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    azm3mm

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    azm3mm

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    景気付けに書きかけのを仕上げました。
    ソウスズ🟢🟣の嫁入りネタ。皆出てきてワイワイしてます。

    アキラちゃんの白無垢が見たかったのになぁとぶちぶち言いながら、それでも女の子の花嫁衣装はお婿さんになる人が最初に見るべきかなぁ…とも思う。でもね?とスズランは藤堂を見た。

    「なんで僕?やっぱりアキラちゃんが適役じゃない!?」
    「朔夜とアキラが新郎新婦役で同じ場所にいれば、突入組との戦力差が出る。そこで背がアキラの次に低いのが…鈴蘭、お前だ」
    「僕かぁ……。っていやいやいや」
    「なに、白無垢を着て俯いて居れば破戒坊主には見えん顔をしているから安心しろ。ついでにその喧しい口も閉じていれば完璧であろう」
    「褒めるか落とすかどっちよ!藤堂ちゃんが着ればいいじゃない!!?朔夜ちゃんのやる気も上がると思…」

    そこまで言ったスズランだが、殺気溢れ出る朔夜のひと睨みに口を尖らせて黙った。

    「義手で三々九度をしろと?敵は客として祝言に来ているのだぞ。バレるであろう」
    「うぐ……」

    押し黙ったスズランがその後の藤堂の話を全く聞かず、梁のあたりを眺めながらまず考えたのは、まあ当たり前にソウゲンのことであった。




    「成程スズラン殿は花嫁役と。お気をつけ下さいね、朔夜殿が隣にいれば安心ですが」

    読んでいた本を閉じながら、ソウゲンは表情を変えずに言う。

    「ふ、複雑ーーー」
    「おや?不安がおありで」
    「……いやいいのよ、実際朔夜ちゃんいれば安心だし。そうなんだけど」

    ソウゲンが効率を求めるたちなのは分かっているし、仕事上の潜入でありこの役割に意味は無い。
    それは分かっているが、恋仲がここにいるのに他の者と祝言の真似事をするのが面白くないのは自分だけか。
    少しは妬いてくれるかと思ったお医者ははて?という顔をしているので、スズランはぎゅっと目を閉じてその場に寝転がった。

    「情緒……まだ伸びしろあるぅ…」
    「スズラン殿、もうじき藤堂殿が集まれと言っていた時刻なのです」
    「うん…それまでちょっと休憩。たくさん藤堂ちゃんの話聞いたら、覚えること多くて疲れちゃった」
    「そうですか。お疲れ様なのです」

    さらりと髪を撫でてくるので、嬉しいけどそうじゃないんだよな〜〜とスズランは呻く。自分がだいぶソウゲンのことを好きになっていると思い知らされ、少し塩辛くなる喉を鳴らした。泣きそうになんてなってない。


    新撰組は地元の有力者の支援を受けている。その有力者親類の祝言にかこつけて事件を起こそうという不貞の輩の計画ありと密告があった。どうやら家同士の相続のもつれで政治とは異なるところではあるが、松平の血縁に嫁に入った者の従兄弟の親友が世話になった仲人のーーーとまあ遠い縁者だったため、捨て置けぬと新撰組に白羽の矢が立った。
    花婿と花嫁に扮した朔夜とスズランが潜入し、敵が騒ぎを起こしたところで屋敷奥に潜んでいた突入組が取り押さえる。客に被害を出さぬよう、平隊士も客に紛れての大掛かりな作戦だ。

    「うむ。良いのではないか」

    着付けが終わり、女中達が引いた室内には藤堂とスズランが残された。途中やんやと一番星やアキラも覗きに来て「おや別嬪」「あらりがとう♡」なんてふざけ合ったが、今は持ち場で警戒中だ。

    「……いやこれすごく重いんだけど。こんなに重いの?花嫁さんて大変だねえ」

    白無垢を着せられ、スズランはその分厚さに椅子から立ち上がる前から格闘していた。正絹の重さに、贅沢なことだと庶民間の不平等を改めて思い知る。
    この重さでは藤堂の義足には辛いであろうから、結果的に着せなくて正解だった。

    「この懐剣だがな、中身は短刀だ。まあお前が扱うことはないだろうが…いざとなれば投げるくらいは出来よう」
    「えっ!刃物は無理だよぉ!?」
    「事が起きたらお前は逃げて良い。あとは朔夜と突入組で取り押さえる」
    「……ねえ、因みにソウゲンちゃんは突入組?」

    計画の端を担って楽しくなってしまったらしい女中連が綺麗に結ってくれた髪をいじりながら、スズランは藤堂に尋ねた。聡いこの上司がどこまで勘づいているかは分からないが、スズランは何となく、自分がソウゲンを好いているのを藤堂に分かられている気がしていた。

    「一度聞いた作戦を忘れるでない。ソウゲンと話をしていないのか?珍しいな。ソウゲンの火薬は屋内では不向きゆえ奥で待機させる。お前は逃げたらソウゲンと合流する手筈に」
    「なんで!!??」
    「でかい声を出すな。その格好では満足に動けぬだろう?着替える間に襲われぬようソウゲンを付けるのだぞ。その間に作戦は終わるだろうから後処理は手伝え……なんだ、不都合があるのか」

    スズランの喉がつかえているような、川に財布を落としたような表情を見て藤堂は眉を上げる。

    「不都合……はないけど……」
    「であれば命令だ。さて、時間もそろそろなのでお前は少し静かに…」

    そこまで言うと、からりと障子が開いて朔夜が現れた。

    「こちらは支度が終わった」
    「……朔夜か」
    「あら〜朔夜ちゃん男前!いいねえ役者さんみたい」

    紋付袴など着て髪を後ろに撫で付けると、育ちの良さもあって朔夜の見目麗しさが際立ち見事なものであった。これは支度を手伝った女中連中はさぞ浮足立ったことだろう。
    綺麗な顔だが相変わらず仏頂面で、スズランの囃し立てに心底嫌そうな顔をした。

    「静かにと言われたろう」
    「えー褒めてるのに!藤堂ちゃんも男前だと思うよね?」
    「……私はどうこう言うことはないが」
    「隣で軽口を叩くようなら作戦が遂行できない」
    「はーーい、ごめんってば」

    朔夜の本当に嫌そうな顔にスズランはひらひらと手を振る。こういうところが朔夜をイラつかせているのだが、軽口を叩くのはスズランの性分なのだ。

    「では私は持ち場に戻る。朔夜、スズラン、気を引き締めて臨め」
    「承知した」
    「承知〜」

    言いながらスズランは被った綿帽子を整える。狭い視界と裾捌きに苦労しながら、広い屋敷の中さっさと先を行く朔夜をどうにか追った。


    祝言は恙なく進んだ。どの客が敵か見極めようと目を光らせてはいるが、あちらが動くまでは朔夜もスズランもしずしずと高砂にいるしかない。
    惚れ合った若人になりきろうとスズランは時折朔夜を見上げたりしてみるが、まぁそのような空気感を朔夜に醸し出せという方が無理である。相変わらずの無表情で座るのみだ。その仏頂面ですら端正で、酒を運ぶ女中や客の女性の視線を感じたから、鈴蘭としては腹の立つことである。
    祝詞や玉串やらと付け焼き刃で覚えたものをどうにかこなし、三献の儀…三々九度の盃が運ばれてきた時だった。

    「積年のお家の恨み、ここで晴らしてくれる!!」
    「覚悟!!」

    やおら客の一人か叫びと共に、隠し持っていたらしい短刀を抜く。その一党とみえる他五、六人も脇を固め、連れ立って高砂と横の家主夫婦に向かってきた。
    酒や料理の倒れる音、何かの割れる音が響いてわっと客に紛れていた隊士達に取り押さえられるが、抜け出した一人が朔夜に走り寄る。
    スズランは後ろに下がりながら、咄嗟に家主夫婦の視界を覆った。

    「庭へ逃げてください」
    「オラァ大人しくしろ!新撰組だ!」

    襖の向こうから一番星率いる突入組が現れたのと、某が体を盾にして客を庭へ逃しているのを見届けて、スズランは身を翻す。
    相手の持つ獲物も大したことはなさそうで、爆発物でも持っていない限りこれは早くカタがつくだろう。
    手筈通り屋敷の奥へ向かおうとしたが、やはり着物が重くて走れたものではない。綿帽子を引っぱり脱ぎ、もう裾を割って走ろうとたくし上げる。
    と、襖一枚隔てた隣室からぬっと大きな影が現れた。

    「!……わ、ソーゲンちゃん」
    「こちらへ。…ああ、歩き辛いのですか」

    了解したとソウゲンが手を伸ばしてきた、と思ったらぐいと持ち上げられる。
    子供がせがんで抱っこをしてもらうように、前に抱えられたスズランは咄嗟に落ちるまいと細長い首へ腕を回す。両膝下に入れられた腕に座るような形で軽くはないはずだが、痩身の割に死体を運ぶ力があるソウゲンはそのままスズランを奥まった一室へ運んだ。
    表ではバタバタと捕物が続いているのだろうが、奥はしんとしてうっすら声が聞こえる程度だった。
    そうでなくても、彼らをもってすれば既に騒ぎは収まっているかもしれない。

    ゆっくり畳に下ろされたスズランは、着物が重くてよろけそうになるのをソウゲンにしがみついてどうにか立つ。

    「花嫁衣装とは重いものですね。普段のスズラン殿の体重から一貫半程度は重いのです」
    「はあ……正確だね」
    「そちらにいつもの着物が。着替えをどうぞ」
    「あ、はいどうも」

    助かったよ、と帯を解こうとするがソウゲンは側を離れない。じっとスズランを眺め、検分するような視線は遠慮がない。

    「……あの、着替えづらいんだけど。別に恥ずかしいとかはないけどさ」
    「おや。すみません、考えが至りませんで…眺めていたかったものですから」
    「へ?」
    「いつもと趣きが違って、スズラン殿を見ているのがなんだが楽しくて」
    「……うん?うん」
    「髪を結っていますね。随分と凝っている」
    「あーきれいにやるもんだよねえ。話好きな女中さんでさ、わたし捕物に参加するなんてドキドキしてしまいます〜!ってきゃあきゃあしながら結ってくれて…」
    「……」
    「……ソーゲンちゃん?」

    視線を外さないまま、ソウゲンが手を伸ばしてくる。顔を大きな手で覆われ固定され、余計に目を逸らせなくなりスズランは狼狽えた。
    そのまっすぐで探究心を丸出しにした目に、スズランは開かれる死体みたいな気持ちになる。いや、死体になったことはないんだけれど。

    「朔夜殿と並んでいたのを奥の間から見ておりましたが」
    「ああ、朔夜ちゃんたらつれないんだよ、全然こっち見てもくれないし。もうちょっとお芝居した方がいいのにねえ」
    「お二人が絵になっているなと…思うと同時に、なにか胃の辺りがもやもやとしておりました」
    「……そうなの?」
    「そうもたれる物を食した覚えはないのですが。今は少し改善しております」
    「うーーん……あのね」

    顔に添えられた長い指に、スズランは自分の手を這わせる。

    「あのねソーゲンちゃん。それはやきもちじゃないのかな」

    言ってから恥ずかしくなり、僕の勘違いだったら申し訳ないんだけどと早口で添えて指を握る。
    ソウゲンは少し眉を上げて考え込んでいる風だったが、「腑に落ちた」とぽそりと呟いた。

    「合点がいきました。なるほど…これが」
    「あ、本当に?」
    「スズラン殿の隣に誰かいると不快という事ですね。そう、悋気の定義に相違ないと思います」

    己の気持ちの正体を見つけたソウゲンはすっきりした顔で、少々はしゃいでいるようにも見えた。また一つ物事を知れて嬉しいと思っている顔だ。

    「スズラン殿の姿が普段に増してかわいらしいく、より独占欲が強くなっているのもありますね」
    「…ありがと…」

    自分で指摘しておいて、改めて言われると恥ずかしくなりスズランは視線を泳がせた。

    「スズラン殿は男性ですからこの姿をどう褒めるのが適切か難しいのですが、かわいらしいは失礼でしょうか?」
    「ううん。好きな人にかわいいって言って貰えるの、僕は嬉しいよ」
    「……他の者にはやれぬと、思う程には」
    「わっ」

    ぎゅうと抱きしめられ、形だけ差した紅がソウゲンの着物に付きそうでスズランは身を捩る。圧倒的な体格差で抱き込まれれば、芝居のようだった先程までと変わり、知ったにおいと温度に安心をした。

    「ふふ。今日は情緒がたくさん伸びちゃったねえ」
    「情緒?」
    「こっちの話…ね、お芝居みたいで面白かったけどさ。ソーゲンちゃんがいいよ」

    ゆるく抱きしめ返せば背中を撫でられ、甘くなる雰囲気にそわそわとする。悋気のなんたるかも自覚が無かったくせに知識として恋人への表現方法を知っているこのお医者に頬を包まれ、ただ触れるような口吸いをされる。

    「まって、紅が付いちゃう…」
    「ああ」

    ソウゲンはぐいと己の唇を指で拭い、その赤に「本当ですね」と微笑んだ。
    その姿の妙な色気にぐっと噛み締めたスズランは、やっぱり好きだなあと切なくなった。
    では、と唇を避けて額に耳にと口づけが落とされる。くすぐったくて甘くて、もどかしく指を絡める。

    「着替えないと」
    「そうですね…」

    流石にずっとこうもしていられぬと指を離すと、勢いよく廊下を走る音。反射的にばっとお互い身体を離すと、隊士の声が大きく響く。

    「山南先生、斎藤先生、こちらですか?」
    「ええ、おります」
    「みな捕らえ終えました、局長より報告してこいと」
    「分かりました。斎藤殿の支度に手間取り…もう終えます。合流しますので」
    「はっ」

    足音が遠のくと、はぁとスズランが息を吐く。

    「僕黙ってることなかったのに、つい癖で息殺しちゃった」
    「癖、で」
    「うん。ふふ」

    急がねばと帯を解き、花嫁支度を足元へ落としてゆく。ソウゲンも手伝うが、このハレの装いを脱がすのは非日常感が強く倒錯的だ。しかし今はそうも言っていられない。

    「はーーー、重かった!いつもの着流しがすっごく軽く感じるよ」
    「髪はどうします?もう全て解いている時間は…」
    「もう屯所に帰るだけでしょ、まあ途中でいいや」

    髪は緩く崩してまとめたままバタバタと皆と合流すると、捕らえた者らを奉行所に引き渡すところであった。朔夜は紋付袴も全く乱さず、戦闘を終えたとは思えぬ様子である。誰も怪我はしておらず、客は別室に避難し散乱した宴会場を家の者たちが片付けていた。

    「お疲れ様ぁ」
    「どんだけ着替えるのに時間食ってんだよ」
    「着せてもらったやつだもの、難しかったんだよ〜すっごい重いの」
    「む、髪は解いてこないのに化粧は落として来たのか」

    一番星とアキラに突っ込まれ、スズランは思わず自分の唇をなぞる。

    「ああー……うん。違和感すごくて。見たかったぁ?」
    「覗きに行ったじゃねえか。紅だけだったろ?」
    「着物に付きそうだったんだよ」

    黙って聞いていたソウゲンが少し息を吐いたので、スズランが袖を引っ張る。
    家主と話し終えた藤堂が戻り、何か言いたげな顔でスズランとソウゲンを見たが「帰るぞ」とだけ皆に告げた。
    年若い上司に気にさせて、今日も多少の気遣いありで一緒にして貰ったのではないか。結果的にソウゲンとの仲は深まりありがたかったけれど、スズランはなんだか申し訳なくなってくる。

    「あぁ?雨か?」

    先頭の方の一番星が声を上げ、皆が空を見上げる。晴れているのにぱらぱらとにわか雨が降ってきていた。

    「お天道様出てるのに変マァ」
    「狐の嫁入りってやつだなァ。濡れるような雨じゃねぇがさっさと帰ろうぜ」

    某とギャタロウが小走りにゆく。街ゆく人も空を見上げて、家路を急ぐか雨宿りに軒先へ集っていた。

    「我らも少し急ぐぞ。泥濘むと歩きづらくてかなわん」
    「狐の嫁入りかぁ。結婚ラッシュだな今日」
    「拙者たちの参加したのは偽物であろう」

    義足を気にしながら歩く藤堂と、一番星とアキラが急ぎながら話す。

    「どこぞの狐が嫁入りしたのかしらねえ」
    「これは本物のご夫婦は、本日祝言を上げなくてよかったのでは?雨はよろしくないのです」
    「いやぁ、お天気雨って縁起がいいとも言うよ。神様がお祝いしてくれてるんだって」
    「そうなのですか」
    「まあ、雨の中なんて花嫁さん歩きづらくて大変だろうけどね」

    身をもって知ったスズランが苦笑して、泥を跳ねないように皆に続いた。

    (今度甘味屋にでも藤堂ちゃん誘って、ソウゲンちゃんとのことをきちんと話そうかな)

    ソウゲンにも同席をしてもらうつもりだが、それこそ上司に結婚報告をするみたいになるな…と絵面を考え込んでしまう。とりあえず、苦労をかけてるので甘いものでも食べてもらおう。
    団子かあんみつかぜんざいか…なにが好きかしら、と雨を煩わしそうに一番前を急ぐ小さな背中にありがとねぇと呟いた。
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