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    美枝mie

    成人済 hdavhdを書きます
    書くものは、hdavの表現が多め
    雑食で、左右どちらも有り得ると思って書いておりますので、苦手な方はご注意ください。

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    POIPOI 46

    美枝mie

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    風邪をひいたavnの話
    hdl復活if
    avnとhdlはイチャラブ同棲中

    休みたい!……うーむ。
    これは、良くない感じですね。

    すっかり日が落ちたカール城の廊下。
    大勇者アバンはようやく終わった有力者達との会合から退出し、自室へ向かいながら自身の体調について観察していた。
    今朝からどうも喉の調子がおかしいとは思ったのだが、忙しさに取り紛れて忘れていた。
    1人になり張り詰めていた気が少し緩むと、思っていたより悪化している様だ。
    喉の痛みは増しているし、頭痛もする。全身が怠いのでおそらく熱も上がってきているだろう。
    さっさと帰って休みたいが、これは今晩しっかり眠った位で治る風邪ではなさそうだ。中途半端に仕事を残してしまうと明日も不調のまま強制的に出勤する羽目になる。
    体調は確かに良くないが、動けないほどでもない。多少フラフラしながらも、急ぎの案件を片付け、明日自分が居なくとも迷惑をかけない状態まで持っていく。部下たちが見ても分かりやすい様に書類を整えると、家路につくことにする。
    とは言っても出勤方法はルーラなので失敗さえしなければ自宅までは一瞬だ。意識的に集中力を高め、ハドラーと共に住む山間の洞窟をしっかりとイメージする。
    ……ルーラ!
    着地が少々乱れたが無事に自宅前だ。
    ふう…
    やっと我が家へ帰り着けた。これで休める。
    …とはいかない、気がする。
    「ただいま帰りまし…」
    「遅い。腹が減った」
    やっぱり。まあ、こうなるな……。

    通常よりも遅くまで放っておかれた元魔王様はご機嫌ナナメの様だ。
    自分が共に暮らして欲しいと望んだのだ。それに人間風の生活に付き合ってもらっているのだし、家事全般引き受けるのも全く文句は無い。それが当然になっている現在、ハドラーの要求はもっともだろう。

    とりあえず出勤用の衣装から楽な服に着替えながら、最短で作れる献立を考える。今日は買い物もしていないから、選択肢も少ない。家にある物で…
    ああ、どうせなら街に寄ってすぐ食べられる物を買ってくれば良かった。そんな事をなにも考えずに真っ直ぐ戻ってしまった辺り、随分と調子が悪い気がする。
    もう一度外へ出て買いに行くのも億劫だ。
    パンはまだあったはずだ。それから適当な生野菜を千切って、作り置きのドレッシングかけたサラダ。メインは大きめの腸詰を焼こう。スープは確か少し余っていたから1人分くらいなら温め直せば行ける。ミルクを足して味を整えれば同じ物でも誤魔化せるだろう。ハドラーは昨日の献立など覚えてない気もするが。
    シチューだけにしてしまうのも手間は少ないが、煮えるまで鍋の番をするのが辛い。
    よし。
    休んでしまうと動きたくなくなるので、キッチンへ直行して料理を始める。
    後ろに見えるソファーには、相変わらず不機嫌そうなハドラーが、食事などオレの望む時に出てくるのが当然だとでも言う様にふんぞりかえっている。
    一日中家に居るのだから、たまには自分の分くらい作って欲しいと思わなくもないが、そんな事を言えばお前もずっとここに居れば良いと、あらぬ方向に話が進み城への出勤を阻まれる可能性が高い。
    万が一ハドラーがやる気になったとしても、その場合キッチンが悲惨な事になるのは過去に経験済みだ。
    食材の切り方知らないとか、味付けが出鱈目だとかはともかく、火を攻撃以外に使うのが下手すぎるのだ。食材が黒焦げならまだ良い方で、調理器具をダメにする、我が家が全焼も十分にあり得る。なんといっても対象を焼き尽くすまで消えない炎の使い手なのだ。
    交渉するのも教えるのも、それなりの労力が必要だ。
    そういう訳で結局、アバンがやった方が圧倒的に楽なのである。
    分かってはいる。いるのだが。今日はちょっとしんどい。
    そうこう考えている間にも手は動く。ほどなく簡単な夕食は出来上がった。
    食器をテーブルに並べ終わると、ハドラーを呼ぶ。
    「お待たせしました。私はちょっと風邪っぽいので、先に休ませてもらいますね」
    「……お前は、食わんのか?」
    「いえ、ちょっと…あまり食欲がないので……」
    とりあえず横になりたい……。食器なんかを洗うのは明日で良いことにする。

    え…っと。寝室へ入ろうとして足を止める。……今日は1人で寝ることにしよう。
    日頃は2人が一緒に眠れる大きなベッドを使っているが、一応自分のベッドもアバンのスペースには置いてある。
    今夜はハドラーにその気になられても相手できる余裕は無い。うん、そうだ、風邪を感染しても悪いし…
    もっともらしい理由を頭の中でこじつけると、私室へ向かう。
    さて、休もうとしてベッドに目をやると
    ……あ、枕と毛布。
    最近、ほとんど物置状態のベッドにはシーツが敷いてあるだけだ。
    ああ、もう。2人の寝室から自分の寝具を運んで、また気付く。
    ……水くらい、用意しておいた方が良いかも。キッチンへ引き返す。
    頭が回っていないからか、早く休みたいのに無駄な往復を繰り返しやっとベッドへ辿り着いた。
    あ、寝巻き……引き出しには無い。洗濯物は、朝に干したまま。つまり外だ。
    もう、やだ…いいか、このままで。今夜雨は降らないはず。
    あとは、薬…うーん。今飲んでも、上がり続けている最中の熱に効く気がしない。痛み止め…まだまだ我慢できる。
    他人が風邪で苦しんでいるなら、もうちょっと処方も考えられる気がするが、複雑な調合とかするくらいなら寝ていたい。結局は自分身体が治すのを待つしかないし、極論、寝てれば治る。まあ、普通の薬草だけでも飲んでおこうかな。何はともあれ体力回復できる。

    ようやく、もそもそとベッドに潜り込む。
    久しぶりの1人のベッドは冷たく固く感じる。
    ハドラー……
    体調の悪さからか少し心細くもあるが、やっと休める。早くも瞼が落ちてきた。
    「おい」
    ハドラー?もしかして私の様子を見に?
    「足りん」
    片手にフォークを握ったままだ。
    あああ…ですよね。この男に限ってそんな筈はなかった。
    今日の夕食はありあわせで短時間での完成を目指したから、確かに量は少なかった。
    「……すみませ、、食糧庫の、適当に、何かたべて」
    「チッ…」
    食糧庫を引っ掻き回される可能性があるが、起き上がって用意する元気は無い。子供じゃないのだから何とかするだろう。
    案の定、ガタゴト不穏な音がしているが、もう気にしないことにする。

    うぅ…あたまいたい……
    寝よう。

    うとうとしていると、また気配を感じる。
    「アバン」
    重い目を開くと、そばにハドラーが全裸で立っていた。
    うわ、まさかこのまま始める気か?

    「……オレの服」
    髪も体もびしょびしょ。ああ、風呂上がりか。ハドラー家事を全くしない割に、何故か風呂だけは自分で沸かす。まあ、水に腕を突っ込んで魔力で加熱するだけだが。
    全く。体調が悪いと言って寝込んでいる時くらい、世話をしろとは言わないからそっとしておいて欲しい。
    「服が無い」
    そうでしょうね。外に干したままですからね。ここ数日天気が悪くて、今朝は一気に外に干したからクローゼットには着替えが残っていないはず。
    それぐらい自分で探してくれ。と言うか、取り込むくらいしてくれても…。無理だな。例えば大雨が降ったとしても、この男は洗濯物など放置するだろう。
    ソッチの目的でなかった事に多少安心するものの、腹が立ってきた。
    「どこだ」
    ほんっとうに、人の状態など気にしないな。お前はオレのただ1人の番いだとか言って。召使いの間違いじゃないのか。
    「……そと」
    最低限の情報だけ伝えると、ドスドスと足音を立てて出ていった。そして、私の部屋どころか玄関の扉が乱暴に開かれる音が聞こえる。どうやら裸のまま出ていったらしい。まあ良いか、どうせこんな山奥には誰も来ない。

    真夏でもないのに、全裸で屋外。
    想像しただけで悪寒が酷くなった気がする……
    頭から毛布を被りギュッと丸まる。
    こんど、じゃましたら許さん……


    ………
    なんだろう?
    周囲に不思議な気配を感じる
    夢か?
    目を開くと、すぐ側にぼんやりと緑色の人影。
    「アバン……!」
    ハドラー。ああ、夢ではなさそうだ。今度はなんだろう?
    視界がハッキリしてくると、暗がりにハドラー以外にも沢山の小さな影が見える。
    え?…なんだ?
    ……高熱で幻覚でも見えているのか?
    ヨロヨロと身体を起こし周囲を見渡そうとしていると、ハドラーが小さな灯りを点す。
    現れたのは何匹もの小型のモンスターたち。
    ぐるりとアバンのベッドを取り囲んでいる。

    ……ああ
    そういう事か。
    自分でも驚くほど、すぐに分かった。

    そんなに、私を心配してくれてたのか…。

    皆ハドラーと同じ表情をしている。
    眉を寄せて、耳を下げて、じっとアバンを見つめていた。
    世界中のモンスターに影響を及ぼせる魔王の力。破壊衝動以外の感情も、周囲の者達には伝わってしまった様だ。
    暖かい気持ちが胸を満たす。
    でも、ちょっと、まって……。
    可愛すぎる。
    も、ダメ…
    「ふふふっ!っ……!ゴホッ!……ゲホゲホッ!」
    あまりに目の前の光景が面白くて、思わず吹き出してしまうと、笑い声より酷く咳き込んでしまった。
    「アバンッ!」
    ハドラーが慌てて背中を支え、周囲のモンスター達も騒めきだす。
    「ハァッ、ハァ……だ、だいじょ、ゴホッ、で、すから」
    それにしても、ただの風邪をこじらせただけで随分な大ごとになってしまっている。
    これではまるで臨終の場面だ。どこか東の国の伝説に出てくる宗教者の最期が確かこんな感じだった様な気が。それか物語で果物を食べて昏睡状態になった姫の棺の周りみたいな…。
    ハドラーがゆっくり横たえてくれる。
    「ハ…らー、この子たち…」
    「う…む、何故か、集まって来おったのだ…」
    なぜかって、自覚が無いのか?じゃあまあ、ハドラーが安心出来れば帰ってくれるだろうか。

    まともに声が出ないので、喉だけでもホイミで回復してきちんと伝えなければ。
    「……ドラー、ゴホッ、あ、あのですね。まず、この病は必ず治ります。きちんと休めば、数日以内に」
    「そ、そうか!本当に、治るのだな!薬はどこに行けばある?オレが何としてでも手に入れてやる!」
    アバンの手を両手で包み込むように握りしめ、天界の果てまでも行きそうな勢いで力強く宣言してくれるが、多分特効薬は無いし、いや?天界ならわからないが……そもそも何も無くても治る。この意気込みをどうしよう…
    「そう、すぐに治りますから。薬も特に探さなくても大丈夫。必要なら手持ちの薬品を使って自分で用意できます」
    「そ、そうか。お前は薬も詳しいのだったな。流石だ。しかし何故お前が…お前のように素晴らしい行いをした男が、何故この様に…こんな酷い病を得ねばならぬのだ…」
    今度はそっと髪を撫でながら、運命を呪いそうな勢いだ。
    「えっと…ですね。これ風邪って言いまして、人間では非常にありふれた病でして。誰でも罹りますし、一般的に何度でも経験するものなんです」
    「な…なんだと?人間は何度もこんな風に弱ってしまうのか?しかし、お前でさえこのダメージだ。普通の人間では死んでしまうのではないか?」
    「まあ、ちょっと今回のは重めではありましたけど、辛さは普通の人々とあまり変わらないと思いますよ。体力がある分、回復は早いと思います」
    だから、大丈夫です。腕を伸ばしてハドラーの頬をなでる。
    「そうか、それでどうしたら治る?」
    「ですから、まずは静かにゆっくり休む事です。あとは水分と栄養が摂れれば」
    ハドラーが気遣ってくれて嬉しいのだが、相変わらず身体はキツい。そろそろ話し続けているのも辛くなってきた。
    「ね、心配いりませんから。とりあえず安静にしたいので、この子たちは棲家へ帰らせてあげてください」
    「勝手に来たのだが、、、おい、アバンはこれから休むからな。お前たちはもう帰れ」
    ハドラーの精神状態が安定したからか、モンスター達は大人しく出口へゾロゾロと向かう。

    「なんだったんだ、あいつら…」
    不思議そうに首を傾げる元魔王が信じられないくらい愛おしい。
    体調が悪いのに用事をさせようとすると一方的に腹を立てていたが、風邪っぽいでは何も伝わっていなかった。
    ハドラーにしてみれば、片時も離れたくないアバンの帰りを一日中待っているのに、遅くまで戻らない。アバンが共に食卓を囲む事を大切にしているのが分かっているから作るまで大人しくしているのに、適当な食事を置いて自分は放置されたのだから機嫌も悪くなる。
    その後、あまりにアバンの様子がおかしいので、体調不良とやっと気付いて不安になったのだろう。けれど、どうして良いか分からずオロオロしていた結果がモンスター大集合。
    「では、ゆっくり休め……」
    ハドラーまで出て行こうとする。その背中からはどう見ても後ろ髪を引かれている様子が伝わってくる。
    「ハドラー…あなたは、居てもらえませんか?」
    「なにっ、そうか!任せろ。オレがここに居てやるからな!」
    ……そんな嬉しそうな顔をしなくても。アバンも自然と笑みが溢れる。
    「アバン…」
    床に膝を付いて座り、毛布ごと抱え込むように腕を回される。
    ああ、気持ちいい…。感染してしまうかと思ったけれど、この分だと同じかもしれない。甘えさせてもらうことにしよう。
    「あの、お願いがあるんですが」
    「うむ、構わん、なんでも言ってみろ」
    「寒いんで、やっぱり一緒に寝てもらってもいいですか」
    「無論だ」
    アバンの1人用のベッドでは狭いので、結局いつもの寝室に毛布をぐるぐる巻きにしたまま運ばれた。
    ハドラーが大きな身体で守るように包み込み、小さく震え続けるアバンに気付いてまたギュッと力が入る。
    「アバン…アバン…」
    なんだか立場が逆の様な気もするが、大丈夫、大丈夫と不安そうなハドラーを撫でて笑って見せる。
    そうしているうちに、ハドラーの体温が伝わり寒気も随分と楽になった。やはりアバンにとっても、ここが最も安らげる。強張っていた手足の力も抜けてきた。
    そうしてアバンはようやく、ゆっくりと休めたのだった。
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