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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    TF主ルチ。ルチに振られる夢を見て泣いてしまうTF主くんの話です。

    ##TF主ルチ

    悪い夢 その日のルチアーノは、少し様子がおかしかった。いつものような笑みは浮かべずに、神妙な顔付きをしている。瞳には暗い影が落ちていて、どこか別人のようだった。
    「君に、話があるんだ」
     僕に近寄ると、彼は静かにそう言った。
    「どうしたの?」
     僕は尋ねる。彼のこんな姿なんて、あまり見たことがない。何かあったのかと思ったのだ。
     ルチアーノは、迷ったように顔を伏せた。何度か口をもごもごと動かした後、言いづらそうな口調で言う。
    「僕と、別れてほしい」
     僕は、心臓が止まりそうになった。彼の発した言葉が理解できなかったのだ。ルチアーノを真っ直ぐに見つめると、震える声で聞き返す。
    「今、何て言ったの?」
    「聞こえなかったのかよ。別れてほしいって言ったんだ」
     ルチアーノの返事は変わらない。きっぱりした口調で、僕へと言葉を突き付ける。
    「それ、本当なの……?」
     聞き返す声は、自分でも分かるくらいに震えていた。当たり前だ。世界で一番愛した相手に、別れを告げられているのだから。
    「しつこいよ。僕が冗談でそんなことを言うと思うのかい? 君のそういうところは、最後まで変わらなかったな」
     ルチアーノは言う。その声の冷たさで、ようやく彼が本気であることを察した。
    「どうしてなの? 僕が、何かした?」
     尋ねると、ルチアーノは不快そうに僕を見た。眉を少しだけ上げて、突き放すような声で言い放つ。
    「嫌になったんだよ。君と一緒にいるのが。君は、理由をつけて僕を縛り付けようとするだろう?そんなに束縛されたら、任務なんてできやしない」
     彼の言葉は、僕の心に突き刺さった。確かに、彼の言う通りかもしれない。僕は、ルチアーノと離れるのが怖かったのだ。僕の誘いは、彼にとっては鬱陶しいものだったのかもしれない。
    「そうだね……。ごめんね」
     こんなことを言われたら、大人しく別れるしかなかった。彼は、神の代行者だ。元から僕たちとは別の世界の十住人だったのである。人間世界から離れて活きることが、彼の幸せなのだろう。
    「分かったかい? 君は人間なんだから、人間と幸せになりなよ」
     それだけ告げると、彼は僕に背を向けた。見慣れた彼の背中が、今だけはすごく小さく見えた。

     気がついたら、布団の中に居た。記憶を掘り起こして、それが夢であったことに思い至る。妙に生々しい夢だった。僕が、ルチアーノに振られるなんて。
     顔を上げて、自分が泣いていることに気づいた。熱い液体が、目元から伝って顔を流れていく。夢を見て泣いたのは久しぶりだ。中学生になってからは、泣くことは恥ずかしいと思っていたのだ。
     涙は、無意識のうちに溢れてきた。温かい液体が、顔の上を流れていく。視界が滲んできて、手の甲で涙を拭った。
     隣から、もぞもぞと衣擦れの音がした。隣に眠っていたルチアーノが、ゆっくりと顔を上げた。僕の顔を見て、驚いたように息を飲む。
    「君、泣いてるのかよ」
     僕は大きく息を吸った。涙が溢れて、言葉が出てこなかったのだ。なんとか呼吸を整えると、震える声で言う。
    「なんでもないよ」
    「何でもないわけないだろ。どうしたんだよ」
     ルチアーノは鋭い声で問い詰める。言葉はきついが、怒っているようではなかった。僕が泣いている姿を見て、困惑しているのだろう。
    「大したことないんだよ。ただ、怖い夢を見ただけなんだ」
     僕が言うと、彼は安心したように息を付いた。表情を緩めると、さっきよりも柔らかくなった声で言う。
    「なんだ。そんなことか」
    「ね、大したことないでしょ」
     答える声は、やっぱり震えてしまった。涙はなかなか止まらないし、鼻水が垂れてきてしまう。ティッシュを引っ張り出すと、身体を起こして鼻をかんだ。
    「で、どんな夢を見たんだよ」
     背後からルチアーノが尋ねてくる。その質問に、すぐには答えられなかった。僕が黙っていると、ルチアーノは不審そうに言う。
    「言いたくないのか? 何かやましいことでもあるのかよ」
    「違うよ。そうじゃないんだ」
     答えながらも、僕は恐怖を感じていた。僕を見るルチアーノの瞳は、夢の中の彼を彷彿とさせたのだ。ついさっきまで感じていた絶望感を思い出して、息が止まりそうになってしまう。抑えようとしているのに、また涙が溢れた。
     僕は、ルチアーノを抱き締めた。柔らかな髪の感触と、子供特有の高い体温が、肌を通じて伝わってくる。僕の様子を見て、ルチアーノが困惑したような声を上げた。
    「どうしたんだよ。いきなり抱きつくなんて」
    「…………行かないで」
     無意識のうちに、唇から言葉が漏れていた。ルチアーノが驚いたように息を吸う。ちらりと僕に視線を向けると、納得したように呟いた。
    「そう言うことかよ」
    「見捨てないで。僕を置いていかないで……」
     譫言のように僕は呟く。子供みたいでみっともないとは分かっていたが、どうしても抑えられなかった。寝ぼけた僕の頭は、悲しみを咀嚼することができなかったのだ。
     ルチアーノはそっと僕に腕を回した。背中をとんとんと叩くと、宥めるような声で言う。
    「心配するなよ。僕はどこにも行かないさ」
    「でも、ルチアーノは……」
    「君は、僕を疑うのかい? 僕が、君を都合の良い道具として扱うとでも?」
    「そうじゃないけど……」
    「なら、もう泣くのはやめなよ。子供みたいでみっともないぜ」
     背中を撫でられていると、不思議と安心してきた。大きく深呼吸すると、ルチアーノの身体を離す。彼は、少し恥ずかしそうに僕に背を向けた。
    「ごめんね。こんなことさせちゃって」
     謝ると、ルチアーノは呆れたように僕を見た。ため息をひとつ付くと、ベッドから滑り降りる。
    「本当だよ。君って、見た目よりも子供っぽかったんだな」
     照れ隠しなのか、そのまま部屋の出口まで歩いていく。ドアの前に立つと、くるりとこちらを振り向いた。
    「僕がどこにも行けないことは、君が一番良く知ってるだろ」
     思いがけない一言に、僕は息を飲んだ。思わず視線を向けるが、ルチアーノは既に部屋から出ようとしている。僕は、自分の耳を疑った。
     僕は、ルチアーノがいないと生きられないくらいに、ルチアーノを必要とするようになってしまった。ルチアーノに振られる夢を見て、涙を流してしまうくらいに。
     でも、それはルチアーノも同じなのだ。ルチアーノも、僕がいないと生きられないくらいに僕を必要としてくれているのだ。それはあまり良いとこではないのだけど、少しだけ安心した。
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