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    Norskskogkatta

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    Norskskogkatta

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    主くり

    おじさま審神者と猫耳尻尾が生えた大倶利伽羅のいちゃいちゃ
    猫の日にかいたもの

    #主刀
    mainBlade
    #主くり
    principalOffender

    大倶利伽羅が猫になった。
    完璧な猫ではなく、耳と尾だけを後付けしたような姿である。朝一番にその姿を見た審神者は不覚にも可愛らしいと思ってしまったのだった。

    一日も終わり、ようやっと二人の時間となった審神者の寝室。
    むっすりと感情をあらわにしているのが珍しい。苛立たしげにシーツをたたきつける濃い毛色の尾がさらに彼の不機嫌さを示しているが、どうにも異常事態だというのに微笑ましく思ってしまう。

    「……おい、いつまで笑ってる」
    「わらってないですよ」

    じろりと刺すような視線が飛んできて、あわてて体の前で手を振ってみるがどうだか、と吐き捨てられてそっぽを向かれてしまった。これは本格的に臍を曲げられてしまう前に対処をしなければならないな、と審神者は眉を下げた。
    といっても、不具合を報告した政府からは、毎年この日によくあるバグだからと真面目に取り合ってはもらえなかった。回答としては次の日になれば自然と治っているというなんとも根拠のないもので、不安になった審神者は手当たり次第に連絡の付く仲間達に聞いてみた。しかし彼ら、彼女らからの返事も政府からの回答と似たり寄ったりで心配するほどではないと言われてしまった。一部の男性審神者からは、今夜は激しいかもな、などという意図のよくわからない追記もあったが。
    とにかく、特に手立てが無く、翌日には戻るというので予定していた出陣を変更し、大倶利伽羅には一日本丸で過ごしてもらうことになった。だがしかし、数多の刀剣達が暮らす本丸で突如舞い込んだ変則的事象に興味を示さない者がいないわけはなく、行く先々で声をかけられ、ちょっかいを出され、追いかけ回され。散々な目に遭ったらしい彼は昼になる前に審神者の執務室へと避難してきたのだった。ただでさえ出陣を取り上げられ不服そうにしていたところに不本意な馴れ合いに巻き込まれた大倶利伽羅は毛を逆立てるような勢いだった。
    執務室にいながらも外の喧噪は耳に届いていたので、勢いよくドアを開けて入ってきた大倶利伽羅を咎めず、応接用のソファに寝転がる彼を好きにさせていた。
    大倶利伽羅としては不本意極まりないだろうが、その姿がまるで猫そのもので、現世にいたときに数年を共にした愛猫を思い出していた。

    「すみません大倶利伽羅くん、笑ってしまったのは謝りますからこちらを向いてはくれませんか」

    ゆらゆらとふわりとして手触りの良さそうな尾を揺らしている背に向けて問いかけると流し目で様子を覗ってくる。もう一度、大倶利伽羅くんと呼びかけるとひとつため息を吐いてから、動き出す。きしりとベッドが音を立てる。

    「あんたが一日中笑っているとは思わなかった」
    「……不快にさせてしまってすみません。昔飼っていた子に似ていたので懐かしくなってしまって」

    一日の仕事を終えた審神者の寝室、一台の寝具の上で審神者の膝に向かい合って乗り上げた大倶利伽羅の表情はまたもや不機嫌さを見せた。おや、と変化を感じ取るとまた先ほどのように突き刺さるような視線がよこされる。

    「誰を飼っていた」

    今にも牙をむきそうな剣幕の大倶利伽羅に、審神者はぱちりと瞬きをしてから、穏やかに笑い声を上げた。

    「なにがおかしい」
    「いえね、飼っていたのは本当の猫だったのですよ」

    くすくすと笑いながら大倶利伽羅の腰に片腕を回しながら、愛猫にそうしてやったように膝に乗っている彼の喉を撫でた。
    ぴくり、と体を震わせ手から逃れようとのけ反っていく腰を先手をうって回していた腕で抱き寄せて、喉から顎下の皮膚に指の背を滑らせる。

    「お、い……っ俺は猫じゃないぞ」
    「わかっていますよ」

    刀剣男士にとって五十路を過ぎた人間の腕なんて簡単に振り払えるだろうにそうしないのだから、彼も大概自分に甘いのだと思う。それに、愛猫に似て可愛らしいとは思っているが一緒くたにするほど見境がないわけでもないし、そもそもカテゴリが違うのだ。
    彼は少し自覚が足りないようにも感じるのは希にあることで、こうして審神者にちらつく自分以外のものの存在を気にかけては距離をとられたりしたものだった。最近は口に出したり気に入らないと行動で示してくれるのでこちらの誠意を示すことができている。
    今回もまた、妙なところで自尊心を失いかけている彼に知っておいてもらわなけれならない。すりすりと喉元を撫でていた手を首の後ろに回して引き寄せ、かたく閉じられている唇に吸い付いた。

    「猫相手にこんなことをすると思いますか?」
    「……おもわない」

    首に腕を巻き付けてよってきた体温を抱きしめる。すりり、と額を首筋にこすりつけられると、たった今猫ではないと宣言したばかりなのにやはりどこか愛猫に似ていておかしくなって笑ってしまう。

    「やっぱり耳、触ってもいいですか?」
    「あんた今猫扱いしないといっただろう」

    そうなんですけどね、と返しつつも内心は手触りのいい髪と同じ毛色をした柔らかそうな耳に触れてみたいという好奇心がある。猫好きとしては逃してはならないような気がした。

    「駄目ですか」
    「そのあと俺の好きにさせてくれるなら」

    駄目で元々。下から見上げながらもう一押ししてみると逡巡し、うなずいてくれた。大倶利伽羅の要望がどんなものかは少し気になるが、彼のことだから悪いようにはなるまいと審神者はありがとうと大倶利伽羅の頬に唇を寄せた。
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    Norskskogkatta

    Valentine主くり♂くり♀のほのぼのバレンタイン
    料理下手なくり♀が頑張ったけど…な話
    バレンタインに主にチョコ作ろうとしたけどお料理できないひろちゃんなので失敗続きでちょっと涙目で悔しそうにしてるのを見てどうしたものかと思案し主に相談して食後のデザートにチョコフォンデュする主くり♂くり♀
    チョコレートフォンデュ一人と二振りしかいない小さな本丸の、一般家庭ほどの広さの厨にちょっとした焦げ臭さが漂っている。
    執務室にいた一振り目の大倶利伽羅が小火になってやいないかと確認しにくると、とりあえず火はついていない。それから台所のそばで項垂れている後ろ姿に近寄る。二振り目である妹分の手元を覗き込めば、そこには焼き色を通り越して真っ黒な炭と化した何かが握られていた。
    「……またか」
    「…………」
    同年代くらいの少女の姿をした同位体は黙り込んだままだ。二振り目である廣光の手の中には審神者に作ろうとしていたチョコレートカップケーキになるはずのものがあった。
    この本丸の二振り目の大倶利伽羅である廣光は料理が壊滅的なのである。女体化で顕現したことが起因しているかもしれないと大倶利伽羅たちは考えているが、お互いに言及したことはない。
    2051

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    Mochakored

    DONE主刀(さに←ちょも)
    南泉をそえて
    「すまない、少しいいか?」
    「にゃっ!?」
    久しぶりの非番はごろごろするに限る。そんな信念を持って自室でのんびり過ごしていると、甘さを含んだ低い声に部屋の外から呼び掛けられた。声に覚えがありすぎる南泉は悲鳴をあげて飛び上がる。
    一家のお頭である山鳥毛にだらしない姿を見せるわけにもいかない。畳へ出していたものを押し入れに放り込むと、平静さを装って部屋へ招き入れる。
    「非番の日にすまんな。少し相談があるのだが……」
    「お頭が、相談……?」
    「ああ、小鳥と先日話をした時なんだが……。彼が、私と一緒に酒を呑みたいなどと可愛らしい事を言ってくれてな」
    「はあ……」
    「その為の酒器を探しているのだが、品揃えの良さに見れば見るほど悩んでしまっているんだ。少々困ってしまってな」
    そう言って広げられた万屋のカタログを見た南泉は全身の毛が逆立つような気持ちにさせられた。
    カタログの装丁からして違うとは思っていたが、どう見ても日用品とは思えない。人間国宝やら有名な工房の受注品ばかりだ。その品々の金額は、南泉が万屋などで買い物をする時に見たことのない価格帯のものばかりだ。国宝や重文の刀も数多くある一文字一家で 825

    Mochakored

    DONEらびこれ主刀(山鳥毛)「小鳥、これを」
    恋刀である山鳥毛が、艶のある声と共に差し出してきたのはうさぎのぬいぐるみだった。つぶらな赤い目が可愛らしい。
    ふわふわ具合のフォルムは手触りの良さが触らずとも分かるようだ。
    淡い光を閉じ込めた銀色のような毛と赤い目は、うさぎらしさにこれでもかと溢れている。
    けれど、そのふわもこボディにはかっちりとした渋い色合いのアイテムを身に付けていて、審神者はそこが気にかかった。見覚えのあるそれらは、どう見ても目の前の刀のものとそっくりにしか見えない。
    「山鳥毛、これって……」
    「ああ、私を模した兎、とのことだ。なかなかの出来だと思う」
    「あ、うん。それは俺もそう思う。かわいかっこいいって感じで」
    「……そうか。小鳥が気に入ってくれて安心した。ありがとう」
    「え、あ、どういたしまして……?」
    はにかむ美貌を間近に浴びてくらりとする。
    審神者は目の端に星が散っている気持ちになりながら、気になったことを聞いてみる。
    「というか、なんで俺にこれを……?」
    審神者は数年前に大学を卒業した成人した青年だ。
    刀である山鳥毛よりも若いとはいえ、このように可愛らしいものは年齢一桁代以降は持ったこと 896

    Norskskogkatta

    PAST主こりゅ(男審神者×小竜)
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀

    小竜視点で自分の代わりだと言われてずっと考えてくれるのは嬉しいけどやっぱり自分がいい小竜
    「ね、みてこれ! 小竜のが出たんだよー」
    「へーえ……」
    我ながら冷めきった声だった。
    遠征帰りの俺に主が見せてきたのは俺の髪の色と同じ毛皮のうさぎのぬいぐるみだった。マントを羽織って足裏には刀紋まで入ってるから見れば小竜景光をイメージしてるってのはよくわかる。
    「小竜の代わりにしてたんだ」
    「そんなのより俺を呼びなよ」
    「んー、でも出かけてていない時とかこれ見て小竜のこと考えてるんだ」
    不覚にも悪い気はしないけどやっぱり自分がそばにいたい。そのくらいにはこの主のことをいいなと感じているというのに本人はまだにこにことうさぎを構ってる。
    今は遠征から帰ってきて実物が目の前にいるってのに。ましてやうさぎに頬ずりを始めた。面白くない。
    「ねぇそれ浮気だよ」
    「へ、んっ、ンンッ?!」
    顎を掴んで口を塞いだ。主の手からうさぎが落ちたのを横目で見ながらちゅっと音をさせてはなれるとキスに固まってた主がハッとしてキラキラした目で見上げてくる。……ちょっとうさぎが気に入らないからって焦りすぎた。厄介な雰囲気かも。
    「は……初めて小竜からしてくれた!」
    「そうだっけ?」
    「そうだよ! うわーびっくりした! 619

    Mochakored

    DONEらびこれ主刀(源氏兄弟)「──ねえ。主は、あれは買わないの?」
    髭切の伸ばした指の先を見れば、カラフルなうさぎたちが万屋のショーウィンドウに綺麗に並べられている所だった。
    「あぁ、あれかあ。俺は買う予定はないよ」
    「そうなのか?君は我らを模したものへは財布の紐が緩くなって、すぐに購入するではないか」
    隣を歩いていた膝丸はそう言ってくるが、財布やパスケースなんて実用品ならともかく、可愛いうさぎを飾っても置きっぱなしになるのが目に見えている。
    彼らも自分たちを模したぬいぐるみが埃をかぶっているのは嫌だろう。まあ俺の部屋は、定期的に掃除をしてくれる優しい刀がたくさん居ているのでその心配はないだろうけど。
    そう思ったら、飾るのもちょっといいかもしれないと思ったので二人に尋ねてみる。すると、二人は同じタイミングで目を瞬かせるとゆっくりと口を開いた。
    「いらないよ」
    普段よりもずいぶんと低い声で髭切が言う。
    「あぁ、そうだな兄者。いらんな」
    対照的にいつもよりも柔らかな声で膝丸が同意した。
    にこりと同じ角度で首をかしげて微笑む兄弟は美しい、しかし背後に何かを感じ取れてしまう。
    「あ、はい……」
    大人しく頷いた俺の腕を髭切 626

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    「へーえ……」
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    「そんなのより俺を呼びなよ」
    「んー、でも出かけてていない時とかこれ見て小竜のこと考えてるんだ」
    不覚にも悪い気はしないけどやっぱり自分がそばにいたい。そのくらいにはこの主のことをいいなと感じているというのに本人はまだにこにことうさぎを構ってる。
    今は遠征から帰ってきて実物が目の前にいるってのに。ましてやうさぎに頬ずりを始めた。面白くない。
    「ねぇそれ浮気だよ」
    「へ、んっ、ンンッ?!」
    顎を掴んで口を塞いだ。主の手からうさぎが落ちたのを横目で見ながらちゅっと音をさせてはなれるとキスに固まってた主がハッとしてキラキラした目で見上げてくる。……ちょっとうさぎが気に入らないからって焦りすぎた。厄介な雰囲気かも。
    「は……初めて小竜からしてくれた!」
    「そうだっけ?」
    「そうだよ! うわーびっくりした! 619

    Norskskogkatta

    PAST主くり
    鍛刀下手な審神者が戦力増強のために二振り目の大倶利伽羅を顕現してからはじまる主をめぐる極と特の大倶利伽羅サンド
    大倶利伽羅さんどいっち?!


     どうもこんにちは!しがないいっぱしの審神者です!といっても霊力はよく言って中の下くらいで諸先輩方に追いつけるようにひたすら地道に頑張る毎日だ。こんな頼りがいのない自分だが自慢できることがひとつだけある。
     それは大倶利伽羅が恋びとだと言うこと!めっちゃ可愛い!
     最初はなれ合うつもりはないとか命令には及ばないとか言ってて何だこいつとっつきにくい!と思っていったのにいつしか目で追うようになっていた。
     観察していれば目つきは鋭い割に本丸内では穏やかな顔つきだし、内番とかは文句を言いながらもしっかり終わらせる。なにより伊達組と呼ばれる顔見知りの刀たちに構われまくっていることから根がとてもいい奴だってことはすぐわかった。第一印象が悪いだけで大分損しているんじゃないかな。
     好きだなって自覚してからはひたすら押した。押しまくって避けられるなんて失敗をしながらなんとか晴れて恋仲になれた。
    それからずいぶんたつけど日に日に可愛いという感情があふれてとまらない。
     そんな日々のなかで大倶利伽羅は修行に出てさらに強く格好良くなって帰ってきた。何より審神者であるオレに信 4684

    Norskskogkatta

    PAST主くり
    リクエスト企画で書いたもの
    ちいさい主に気に入られてなんだかんだいいながら面倒を見てたら、成長後押せ押せでくる主にたじたじになる大倶利伽羅
    とたとたとた、と軽い足音に微睡んでいた意識が浮上する。これから来るであろう小さな嵐を思って知らずため息が出た。
    枕がわりにしていた座布団から頭を持ち上げたのと勢いよく部屋の障子が開け放たれたのはほぼ同時で逃げ遅れたと悟ったときには腹部に衝撃が加わっていた。
    「から! りゅうみせて!」
    腹に乗り上げながらまあるい瞳を輝かせる男の子どもがこの本丸の審神者だ。
    「まず降りろ」
    「はーい」
    咎めるように低い声を出しても軽く調子で返事が返ってきた。
    狛犬のように行儀よく座った審神者に耳と尻尾の幻覚を見ながら身体を起こす。
    「勉強は終わったのか」
    「おわった! くにがからのところ行っていいっていった!」
    くにと言うのは初期刀の山姥切で、主の教育もしている。午前中は勉強の時間で午後からが審神者の仕事をするというのがこの本丸のあり方だった。
    この本丸に顕現してから何故だか懐かれ、暇があれば雛のように後を追われ、馴れ合うつもりはないと突き離してもうん!と元気よく返事をするだけでどこまでもついて来る。
    最初は隠れたりもしてみたが短刀かと言いたくなるほどの偵察であっさり見つかるのでただの徒労だった。
    大人し 1811

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    軽装に騒ぐ主を黙らせる大倶利伽羅

    軽装に騒いだのは私です。
    「これで満足か」
     はあ、とくそでかいため息をつきながらもこちらに軽装を着て見せてくれた大倶利伽羅にぶんぶんと首を縦に振る。
     大倶利伽羅の周りをぐるぐる回りながら上から下まで眺め回す。
    「鬱陶しい」
    「んぎゃ!だからって顔つかむなよ!」
     アイアンクローで動きを止められておとなしく正面に立つ。
     ぐるぐる回ってるときに気づいたが角度によって模様が浮き出たり無くなったりしていてさりげないおしゃれとはこういうものなんだろうか。
     普段出さない足も想像よりごつごつしていて男くささがでている。
     あのほっそい腰はどこに行ったのかと思うほど完璧に着こなしていて拝むしかない。
    「ねえ拝んでいい?」
    「……医者が必要か」
     わりと辛辣なことを言われた。けちーと言いながら少し長めに思える左腕の袖をつかむとそこには柄がなかった。
    「あれ、こっちだけ無地なの?」
    「あぁ、それは」
     大倶利伽羅の左腕が持ち上がって頬に素手が触れる。一歩詰められてゼロ距離になる。肘がさがって、袖が落ちて、するりと竜がのぞいた。
    「ここにいるからな」
     ひえ、と口からもれた。至近距離でさらりと流し目を食らったらそらもう冗談で 738

    Norskskogkatta

    MOURNINGさにちょも
    ちょもさんが女体化したけど動じない主と前例があると知ってちょっと勘ぐるちょもさん
    滅茶苦茶短い
    「おお、美人じゃん」
    「呑気だな、君は……」

     ある日、目覚めたら女の形になっていた。

    「まぁ、初めてじゃないしな。これまでも何振りか女になってるし、毎回ちゃんと戻ってるし」
    「ほう」

     気にすんな、といつものように書類に視線を落とした主に、地面を震わせるような声が出た。身体が変化して、それが戻ったことを実際に確認したのだろうかと考えが巡ってしまったのだ。

    「変な勘ぐりすんなよ」
    「変とは?」
    「いくら男所帯だからって女になった奴に手出したりなんかしてねーよ。だから殺気出して睨んでくんな」

     そこまで言われてしまえば渋々でも引き下がるしかない。以前初期刀からも山鳥毛が来るまでどの刀とも懇ろな関係になってはいないと聞いている。
     それにしても、やけにあっさりしていて面白くない。主が言ったように、人の美醜には詳しくはないがそこそこな見目だと思ったのだ。

    「あぁでも今回は別な」
    「何が別なんだ」
    「今晩はお前に手を出すってこと。隅々まで可愛がらせてくれよ」

     折角だからなと頬杖をつきながらにやりとこちらを見る主に、できたばかりの腹の奥が疼いた。たった一言で舞い上がってしまったこ 530

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり

    緑の下で昼寝する主くり
    極の彼は適度に甘やかしてくれそう
    新緑の昼寝


     今日は久々の非番だ。どこか静かに休めるところで思う存分昼寝でもするかと、赤い方の腰布を持って裏山の大桜に脚を伸ばす。
     とうに花の盛りは過ぎていて目にも鮮やかな新緑がほどよく日光を遮ってまどろむにはもってこいの場所だ。
     若草の生い茂るふかふかとした地面に寝転がり腰布を適当に身体の上に掛け、手を頭の後ろで組んでゆっくりと瞼を下ろす。
     山の中にいる鳥の鳴き声や風に吹かれてこすれる木の葉の音。自然の子守歌に本格的にうとうとしていると、その旋律に音が増えた。
    「おおくりからぁ~……」
     草葉の上を歩き慣れていない足音と情けない声にため息つき起き上がると背を丸めた主がこちらへと歩いてくる。
     のろのろと歩いてくるのを黙って見ていると、近くにしゃがみ込み頬を挟み込まれ唐突に口づけられた。かさついた唇が刺さって気分のいいものではない。
    「……おい」
    「ははは、ごめんて」
     ヘラヘラと笑いあっさりと離れていく。言動は普段と差して変わらないが覇気が無い。観察すれば顔色も悪い。目の下に隈まで作っている。
    「悪かったな、あとでずんだかなんか持って行くから」
     用は済んだとばかりに立ち上 780

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり

    小腹が空いて厨に行ったらひとり夏蜜柑を剥いていた大倶利伽羅に出くわす話
    夏蜜柑を齧る

     まだ日が傾いて西日にもならない頃、午後の休憩にと厨に行ったら大倶利伽羅がいた。
     手のひらに美味しそうな黄色を乗せて包丁を握っている。
    「お、美味そうだな」
    「買った」
     そういえば先程唐突に万屋へ行ってくると言い出して出かけて行ったのだったか。
     スラックスにシャツ、腰布だけの格好で手袋を外している。学ランによく似た上着は作業台の側の椅子に引っ掛けられていた。
     内番着の時はそもそもしていないから物珍しいというわけでもないのだが、褐色の肌に溌剌とした柑橘の黄色が、なんだか夏の到来を知らせているような気がした。
     大倶利伽羅は皮に切り込みを入れて厚みのある外皮をばりばりとはいでいく。真っ白なワタのような塊になったそれを一房むしって薄皮を剥き始めた。
     黙々と作業するのを横目で見ながら麦茶を注いだグラスからひと口飲む。冷たい液体が喉から腹へ落ちていく感覚に、小腹が空いたなと考える。
     その間も手に汁が滴っているのに嫌な顔ひとつせずばりばりと剥いていく。何かつまめるものでも探せばいいのになんとなく眺めてしまう。
     涼やかな硝子の器につやりとした剥き身がひとつふたつと増えて 1669

    Norskskogkatta

    MOURNINGさにちょも
    寝起きの身支度を小鳥に邪魔されるちょもさん

    #さにちょもいっせーのせい
    こちらのタグに参加させていただいたときのもの
    まだ空が白んでまもない頃、山鳥毛はいつもひとり起き出している。それがただ枕を並べて寝るだけでも、体温を混ぜあって肌を触れ合わせて眠る日も変わらず審神者より先に布団を抜けだす。
    今日もまたごそりと動き出した気配に審神者は目を覚ました。

    「こんな朝から、なにしてんだ……」
    「……起こしてしまったか、まだ日が昇るまで時間がある。もう少し眠るといい」

    そういって山鳥毛が審神者の短い髪を撫でるとむずがるように顔をくしゃくしゃにする。やはりまだ眠いのだろうと手を離そうとするとそれを予見していたかのように手が捕まえられた。

    「おまえも、ねるんだよ」
    「だが、身支度が」

    山鳥毛の戦装束は白銀のスーツにネイビーのシャツと普段の手入れが欠かせないものだ。
    彼が巣と呼ぶ本丸を統括する審神者たる小鳥の隣に並ぶならば、いついかなる時も気の抜けた身なりではいられない。それが前夜どれだけ小鳥の寵愛を受けようとも。
    だからこそ、小鳥の甘えるような仕草に胸を矢で貫かれそれを受け入れ甘やかしてやりたいと思っても心を鬼にして手を離さなければと外そうとした。

    「俺がおまえと寝たいの。だから大人しく来い」
    「……小鳥 751