二人の幼少期、チーターくんが惚れたきっかけチーターくんの幼少期は、女の子と見間違えるほどかわいくて可憐。さらに母親が似合うからと女の子ぽい服を着せていたので余計拍車がかかった。
「なぁ鬼ごっこしようぜ?」
「……」
「ちぇ」
誰が声をかけても公園では遊ばない。チーターくんは静かに日陰で本を読んでいた。
(……かえろ)
ここにいたってしょうがない。
(最初から来るんじゃなかった)
来たかったわけじゃない放課後の公園だった。
家が隣同士で、親同士も気が合ったらしい。ただそれだけの、うるさい狼のやつに強引に連れてこられた。
しかも肝心のアイツとは『ちょっと待ってて!』と言い残し、チーター達を置いて公園の外に出ていった。
「じゃ、おれかえる」
「えー!?一人なんて危ないよぉ」
「まだ明るいし平気だ」
アイツが戻ったら伝えといて、と伝言だけ残してチーターくんはランドセルを背負った。
しかし、公園を出てしばらく
ーーー背後から届く、不審な足音に気づいた。
小さな靴音が止まらない。角を曲がれば足音も同じように曲がる。
(また、か……)
足の速さには自信があった。
いつもみたくあの角でーーと、足を速めようとしたその瞬間、
「きみ、可愛いね」
「…!!」
ガシッと、後ろから伸びてきた手にランドセルの肩紐を掴まれた。
振り返った先には、息を荒くした大人の男が、
「どこに住んでるの?送ってあげるよ」
「……っ」
大型、それも肉食獣特有の鋭い威圧。
それに耐え、なんとか声を振り絞った。
「はな、せ……ッ」
思うほどの大声は出ない。
出た声はかすれ、喉が震えて言葉にならなかった。
「なぁに?怖がってるの?……てか、あれ?きみ男の」
手が冷えて、頭が真っ白になる。
脚が震えて踏ん張れない。
そのとき――
「おいッ!! 何してんだテメェ!!!」
狼の、怒鳴り声が響いた。
* * *
(クソッ、だる……)
とても懐かしい夢を見た。
自分の一番情けない姿と、狼に庇われた日の記憶だ。
あの後、変質者は咄嗟に逃げようとしたが、狼の大声に他の大人達が気づいたおかげで事なきを得た。無事に捕まったらしい。
しかし驚いたのは狼が、チーターの母親を叱ったことだった。
『チーターはみんなと遊びたいのに服を汚したくなくて我慢してる!』と。
公園を抜けた狼は学校に体操服をとりにいっていた、チーターのために。
“これなら気にしないで一緒に遊べるだろう?“と、明るい笑顔で……。
本当は一緒に遊びたい気持ちなど、狼は知らないはずだった。誰にも言ってないのに
母親にも、先生にも、言えなかった。
狼だけが、チーターの孤独な心に気づいた。
(こんなんで堕ちるなよ、俺も)
本気で悔しい。
胸がムカつくように熱くなる。
でも、忘れられない。
あの時見た、子供ながらにも狼の凛々しい背中と表情。
(ちょっとでも変わってくれれば、よかったのに…)
そうしたら、お前を諦められた。
恋心を自覚する前に、忘れられた。
それが出来なくて、憎たらしい。
どこまでもお節介で、明るくて、バカみたいに優しくて──
(クソほど鈍感野郎)
この一点ばりはイラっとする。
不毛な片想いだ、もうとっくにやめてやりたい。それこそ告白してきた相手と、付き合おうか考えたこともある。
しかし、狼を見てしまう、アイツと比べてしまう。
声、視線、居心地の良さ。
自分のものでないと思うからこそ、余計に焦がれてしまう。
(やっぱ、無理やり襲っちまうか──)
発情誘発剤を使えば、狼だってその気になる……
そんな最低なことまで考えてしまって、自己嫌悪だけが募る。
「……は、何考えてんだ俺」
吐き捨てるように頭を振って、ため息をつく。
狼の、全部が欲しいのに
壊せない友情だけが、辛うじて紡いでいる
end
以上
付き合う前のチーターくん目線の独白。
「えぇ!?あらそうだったの、ごめんね」
チーターくんは親にたいしても思った事をはっきり言わない性格なので、母親もチーターくんが迷惑じゃないと思い、息子を可愛がってたつもりだった。(チーターくんが服に興味なかったのもある)
以後は公園でみんなと遊ぶよ!
狼の特徴である統率力とリーダーシップなのかもね。
でも仲間に加わったチーターくんは、淡々と走り回って(本人的には楽しんでる)体力の限界近くまで遊ぼうとする。
なので狼くん、
「ほら!もう終わりだって!」
チーターくんに馬乗りになって耳や首にがぶがぶ(※甘噛み)と、制止のマウントとる。
なおこの行動は小学校を卒業して以降も、勉強やスポーツとなにかを限界までやろうとするチーターくんに行ってきたよ。
額、ほっぺ、耳たぶ……
噛まれるたびに、くすぐったくて息が漏れそうになる。
狼の重さと体温が、じわじわと伝わってきてーー
チーターくんにやたら色気がついたのは、狼のせいです。