「ワイン」フルボディ”私の側に置いておくためには、お前の寿命は余りにも短すぎる。”
腕から滴り落ちる鬼の血液が、赤い液体の中へと染み込んでいく。
―――私と同じ存在になれば、ずっと側にいれる理由ができるだろう?
シュウはヴォックスに誘われて、彼が用意したワインの試飲に来ている。
ルビーのような美しい透明感をもった、真っ赤に輝く芳醇な液体。
グラスを近づけると強く香る果実やアルコールの香りとともに、年月を経て熟成された独特な時の香りがする。
舌先に触れた瞬間に、香りとともに広がる重みのある風合いが、圧縮から解き放たれたように口内に広がった。
唾液が溢れ出し、強いアルコールが息に混じって肺を刺激する。
「んん…」
飲み込むと、それはまるで景色を飲み込んでしまったかのような、重圧感のある重みが喉を通っていく。
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