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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    TF軸のるあるかちゃんとルチの話。るあるかちゃんが両親と別居していることを知って衝撃を受けるルチの話です。テーマがテーマなので微シリアスです。

    ##TF軸

    パパとママ シティ繁華街は、子供たちの声で賑わっていた。右を向けば兄弟らしい二人が手を取り合い、左を向けば親子連れが楽しそうに歩道を歩いている。進路を塞ぐのは五人ほどの小学生グループで、後ろからは子供の漕ぐ自転車の音が聞こえてくる。
     子供は嫌いだ。弱くてうるさくて、少し脅せばすぐに泣く。関わりたくなんてないのに、僕のことを仲間として扱って、グループに入れようとするのだ。これまでの任務の中で、彼らと関わって良かったことなど一度もなかった。面倒な疫病神なのである。
     僕は踵を返した。繁華街に来たことは間違いだった。こんなところに居たら、周囲を子供たちに囲まれてしまう。さっさと退散しようと思ったのだ。
    「えー。嘘だろ!」
     大通りを通り抜けようとした時、どこからか少年の声が聞こえた。一際大きくて、通り全体に響き渡るような声だ。通行人の視線が、声の主へと吸い込まれる。前を行く大人が立ち止まって、仕方なく僕も足を止めた。
    「ちょっと、声が大きいわよ。仕方ないでしょう。そういう決まりなんだから」
     声の主を諭すように、少女の声が続いた。聞き慣れた声だと思いながらも、振り向かずに進路を窺う。前を行く大人たちは、歩道に出ている屋台の看板を見ているようだ。どうにか避けられないかと周囲を見ていると、再び少年の声が聞こえた。
    「だって、せっかくここまで来たんだぜ! このまま帰るなんて、もったいないじゃないか!」
     聞き分けの悪い発言だった。これが子供らしさだと言うのなら、僕はそんなものはほしくない。そんな取り留めの無いことを考えながら屋台の裏に回ると、カードショップの看板が見えた。
     店舗の前には、二人の子供が立っていた。白い半袖の服に、白のショートパンツという特徴的な服装をしている。入り口の前に貼ってあるチラシを見ながら、何かを話しているようだ。
     僕は、静かにその横を通りすぎた。子供たちに気づかれないように、息を潜めて歩を進める。その瞬間、前を向いていた少年が振り返った。
     少年が真っ直ぐに僕を見つめる。ぱちりと瞬きすると、驚いたように後ずさった。
    「げっ! ルチアーノ……!」
    「げっとはなんだよ。失礼だな」
     そう言って、僕は龍亞に視線を向ける。関わりたくなど無かったが、目が合ってしまったなら仕方ない。隣に並ぶ少女を見ると、にこりと笑って話しかける。
    「やあ、龍可ちゃん。奇遇だね」
     龍可は、戸惑ったように僕を見た。突然現れた宿敵に、どうするべきか迷っているらしい。
    「ルチアーノくん? どうしてここに?」
    「町の観察に来たんだよ。そろそろWRGPだからね」
    「そうなの」
     僕たちが話していると、龍亞が駆け寄ってきた。警戒した表情で僕たちの間に割り込む。
    「オレを無視するなよ!」
    「挨拶もしない礼儀知らずに話すことなんてないよ」
    「なんだと!」
     僕が煽ると、龍亞は簡単に乗ってきた。相変わらず、喧嘩っ早いやつだ。まあ、あんなことをしたのだから無理もない。
    「二人とも、やめて!」
     僕たちが睨み合っていると、龍可が止めに入った。彼らの力関係は、龍可のほうが上のようだ。僅かに口角を上げながら、僕は言葉を紡ぐ。
    「まあ、今日は許してやるよ。ところで、大声で叫んで何してたんだい?」
     尋ねると、龍亞は恥ずかしそうに黙りこんだ。僕をちらりと見て、ぎこちない態度で言う。
    「別に、お前に話すようなことじゃないよ」
     しかし、龍可は違った。にこりと僕に笑いかけると、背後にあったチラシを指差して、可憐な声で言った。
    「これよ」
     僕は、チラシに視線を向けた。そこには、イベントタイトルと概要が書かれている。大きく印刷された日付と時刻は、今日の午後を指していた。
    「ふーん。こども限定デュエル大会か。参加条件は小学生以下の参加者がリーダーを努める三人チーム。メンバーは全員が小学生以下か、小学生二人に保護者一人。参加者にはボーナスパックが配布される……。これがどうしたんだよ」
     僕が尋ねると、龍可は困った顔をした。
    「わたしたちは、このイベントに参加しようと思ったの。でも、人数が足りなくてエントリーできなかったのよ」
     龍亞が驚いた顔でるかを見る。彼女に顔を近づけると、隠しきれてないヒソヒソ声で言った。
    「なんでそんな話をするんだよ。ルチアーノには関係ないだろ!」
    「そんなことないわ。ルチアーノくんなら、大会の参加条件をクリアできるでしょう。一緒に参加してもらえばいいのよ」
    「ルチアーノに!? あいつは、僕たちを罠にはめた敵なんだぞ!」
     内緒話をしているようだが、内容は全て筒抜けである。彼らは、僕を巻き込むつもりらしかった。
    「じゃあ、龍亞はイベントに参加できなくていいの? 限定パックがほしいんでしょう?」
    「そうだけど……」
     龍亞を説得すると、龍可は再びこちらに顔を向けた。窺うような笑顔を見せると、控えめな声で言う。
    「そういうことだから、チームへの参加をお願いできないかな? ルチアーノくんなら、参加資格を満たしてるでしょう?」
     図々しいお願いだった。さっき出会ったばかりの相手に、そんなことを頼むなんて、それに、僕は子供が嫌いなのだ。わざわざ、子供ばかりの大会に出たくなんてなかった。
    「嫌だよ。なんで僕がそんなことしなくちゃならないんだ? 君たちにはチーム5D'sの仲間がいるんだろ?」
     僕が言うと、龍可は黙って首を振った。悲しそうな表情を浮かべると、説得するように言う。
    「遊星たちは、大会の準備で忙しいの。誰にも頼める人がいないのよ」
     龍可の姿を見て、龍亞も何かを思ったようだった。警戒を緩めると、少しトゲの残った声で告げる。
    「オレからも、頼むよ。本当に誰もいないんだ」
     どうして、僕なのだろう。僕は、彼らの宿敵に当たる存在なのだ。チームの臨時メンバーを選ぶような相手ではない。
     彼らは、シティの中心に住むトップスの子供なのだ。親から甘やかされて、遠慮というものが無くなっているのではないだろうか。取引で顔を合わせるトップスの人間たちも、子供を甘やかす親ばかりだった。
     そうだとしたら、一度、お灸を据えてやらなくてはならない。そう思って、僕はきっぱりとこう告げた。
    「そんなに参加したいなら、パパかママに頼めばいいだろ。この大会は、保護者一人まで参加できるんだから」
     僕の言葉を聞くと、彼らは驚いたように顔を見合わせた。すぐに視線を逸らすと、困った様子で言う。
    「わたしたちは、両親と離れて暮らしているの。だから、チームへの参加は頼めないのよ」
     その言葉を聞いて、僕は言葉を失った。龍亞と龍可は、トップスの子息であり令嬢なのだ。てっきり、親から甘やかされていると思っていた。しかし、それは想像でしかなかったのだ。
    「君たちは、両親と別居してるのかい? 小学生なのに? 」
     親というものは、子供を守るものだろう。こんな子供を放ったらかしにするなんて、彼らの両親は何を考えているのだ。
    「そうよ。生活のことはお手伝いさんがしてくれるけど、いつも二人で過ごしてるわ」
    「別に、寂しくなんかないぜ。たまに話してるし、オレたちには遊星たちや友達がいるからさ」
     弁明するように双子は言うが、全く意味はなかった。彼らの親は、義務を放棄している。そんなことも知らずに、彼らは親を慕っているのだ。滑稽と言うにはあまりにも悲哀が満ちていた。
    「分かったよ。チームに参加してやる」
     僕は言った。脈絡の無い発言に、二人がぽかんとした顔をする。次の瞬間には、表情に活気を取り戻していた。
    「本当?」
    「いいの?」
    「何度も言わせるなよ。まあ、今回だけだろうけどな」
     僕の言葉を聞いて、龍亞は嬉しそうに笑った。くるりと踵を返すと、ショップの中へと走っていく。
    「じゃあ、オレ、エントリーしてくる!」
     その後ろ姿を眺めながら、龍可が確認するように言った。
    「本当に、良かったの?」
    「いいよ。暇潰しにはなりそうだからな」
     別に、同情したわけではない。ネグレクトを受けている子供など五万といるし、中にはもっと劣悪な環境で育っている子供もいる。彼らの両親は、まだまともな方だ。何も同情する必要などない。
     僕は、シグナーの視察をするのだ。るあとるかが、デュエルでどのようなプレイングをするのかを、この目で見る。シグナーにデュエルをさせることは、サーキットを描くことにも繋がるだろう。僕は、ただ自分の任務をこなしているだけだ。
     そんなことを考えていたら、龍亞が戻ってきた。手には、青色のたすきを持っている。チラシに書かれていた、参加者の証しというやつらしい。
    「受付してきたよ! 一時から対戦相手を決めるくじ引きがあるんだって」
     楽しそうに言う龍亞から、たすきを受け取った。こんな子供じみたものを身に付けるなんて、この町に降りたときには考えもしなかった。まさか、こんな子供たちにほだされるなんて。
    「参加するからには、絶対に優勝するからな」
     僕は言った。今の僕にできる、精一杯の強がりだった。
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