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    いなばリチウム

    @inaba_hondego

    小説メイン
    刀:主へし、主刀、刀さに♂
    mhyk:フィガ晶♂
    文アル:はるだざ、菊芥、司♂秋
    文スト:織太

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    いなばリチウム

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    https://poipiku.com/594323/10668650.html
    これの続き。騙されやすい審神者と近侍の長谷部の話。

    だまされやすい審神者の話2 疎遠になっても連絡をとりやすい、というタイプの人間がいる。

     それがいいことなのか、はたまたその逆であるなのかはさておき、長谷部の主がそうだった。学校を卒業し、現世を離れてから長いが、それでも時折同窓会やちょっとした食事会の誘いがあるという。ほとんどは審神者業の方が忙しく、都合がつかないことが多いけれど。今回はどうにか参加できそうだ、と長谷部に嬉しそうに話した。
     もちろん審神者一人で外出する許可は下りないので、長谷部が護衛として同行することになる。道すがら、審神者は饒舌に昔話をした。学生の頃は内気であまり友人がいなかったこと、大人しい自分に声をかけてくれたクラスメイトが数人いて、なんとなく共に行動するようになったこと。卒業する時に連絡先を交換したものの、忙しさもありお互いにあまり連絡はしていなかったこと。それでも年に一度は同窓会や、軽く食事でもしないかという誘いがあること。世話になっている上司を紹介したいと何度か打診され、気恥ずかしさはあったものの、紹介したいと思ってもらえることは嬉しかったこと。今回やっと予定が合い、旧友とその上司に会えること。

     そんな昔話を、長谷部は審神者の傍らで思い出していた。

    「そういうわけで、お前には先生の支援をして欲しくてさ、政府側に支援者がいれば、心強いというか」
    「すまないね、初対面でこんなことを頼んでしまって。しかし、君にとっても悪くない話だから」

     先程から似たような話を繰り返す男達と、それを困ったように曖昧に笑って何度か流している審神者の傍らで、思い出していた。
     彼らと合流したのは一時間程前で、挨拶もそこそこに、審神者の旧友だという男が、隣に座る壮年の男、”先生”がいかに素晴らしいか、人を率いるべき人間であるかを説き、その魅力を分からない人間達は愚かであり、それを正すのが自分の、自分達の役目であると熱弁した。最初は「そういうことはしていないので」とやんわり断った上でどうにか昔話に話の軸を戻そうとしていた審神者も、相手の勢いに負けて段々元気がなくなっていき、今や「なるほど」「そうかもしれませんね」と曖昧に相槌を打つだけの人形となっていた。彼らは何度も審神者に【支援】【協力】を求め、審神者の首を縦に振らせようとしている。

     しかし、話が三周目に入ったところで、グラスをテーブルに置いた。僅かに顔を傾けて長谷部を見たので、立ち上がり、荷物と上着を持つ。男たちはきょとんとしていたが、審神者が「帰ります」と遅れて立ち上がると急に慌てた。審神者の肩を掴もうとする手を長谷部が遮ると、一瞬怯んだものの、苛立ちをにじませた声で「なあ、友達だろ、冷たいんじゃないか」と睨んだ。
    「……友達だから、話を聞いた。それでじゅうぶんだろう」
    「っ、あのな、俺にも立場ってものが」
     続く声は小さかった。その後ろで、壮年の男は深い溜息を吐くと、男の肩がびく、と揺れる。審神者は懐の財布から何枚か紙幣を出すと、男に押し付けるようにして渡し、それで今度こそ背中を向けた。


    ---

    「……少し、歩こうか」
     冷たい風が吹きつけたが、審神者がそう言ったので、長谷部に断る理由はなかった。元々ここにくるまでも本丸から店に直接通り道を繋げず、話しながら歩いた道だ。

    「なんか、またかあ、って感じだね」
     ゆっくり歩きながら、審神者は自嘲気味に零した。
     旧友に呼び出される。指定された店に赴く。そこには呼び出した本人の他に一人、場合によっては二、三人見知らぬ他人がいて、今日のように何らかの支援を求めたり、骨董品を売りつけようとしたり、とにかく、審神者の想像していた再会の場にはならなかった。そして、まるで示し合わせたかのように彼らは「友達なのに」と、立ち去る審神者を詰るのだ。
    「俺、人を見る目がないのかなあ」
     ぽつり、ぽつりと審神者は呟く。
    「良い、友達だと思っていたのになあ」
     声は少し、震えていた。同じことを繰り返して、それでも審神者は期待して、長谷部を伴って現世を訪れていた。長谷部は何度も、寂しそうな背中を見た。
    「主」
     少しの沈黙を挟み、呼びかけると、審神者はすっかり消沈した顔をで振り返る。
    「俺が、」
     言いかけてから、長谷部は言い直した。
    「俺達が、いますよ」
     審神者は寂し気に笑った。
    「そうだね」とだけ返して、前を向くと、もう振り返らなかった。


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    いなばリチウム

    TRAININGhttps://poipiku.com/594323/10668650.html
    これの続き。騙されやすい審神者と近侍の長谷部の話。
    だまされやすい審神者の話2 疎遠になっても連絡をとりやすい、というタイプの人間がいる。

     それがいいことなのか、はたまたその逆であるなのかはさておき、長谷部の主がそうだった。学校を卒業し、現世を離れてから長いが、それでも時折同窓会やちょっとした食事会の誘いがあるという。ほとんどは審神者業の方が忙しく、都合がつかないことが多いけれど。今回はどうにか参加できそうだ、と長谷部に嬉しそうに話した。
     もちろん審神者一人で外出する許可は下りないので、長谷部が護衛として同行することになる。道すがら、審神者は饒舌に昔話をした。学生の頃は内気であまり友人がいなかったこと、大人しい自分に声をかけてくれたクラスメイトが数人いて、なんとなく共に行動するようになったこと。卒業する時に連絡先を交換したものの、忙しさもありお互いにあまり連絡はしていなかったこと。それでも年に一度は同窓会や、軽く食事でもしないかという誘いがあること。世話になっている上司を紹介したいと何度か打診され、気恥ずかしさはあったものの、紹介したいと思ってもらえることは嬉しかったこと。今回やっと予定が合い、旧友とその上司に会えること。
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    PAST主くり編/近侍のおしごと
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀
    主の部屋に茶色いうさぎが居座るようになった。
    「なんだこれは」
    「うさぎのぬいぐるみだって」
    「なんでここにある」
    「いや、大倶利伽羅のもあるっていうからつい買っちゃった」
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    奥歯からぎり、と音がなって気づけばうさぎをひっ掴んで投げようとしていた。
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    PASTさにちょも
    リクエスト企画でかいたもの
    霊力のあれやそれやで獣化してしまったちょもさんが部屋を抜け出してたのでそれを迎えに行く主
    白銀に包まれて


    共寝したはずの山鳥毛がいない。
    審神者は身体を起こして寝ぼけた頭を掻く。シーツはまだ暖かい。
    いつもなら山鳥毛が先に目を覚まし、なにが面白いのか寝顔を見つめる赤い瞳と目が合うはずなのにそれがない。
    「どこいったんだ……?」
    おはよう小鳥、とたおやかな手で撫でられるような声で心穏やかに目覚めることもなければ、背中の引っ掻き傷を見て口元を大きな手で覆って赤面する山鳥毛を見られないのも味気ない。
    「迎えに行くか」
    寝起きのまま部屋を後にする。向かう先は恋刀の身内の部屋だ。
    「おはよう南泉。山鳥毛はいるな」
    「あ、主……」
    自身の部屋の前で障子を背に正座をしている南泉がいた。寝起きなのか寝癖がついたまま、困惑といった表情で審神者を見上げでいた。
    「今は部屋に通せない、にゃ」
    「主たる俺の命でもか」
    うぐっと言葉を詰まらせる南泉にはぁとため息をついて後頭部を掻く。
    「俺が勝手に入るなら問題ないな」
    「え、あっちょ、主!」
    横をすり抜けてすぱんと障子を開け放つと部屋には白銀の翼が蹲っていた。
    「山鳥毛、迎えにきたぞ」
    「……小鳥」
    のそりと翼から顔を覗かせた山鳥毛は髪型を整えて 2059

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    MOURNING主くり
    極になって柔らかくなった大倶利伽羅に宣戦布告する片想いしてる主
    ポーカーフェイスの君にキスをしよう


    「大倶利伽羅」

    ひとつ呼ぶ。それだけで君は振り向いて、こちらを見てくれる。
    それだけでどうしようもなく締め付けられる胸が煩わしくて、ずたずたに切り裂かれてしまえとも思う。

    「なんだ」

    いつもと変わらぬ表情で、そよ風のように耳馴染みの良い声がこたえる。初めて顔を合わせた時より幾分も優しい声音に勘違いをしそうになる。
    真っ直ぐ見つめる君に純真な心で対面できなくなったのはいつからだったっけ、と考えてはやめてを繰り返す。
    君はこちらのことをなんとも思っていないのだろう。一人で勝手に出て行こうとした時は愛想を尽かされたか、それとも気づかれたのかと膝から力が抜け落ちそうになったが、4日後に帰ってきた姿に安堵した。
    だから、審神者としては認めてくれているのだろう。
    年々距離が縮まっているんじゃないかと錯覚させるような台詞をくれる彼が、とうとう跪座までして挨拶をくれた。泣くかと思った。
    自分はそれに、頼りにしていると答えた。模範的な返しだろう。私情を挟まないように、審神者であることを心がけて生きてきた。

    だけど、やっぱり俺は人間で。
    生きている限り希望や 1288

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    おじさま審神者と猫耳尻尾が生えた大倶利伽羅のいちゃいちゃ
    猫の日にかいたもの
    大倶利伽羅が猫になった。
    完璧な猫ではなく、耳と尾だけを後付けしたような姿である。朝一番にその姿を見た審神者は不覚にも可愛らしいと思ってしまったのだった。

    一日も終わり、ようやっと二人の時間となった審神者の寝室。
    むっすりと感情をあらわにしているのが珍しい。苛立たしげにシーツをたたきつける濃い毛色の尾がさらに彼の不機嫌さを示しているが、どうにも異常事態だというのに微笑ましく思ってしまう。

    「……おい、いつまで笑ってる」
    「わらってないですよ」

    じろりと刺すような視線が飛んできて、あわてて体の前で手を振ってみるがどうだか、と吐き捨てられてそっぽを向かれてしまった。これは本格的に臍を曲げられてしまう前に対処をしなければならないな、と審神者は眉を下げた。
    といっても、不具合を報告した政府からは、毎年この日によくあるバグだからと真面目に取り合ってはもらえなかった。回答としては次の日になれば自然と治っているというなんとも根拠のないもので、不安になった審神者は手当たり次第に連絡の付く仲間達に聞いてみた。しかし彼ら、彼女らからの返事も政府からの回答と似たり寄ったりで心配するほどではないと言われ 2216

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    MOURNINGさにちょも
    ちょもさんが女体化したけど動じない主と前例があると知ってちょっと勘ぐるちょもさん
    滅茶苦茶短い
    「おお、美人じゃん」
    「呑気だな、君は……」

     ある日、目覚めたら女の形になっていた。

    「まぁ、初めてじゃないしな。これまでも何振りか女になってるし、毎回ちゃんと戻ってるし」
    「ほう」

     気にすんな、といつものように書類に視線を落とした主に、地面を震わせるような声が出た。身体が変化して、それが戻ったことを実際に確認したのだろうかと考えが巡ってしまったのだ。

    「変な勘ぐりすんなよ」
    「変とは?」
    「いくら男所帯だからって女になった奴に手出したりなんかしてねーよ。だから殺気出して睨んでくんな」

     そこまで言われてしまえば渋々でも引き下がるしかない。以前初期刀からも山鳥毛が来るまでどの刀とも懇ろな関係になってはいないと聞いている。
     それにしても、やけにあっさりしていて面白くない。主が言ったように、人の美醜には詳しくはないがそこそこな見目だと思ったのだ。

    「あぁでも今回は別な」
    「何が別なんだ」
    「今晩はお前に手を出すってこと。隅々まで可愛がらせてくれよ」

     折角だからなと頬杖をつきながらにやりとこちらを見る主に、できたばかりの腹の奥が疼いた。たった一言で舞い上がってしまったこ 530

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    重陽の節句に菊酒を作る大倶利伽羅と、それがうれしくて酔い潰れる主
    前半は主視点、後半は大倶利伽羅視点です
    『あなたの健康を願います』

    隣で動く気配がして意識が浮上する。布団の中で体温を探すも見つからない。眠い目蓋を持ち上げると腕の中にいたはずの大倶利伽羅がいなくなっていた。
    「……起こしたか」
    「どうした、厠か……」
    「違う、あんたは寝てろ。まだ夜半を過ぎたばかりだ」
    目を擦りながら起き上がると大倶利伽羅は立ち上がって部屋を出て行こうとする。
    なんだか置いていかれるようで咄嗟に追いかけてしまった。大倶利伽羅からは胡乱な目で見られてしまったが水が飲みたいと誤魔化しておいた。
    ひたひたと廊下を進むと着いた先は厨だった。
    「なんだ、水飲みに来たのか」
    「それも違う」
    なら腹でも空いたのだろうか。他と比べると細く見えても戦うための身体をしているのでわりと食べるしなとぼんやりしているとどこから取り出したのかざるの上に黄色い花が山をなしていた。
    「どうしたんだそれ」
    「菊の花だ」
    それはわかる。こんな夜更けに厨で菊の花を用意することに疑問符を浮かべていると透明なガラス瓶を取り出してそこに洗った菊の花を詰めはじめた。さらに首を捻っていると日本酒を取り出し注いでいく。透明な瓶の中に黄色い花が浮かんで綺麗 3117

    いなばリチウム

    DONE肥南と主へしとむつんば要素を含みます(混ぜすぎ)
    タイトル通りひぜなんにちょっかい出すというか巻き込まれた主へしとむつんばの話。
    肥南にちょっかい出す主へしの話「肥前くん、主が呼んでいたよ」
     振り返る。肥前はいつだって南海の顔を真っ直ぐに見るのに、ここのところ、そうするとほんの少しだが目を逸らされることが増えた気がした。なんだよ、と思う。思うだけだ。
    「おれを? なんだって?」
    「さあ。部屋に来て欲しいと言っていたから、直接聞いてみてはどうかな」
    「……分かったよ」
     つまみ食いに忍び込んだ厨を追い出され、時間を持て余していたところだった。ちょうどいいか、とそのまま審神者の部屋へ向かう。肥前がこの本丸に来たのは特命調査の折であった。その時点でも刀の数は多かったが、今や百に届く程の刀剣男士が生活している本丸だ。近侍を務める刀は数振りで、ひとりひとりと話す時間が取れないことを憂いた審神者はこうして時々自室に刀剣男士を呼び出すのだ。不満はないかとか、最近どうだとか、肥前にとってはどうでもいい話ばかりではあったが、何度か呼び出しを無視すると機動の早い近侍が文字通り首根っこを捕まえに来る上に最近では部屋に行くと茶菓子やちょっとしたつまみをふるまわれる。食べ物で釣られている自覚はあったが、適当に話をしていれば損はないのだ。久方ぶりに大人しく呼ばれてやるか、という気持ちだった。
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