Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    いなばリチウム

    @inaba_hondego

    小説メイン
    刀:主へし、主刀、刀さに♂
    mhyk:フィガ晶♂
    文アル:はるだざ、菊芥、司♂秋
    文スト:織太

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 51

    いなばリチウム

    ☆quiet follow

    両片思いへしさに
    推し色コーデに否定的だったけど出先でうっかりへしみのある下着を買ってしまった女審神者の話

    推し色を身にまとって 誰もかれもがチャラつきすぎている! と審神者は思う。
     好きな、もしくは推してる男士をイメージした文具だの小物だのを持つのが流行ったところまではまだ許容できた。生活には彩りが必要だ。日頃使っている道具に好きな色が入っていると、忙しさにささくれた心が癒されることもある。
     しかし、やがて所謂そういった「推し男士カラー」なアイテムが売れはじめるやいなや、万事屋通りではちょっとした小物だけでなく、鞄や衣類といったあらゆる生活必需品にまでこれみよがしなカラー展開を広げた。なんなら小物は「貴方の好きな色でおつくりします」という売り文句で受注販売までしている。全く商魂たくましい、とも思うし、演練で会う審神者、万事屋ですれ違う審神者誰もかれもが見知った顔が浮かぶようなカラーリングの者を身に着けて、なんならそのカラーリング元の男士を携えていたり恋仲なのか腕を組みながら歩いているのを見ると、審神者はもう、イラァッとくるのであった。
     貴方達、チャラつきすぎではないですか? そこまで切羽詰まった状況ではないとはいえ、戦時中なんですけど? と。推し男士カラーを身に着けた審神者も、そのカラー本人である男士も満更でもなさそうにへらへらしちゃって。そりゃあ、二十四時間ピリピリしていても精神上よくないですけれど! 演練場でよく会う友人に「見て、これ、彼の瞳の色に合わせたの」と服の下に忍ばせた碧色の石が付いたペンダントを見せられたり「新調したお財布、外側は彼の髪色で内側は瞳の色にしちゃった。バレないかドキドキするけど、お財布を開く度に癒されるんだよね」などと堂々と惚気倒されればうんざりするいうものである。「気持ちは伝えられないけど、やっぱり好きだから、思い出せるようなものを身に着けていたいんだ……」じゃないから!彼、もう絶対気付いてるから!おたくの孫六さん、貴方がお会計する度に斜め後ろやや上から覗き込んでうっすら笑っていましたよ!早く告白しなさい!

     と、まあ半ば私怨も込みではあるものの、基本的には誰もかれも浮かれていて全く見てられませんというスタンスであった。が、かれこれもう三十分も、審神者はそんな自分のスタンスと、目の前にある生活必需品を天秤にかけ、うんうん唸っていた。

    「必要出費……新調しようと思っていたし……いやでも……あからさまかな……」
     視線の先にあるのは店先に【セール品!】という立札と共に置かれた上下セットの下着だ。そう特別な造りではない。サイズは審神者に合うものだし、そろそろ買い替えようか、と思っていた矢先だったので、普段ならラッキー! と購入を決めていた。しかし、その下着は、紫だった。紫に、金のラインがあしらわれ、胸の中心には同じく金のリボンが付いていた。本丸で待つであろう近侍の顔がよぎるが、すぐに振り払う。
    「これはただの紫の下着……」
     独り言と共に、手に取ってみる。セール品、と書いてあるが、新商品との入れ替えに伴ったものらしく、別に不良品などではない。
    「全然深い意味はない、ないからね」
     自分に言い聞かせながら、審神者はきょろきょろとあたりを見回しながらそれを手に取った。


     お包みしましょうか、という店員の言葉にも、買い物済んだ? という乱の言葉にも生返事で、結局本丸についてから審神者ははっと我に返った。気付けば玄関の前だ。
    「わ、私、一旦部屋に戻るね! ちょっと、あれ、確認したいものが色々、あれだから」
     わたわたと挙動不審になった審神者に怪訝な顔をしていた乱だが、深くは探られなかったのは幸いだった。買い物から戻ったらそのまま共同の洗面所で手を洗い、今日のお八つは何かな、と台所を覗くのがいつもの流れだったが、抱えた荷物の中身のせいでどうにも落ち着かないままだ。
     また後でね、と廊下で分かれ、こっそりと自室に戻る。廊下を部屋を隔てる襖もきっちり締め、審神者は姿見の前に立った。
    「ちょっと着るだけ、試着しなかったし、試すだけ……深い意味はない……」
     またも自分に言い聞かせながら、やはりこっそりと服を脱ぎ、買ったばかりの下着を身に着ける。
    (…………あ、あからさまだ……!)
     苦笑いをした自分と目が合った。肌に、紫と金はなぜだかよくなじんで見える。見慣れているせいかも、と思いつつも、存外悪い気はしなかった。ただ、誰かを連想させる色合いを身に着けるだけで浮かれる気持ちも、まあ分からないでもないな、と考えを改める。
    (下着なら別に、本人に見られるでもないし……)

     そう、思った瞬間だった。

     がらり、とタイミングをはかったかのように襖が開いた。
    「えっ?」
    「え、あっ?」
     手元の書類に目を落としていた近侍、へし切長谷部が、審神者に気付いて藤色の目を丸くする。予期せぬ事態に、審神者も固まった。しかしそれも、一瞬だった。
    「「うわーーーーーーーーっ!?!?!?!?!?!?」」
     ふたりの絶叫が庭にこだまする。
    「も、もも、申し訳ございません!!」
     裏返った謝罪と共に今開けたばかりの襖をスパン!と締められ、襖の外では「何事だ?!」「敵襲か!?」「いや、あの悲鳴の感じはデカめの虫が出たと見た」などなど、好き勝手言う声がした。
    「なんでもない! なんでもないから! えっと、そう、中くらいの虫が出ただけ! もうどっかいった!」
    「そうだ! なんでもない! 散れお前達!」
     審神者は慌てて服を着ながら、長谷部は集まってきた刀達を追い返しながら息を整える。
    「……」
    「……」
     やがてあたりが静かになったものの、審神者は襖を開けられなかった。襖の向こうの長谷部も、立ち去ることはなくそこにいる。
    「あの、申し訳ございません……お戻りだとは思わず……いらっしゃらないとばかり……その、郵便物を置くだけのつもりで……」
     口を開いたのは長谷部だったが、声が段々小さくなっていく。普段の彼を考えればあり得ないことではあったが、そもそもいつもは買い物から戻れば大きな声で「ただいま~~~!!」を響かせる審神者であったので、致し方ないと言えた。いない間は自由に出入りしていいとも言っている。まだ襖越しではあったものの、何とか落ち着きを取り戻した審神者も答えた。
    「ごめん、私が悪いよね……お見苦しいものを……」
    「いえ! 見苦しくなど!」
     声と同時に、襖が勢いよく開く。顔が思った以上に近くにあって、審神者は思わず後ずさって、それから、
    「……見た?」
     と、小さく尋ねる。目が合った、と思う。この際下着姿を見られたことは別にいい。夏なんて下着に近い恰好でくつろいでいるときもあるし……ただ、あんなにもあからさまな色合いを本人に見られた事実の方が恥ずかしい。
    「いえ……」
     声は、か細かった。
    「……す、少しだけ、あの、でも、一瞬なので」
     見てるじゃん! 
     そうは思ったものの、審神者は何も言い返せなかった。頬も、耳も熱くなって、喉からはうまく声が出なかった。
    「そ、そっか」
     やっと、その一言が絞り出せただけで、一人と一振りはしばらく真っ赤になったまま佇んでいた。


     下着姿を見てしまったことが衝撃で、色までは見ていなかったと分かったのはそれから数年後、二人が恋仲になってからのことであった。


    おしまい
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💒💒💕👏☺💜👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    いなばリチウム

    TRAININGhttps://poipiku.com/594323/10668650.html
    これの続き。騙されやすい審神者と近侍の長谷部の話。
    だまされやすい審神者の話2 疎遠になっても連絡をとりやすい、というタイプの人間がいる。

     それがいいことなのか、はたまたその逆であるなのかはさておき、長谷部の主がそうだった。学校を卒業し、現世を離れてから長いが、それでも時折同窓会やちょっとした食事会の誘いがあるという。ほとんどは審神者業の方が忙しく、都合がつかないことが多いけれど。今回はどうにか参加できそうだ、と長谷部に嬉しそうに話した。
     もちろん審神者一人で外出する許可は下りないので、長谷部が護衛として同行することになる。道すがら、審神者は饒舌に昔話をした。学生の頃は内気であまり友人がいなかったこと、大人しい自分に声をかけてくれたクラスメイトが数人いて、なんとなく共に行動するようになったこと。卒業する時に連絡先を交換したものの、忙しさもありお互いにあまり連絡はしていなかったこと。それでも年に一度は同窓会や、軽く食事でもしないかという誘いがあること。世話になっている上司を紹介したいと何度か打診され、気恥ずかしさはあったものの、紹介したいと思ってもらえることは嬉しかったこと。今回やっと予定が合い、旧友とその上司に会えること。
    1820

    recommended works

    Norskskogkatta

    PAST主こりゅ/さにこりゅ
    リクエスト企画で書いたもの
    小竜が気になり出す主とそれに気づく小竜
    夏から始まる


    燦々と輝く太陽が真上に陣取っているせいで首に巻いたタオルがすでにびっしょりと濡れている。襟足から汗がしたたる感覚にため息が出た。
    今は本丸の広い畑を今日の畑当番と一緒にいじっている。燭台切ことみっちゃんはお昼ご飯の支度があるから先に本丸にもどっていって、今はもう一振りと片付けに精を出しながらぼんやり考えていたことが口をついた。
    「小竜って畑仕事嫌がらないんだね」
    長船派のジャージに戦装束のときのように大きなマントを纏った姿に畑仕事を嫌がらない小竜に意外だなと思う。大抵の刀には自分たちの仕事じゃないと不評な畑仕事だけど小竜からは馬当番ほど文句らしき物を言われた記憶が無い。
    「いやいや、これで実は農家にあったこともあるんだよ?」
    これなんかよくできてると思うよ、と野菜を差し出される。まっかなトマトだ。つやつやして太陽の光を反射するくらい身がぱんぱんにはっている。一口囓るとじゅわっとしたたる果汁は酸味と甘さと、ちょっとの青臭さがあって我こそはトマトである!と言っていそうだ。
    「おいしい!」
    「だろうっ!」
    手の中の赤い実と同じくらい弾けた笑顔にとすっと胸に何かが刺さった気が 3868

    Norskskogkatta

    PASTさにちょも
    リクエスト企画でかいたもの
    霊力のあれやそれやで獣化してしまったちょもさんが部屋を抜け出してたのでそれを迎えに行く主
    白銀に包まれて


    共寝したはずの山鳥毛がいない。
    審神者は身体を起こして寝ぼけた頭を掻く。シーツはまだ暖かい。
    いつもなら山鳥毛が先に目を覚まし、なにが面白いのか寝顔を見つめる赤い瞳と目が合うはずなのにそれがない。
    「どこいったんだ……?」
    おはよう小鳥、とたおやかな手で撫でられるような声で心穏やかに目覚めることもなければ、背中の引っ掻き傷を見て口元を大きな手で覆って赤面する山鳥毛を見られないのも味気ない。
    「迎えに行くか」
    寝起きのまま部屋を後にする。向かう先は恋刀の身内の部屋だ。
    「おはよう南泉。山鳥毛はいるな」
    「あ、主……」
    自身の部屋の前で障子を背に正座をしている南泉がいた。寝起きなのか寝癖がついたまま、困惑といった表情で審神者を見上げでいた。
    「今は部屋に通せない、にゃ」
    「主たる俺の命でもか」
    うぐっと言葉を詰まらせる南泉にはぁとため息をついて後頭部を掻く。
    「俺が勝手に入るなら問題ないな」
    「え、あっちょ、主!」
    横をすり抜けてすぱんと障子を開け放つと部屋には白銀の翼が蹲っていた。
    「山鳥毛、迎えにきたぞ」
    「……小鳥」
    のそりと翼から顔を覗かせた山鳥毛は髪型を整えて 2059

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    極になって柔らかくなった大倶利伽羅に宣戦布告する片想いしてる主
    ポーカーフェイスの君にキスをしよう


    「大倶利伽羅」

    ひとつ呼ぶ。それだけで君は振り向いて、こちらを見てくれる。
    それだけでどうしようもなく締め付けられる胸が煩わしくて、ずたずたに切り裂かれてしまえとも思う。

    「なんだ」

    いつもと変わらぬ表情で、そよ風のように耳馴染みの良い声がこたえる。初めて顔を合わせた時より幾分も優しい声音に勘違いをしそうになる。
    真っ直ぐ見つめる君に純真な心で対面できなくなったのはいつからだったっけ、と考えてはやめてを繰り返す。
    君はこちらのことをなんとも思っていないのだろう。一人で勝手に出て行こうとした時は愛想を尽かされたか、それとも気づかれたのかと膝から力が抜け落ちそうになったが、4日後に帰ってきた姿に安堵した。
    だから、審神者としては認めてくれているのだろう。
    年々距離が縮まっているんじゃないかと錯覚させるような台詞をくれる彼が、とうとう跪座までして挨拶をくれた。泣くかと思った。
    自分はそれに、頼りにしていると答えた。模範的な返しだろう。私情を挟まないように、審神者であることを心がけて生きてきた。

    だけど、やっぱり俺は人間で。
    生きている限り希望や 1288

    Norskskogkatta

    MOURNINGさにちょも
    ちょもさんが女体化したけど動じない主と前例があると知ってちょっと勘ぐるちょもさん
    滅茶苦茶短い
    「おお、美人じゃん」
    「呑気だな、君は……」

     ある日、目覚めたら女の形になっていた。

    「まぁ、初めてじゃないしな。これまでも何振りか女になってるし、毎回ちゃんと戻ってるし」
    「ほう」

     気にすんな、といつものように書類に視線を落とした主に、地面を震わせるような声が出た。身体が変化して、それが戻ったことを実際に確認したのだろうかと考えが巡ってしまったのだ。

    「変な勘ぐりすんなよ」
    「変とは?」
    「いくら男所帯だからって女になった奴に手出したりなんかしてねーよ。だから殺気出して睨んでくんな」

     そこまで言われてしまえば渋々でも引き下がるしかない。以前初期刀からも山鳥毛が来るまでどの刀とも懇ろな関係になってはいないと聞いている。
     それにしても、やけにあっさりしていて面白くない。主が言ったように、人の美醜には詳しくはないがそこそこな見目だと思ったのだ。

    「あぁでも今回は別な」
    「何が別なんだ」
    「今晩はお前に手を出すってこと。隅々まで可愛がらせてくれよ」

     折角だからなと頬杖をつきながらにやりとこちらを見る主に、できたばかりの腹の奥が疼いた。たった一言で舞い上がってしまったこ 530

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり

    緑の下で昼寝する主くり
    極の彼は適度に甘やかしてくれそう
    新緑の昼寝


     今日は久々の非番だ。どこか静かに休めるところで思う存分昼寝でもするかと、赤い方の腰布を持って裏山の大桜に脚を伸ばす。
     とうに花の盛りは過ぎていて目にも鮮やかな新緑がほどよく日光を遮ってまどろむにはもってこいの場所だ。
     若草の生い茂るふかふかとした地面に寝転がり腰布を適当に身体の上に掛け、手を頭の後ろで組んでゆっくりと瞼を下ろす。
     山の中にいる鳥の鳴き声や風に吹かれてこすれる木の葉の音。自然の子守歌に本格的にうとうとしていると、その旋律に音が増えた。
    「おおくりからぁ~……」
     草葉の上を歩き慣れていない足音と情けない声にため息つき起き上がると背を丸めた主がこちらへと歩いてくる。
     のろのろと歩いてくるのを黙って見ていると、近くにしゃがみ込み頬を挟み込まれ唐突に口づけられた。かさついた唇が刺さって気分のいいものではない。
    「……おい」
    「ははは、ごめんて」
     ヘラヘラと笑いあっさりと離れていく。言動は普段と差して変わらないが覇気が無い。観察すれば顔色も悪い。目の下に隈まで作っている。
    「悪かったな、あとでずんだかなんか持って行くから」
     用は済んだとばかりに立ち上 780

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    たまには大倶利伽羅と遊ぼうと思ったら返り討ちにあう主
    とりっくおあとりーと


    今日はハロウィンだ。いつのまにか現世の知識をつけた刀たちによって朝から賑やかで飾り付けやら甘い匂いやらが本丸中にちらばっていた。
    いつもよりちょっと豪華な夕飯も終えて、たまには大倶利伽羅と遊ぶのもいいかと思ってあいつの部屋に行くと文机に向かっている黒い背中があった。
    「と、トリックオアトリート!菓子くれなきゃいたずらするぞ」
    「……あんたもはしゃぐことがあるんだな」
    「真面目に返すのやめてくれよ……」
    振り返った大倶利伽羅はいつもの穏やかな顔だった。出鼻を挫かれがっくりと膝をついてしまう。
    「それで、菓子はいるのか」
    「え? ああ、あるならそれもらってもいいか」
    「……そうしたらあんたはどうするんだ」
    「うーん、部屋戻るかお前が許してくれるなら少し話していこうかと思ってるけど」
    ちょっとだけ不服そうな顔をした大倶利伽羅は文机に向き直るとがさがさと音を立てて包みを取り出した。
    「お、クッキーか。小豆とか燭台切とか大量に作ってたな」
    「そうだな」
    そう言いながらリボンを解いてオレンジ色の一枚を取り出す。俺がもらったやつと同じならジャックオランタンのクッキーだ。
    877