金色に輝く瞳がまず目に入った。その次に特徴的な楕円に伸びた黒い瞳孔。
それはともすれば人から外れた者と思える奇妙さで、間抜けにも、悪魔のようにも見えたので、人から外れた者として化け物同士のようで親近感を持ったのかもしれない。
その後は、ひたすらに人畜無害を貫き通すその笑顔が気に入らなかった。
悪魔的にも見える瞳に反して完全なる善の者として生きるただの人間。
そんな風に俺に笑いかける人間を知らなかった。知りたくなかった。この先も闇に生きるだけで要らられば、このままずっとそれを知らなければ、辻斬りナギリだと知れた時、ひたすら優しく笑む顔がどんな風に歪むのかなど考えなくてすんだはずだ。
もう関わらなければいい。気持ちを悪戯に揺さぶる物は切り捨てればいい。
そう思って毎回背を向け出て行く足は、気が付くと何時も玄関先に立っている。
扉が開く前にこのぬるま湯から立ち去れ。頭の片隅で聞こえる警笛は期待する鼓動に打ち消され、毎回必ず俺を迎え入れる声にかき消されるのだ。
「いらっしゃい!辻田さん!」