Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    kfkf_aoko

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 22

    kfkf_aoko

    ☆quiet follow

    カプなし/幼馴染

    「俺が止めてやる」
    「俺は諦めない」

    こんなに頑固で面倒臭くて暑苦しい奴らが、この言葉を裏切るようなことをするわけがない。そんなことはわかってる。わかってるはずなんだ。
    なのに俺は、……どうして恐れている?
    ずっと前から、それこそ物心ついた頃から一緒にいた。同じ家で眠って、一緒に遊んだ。こいつらのことは誰よりわかってる。

    アキラとウィルが負傷してメンターたちに担ぎ込まれたのが一週間前。ビルの崩落事故から市民を庇ったらしい。ガラスの破片や金属部品の飛来を自分の体で受け止めた。お互いを庇うように折り重なって倒れていたらしい。ニューミリオン市内はその話題で持ちきりだった。
    イクリプスの襲撃が崩落の原因であり、崩落時点でかなり消耗していた二人は市民を突き飛ばして瓦礫の下敷きになるので精一杯だったはずだとの情報が出ている。
    この隙に乗じて再びの襲撃も考えられることから、警備体制はかなり厳重になっている。
    「なあ、本当にあいつらのところ見舞いに行かなくていいのか?」
    「気になるなら一人で行け。俺はいい」
    パトロールの最中もガストはずっとこの調子だ。
    「そういうことじゃねえだろ。お前、あいつらと仲良いんだから心配じゃねえのかって聞いてんだよ」
    「別に仲良くはない。腐れ縁だ。それよりもパトロールに集中しろ」
    そう言ったところでガストの足が止まった。
    「本気で言ってんのか。お前、本気でそんなこと思ってんのか」
    ドスのきいた声が辺りに響く。市民が怯えるだろ、と口を開きかけた時だった。
    つかつかと歩み寄って俺の胸ぐらを掴み、怒りの満ちた声で囁いた。
    「それを、『あと四日以上脳波に変化がなかったら脳死扱いになる』って聞いても、同じセリフを吐けるのかって聞いてんだよ」
    さっと血の気が引いた。ガストの手がなければ一人で立っていられなかったかもしれない。
    「な……お前、それ、本当か……!?」
    「今までお前のことを考えて言ってなかったんだよ。周りが気を遣ってるとも知らずになんでそんなこと言えるんだよ……!」
    打ちのめされる俺に追い討ちをかけるようなその言葉と少しの罪悪感が、感情に火をつけた。
    「お前が俺たちの何を知っているんだ。今まであいつらに付き合わされてきた俺の気持ちがわかるか……!」
    気づけばガストの胸ぐらを掴み壁にたたきつけていた。頭に血が昇って何も考えられなくなる。
    「お前……!まだそんなこと……」
    「何もかも失った俺に笑いかけてきたのも、居場所を与えてくれたのも、全部、全部あいつらなんだよ!アキラはバカのくせに勘だけは良くて、いつでも俺を見つけてくれた……!ウィルはいつも一番前を歩いてくれた。俺があいつらに返せることなんか……もう、イクリプスを壊滅させることしかないんだよ……!」
    お前にわかるか、ガスト。お前にもそんな奴はいるか。人生全部使ってももうそいつらの代わりなんか見つからないような奴は。
    残りの全部を捧げても、恩を返せないような奴らなんだ。
    涙を流して息巻く俺の頬で何かが弾けた。気づいたら頬がヒリヒリと痛かった。ガストの張り手が飛んできたらしい。
    「お前、逃げてんじゃねーよ。恩を返すなんか後でいいだろうが。あいつらがどうなろうが目を背けんな。お前がここで歯食いしばってイクリプスを倒そうが、そんなもん顔も見なきゃ話せねーんじゃねえのか?お前が今俺に言ったこと、全部あいつらに話してこい。でないとうちのメンターからパトロール禁止令が出そうだ」
    「わかっているならなぜやめない。レン、お前たちはここにいても気が散るだけだろう。さっさと行け」
    その声を背に、俺たちはタワーに走り出した。駅を全速力で駆け抜けて、タワー内の医務室になだれ込んだ。ヒーロースーツのままなりふり構わずただ二人に話しかけた。口を開いても素直な言葉は出てこない。いつもの憎まれ口。アキラの張り合う声。中立するウィルの宥める声。俺たちはずっとそうだった。その二つは今は聞こえない。
    「……お前は、俺を止めるんじゃなかったのか」
    アキラの包帯に巻かれた手を取ろうとしてやめてしまう。手を繋ぐのなんか、何年ぶりだろうか。昔より、こんなに大きくなってしまった。
    「……お前は約束を忘れないんだろ」
    ウィルの足には今、植物が根を張っている。共生の本能とオーバーフロウの残留だと聞いた。別れ際、「またな」って言わないと手を離してくれなかったくせに。寂しがりのくせに、俺を置いていくな。
    二人の手を握って、額に当てる。その手は俺が迷うたび導いてくれた手。暖かく、力強い二つの手。
    もう俺に必要なことが分かった。

    お前たち。どうせ二人で昔の夢でも見てるんだろ。そんなことよりやることがあるはずだ。
    俺とアキラとウィル。三人で、未来の夢を見る方が絶対楽しいに決まってる。
    俺はお前たちを信じる以外にやるべきことなんかない。
    だから早く目を覚ませよ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works