしかにからかっているのとは違う。……多分。まあチェズレイが本気で騙そうとするなら僕に見破れる訳はない。だけど、嘘ではないんだろうと感じた。
    「え……っと、……。君がそう思ってるなんて思ってもなくて。ちょっと時間をくれるか?」
    「お待ちしております」

    ひとまずカフェモカを一口飲む。香り高いコーヒーは苦味とミルクのまろやかさがマッチしてとても美味しい。糖分で少し頭も回ってきたのでチェズレイの方を見ると、じっとこちらを見ていた。
    本当に整った顔だ。今は微笑みを浮かべているから更に魅力倍増だ。笑顔は三割増し、なんて聞いたことがあるけどイケメンと組み合わせると三割じゃ効かないんじゃなかろうか。

    「格好良くて、頭も良くて、お金もある。そんな君なら相手なんていくらでもいるんじゃ」
    「キスもその先も、出来るのはあなたしかいないと思ったものですから」
    「……つまり、消去法ってことか?」
    出来れば他が駄目だから僕で妥協するのではなく、僕が良いって意味合いで選んで欲しいけど。
    「潔癖だから綺麗なものにしか触りたくないし触らせたくもない。それに見合うのはボスしかいない。これを消去法と言うならそうなりますね。……あなたは睡蓮のような人ですから。どんなに泥塗れでもよごれないただ一つ美しいもの。どんな場所でも輝ける清廉で希有な、唯一無二の私のスイートですから」
    さらりと歯の浮くような言葉を並べ立てられて、そっちに意識を取られすぎた。つまり、カップを落とした。
    「……コーヒー零したじゃないか」

    普段、他の人がそうしたのなら眉をひそめたりこれ見よがしに溜め息をつくだろうけど、手袋が汚れるのも厭わず積極的に掃除を手伝ってくれた。
    僕だから特別なんだと思うと腑に落ちた。たしかにいつもチェズレイは僕には優しい。他に親しい人……モクマさん相手とも違う扱い。告白はいきなりではなかったのかもしれない。小さい子供にするような事でからかわれることはあるけど、いつだって僕に優しくて、甘い。

    片づけ終わって、さっきまで向かい合わせに座っていたのにチェズレイが隣に座った。
    「さて、そろそろお返事をいただけますか」
    「次回会った時じゃだめなのか!?」
    これは全力でツッコミを入れるしかなかった。
    なのに、チェズレイは首を傾げてみせた。
    「既に結論は出ているでしょう?」
    「全然時間経ってないけど?!」
    はあ、と溜め息をついてみてもチェズレイは動揺したりしない。
    「そもそも私が告白してすぐにNoと言わない時点で答えは決まっているんですよ。私の言葉に驚きはすれど、嫌悪はなかった。そうでしょう?」
    それは、そうだ。そんなこと想像もしなかったから驚いただけ。嬉しいとか嫌だとかそこまで頭が回らなかっただけかもしれないけど。
    「たしかに、嫌だと思った訳じゃないけど……」
    これまで自分は異性愛者だと思っていたから、自分のチェズレイへの想いだって恋愛方面に結びつけて考えることすら考えていなかった。
    「地位や外聞を気にして断るのがあなたの目指すヒーローでしょうか?」
    「っ…!」
    そう言われると困る。少なくともヒーローはそんな事で愛を決めるものではないと思う。
    じゃあ僕がチェズレイに抱く気持ちは何だろう。
    考え込むことしばし、チェズレイは片付けの時に新しい手袋に替えた手を差し出した。

    「手を、お貸しいただけますか」
    「……どうぞ」

    チェズレイの手に乗せた右手はいつかと同じようにチェズレイの胸に当てられた。
    とくん、とくんと鳴る心音は心地よくて、でも、少しいつもと違う。少し早い。……チェズレイも緊張する事、あるのか。
    少しは僕への告白で緊張したって事か。いつも完璧だけど、優しくて情が深い人だと思う。
    「なんでいきなり言ってきたのか、まだ計りかねてるんだけど。こうやって君といるのは心地いいと思う。なんて言うか、君も人間なんだなって感じするし」
    「……人形やサイボーグだとでも思っていました? いっそ私がボスの部屋のぬいぐるみなら、毎日抱きしめてくれたのでしょうがねェ」
    「ぬいぐるみと君とじゃ僕の心持ちが全然違うけど……」
    たまに、ハグをしても?なんて言われる時、いつだって緊張してるのは伝わっているのだろう。そりゃぬいぐるみとは違う。なんならアーロンやモクマさんとも違う。あの2人とのハグは嬉しくてもそれだけなのに。今までそんな疑問について深く考えたこともなかったけど。
    「ねェ、ボス。その心持ちについて詳しく教えていただけますか?」
    気付けばチェズレイはテーブルではなくまっすぐ僕の方へ体を向けて至近距離でこっちを見ていた。美人のどアップはとても心臓に悪い。
    「覗き込まなくても分かってるだろ」
    ドキっとしたのは多分、チェズレイが綺麗だからと言うだけじゃない。手を引こうとしたのにその上からチェズレイの手を重ねられた。手袋越しだと言うのに熱が伝わる気がする。いや、多分僕が手汗をかいているだけなんだろうけど。
    「はい。ですが、あなたの口から聞きたいんです」
    「………卑怯だ。その顔に僕が弱いの分かってやってるだろ」
    「フフ、悪党ですから」
    切なそうな、つらそうな、悲しそうな。眉を寄せて、少し目を潤ませて。
    チェズレイなら涙なんて自在に出せるだろうことは分かっている。それでも応えないといけないようなそんな気にさせられる表情だった。
    少し悩んだけど、ひとつ頷く。
    「……返事、うまく纏まらないんだけどいいか?」
    「本心をお聞かせくだされば、それが何よりです」
    ほら、もう涙なんて滲んでいない。別に怒る気にはならないけど。だって、大袈裟にしてはいるけどきっと嘘ではないから。

    「まず、君の事を好きか嫌いかと言えば、答えはもちろん好きだ。でも、僕の好きが愛してるなのかは、正直よく分からない」
    「皆と同じ好き、『like』なのではないかと考えている、と」
    「胸がドキドキするとか、ずっとその人の事だけ考えてしまうとか、恋ってそういうものなんだろ? 今までそういうカテゴリーに君を入れようとしたことがなかったし」
    「目が合うと心臓が高鳴る、私だけを見て欲しいと願ってしまう、触れたいし、触れられたいと思う。……私があなたにいつも思う事はこうですね。……では、今のボスは少しも心臓が高鳴ってはいないと?」

    顔がとても近い。
    近いと言うか、額同士がくっついた。睫毛が長くて、切れ長の眼がまっすぐこっちを見ている。まっすぐ見ることなんてできやしなくて視線を伏せる。
    「もうそれくらいでいいから!今ドキドキしてるのは認めるから」
    チェズレイから離れようとして椅子から落ちそうになったのを抱き留められた。心臓がバクバク言ってるのが分かる。
    「やめたら次のチャンスがいつあるかわかりませんからねェ。もっとボスの好きな所、素晴らしい所を並べましょうか」
    死刑宣告では?褒め殺しにされる。ぶんぶん首を横に振った。
    「いや、いいから!わかったから!」
    「茹で上がったみたいに頬が真っ赤ですね。フフ、少しは意識してはいただけたようで何よりです。……さて、これは『like』に含まれる感情でしょうか?」
    「ええと。……違う、と、思う……」
    「良かった。……であればお返事いただけますか?」
    チェズレイの視線がまっすぐ突き刺さる。
    熱っぽい、情熱的、蠱惑的。そんな色をしている。心臓がうるさくて、頬が熱い。
    「『like』かもしれないのに応えるのは不義理に当たらないか?」
    「理屈で全てを語れるものではありません。あなたが受け入れてくれるなら、今はそれだけで充分です。その後で同じ想いだとこれから気付いてくれればいいのですから」
    僕の心の奥まで見透かすような言葉だ。本当に僕はチェズレイのことを愛してるのかもしれないと思ってしまうくらいには。

    のどが渇いて言葉が出てこない。結局コーヒーを一口しか飲まなかったせいだ。
    「……ルーク。続きを」

    名前を呼ばれるだけで心臓が高鳴った。
    それは普段呼び慣れていないからかもしれないけど、答え合わせみたいな気がした。
    「恋愛なのか正直まだよくわかってないけど、それでいいなら。……その。よろしく、お願いします」
    どうしたらいいのか分からずとりあえず頭を下げる。
    三秒くらいして顔を上げるとチェズレイが口を手で覆っていた。
    「……録画しておくべきでしたねェ、今の。ものすごくスイートでした」
    「笑わないでくれよ。こっちはいっぱいいっぱいなんだ」
    肩を揺らしているから、笑いを堪えているようで。あるいは照れたのを誤魔化したのかもしれない。
    チェズレイがゆっくり目を閉じてから開くとキリっとしたものに表情が切り替えられた。
    「──をしても?」
    「ん?」
    聞き返したのをチェズレイは同意と勘違いして、顎に手が添えられた。もしかしたら意図的なのかもしれないけどそれを考えてる場合じゃない。
    くい、と顔の角度を合わせられてだんだん顔が近付いてくるのに慌てて目を瞑る事を思い出したのと、唇に柔らかいがしたのはほぼ同時だった。





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    あいうえお作文でした!
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    azusa_n

    CAN’T MAKE足ツボマッサージするだけの健全なモクルク…と言い張りたかったけど下ネタな話。この話の範囲は全年齢だよ。足しか触ってないよ。
    喋らないけど濃い目のモブいるので注意。

    surfaceのヌイテル?をイメソンに。もうちょい曲にある要素足したいのに思いつかないので投げちゃいました。思いついたら加筆してpixivにも持って行くかなぁ…。
    「もー、ルークったら、昨日もここで寝てたでしょ」
    ダイニングの机に突っ伏して寝ているルークを見つけた。もう深夜と言って差し支えのない時間だ。

    開かれたまま置かれた業務報告書には八割方埋まっている。今日の調査内容がびっしりと。空振りであった旨を伝える文字がしょんぼりしているようだ。
    蓋の上にフォークを置いたまま冷めたカップめんとが見える。完成を待つ間に寝落ちしたのか、完成に気付かず作業していたのか。

    時折聞こえる寝言から見るとあまり良い夢は見てないようだ。悪夢から起きて食べるのが伸びて冷たいカップめんじゃ忍びない。せめて温かいものを食わしてやりたいもんだ。

    テイクアウトの焼き鳥をレンジにつっこむ。
    冷蔵庫に残ってた冷や飯と卵、カップめんを深めのフライパンにぶち込んで、ヘラで麺を切りつつ炒めて塩胡椒を投入。
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