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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。ほぼ同棲状態のTF主くんとルチがカレーライスを作る話。前半ほのぼの、最後が少しシリアスです。

    ##TF主ルチ

    カレーライス「今日の夜ごはんは、カレーライスを作ろうか」
     ルチアーノの手を握ると、僕は顔を見ながらそう言った。
     時刻は、夕方の五時を過ぎた頃だ。買い物をして料理を作るには、ちょうどいい頃合いだろう。ルチアーノはカレーライスが好きだから、一緒に作ってみたいと思っていたのだ。
    「君、料理なんかできるのかよ。いつも自炊なんかしないだろ。ちゃんと作れるのか?」
     彼はにやにやと笑いながら答える。僕をからかうような、意地悪な笑みだった。彼の言葉を跳ね返すように、僕も意地悪な声色を作る。
    「ルチアーノも一緒に作るんだよ。そうすれば、失敗なんてしないでしょ」
     そう言うと、彼はようやく顔を上げた。真ん丸になった瞳が、真っ直ぐに僕の方へと向けられる。信じられないといった顔だった。
    「何でだよ。僕は食事なんか要らないんだぞ。君に協力する理由なんか無いだろ」
    「一緒に作ることに意味があるんだよ。共同作業って言葉もあるんだから」
     話しながらも、僕の足はスーパーへと向かっていく。なんだかんだ言いながらも、ルチアーノは大人しく後についてきた。自動ドアを潜り抜けると、カゴを手に青果コーナーを歩いていく。野菜の積み上げられた台に近づくと、にんじんの袋を手に取った。続けて、玉ねぎとじゃがいもの袋をカゴに入れていく。
     近くには、カレールウの箱が並んでいた。知っているメーカーのものを手に取ると、裏面を見て必要な食材を確かめる。カゴに入れた野菜以外には、牛か豚の肉が上げられていた。少し悩んでから、シーフードに変更することにする。ルチアーノはお寿司が好きなのだ。お肉よりもシーフードの方が好きだろう。
     冷凍食品コーナーに向かうと、シーフードミックスの袋をカゴに入れた。せっかくだからと思って、ファミリーパックのアイスクリームもカゴに入れる。たったそれだけなのに、カゴの中はパンパンになった。
    「君が自炊をしようなんて、珍しいな。まあ、カレーは自炊って感じじゃないけどさ」
     買い物をする僕を見ながら、ルチアーノが言葉を続ける。からかうような語調だった。
    「僕だって、たまには料理くらいするよ。せっかく実家に住んでるんだもん。キッチンも使わないと勿体ないでしょう」
     答えながらも、レジを通って支払いを済ませる。野菜を詰めると、買い物袋はずしりと重くなった。肩から下げるように持ち上げ、ルチアーノの手を握る。
    「じゃあ、行こうか」
     暮れていく空を眺めなから、僕たちは家へと向かっていく。長い夜が、今から始まろうとしていた。

     家に帰ると、僕は買い物袋を開けた。キッチンの上を片付けると、買ってきた食材を並べる。あっという間に、台の上は食べ物で溢れ返った。
    「僕が野菜を切るから、ルチアーノは洗ってくれないかな?」
     声をかけると、彼は面倒そうに視線を向けた。眉を少しだけ上げると、呆れたような視線を僕に向ける。ソファに座ったまま、声だけで返事を寄越した。
    「嫌だよ。君が食べたいものなんだから、君一人で作りな」
    「そんなこと言わないでよ。せっかくだから、一緒に作ろう」
     負けじと声をかけてみるが、返事は返ってこない。仕方なく、自分で野菜を洗うことにした。
     冷水で洗った野菜を、ピーラーで皮を剥く。カレールウのパッケージを見ながら、手探りで包丁を入れていった。説明では一口大と書かれているが、具体的にはどのような大きさなのだろうか。何も分からないから、適当な大きさにカットした。野菜を鍋に入れると、今度はシーフードミックスを解凍する。
     具材が揃ったら、後は火をつけて煮込むだけだ。換気扇を回して火をつけると、近くから声が聞こえてきた。
    「おい」
    「わっ……!」
     予想もしなかったことに、飛び上がるほど驚いてしまった。視線を向けると、ルチアーノがカウンター越しに僕を見つめている。にやりと笑みを浮かべると、からかうような声色で言った。
    「驚きすぎだろ。全く、怖がりなんだからさ」
     意地悪な笑みに、少しムッとした。答える声も、少しとげのあるものになってしまう。
    「どうしたの? 驚かせに来ただけなら、向こうで待っててよ」
     僕の声を聞いて、彼は笑みを引っ込めた。口角を上げると、尊大な態度で語る。
    「そんなに怒るなよ。アドバイスしてやろうと思ってるんだからさ」
     そう言うと、コンロに乗せられた鍋を覗き込んだ。放り込まれた野菜を見ると、さらに口角を上げる。
    「やっぱりな。見に来てやってよかったよ。じゃがいもは後で煮込まないと、形が崩れるんだぜ」
    「そうなの?」
     返事をしながら、慌ててじゃがいもを掬い出す。そんなことはレシピに書かれていなかったから、一緒に煮込もうとしていたのだ。
    「大きく切ってるならいいけどさ。その大きさだと、すぐに煮崩れするぜ」
    「そうなんだ……」
     僕は呟く。そんなこと、少しも考えていなかった。僕は料理に不慣れなのだ。
    「じゃがいもはすぐに火が通るからな。他の野菜と一緒に煮込んだら、ぐずぐずになっちまうぜ」
     ルチアーノはくすくすと笑う。無知な自分に、頬が熱くなった。煮込んでしまえば気にならないのだろうけど、具材がなくなってしまうのは勿体ない。
    「危なかったよ。教えてくれてありがとう」
     お礼を言ってから、野菜を炒めるための箸を取り出す。野菜やシーフードが焦げないように、ぐるぐると鍋をかき混ぜた。
     具材に火が通ると、今度は水を足して煮込む。シーフードミックスは、肉と違って火が通っているのかが分かりづらい。ある程度炒め終わったら、思いきって水を入れた。
     ルチアーノは、ずっと僕の様子を眺めている。僕がきちんと料理をこなせるのかが心配なのだろう。彼のことだから、ちゃんと見ていないと下手物を食べさせられると思っているのかもしれない。
     煮込んでいる間は、そこまで気にかける必要はない。何度か中身をかき混ぜながら、片手間に洗い物を片付けた。それでも時間は余るから、トッピングとデザートの用意をする。トッピングには、ウインナーとチーズ、小振りな冷凍トンカツを用意していた。
     ウインナーを炒めると、冷凍のカツを袋から出す。
    「おい」
     また、ルチアーノから声をかけられた。わざわざ呼び掛けてくると言うことは、何か言いたいことがあるのだろう。手元の作業を止めると、彼に視線を向けた。
    「今度はどうしたの?」
    「そろそろ、じゃがいもを入れた方がいいぜ。それから、水も足しな。蒸発して減ってるだろうから」
     ルチアーノに言われて、僕は半開きになっていた鍋の蓋を開けた。確かに、中の水分が減って具材がはみ出している。じゃがいもを放り込むと、蛇口を捻って水を流し込んだ。
    「お水って、どれくらい入れたらいいのかな?」
     尋ねると、ルチアーノはあからさまに呆れた様子を見せた。口をぽかんと開けたまま、僕と手元の箱を見比べる。
    「そんなことまで聞くのかよ。パッケージに書いてないのか?」
    「煮込む前に水を入れるとは書いてあるけど、それ以外には何も書いてないよ」
     僕が答えると、彼は小さくため息をついた。心の底から呆れたような声色で言う。
    「そんなの、適当でいいんだよ。こういうのは具材が浸されてれば煮えるんだから」
    「そうか。……そうだね」
     具材をひたひたにすると、再び火にかける。沸騰させるために強火に設定していると、ルチアーノが隣から声をかけた。
    「分かってると思うけど、沸騰したら火を弱めろよ」
     なんだか、共同作業と言うよりも料理教室だ。ルチアーノが居てくれなかったら、カレーはどろどろの物体になっていただろう。
     しばらく鍋を見ていると、パッケージに書かれていた時間が経過した。ルウを入れようと箱を開けていると、となりからルチアーノが口を開いた。
    「ルウを入れる前に、芋が煮えてるか確認しろよ」
     また、ルチアーノからの指摘だった。箸を突き刺して、じゃがいもの煮え具合を確認する。よく分からなかったから、これでよしとすることにした。
     ルウを入れると、最後にぐるぐるとかき混ぜる。しばらく混ぜると、スパイスのいい匂いが漂ってきた。
    「できたよ。トッピングを乗せて食べようか」
     食器を取り出すと、パックのご飯を温めた。カレーはたくさんあるから、一パックまるごとをしゃもじでよそう。僕を手元を見ていたルチアーノが、呆れたように声を上げた。
    「ここまでしておいて、米はパックなのかよ」
    「袋のお米を買っても、炊くか分からなかったから。それに、もって帰るのも大変だしね」
    「せっかく炊飯器があるんだから、横着せずに炊けよ。市販の米なんか一キロからあるんだぜ」
     にやにやと笑いながら、ルチアーノは僕をからかう。確かに、彼の言う通りだ。何も言い返せなかった。
    「まあいいや。食べるならとっとと食べようぜ。君のことだから、いろいろ用意してるんだろ」
    「そうだよ。今日は、トッピングを用意したんだ。好きなのを乗せていいよ」
     言いながら、僕はとろけるチーズをカレーの上に乗せた。作りたてのカレーの熱で、チーズはとろりと形を崩していく。隣にカツとウインナーを乗せると、少し豪華になった。
    「僕はそのままにするよ。下手に飾るよりも、素の味の方が旨いからな」
     食器を運ぶと、僕たちはスプーンを口に運んだ。まだ熱いカレーを、吹く息で冷ましながら口に入れていく。隣では、ルチアーノが涼しい顔でルウを掬っていた。
     二人で作ったカレーは、レトルトのカレーよりも美味しく感じられた。自分で作ったという経験が、より美味しく感じさせるのだろう。二人の共同作業のおかげだった。
    「美味しいね」
     声をかけると、ルチアーノはちらりとこちらを見た。僅かに眉を上げてから、気のない声で返事をする。
    「まあまあだな」
     食事を終えると、彼はお風呂へと向かっていった。カレーの残りを冷蔵庫に入れると、使った食器を洗う。全てを終わらせた頃には、ほんのりと疲労感があった。ソファに座り込んで、冷凍庫から取り出したアイスクリームを食べる。
     食べ終わる頃には、ルチアーノがお風呂から上がってきた。長い髪を靡かせながらリビングに入ると、気の抜けたような声で言う。
    「上がったよ」
    「ありがとう。行ってくるね」
     部屋へ着替えを取りに行くと、真っ直ぐお風呂に向かった。ドライヤーの温もりが残った洗面所で、一枚ずつ服を脱いでいく。洗濯カゴには、既にルチアーノの服があった。
     こうしていると、まるで同棲生活みたいだ。いつの間にか、ルチアーノが家にいることが、僕にとっての当たり前になっていた。一緒にご飯を作って食べて、同じ布団に入って眠る。こんな生活を送れるなんて、僕はなんて幸せ者なのだろう。並々に張られたお湯に漬かりながら、そんな取りとめのないことを考えた。
     お風呂から上がると、ルチアーノは僕の部屋にいた。布団の中に潜り込みながら、退屈そうに携帯ゲーム機を操作している。僕が部屋に入ると、ちらりと視線を向けた。
    「上がったよ」
     声をかけてから、布団の中に潜り込んだ。ルチアーノの隣に寄り添うと、横目で画面を覗き込む。表示されているのは、定番のパズルゲームだった。上から落ちていくブロックを、淡々とした操作で積み上げていく。綺麗に揃えられたラインは、軽快な音声と共に消えていった。いつの間にか、スコアランキングはルチアーノのデータに塗り替えられている。いつから始めたのか分からないが、驚異的なスピードだった。
    「やっぱり、ルチアーノの方が上手だね。僕は、ゲームオーバーにならないようにするのがやっとだから」
    「君は、ゲームが下手だもんな。子供みたいな記録だったぜ」
     にやにやと笑いながら、彼は僕に視線を向ける。その笑みは意地悪だったが、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。愛おしさが溢れて、左手で頭を撫でてみる。僕の行動に、ルチアーノは少しだけ眉を上げた。
    「なんだよ」
    「かわいいなって思って」
    「はぁ?」
     トゲトゲした声色に、僕はさらに口角を上げる。ルチアーノはかわいいが、かわいいと言われるのが嫌いなのだ。
     しばらく、僕は黙ってルチアーノの手元を眺めていた。彼は淡々とブロックを積み上げ、華麗な手付きでラインを消していく。最終ステージをクリアすると、画面には『New Record』の文字が表れた。
     ゲームが終わると、彼はゲーム機を放り出した。淡々とブロックを積み上げることに飽きたのだろう。僕の手をどかすと、布団の中に顔を埋めた。布団から覗く頬は、熱でほんのりと赤らんでいた。
    「なんか、こうしてると新婚夫婦みたいだよね。一緒にご飯を食べて、一緒に寝て、幸せだな」
     ルチアーノの顔を眺めながら、僕はそんなことを呟いた。布団の中で、彼は小さく身じろぎをする。少しの間を置いてから、くぐもった声が聞こえてきた。
    「何馬鹿なこと言ってるんだよ。僕たちは、ただのタッグパートナーだろ」
     つれない言葉だった。ルチアーノは、いつもそうなのだ。僕が恋人関係を口にすると、つれない返事で誤魔化してしまう。自分が人間のパートナーになることが、彼には抵抗のあることらしいのだ。
    「タッグパートナーだけど、恋人同士でもあるでしょう。僕は、真剣にルチアーノのことを好きなんだよ。心から、ずっと一緒にいたいと思ってるんだから」
    「僕は、任務が終わるまでの契約だと思ってるけどな。人間の一生なんて、流れ星が落ちるほどに短いんだぜ」
     小さな声で言うと、彼はごろりと寝返りを打った。僕の言葉は、彼には少し重かっただろうか。ルチアーノの気持ちは、僕ほど本気じゃないのかもしれない。
    「僕は、ルチアーノといろんなことを経験したいんだ。遠くに出かけたり、今までにやったことのない遊びをしたり、愛を伝えたりしたい。重いかもしれないけど、僕は死ぬまでルチアーノと一緒にいるつもりだから」
     隣からは、返事が返ってこなかった。こんなことを言ったから、愛想を尽かされてしまったかもしれない。謝ろうと思った時に、小さな声が聞こえてきた。
    「本当に、死ぬまで一緒にいてくれるのかい」
     それは、問いかけだった。迷うような、照れているような小さな声だ。その不安を掻き消すように、しっかりした声で答えた。
    「一緒にいる。約束するよ」
    「……約束だぞ」
     絞り出すような声が愛おしくて、僕は再び頭を撫でる。背を向けてはいるものの、抵抗はされなかった。
     僕は、ルチアーノを愛している。ずっと一緒にいられたらいいと、心の底から思っている。それは、彼も同じなのだろうか。聞くことはできないけど、気になって仕方なかった。
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