クリスマスを終えれば、世間は一気に年末への空気感に押し流される。人々もその波に飲まれるようにさっさとツリーを片付け、忙しなく大掃除などに追われる一年の最終盤だ。
「すっかりクリスマスの飾り付けがお正月のになってるねー。ディスプレイ変える人、短期間で大変だぁ」
日付は12月27日。平日の昼過ぎ、ウインドウの前をソウゲンとスズランは二人並んで歩いている。
「クリスマスの気配も無くなってしまいましたね。一昨日まであんなにサンタで溢れていたのに煙に巻かれたように消えている」
「サンタでは溢れてないでしょ」
突っ込みつつ「ソーゲンちゃん眠い?」と頭ふたつ低い位置から覗き込むスズランに、目頭を押さえてソウゲンが笑う。メタルフレームの眼鏡がカチャリと鳴った。
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