家猫の黄昏今日もこの家は平和だ。
いつもの音、いつもの匂い。
何も変わらない、でも、それが本当の幸せだと思っている。
私はこの家に住み始めて約2年。
元々は外で暮らしていたが、食べ物が無くて困っていた所をデカい奴らに助けてもらった。
デカい奴らは本当に不思議だ。
“テレビ”とか言う物を見ただけで泣いたり、笑ったり。
部屋が温かいと言うのにわざわざ寒いとこに出掛けて行ったり。
でも、コイツらは飯を何処からか取ってきてくれるし、私が吐いてもいつの間にか掃除してくれている。
そして何より、コイツらは私の事が好きみたいだ。
私を見つけると撫でてくれるし、膝に乗って寝てても何も言わない。
おもちゃを持って行くと遊んでくれたり、本当に退屈しない奴らだ。
ある日、デカい奴らがザワザワしていた。
私も気になり覗いてみると、そこには私より小さい奴が居た。
高い声でミィミィ鳴いており、とても不思議に思った私は、少しイタズラしてやろうと、ちょっかいをかけてみる。
するとデカい奴らは私を叱りつけた。
こんなに怒られたのは初めての事だったので、ビックリして逃げ出してしまった。
その日から、デカい奴らは私にあまり構ってくれなくなった。
それから1ヶ月くらい。
私がシーツの上で寝ていると、小さい奴が近付いて来たのだ。
また何かしたら怒られるのでは無いかと思い、私は一瞥すると再び目を閉じた。
ふと背中の辺りに感触を覚え、そこを覗くと、小さい奴が私と同じ姿勢で眠っていた。
すると、デカい奴の1人が私達を見つけ、他のデカい奴らを呼んだ。
何やら興味深げに私達を見ている。
そして、彼らは私の頭を撫でてくれた。
何故かそこからは元のように構ってくれるようになった。
本当に不思議な奴らだ。
私に何も変わらない日々が戻って来た。
1つ変わった事があるとしたらこの小さい奴の存在だろうか。
あの日から私の後をついて来るようになり、何かと私の真似をする。
コイツもコイツで不思議な奴だなと思った。
いつもの音、いつもの匂い。
今日もこの家は平和だ。