◆四◆ まじない 街がイルミネーションに彩られ、そこかしこでクリスマスソングが流れ始めると、そわそわと浮かれた気分になってくる。中学の頃は何となく付き合っていた彼女と過ごしたけれど、それでもこんな心待ちにしなかった。
「え、クリスマス会したことないの、悟」
「うち、年末年始の準備で慌ただしいからな。キリスト教徒でもないし、他宗教の聖誕祭なんてやらない」
「ああ」
友だちとかは、の言葉は辛うじて飲み込んだ。そうか、学校だって通っていなかったとなれば、当然もそんな機会もある由もなく。
「それじゃあやってみる、クリスマス会」
「何するんだよ」
「クリスマスツリー飾ったり、チキンやケーキ食べたり、プレゼント交換したり」
きょとんとしていた表情が見る間に輝き始め、長い睫毛に縁どられた大きな瞳が光を帯びる。
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