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    motsunabe26

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    motsunabe26

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    爺さんのたのしい鹿調教

    これはわしの道楽よ、と老人はよく口にした。
    当主の座を年若い愛孫に譲ろうともいまだ家中の実権を握る老人は、そう時を開けずして鹿介の前に姿を見せる。
    時には主家のことは忘れて楽になれと諭し、時には同じくして捕らえられた何某は誘いに応じてこちらに就いたなどと嘯き、時には鹿介の武勇を褒めそやし、仕官の打診をする。仇敵に尽くす忠などないと鹿介がいくら突っぱねても、毎度愉快そうに目を細めるだけであった。
    虜囚の自分を生かし続けることに何の意味があるのか。謀神とまで謳われた男の考えなど鹿介には図れなかったが、初めて手ずから縄を打たれ男の尊厳を辱められた夜に、老人の言う「道楽」が文字通りのものであると知った。
    鹿介が、囁かれる甘言に乗り仇に降ろうとも降らずとも、その苛烈な責めに音を上げようが堪え切ろうが、老人にとってはどちらでもよいのだ。主家再興という途方もない大願がために奔走し、抗い、捕らえられてもなお希望を捨てず、同志を信じて牙を剥き続ける若者の不屈の闘志を高みから愉しんでいる。
    篭に入れた虫や鳥が人を襲えないのと同じように、鹿介に命を脅かされる懸念など微塵も感じていない。手懐けられれば吉、躾に堪え切れず死んでしまうのならそれまで。まさに畜生の扱いである。
    ――なめられている。
    強く、そう感じた。
    ――俺はこの男に侮られている。
    それは、身を貫かれ慰み者のごとく扱われた屈辱よりも堪えがたく、烈しく鹿介の心を焼いた。
    ――見ていろ。憤怒と憎悪の渦巻く胸中で誓う。必ずその寝首を掻いて、俺を殺さなかったことを後悔させてやる。
    元より鹿介は、どれほど恥辱に塗れても生き延び、逃げ出す心積もりであった。老人に己を殺す気がないのならば好都合である。いつか機が訪れる。いまはまだ雌伏の時だ。そう己に言い聞かせる。
    「――仇を前に余所事か」
    「ッぐ、ウゥ!」
    途端、鹿介の意識は思考の海から引きずりだされる。
    老いてなお活力に満ち満ちたその手が鹿介の肩を強く抑えつけ、縄目を絞ったのだ。若く瑞々しく、獣のごときしなやかな肉に這った縄がきつく鹿介を戒める。肺から呻き声が漏れた。
    「この程度の責めではおぬしには足りぬか。それともわしに膝を折る気にでもなったか?」
    首を差し出すように地べたに両肩を着かされていた鹿介は、首を捩じり背後の男を睨めつける。
    痛みと屈辱に、鈍るどころか鋭さを増す鹿介の眼光を受け、老人はうっそりと歪んだ笑みを見せた。
    「そうだ、もっとわしを愉しませてみせよ」
    今宵の「道楽」は始まったばかりだ。
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    eyeaifukamaki

    PROGRESS沢深 あの夏の日①
    ちょっと切ないのばっか書いてると、、たまには超激甘なのも書きたくなるので、多分過去最高に仲良しな幼馴染?沢深になるかと。
    深津さんが可愛くて、栄治君がスパダリで誰おま状態で、二人の時は立場逆転、栄治君の方が年上みたいで深津さんはちょっと幼い感じの甘々な沢深目指します!
    小さい時に出会った君は、体が弱い俺の手を取って、一緒にバスケをした。いつも笑顔で俺を迎えに来て、お決まりのコートまで手を繋いで。俺を日陰に座らせて一人でシュートをしたり、俺を誘って少しだけバスケをしたり、二人で座ってお喋りしたり。俺と違って元気な体で走り回る君の姿は羨ましくて、それと同時に、いつも全力で楽しむ姿が大好きだった。あの時の思い出がなかったら、今の俺はここにはいない。





    えいじくん、今日もかっこいい。

    小さな俺が心の中でいつものように叫んでる。小さい時にバスケを教えてくれた神は、今日も俺の目の前で神的なプレーを見せてくれた。

    「深津さん、さっきの見てくれました?」
    「ピョン」

    神は、俺より一つ下。本当は俺の方がこうやって聞きたい立場なのに。できれば年上、もしくは同学年で会いたかった。それなら俺が可愛がってもらえてた。俺が一つ上なだけで、いつも強引に俺を引っ張ってくれていた手が、今は姿を現すことはない。
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