またサイ短編人気がない路地裏。
そこで僕とサイクルはキスを交わしていた。
周りの音は環境音でかき消されている中で、
吐息を感じながら唾液を貪っていく。
………お願い、誰も来ないで。
そう思いながらサイクルの腰を抱きつつ彼女の唇を貪る。
僕という獣が解き放たれた理由はサイクルが煽ったからだ。
「………ここなら誰も来ないから、キスとか出来ちゃうね。」
そう言ってサイクルは笑っていたが、
「………本当にキス、しちゃう?」
と、冗談で言ったら照れたまま無言で頷かれたので
現在に至る。
最初はバードキスを繰り返していたが、
段々熱が上がっていき最終的に舌を入れては
唾液の貪り合いを繰り返していた。
「………はっ。」
サイクルが唇を引いたのが中断の合図となった。
唾液の糸は名残惜しそうに引いていた。
「………またさいたまって、凄いわね。
誰かが来るかもしれないのに
こうする余裕があるんだもの。」
「君が煽ったからだよ。それに…」
「それに?」
僕はサイクルの唇に付着した唾液を
指に絡め取っては舐めた。
「サイクルのその“表情”が
人が行き交う街中の近くで僕にだけ見せてくれる事が
背徳感があっていいなぁって思ったんだ。」
「………もう、またさいたま。」
「誰も来なくてよかったね。」
「………うん。」
サイクルは僕の手を繋いできた。
指を深く絡ませながら。
「…続きは家でしよっか。」
「…そうね。」
そう言ってサイクルは照れながら笑った。
まさかこの二人がさっきまで路地裏で愛し合っていただなんて、
街中を歩いている人達は気付く訳がないよね?