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    enyakoya

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    これからビマヨダになる予定のもの

    #ビマヨダ

    カルデアに召喚され十日ほどが経つ。
    インドの英雄ビーマはカルデアでの生活に概ね満足している。ここにはカルデアの目的の為、数多の時代と国からの英雄が喚び出されておりその中には自身の弟もいるからだ。二人になっていたことに驚き、更に真面目すぎた弟の可能性を目の当たりにし嘆くこともあったがどちらも弟であることに変わりは無いので、時間を見つけては話している。
    そして食事。食べるのも作るのも好きであったビーマは、料理を食べられることに喜びを覚え、作れることに興味を持った。なのでサーヴァントの一部が調理を担当していると聞いた時、ならば自分もと立候補し調理場に立っている。
    数多の時代と国から召喚された英雄たちの数だけ料理の数もあるということでビーマは高揚し、祖国の料理を中心に腕を奮っているところだ。
    召喚されたサーヴァントに食事の必要はあるかと言われたら、ない。食事から得られる魔力はごく僅かだからだ。しかしこの体に味覚があることと、美味しいものを食べているという事実は精神の充実に繋がるので食堂を利用しているサーヴァントは多い。
    だからか調理場に立っていると様々なサーヴァントが見れてそれも楽しみの一つである。料理より酒の方を楽しみにしている者もいれば、デザートを楽しみにしている者、ただついてきて食べる者を見ている者。あまりにも騒ぐ者は静かにさせることもあるが、素直に楽しいと思える。ただ一つ

    「息災か?」
    「お前か、なんかあるように見えるか?」
    「何も無いならいい、おにぎりセットを三人分、ここでは食べない」

    ビーマが見る限り無表情の男の名はカルナ。生前ビーマたちパーンダヴァ五兄弟と敵対し、特に下の弟であるアルジュナの好敵手であった。
    そのアルジュナが三人分と言うとメンバーの想像は簡単につく。棍棒術を教えてくれた師の息子であるアシュヴァッターマン、そして

    「ドゥリーヨダナはここでもお前を顎で使ってんのか」

    このカルデアで自分より数日遅れて召喚された男の名前を口にした。
    ドゥリーヨダナ、従兄弟にして兄弟弟子であり、敵対していた百王子の長兄、カウラヴァの旗頭。そしてビーマが命を奪った男。
    少しでも好機と見るや奸計を仕掛け、罠を張り巡らせ亡き者にしようとしてきたドゥリーヨダナは召喚されて一週間ほど経っても何もしてこない。マスターがいるから自由に出来ずにいるのだとも思ったが、トロイアの英雄は石を投げられたと聞き及んだ為に大きくなければ嫌がらせは出来ると考えた。なので召喚されたと聞いた時から仕掛けられても生前のように軽々と突破して、相応の仕返しをするつもりでいる。それが何も無いのだから不気味さを覚え始めている頃合だった。
    それでも居るとわかるのが、カルナがこうして注文をしてくる時である。三人分と持ち帰り、現代ではテイクアウトと呼ばれる行為で料理を持っていき、数時間経てば洗った食器を返しに来る。

    「俺が空いていたから来たんだ。梅干しとツナマヨに興味があるらしい」

    カルナは注文する時に話をしてくれる。注文を受けるのはビーマ自身出ない時もあるが、時間があればこうしてやりとりをする位の仲ではある。カルナの代わりにアシュヴァッターマンが注文に来た時があったが、その時の雰囲気は良くはないが悪くもない。お互い悪くならないようにしようというのが伝わってきて、顔を顰めることがなかった分マシであろうという直感のままに、注文を口にしてもらい注文を受け入れた。対応を考えると簡単ではあるが話をしてくれるカルナが相手として一番いいのだろう。
    いくらサーヴァントと言っても、全てを過去として受け入れられるはずも無い。その過去故に英雄となったのならば尚更だ。
    受け入れて新しい生として謳歌する者、受け入れたからこそ気持ちをまだ抱える者、有り様は様々だろう。ならば自分はどちらなのかと考えて、やめた。
    何故ならば今注文されたを受けたからだ。

    「わかった。すっぱい梅干し入れてやる」
    「頼む」

    ビーマは厨房に引っ込むとメニューを伝えると了解の返事があった。混んでいる時間では無く、ビーマの手伝いは無用とのことだったので受け取り口の近くに移動していたカルナの元へ近付いた。
    頭一つ分背が低いカルナではあるが、こうして並び話をすると身長差など感じさせない圧を感じるのはカルナの持つ英雄性だからなのだろうか。翡翠にも、湖の底にも似たような静かな色を秘めた瞳がビーマを写す。

    「どうした」
    「まだろっこしいのは苦手だ。ドゥリーヨダナの野郎は何か企んでるのか」

    パーンダヴァ五兄弟の逸話は様々あるが、百王子との諍いももちろん含まれている。まして相手はドゥリーヨダナ、毒を盛り家を燃やしイカサマ賭博をするといった悪行は数知れずあるからこそ、自分は気になるのだろう。そこまでは話さなかったが考えていることだ、カルナは僅かにも表情を変えることはなくその問いに答える。

    「そんな事か。ない……しかし」
    「なんだ」
    「今の時点ではと付け加えておこう。ドゥリーヨダナは今そこまで考えられる状況にないからな」
    「状況がどうにかなったら企むと?」
    「わからん。何せドゥリーヨダナだ」

    ドゥリーヨダナだ、これだけで大分説得力があるからなんとも言えない。
    厄介さを知っているからこそ一度赴いて釘を指して置くべきではないかと考えてしまう。

    「気にする事はない」

    カルナの一言が考えを中断させる。

    「お前はただ、お前らしくあればいい」

    ここでカルナの顔に変化があった。目を細めてうっすらと唇が弧を描く、いわゆる笑みの形を作りビーマへと向けられた。安心しろということなのだろうが、たしかに美丈夫であるカルナが笑えば安心するどころか惚れてしまう者も出て来るだろうが、ビーマの胸に安堵感は訪れる事はなくむしろチリチリとした感覚が残る。
    カルナから香ってきた花の匂いが、鼻をくすぐった。


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