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    いなばリチウム

    @inaba_hondego

    小説メイン
    刀:主へし、主刀、刀さに♂
    mhyk:フィガ晶♂
    文アル:はるだざ、菊芥、司♂秋
    文スト:織太

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    いなばリチウム

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    複数の刀に手を出すタイプのクズ審神者の始まり3
    がっつり主清初夜 多分初夜

    主清初夜R18***


    「ん、んぅ、ん……っ!」
     俺がしたのとは違う、唇を合わせるだけじゃなくて、舌がねじこまれて、絡み合って、吸われる、そんな口づけだった。舌先を吸われる度、じゅる、くちゅ、といやらしい音が頭の中に直接響いて、ぼぅっとしてしまう。それだけでもういっぱいいっぱいなのに、主の手が俺の耳朶を撫でて、くにくにと触るものだから、そんなつもりないのに腰が浮いてしまう。
    「っあ、ん……やだ、それ……っ」
    「ふふ、耳よわいんだね」
     口づけの合間に、主が声を立てて笑う。顔が離れたと思ったら、今度は耳に舌がぬるりと這わされて、ぞくぞくした。
    「ひぁ……っ」
     耳の穴に舌を入れられて、舐られる。舌と唾液の音が直接聞こえてきて、舐められていない方の耳も指でいじられるからたまったもんじゃない。ぐちゅぐちゅ聞こえる音が俺の頭の中を搔き乱す。ついさっきまで俺が主を組み敷いていたのに、今はもう完全に逆転していた。暴れそうになる足は主が太股の間に体を押し込んできてもう動かせない。膝頭が足の間に入り込んできて、ぐりぐりと押される。
    「ひゃぅ、あ! やだ……ぁ!」
    「ん……? 清光、履いてないの?」
    「ぁっ、だ、だって……」
     耳元で喋られると、ふうと吐息がかかってぞくぞくする。主の手が寝間着の帯にかかって、ゆるくなっていたそれは軽く引っ張るとすぐにほどけてしまった。裾がめくられて、もうすっかり勃ちあがってぬるぬるとよだれを垂らしているところも全部曝される。顔がますます熱くなるのが分かった。
    「そ、その方が、楽かなって……」
    「ふうん?」
     主は優しいから、情けで俺のこと抱いてくれるかもと期待しながら、でも手間をかけさせるつもりは全然なかった。履いてたらわずらわしいかな、とか、簡単に済ませられる方がいいかな、とか色々考えていて。
    「じゅ、んびも、全部、して、きたから…っ」
     露わになったところを指の腹でぐりぐりとされて、体が跳ねる。あんまり触られると出ちゃいそうで腰を捩って逃げようとしたら、逆にぐっと押さえられる。
    「んぁあ……! あ、だめっ……」
    「準備って? ここ?」
     指が、つう、と先端から根元まで滑っていって、さっきから触られる度にひくひくしていた孔につぷりと埋まる。
    「う、ん……っ」
    「……ああ、ほんとだ、やわらかくなってる」
    「は……っ、あ、んっ」
     主の指先が、浅いところでくちくちと出し入れされる。痛くないようにって、主がすぐ済ませられるようにって俺なりに色々調べてちゃんと濡らしてきたし、解してきたから大丈夫なはずなんだけど、自分で散々触ったところなのに、主に触られていると思うとどうしようもなく恥ずかしいし、ひっきりなしに変な声が出て、どんどん顔が熱くなる。はやく、はやく、と思うのに、主はまだ指先で孔の入り口をまさぐって、時折ぐに、と広げるように孔の縁を広げた。
    「あ、るじ、」
    「ん?」
     顔が熱くて、主の顔をちゃんと見られない。
    「ね、だ、だめだった? 俺、ちゃんと準備できてない……?」
    「そんなことないよ。ちゃんと柔らかくなってるし、多分、これなら痛くないかなあって思ってた」
    「ほんと……?」
    「でも」
    「? っあ、」
     つぷん、と指が引き抜かれ、代わりに指よりも太くて熱い塊が宛がわれる。
    「次は、俺にぜんぶ、やらせてね」
     次、があるんだ。そう思って、尋ねるより早く、ずぶ、と熱い塊が中に入り込んできた。
    「え、あ、ぁ……っ?」
     指でたくさん慣らしたしほぐしたのに、主の、ちゃんと入るかなって色々想像したはずなのに、一瞬、息が詰まった。
    「ッは、あ、んぁあ……っ」
    「清光、ちゃんと息して」
    「う、ん……っは、あ、あっ、あぁっ……!」
     息をしようと口を開くと、自分のじゃないみたいな裏返った声が出て益々焦る。主が俺の上で、少し顔を顰めながら、でもゆっくり腰を押し進めてるのが分かった。ゆっくり、ゆっくり、お腹の中を、押し広げられてる。どくん、どくんと脈打つ塊を、俺の中が受け入れようと広がっていく。
    「は、ああ、は……っ」
    「っ、……いたくない?」
    「ん……へい、き……」
     声を出す度、お腹の中の熱を感じて、主とつながっているんだって実感する。それが幸せで、痛みなんて全然感じなかった。よかった、と主が笑う。うっすら汗が浮かんで、頬や首がほんのり赤い。初めて見る顔に、俺の胸はまたどきりとする。
    「あるじ……っ」
     じいと見上げると、主は俺の心を読んだみたいに、体を屈めてくれた。唇が触れると、ぐちゅ、と二人の間で音が鳴って、更に奥まで入れられたのが分かる。何度も唇を合わせて、その度に少しずつ腰が押し進められる。
    「ぁ、はぁ……っ、ん」
    「清光……」
     主が、俺の名前を呼ぶ。ぽた、と汗が落ちてきて、俺の肌の上で混ざった。
    「っ主……すき……」
     たまらなくなって、独り言みたいに呟くと、主はふわりと笑ってくれた。
    「俺も。大好きだよ、清光」
    「―――ッあ!?」
     胸がいっぱいになって、でも余韻に浸ってる暇もなく、ぐぷん!と奥を突かれて背中が反った。息が上手くできないまま口をはくはくと開けていると、ぎらりと光った瞳と目が合って、あ、また初めて見る顔だ、って思う。
    「ここ、いちばん奥だね」
     言われると同時に、ずっしりと重くて熱い主のがずるりと引き抜かれる。内臓ごと引っ張られるような感覚に体がびくびくしたけど、そのまま、またぐちゅん、と奥まで打ちつけられる。
    「ッひぁ、あ、あっ、あ~~~ッ」
    「っ、ごめん、ゆっくり、するからね……」
    「ん、んぅっ」
     ゆっくり、主のが、ずぷ、ずぷ、と音を立てながら中を行ったり来たりして、その度に腰も、背中も、体中がびりびりとしびれる感じがした。ただ入ってきて、押し広げられる感覚だけでぞくぞくするくらい気持ちいいのに、主がゆるく腰を引く時とか、出ていく直前にぐっ、ぐっ、と奥のところを抉られるのも全部気持ちよくて、俺は声にならない声を上げる。
    「あ、っん、ん……ひゃ、ぁっ!」
    「ふふ、ここもよわい?」
     俺があられもない声をあげる度に、主はそこばかり突いたり、わざとゆっくり動いたりした。お腹の中で主が動いて、弱いところを掠めて、きゅう、と俺の中も主のを締め付けてるのが分かった。そうすると主の眉根が寄って、気持ちよさそうに目が細められるのを見ると余計にぞくぞくする。主も気持ちよくなってくれてるんだ、と思うと涙が零れた。
    「あっ、あ、う……っん! あるじ、そこ、ぁ……」
    「ん…っ」
     主はゆっくり腰を動かしていたけれど、少しずつ打ち付ける速度が増していって、俺の足をぐい、と担ぎ上げた。
    「ふあっ!? あ、あッ」
    「っ、き、よみつ」
    「あるじ、あるじ…ッあ……!」
     強く腰が打ち付けられて、びく、とつま先が跳ねる。そのまま何度も奥を突かれて、その度にぱん、ぱん、と肉を叩くような音が鳴って、俺の声もどんどん甲高くなっていった。
    「あぅッ、あっ、あんっ! あ、そこ……っやぁっ あっ あぁあっ」
    「は…っ 清光、きもちいい?」
    「んっ、う、んッ! あッ」
     言葉らしい言葉も出なくて、代わりに手を伸ばして、主の頭を抱き寄せる。吐息が熱くて、俺のお腹の中をぐちゅぐちゅ搔き乱す音も止まらなくて、頭の中ももうぐちゃぐちゃで、でも、どうしようもなく幸せだった。
    「はぁっ、あぅ、あっ、あっ、んんぅッ」
    「あ、あー……もう出そう…っ」
     すぐ傍で切羽詰まった声がして、噛みつくように口吻けが振ってくる。口も、舌も熱くて、夢中になって舌を絡ませ合った。ぎゅう、と主の頭を抱きしめる。
    「んっ! ぁ、ふぁ、んむッ……!」
    「っ、はぁ……っ」
     ぱん!と一際大きく腰を打ち付けられて、唇を合わせたまま主がぶるりと震えるのが分かった。どく、どく、とお腹の中に熱が注がれる感覚がって、俺のものからも溢れるように白濁が零れた。口を合わせていたから声は出せなかったけど、離れがたくて、ひとしきりお互いの唇を貪った。
    「は……ぁ……んぅ、う……」
    「ん……」
     くるしい、と思うと同時に唇が離れ、唾液が糸を引く。主がゆっくり体を起こして、ずるりと俺の中から出ていった。
    「ぁ……ん、」
     散々抜き差しされたそこは、見なくても分かるくらいひくついていて、どろりと出されたものが零れる感覚に、声が漏れる。汗で額に張り付いた前髪をかき分けられて、そのまま頭を撫でられた。少し眉尻を下げた主が、手つきと同じくらい優しい顔で、「ごめん」と謝る。
    「やさしくするつもりだったのに、我慢できなくて」
    「んん……へいき……」
    「ほんと?」
     ふ、と小さく笑った主が隣に寝転がって、俺の体を抱き寄せる。まだ頭がぼうっとして、ふわふわして、夢みたいだ。髪を撫でられて、汗ばんだ額や、涙がにじむ目尻にちゅ、ちゅ、と音を立てて口付けられる。口付けられる度に、笑いたくなるような、泣きたいような気持ちになる。
    「後で、一緒に風呂入ろうか。ちょっと狭いけど……」
    「ん……」
     俺も主の腕の中に潜り込んで、そっと火照った足を絡ませた。
    「あるじ」
    「ん?」
    「……だいすき」
     なんとかそれだけ口にして、主の胸元に額を擦り付けた。頭上で小さく笑う気配がする。また頭を撫でられて、そっと瞼を閉じる。
     今だけでいい、この人は俺のものだって、思いたい。



    おわり
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    いなばリチウム

    TRAININGhttps://poipiku.com/594323/10668650.html
    これの続き。騙されやすい審神者と近侍の長谷部の話。
    だまされやすい審神者の話2 疎遠になっても連絡をとりやすい、というタイプの人間がいる。

     それがいいことなのか、はたまたその逆であるなのかはさておき、長谷部の主がそうだった。学校を卒業し、現世を離れてから長いが、それでも時折同窓会やちょっとした食事会の誘いがあるという。ほとんどは審神者業の方が忙しく、都合がつかないことが多いけれど。今回はどうにか参加できそうだ、と長谷部に嬉しそうに話した。
     もちろん審神者一人で外出する許可は下りないので、長谷部が護衛として同行することになる。道すがら、審神者は饒舌に昔話をした。学生の頃は内気であまり友人がいなかったこと、大人しい自分に声をかけてくれたクラスメイトが数人いて、なんとなく共に行動するようになったこと。卒業する時に連絡先を交換したものの、忙しさもありお互いにあまり連絡はしていなかったこと。それでも年に一度は同窓会や、軽く食事でもしないかという誘いがあること。世話になっている上司を紹介したいと何度か打診され、気恥ずかしさはあったものの、紹介したいと思ってもらえることは嬉しかったこと。今回やっと予定が合い、旧友とその上司に会えること。
    1820

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    山鳥毛のピアスに目が行く審神者
    最近どうも気になることがある。気になることは突き詰めておきたい性分故か、見入ってしまっていた。
    「どうした、小鳥」
     一文字一家の長であるというこの刀は、顕現したばかりだが近侍としての能力全般に長けており気づけば持ち回りだった近侍の任が固定になった。
     一日の大半を一緒に過ごすようになって、つい目を引かれてしまうようになったのはいつからだったか。特に隠すことでもないので、問いかけに応えることにした。
    「ピアスが気になって」
    「この巣には装飾品を身につけているものは少なくないと思うが」
     言われてみれば確かにと気づく。80振りを越えた本丸内では趣向を凝らした戦装束をまとって顕現される。その中には当然のように現代の装飾品を身につけている刀もいて、大分親しみやすい形でいるのだなと妙に感心した記憶がある。たまにやれ片方落としただの金具が壊れただのというちょっとした騒動が起こることがあるのだが、それはまあおいておく。
     さて、ではなぜ山鳥毛にかぎってやたらと気になるのかと首を傾げていると、ずいと身を乗り出し耳元でささやかれた。
    「小鳥は私のことが気になっているのかな?」
    「あー……?」
    ちょっと 1374

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    MOURNING主くり
    極になって柔らかくなった大倶利伽羅に宣戦布告する片想いしてる主
    ポーカーフェイスの君にキスをしよう


    「大倶利伽羅」

    ひとつ呼ぶ。それだけで君は振り向いて、こちらを見てくれる。
    それだけでどうしようもなく締め付けられる胸が煩わしくて、ずたずたに切り裂かれてしまえとも思う。

    「なんだ」

    いつもと変わらぬ表情で、そよ風のように耳馴染みの良い声がこたえる。初めて顔を合わせた時より幾分も優しい声音に勘違いをしそうになる。
    真っ直ぐ見つめる君に純真な心で対面できなくなったのはいつからだったっけ、と考えてはやめてを繰り返す。
    君はこちらのことをなんとも思っていないのだろう。一人で勝手に出て行こうとした時は愛想を尽かされたか、それとも気づかれたのかと膝から力が抜け落ちそうになったが、4日後に帰ってきた姿に安堵した。
    だから、審神者としては認めてくれているのだろう。
    年々距離が縮まっているんじゃないかと錯覚させるような台詞をくれる彼が、とうとう跪座までして挨拶をくれた。泣くかと思った。
    自分はそれに、頼りにしていると答えた。模範的な返しだろう。私情を挟まないように、審神者であることを心がけて生きてきた。

    だけど、やっぱり俺は人間で。
    生きている限り希望や 1288

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり

    おじさま審神者と猫耳尻尾が生えた大倶利伽羅のいちゃいちゃ
    猫の日にかいたもの
    大倶利伽羅が猫になった。
    完璧な猫ではなく、耳と尾だけを後付けしたような姿である。朝一番にその姿を見た審神者は不覚にも可愛らしいと思ってしまったのだった。

    一日も終わり、ようやっと二人の時間となった審神者の寝室。
    むっすりと感情をあらわにしているのが珍しい。苛立たしげにシーツをたたきつける濃い毛色の尾がさらに彼の不機嫌さを示しているが、どうにも異常事態だというのに微笑ましく思ってしまう。

    「……おい、いつまで笑ってる」
    「わらってないですよ」

    じろりと刺すような視線が飛んできて、あわてて体の前で手を振ってみるがどうだか、と吐き捨てられてそっぽを向かれてしまった。これは本格的に臍を曲げられてしまう前に対処をしなければならないな、と審神者は眉を下げた。
    といっても、不具合を報告した政府からは、毎年この日によくあるバグだからと真面目に取り合ってはもらえなかった。回答としては次の日になれば自然と治っているというなんとも根拠のないもので、不安になった審神者は手当たり次第に連絡の付く仲間達に聞いてみた。しかし彼ら、彼女らからの返事も政府からの回答と似たり寄ったりで心配するほどではないと言われ 2216

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    MOURNING主くり

    共寝した次の日の寒い朝のおじさま審神者と大倶利伽羅
    寒椿と紅の花
     
     ひゅるり、首元に吹き込んだ冷気にぶるりと肩が震えた。腕を伸ばすと隣にあるはずの高すぎない体温が近くにない。一気に覚醒し布団を跳ね上げると、主がすでに起き上がって障子を開けていた。
    「あぁ、起こしてしまったかな」
    「……寒い」
    「冬の景趣にしてみたのですよ」
     寝間着代わりの袖に手を隠しながら、庭を眺め始めた主の背に羽織をかける。ありがとうと言うその隣に並ぶといつの間にやら椿が庭を賑わせ、それに雪が積もっていた。
     ひやりとする空気になんとなしに息を吐くと白くなって消えていく。寒さが目に見えるようで、背中が丸くなる。
    「なぜ冬の景趣にしたんだ」
    「せっかく皆が頑張ってくれた成果ですし、やはり季節は大事にしないとと思いまして」
     でもやっぱりさむいですね、と笑いながらも腕を組んだままなのが気にくわない。遠征や内番の成果を尊重するのもいいが、それよりも気にかけるべきところはあるだろうに。
    「寒いなら変えればいいだろう」
    「寒椿、お気に召しませんでしたか?」
     なにもわかっていない主が首をかしげる。鼻も赤くなり始めているくせに自発的に変える気はないようだ。
     ひとつ大きく息 1374

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    軽装に騒ぐ主を黙らせる大倶利伽羅

    軽装に騒いだのは私です。
    「これで満足か」
     はあ、とくそでかいため息をつきながらもこちらに軽装を着て見せてくれた大倶利伽羅にぶんぶんと首を縦に振る。
     大倶利伽羅の周りをぐるぐる回りながら上から下まで眺め回す。
    「鬱陶しい」
    「んぎゃ!だからって顔つかむなよ!」
     アイアンクローで動きを止められておとなしく正面に立つ。
     ぐるぐる回ってるときに気づいたが角度によって模様が浮き出たり無くなったりしていてさりげないおしゃれとはこういうものなんだろうか。
     普段出さない足も想像よりごつごつしていて男くささがでている。
     あのほっそい腰はどこに行ったのかと思うほど完璧に着こなしていて拝むしかない。
    「ねえ拝んでいい?」
    「……医者が必要か」
     わりと辛辣なことを言われた。けちーと言いながら少し長めに思える左腕の袖をつかむとそこには柄がなかった。
    「あれ、こっちだけ無地なの?」
    「あぁ、それは」
     大倶利伽羅の左腕が持ち上がって頬に素手が触れる。一歩詰められてゼロ距離になる。肘がさがって、袖が落ちて、するりと竜がのぞいた。
    「ここにいるからな」
     ひえ、と口からもれた。至近距離でさらりと流し目を食らったらそらもう冗談で 738

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    梅雨の紫陽花を見に庭へ出たら大倶利伽羅と会っていつになったらふたりでいられるのかと呟かれる話
    青紫陽花


    長雨続きだった本丸に晴れ間がのぞいた。気分転換に散歩でもしてきたらどうだろうと近侍の蜂須賀に言われて久しぶりに外に出る、と言っても本丸の庭だ。
    朝方まで降っていた雨で濡れた玉砂利の小道を歩く。庭のあちらこちらに青紫色や赤色、たまに白色の紫陽花が鞠のように咲き誇っている。
    じゃりじゃりと音を鳴らしながら右へ左へと視線を揺らして気の向くまま歩いて行く。広大な敷地の本丸の庭はすべて散策するのはきっと半日ぐらいはかかるのだろう。それが端末のタップひとつでこうも見事に変わるのだから科学の進歩は目覚ましいものだ。
    「それにしても見事に咲いてるな。お、カタツムリ」
    大きく咲いた青紫の紫陽花のすぐ隣の葉にのったりと落ち着いている久しく見なかった姿に、梅雨を実感する。角を出しながらゆったり進む蝸牛を観察していると、その葉の先端が弾かれたように跳ねた。
    「……うわ、降ってきた」
    首の裏にもぽつんと落ちてきて反射的に空を仰げば、薄曇りでとどまっていたのが一段色を濃くしていた。ここから本丸に戻ろうにもかなり奥まで来てしまった。たどり着くまでに本格的に降り出してきそうな勢いで頭に落ちる雫の勢いは増 3034

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    重陽の節句に菊酒を作る大倶利伽羅と、それがうれしくて酔い潰れる主
    前半は主視点、後半は大倶利伽羅視点です
    『あなたの健康を願います』

    隣で動く気配がして意識が浮上する。布団の中で体温を探すも見つからない。眠い目蓋を持ち上げると腕の中にいたはずの大倶利伽羅がいなくなっていた。
    「……起こしたか」
    「どうした、厠か……」
    「違う、あんたは寝てろ。まだ夜半を過ぎたばかりだ」
    目を擦りながら起き上がると大倶利伽羅は立ち上がって部屋を出て行こうとする。
    なんだか置いていかれるようで咄嗟に追いかけてしまった。大倶利伽羅からは胡乱な目で見られてしまったが水が飲みたいと誤魔化しておいた。
    ひたひたと廊下を進むと着いた先は厨だった。
    「なんだ、水飲みに来たのか」
    「それも違う」
    なら腹でも空いたのだろうか。他と比べると細く見えても戦うための身体をしているのでわりと食べるしなとぼんやりしているとどこから取り出したのかざるの上に黄色い花が山をなしていた。
    「どうしたんだそれ」
    「菊の花だ」
    それはわかる。こんな夜更けに厨で菊の花を用意することに疑問符を浮かべていると透明なガラス瓶を取り出してそこに洗った菊の花を詰めはじめた。さらに首を捻っていると日本酒を取り出し注いでいく。透明な瓶の中に黄色い花が浮かんで綺麗 3117

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    赤疲労になった大倶利伽羅が限界をむかえて主に甘えてキスをねだる話
    お疲れ様のキス

    隊長を任せた大倶利伽羅に後ろから抱きつかれた。報告を聞いて端末に向き直ったら部屋を出て行くもんだと思っていた大倶利伽羅が背後にまわってそのまま座り込み腕が腹に回され今までにない行動にどうすればいいかとっさに判断が出来なかった。
    というかこれ甘えに来てるのか?もしそうならこっちが動いたらさっと離れていくやつか…?
    そう考えが巡って動けずにいると長いため息が聞こえてきた。
    滅多にない疲労をみせる様子に端末を操作すれば、ばっちり赤いマークが付いてた。
    古参になる大倶利伽羅には新入りの打刀たちに戦い方、とくに投石や脇差との連携を指導してもらっている。もとが太刀で刀種変更があってから戦い方を変えざるを得なかった大倶利伽羅だからこそ、言葉は少ないがつまづいた時に欲しい言葉をくれるから上達が早いらしい。
    だからつい大倶利伽羅に新人教育を頼んでしまうことが多かった。それがとうとう限界が来たのかもしれない。管理ができてない自分が情けないが反省は後でするとして、今は珍しく自分から甘えにきた恋びとを労うのが先だろう。
    「大倶利伽羅、ちょっと離してくれ」
    「…………」
    腹に回った腕をぽんぽん 1542