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    おはぎ

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    おはぎ

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    夏五版ワンドロワンライのお題をお借りしたものでした~!主観色、とても素敵なお題で色々書きたくなりますね!

    お題:第80回「恋する/主観色」

    #夏五
    GeGo
    #夏五ワンドロワンライ
    summerFiveWandolowanRai

    彩度と輝度――恋をすると、世界が薔薇色に見えるものなのよ

     昔見た映画のワンシーンだっただろうか、柔らかいブロンドの髪を揺らしながらヒロインが口にしたその台詞をその時は良く分かっていなかった。恋は盲目とか、痘痕あばたえくぼとか、恋をすると冷静な判断が出来なくなって、周りが見えなくなって、まるでこれまでの自分では無くなってしまったように振り回されるものなのだと思っていた。そんな風になってしまうなら恋なんてしなきゃいいのに、そんな状態になるまでハマらないようにすればいいのに、なんて冷めた目で見ていた。

     昔から映画を見るのは好きだった。映画の中の人物には汚い呪力がまとわりついていることもないから表情をしっかり読み取ることができ、没入している間は自分も普通の世界を見ている気分になった。別にをもって生まれたことを悔やんだことは一度も無いし、普通になりたいなんて思ったことも一度もない。ただ、興味はあったのだ。普通の眼を通してみた世界はどのようなものなのか。

     高専に入学して学生生活を送り始めた俺は、対等に近い『友達』を初めて手に入れた。これまでの人間関係は上下関係がはっきりしたものしかなかったし、そこには薄汚い欲を隠さない者ばかりだったので常に互いを牽制し合う事しかしてこなかった。俺の能力を上手く使いたいと思う周りの奴らは、その歪んだ欲のせいで淀んだ呪力にまみれていてまともに顔など見たことがなかった。
     だから最初はひどく戸惑った。だって初めて人が横に並んだんだから、仕方ないじゃんね。でも傑は色んな意味で俺に
     一般家庭出身なこともあると思うが、自己紹介を求められたのなんて初めてで最初は俺を馬鹿にしているのかと思ったくらいだ。アイツは本気だったんだけど。そこからは、それこそ映画のワンシーンみたいにどんどん仲良くなった。カップラーメンの上手い食べ方や徹夜で一緒に遊ぶゲームの楽しさを教わるたびに、俺は傑の世界に夢中になった。好きな食べ物は何か、好きな映画は?好きな服や音楽、スポーツにゲーム。傑の事なら何でも知りたくなった。
     すると、最初は心地よかった俺に興味のない傑の態度が、何だか気に入らなくなってきた。俺はこんなにお前の事知りたいと思ってるのにお前は俺の事知りたいと思わねぇの?俺にも聞いてよ、好きな食べ物や好きな映画は何かって。でも、こんなこと傑に自分から言うのはもっと負けた気がして絶対に嫌だった。

    「は、そんなのまるで恋する乙女だな」
     うだるような暑さの中、小さな日陰を造った自販機横の喫煙所で憚ることなく煙草をふかす硝子に、最近の不満をこぼすと心底面倒そうな顔でそう返された。
    「え、俺の話ちゃんと聞いてた? 傑がムカつくって話してたじゃん」
    「いや、だから乙女じゃん」
     意味が分からない。きっとそのまま顔に書いてあったのだろう、硝子が子供に言って聞かせるように話し出す。
    「だから、五条ばっかり夏油のことが気になるみたいでムカつくってことだろう?」
    「そう、ムカつくんだよ」
    「じゃあ何で五条は夏油にそんな興味持ってほしいんだよ。アイツは胡麻ってきたりしない所が良いって言ってたじゃん」
     前に自分が言った言葉をそっくりそのまま返されて言葉に詰まる。いや、そうなんだよ。そうだったんだけど……
    「でも、今はムカつくんだらしょうがねーじゃん」
     むくれて返すと、硝子は大きなため息をつきながら手にしていた煙草を灰皿に擦り付けて消した。
    「だから、自分に興味持ってほしいってのはさ、夏油のこと気に入ってる証拠でしょ。自分が夏油のこと気に入ってるから、夏油にも自分のこと気にしてほしいってことじゃないの」
    「え、マジ?」
    「知らないけど、だから乙女だっつったの」
     ニコチンは足りているはずの硝子がイライラしてきているところを見ると、俺は相当面倒くさくなっているらしい。え、マジ?
     しゃがみ込む俺を置き去りにしようとした硝子が、大きく手を振って誰かを呼び止める。任務帰りなのか、土埃に汚れた服を払いながら傑が近づいてきた。
    「ちょっと、あんたのせいで面倒くさくなってるから何とかして」
    「え、何それ、私なんかした?」
    「ちょ、硝子、ま、」
    「――夏油が五条に興味ないのが寂しいんだって」
     制止も構わず最悪の要約をされる。何のために硝子に煙草渡して話したんだよ、さっき吸ったニコチン返せよ。
    「え、どういうこと? 悟、寂しいの?」
     ストレートに聞いてくる傑の神経を疑うが、この際だからムカついてることをぶちまける
    「俺ばっか傑の好きなものとか聞くじゃん、お前全然聞いて来ないし。俺のこと興味ないのがイラつくんだよ、俺ばっかなの腹立つの!」
     一息で言い切ると、何となく傑の顔が見られずに目を反らし、ずり落ちていたサングラスをくいっと持ち上げる。
     顎に手を当て、考える素振りを見せていた傑が「でも今さらだからなぁ」と呟いた。
    「あ? 今さらってなんだよ。意味分かんねーんだけど」
    「いやだからさ、ずっと一緒にいるから何となく知ってるんだよなって思って」
     は?どういうこと?
    「悟、最近エクレアとカレー味のカップ麺にハマってるし、映画は何でも見るけどミステリーとかちゃんとストーリーあるものの方が結構好きだろ、あとは……」
     傑はつらつらと俺の好きなものを言い当てていく。
    「ね、だいたい知ってるつもりだったけれど……違ってたかな?」
    「……あってる」
     バツが悪くて俯くと、二人に同時に笑われた。なんだよ!笑うなよ!!
    「っはー笑った。良かったじゃん、ちゃんと夏油にも想われてて……ッブハ」
    「悟は結構分かりやすいから……ククッ、見てれば何となくねわかるんだよ」
     息も絶え絶えに笑いながら背中をバシバシ叩かれた。痛ぇーし。ひとしきり笑って満足したのか「そろそろ教室行かないと夜蛾センがうるさいぞ」と傑が日なたに踏み出す。
     傑の背を眺め、その眩しさに目を細めながら「あのさ、」ともう一つ気になっていたことを硝子に聞く。

    「硝子も、傑の事眩しく見えたりすんの?」
     
     あんぐりと口を開けた硝子の顔に、何か間違った、ということは分かったが何がいけなかったのかが分からない。額に手を当てながら大げさにかぶりを振り「五条家の情操教育はどうなってんだよ」と嘆いている。あの五条家だぞ、自分でいうのも何だがそんなものは期待する方が間違っている。
    「……今度歌姫先輩から借りた少女漫画貸してやるから、それで勉強しな」
    「はぁ!? 何だよそれ、おい、」
    「ちなみに、私は夏油の事これっぽっちも眩しく見えないから、ただの屑にしか見えてないから安心しな。ちなみにお前もな」
     これだから図体だけデカくなったお子ちゃまは困る、と言いながら硝子も傑の後に続いて歩いていく。硝子は眩しく見えないってことは、これはこの眼のせいなのか?しかも少女漫画ってなんだよ。頭の中に疑問符を沢山浮かべながら傑と硝子の後を追った。


    「……ッいや、薔薇色じゃねぇのかよ!!!!」
    「おい悟!! 何時だと思ってんだ!!」
     
     ――深夜の男子寮に俺の心からの叫びが響き渡るのは、もう少し先のことだ。
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    Replies from the creator

    おはぎ

    DONE呪宴2の展示作品です。

    以前ポイしたお宅訪問のお話のワクワク!夏油家お宅訪問~!Verです。
    いつも通り180%捏造ですが、幸せになって欲しい気持ちは本物を詰めてます。
    傑さんや、君にこれだけは言っておきたい!!

    ▼特に以下捏造が含まれます
    ・教師if
    ・夏油、五条家メンバ(両親、兄妹、ばあや、その他)
    ・五条、夏油両実家に関する事柄(所在地から全て)

    上記楽しめる方は宜しくお願いします!
    恋人宣言「ねぇ傑、スーツと袴、どっちがいいかな?」
     コンコン、と開いた扉をノックしながら悟が声をかけて来る。明日の任務に関する資料に目を通していたからか、一瞬反応が遅れる。え、なんて?
    「ごめん、上手く聞き取れなくて。なに?」
    「だから、スーツと袴、どっちがいいかなって。今度実家寄ってくるとき用意お願いしてこようと思ってるから、早めに決めとかないとね」
     今日の昼何食べるかーとか、どっちのケーキにするかーとか、悟は昔から私に小さな判断を任せてくることがよくあった。自分で決めなと何度も言っているのだが悟の変な甘え癖は今も治っていない。だが、服装を聞いてくることは珍しい。(何でも、私のセンスは信用できないらしい。あのカッコよさが分からない方が不思議だ)しかも、選択肢はばっちり正装ときた。何か家の行事に出るのだろうか。それか結婚式とか?
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    おはぎ

    DONEGGD.NYP2の展示作品です。

    以前冒頭を少しポイしていた作品をお正月仕様に少し手を入れて完成させました!
    ドキドキ!五条家お宅訪問~!なお話です。
    180%捏造ですが、幸せになって欲しい気持ちだけは本物を詰め込みました。

    ▼特に以下捏造が含まれます
    ・教師if
    ・五条家メンバ(悟両親、ばあや、その他)
    ・五条、夏油両実家に関する事柄(所在地から全て)

    上記楽しめる方は宜しくお願いします!
    猛獣使いを逃がすな「……本当に大丈夫なのか?」
    「だーいじょうぶだってば! 何緊張してんの」
    「普通緊張するだろう! 恋人の実家にご挨拶に行くんだぞ!」
     強張った身体をほぐそうと悟が私の肩を掴んでふるふると揺すった。普段なら制止するところだが、今はじっと目を閉じて身体をゆだねていた。されるがままの私を悟が大口開けて笑っているが、もはや今の私にとってはどうでもいい。この胃から喉元までせり上がってくるような緊張感を拭ってくれるものならば、藁でも猫でも悟でも、何でも縋って鷲掴みたい。現実逃避をやめて、大きく深呼吸。一気に息を吸い過ぎて咳き込んだが、緊張感が口からこぼれ出てはくれなかった。
    「はぁ……帰りたい……高専の寮で一人スウェットを着て、日がな一日だらだらしたい……」
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    おはぎ

    DONEWebイベ展示作品③
    テーマは「くるみ割り人形」 現パロ?
    彫刻と白鳥――パシンッ
     頬を打つ乾いた音がスタジオに響く。張りつめた空気に触れないよう周囲に控えたダンサーたちは固唾を飲んでその行方を見守った。
     水を打ったように静まり返る中、良く通る深い響きを持った声が鼓膜を震わせる。

    「君、その程度で本当にプリンシパルなの?」

     その台詞に周囲は息をのんだ。かの有名なサトル・ゴジョウにあそこまで言われたら並みのダンサーなら誰もが逃亡しただろう。しかし、彼は静かに立ち上がるとスッと背筋を伸ばしてその視線を受け止めた。

    「はい、私がここのプリンシパルです」

     あの鋭い視線を受け止めてもなお、一歩も引くことなく堂々と返すその背中には、静かな怒りが佇んでいた。
     日本人離れしたすらりと長い手足と儚く煌びやかなその容姿から『踊る彫刻』の異名で知られるトップダンサーがサトル・ゴジョウその人だった。今回の公演では不慮の事故による怪我で主役の座を明け渡すことになり、代役として白羽の矢がたったのが新進気鋭のダンサー、スグル・ゲトーである。黒々とした艶やかな黒髪と大きく身体を使ったダイナミックなパフォーマンスから『アジアのブラックスワン』と呼ばれる彼もまた、近年トップダンサーの仲間入りを果たした若きスターである。
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    TRAINING4/9ワンライ
    お題【鬱血/閉世界仮説/フラスコ】
    さしすがちょっと辛い任務にあたるお話です。しゃべっているのは五条と夏油だけです。仄暗い感じです。
    光を灯す 桜が散ろうとする頃、フラスコや、シリンダーが並ぶ部屋にその少女はいた。手錠をかけられて机に繋がれた腕は鬱血していて、だが彼女は明るくこう言った。
    「お兄さん、あの方は?」
     あの方はどこに行ったのです? 約束したのに。
     俺はその問いにすぐに答えられなかった。答えたのは傑だった。あなたの言うあの方は私たちに捕らえられました(私たちが殺しました)。さぁ、怪我を治してもらいましょう。傑の言葉を聞いていた硝子が足を踏み出す。俺はそれを見ていられず、することも出来ることもなく、連続殺人犯のアジトから出たのだった。
     
     
     呪術師の娘が連続殺人犯、正しくは呪詛師にさらわれたのは、今から一週間前のことだった。俺たちがそれを助け出したのは昨日の話。彼女の残穢をたどって探し出したから任務はそう難しくなく、むしろこんな簡単な仕事を他の呪術師が早急にしなかったことが不思議だった。ただ呪詛師は呪いをかけていたから、最強の俺たち以外の他の呪術師は、そのトラップにひっかかったのかもしれない。それより不思議なのは、少女が今も男を待っているということだ。伝え聞いたところによると、彼女は例の男をいまだに慕って待っているらしい。高専に戻って食事をとって傑の部屋に帰る途中、まるでロミオとジュリエットみたいだなって言う彼に、俺はロマンチストすぎると友人の部屋の扉を開きながら言った。
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